紙でルールを説明する:一枚の説明書を作ってから画面の説明へ
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ブラウザゲームのチュートリアルを作り始めると、最初に決めるのは吹き出しの位置や矢印の動きになりがちです。けれども、その前に確かめておきたいことがあります。ルールを紙一枚に書いて人に渡したとき、その人は最初の一手を打てるのか、という点です。 この記事は、その問いを自分で検証するための実験の設計書です。紙には動くアニメーションも点滅するボタンもありません。使えるのは文と図だけなので、ルールの説明として何が必要で何が不要かが露出します。紙の段階で詰まる箇所は、画面にしても詰まりやすい箇所です。逆に、紙で通じた説明は、画面の仕掛けへ一文ずつ置き換えていけます。 結果はここには書きません。読者が手順どおりに行えば、自分のゲームについての答えが出る形にしてあります。
紙から始める理由
画面の説明は、作る側の手間が見えにくい仕組みです。ハイライト、矢印、演出、ヒントボタンと、足せるものがいくらでもあります。足せるからこそ、そもそも何を伝えるのかが曖昧なまま、説明が膨らんでいきます。
紙には制約があります。書ける量が限られ、動かせず、プレイヤーが操作して学ぶこともできません。この制約を逆に使うのが、この実験の考え方です。限られた紙面に入れるものを選ぶ作業が、そのまま「説明の優先順位づけ」になります。
確かめたいことは三つに絞ります。
- 紙一枚で、目的・一回の手番でやること・終わり方を伝えられるか
- 読んだ人は、質問なしで最初の一手を正しく打てるか
- 詰まった箇所は、どの文が足りない、または多すぎるのか
準備するもの
道具は少なくて済みます。
- 自分のゲームの、遊べる状態の版(未完成でも、最初の一手が打てれば十分です)
- A4の紙1枚と筆記具、または印刷できる文書ファイル
- 観察に協力してくれる人を3〜5人(そのゲームのルールを知らない人に限ります)
- 記録用の紙かメモ
- 時間を測れるもの(スマートフォンのタイマーで十分です)
観察に協力してもらう人数は、あくまで目安です。人数が多いほど確かではありますが、この実験の目的は統計を取ることではなく、詰まりやすい箇所を見つけることです。同じ箇所で2人以上が止まるかどうかを見られれば足ります。
手順
1. 一枚の説明書を作る
次の4つだけを、A4一枚に書きます。
- 目的:このゲームで何を達成すればよいか(1〜2文)
- 一回の操作:プレイヤーが一度にできること(箇条書きで3項目まで)
- 終わり:勝ち、負け、または終了の条件
- 最初の一手の例:図を1つだけ描き、その横に「この場面ではこう動かします」と書く
制限は厳しめに決めます。文字は200字前後、図は1つまでを目安にします。収まらなければ、削る候補を考えます。操作の細則、例外、得点の計算式などは、最初の一手に不要なものとして外します。
2. 声を出さずに読んでもらう
協力者1人ずつに、紙を渡します。次の約束を先に伝えます。
- 読み終わったら、「読みました」とだけ言ってください
- 質問は、遊んでいる途中で自由にして構いません。ただし、答えは返さず、記録だけします
紙を読んでもらっている間は、横から補足しません。表情や視線の動きも、気づいた範囲でメモします。
3. 最初の一手を打ってもらう
読み終えたら、ゲームを開いた状態で渡し、「まず一手、やってみてください」と伝えます。ここから最初の操作が終わるまでを記録します。ヒントも口頭の助けも出しません。5分たっても動かない場合は、そこで打ち切ります。打ち切りも立派な記録です。
4. 紙を直して別の人で繰り返す
1人目から2人目に移る前に、紙を直したくなるかもしれません。ここは我慢して、同じ紙で3人分を取り終えてから直します。最初の数人の反応で書き換えると、どの修正が効いたのか分からなくなるためです。3人分を見て共通の詰まりを探し、直した版を、新しい別の人2人以上に渡します。同じ人に2度目を頼むと、すでに内容を知っているため、検証になりません。
記録と結果の読み方
記録は、1人ごとに次のような表にまとめます。
- 読む時間、記録する内容:紙を渡してから「読みました」まで、単位:秒
- 迷いの時間、記録する内容:ゲームを渡してから最初の操作まで、単位:秒
- 最初の一手、記録する内容:意図した操作だったか、単位:正しい/違う/なし
- 止まった箇所、記録する内容:手が止まった場所、視線が戻った文、単位:紙のどの文か
- 質問、記録する内容:発した言葉をそのまま書く、単位:一言ずつ
数字そのものよりも、「どの文のところで止まったか」を重視します。読む時間と迷いの時間は、長さを比べるより、人どうしでばらつきがあるかを見るために使います。
読み方の判断基準
結果は、次の対応で読みます。
- 同じ文の近くで2人以上が止まった:その文が不足しているか、言葉が難しいかです。まず言い換えを検討します。
- 質問が同じ内容に集まった:紙に書かれていない前提があります。その質問文を、そのまま紙の1行にすることを考えます。
- 最初の一手が「違う」だった:目的か最初の例の図に原因があることが多いです。図を描き直す、または図を2つ目にせず例を差し替えます。
- 紙は読めたが、画面の操作で止まった:説明書の問題ではなく、画面の操作や表示の設計の問題です。紙の内容は変えず、画面側を見直します。
- 誰も止まらなかった:紙の文を一つ削ってみて、再度確認します。削っても通じるなら、その文は不要でした。
最後の項目は、見落とされがちです。通じたあとに「減らせるか」を確かめることが、説明を短く保つ手がかりになります。
画面へ移すときと起こりやすい誤り
紙で通じた説明は、一文ずつ画面の手段に対応づけます。
- 目的の1〜2文、画面で置き換える手段の例:開始画面の短い一行、または最初の盤面そのもの
- 一回の操作、画面で置き換える手段の例:最初の一手を促す、操作できる箇所の強調
- 終わりの条件、画面で置き換える手段の例:進行中に見える表示(残り回数、残り時間など)
- 最初の一手の例、画面で置き換える手段の例:実際に1回だけ操作させる試し遊び
公式作品の構成も、この見方で眺められます。たとえば「時計じかけの台所」には、時間制限なしの見習いと、制限のある本番があります。「プリズムの道」には一歩だけのヒントがあり、「潮だまり」には絵付き図鑑と観察ノートがあります。これらは、説明を一度に出し切らず、遊びの中で段階的に伝える設計として読み取れます。具体的な画面や文言は、作品を開いて確かめてください。
投稿画面の「紹介文と遊び方を作成」は、公開済みURLや検証済みのアップロードを読み取って下書きを作る機能です。「この文章を使う」を押した場合だけ反映されます。紙の説明書ができていれば、その下書きと見比べて、足りない前提や言い回しのずれを確認する材料になります。
起こりやすい誤り
- 紙に全部書いてしまう:例外や細則まで入れると、読む時間が伸びるだけで、最初の一手は変わりません。
- 自分で口頭補足をする:沈黙に耐えられず説明を足すと、紙の検証になりません。
- 協力者に「分かりましたか」と聞く:多くの人は分かったつもりで答えます。判断は「実際に打った手」で行います。
- 3人分を待たずに直す:どの修正が効いたのか、切り分けられなくなります。
- 画面の演出の質で判断する:紙の説明が通じたかを見る実験なので、画面の見栄えは別に評価します。
次の行動
まず、自分のゲームの目的・一回の操作・終わり・最初の一手の例を、A4一枚、200字前後で書き出してください。その紙を、ルールを知らない人3人に渡し、声をかけずに最初の一手を観察して、止まった文に印をつけます。共通の印がついた文が、画面の説明で最初に作り込むべき場所です。
