付箋で画面遷移を作る:紙のプロトタイプの作り方
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

ブラウザゲームをほぼ作り終えた場面を考えてみます。タイトル画面があり、プレイ画面があり、終わると結果が出ます。頭の中では流れが通っているので、あとは見た目を整えるだけのつもりでいます。ところが、友達に渡すと最初のボタンで止まってしまいます。「やり直したいときはどこを押すのですか」と聞かれて初めて、結果画面から先の行き先が決まっていなかったことに気づきます。 こうした抜けは、コードを書く前に紙の上で見つけられます。この記事は、付箋1枚を画面1つに見立てて並べ、指でなぞりながら画面遷移を確かめる実験の設計書です。結果は書いていません。手順どおりに行えば、ご自身の作品の抜けと迷いがどこにあるかが記録として手元に残ります。 確かめたい問いは次の1つです。付箋だけで、画面遷移の抜けと迷いをどこまで見つけられるか。
この実験で確かめる問い
画面遷移とは、ある画面から別の画面へ移る道筋のことです。付箋のプロトタイプでは、画面を付箋、移動を矢印、ユーザーの操作を指で押す動作に置き換えます。見た目は確かめません。確かめるのは次の3点です。
- 行き止まりがないか。入ったきり、どの操作でも出られない画面のことです。
- 迷いがないか。次に押すものが見つからない、またはどれを押すか決められない瞬間のことです。
- 回り道がないか。遊び始めるまでに、必要以上に画面や操作が挟まっていないかを見ます。
実験を始める前に、予想を一言で書いておきます。たとえば「結果画面から再挑戦に戻る道が弱いと思う」といった内容です。実験後に予想と見比べると、頭の中の地図と実際の地図のずれがはっきりします。
準備するもの
高価なものは要りません。
- 75mm角程度の付箋を20〜40枚。色を2色用意すると、通常の画面と例外の画面を分けられます。
- 太めのペン。細いペンでは、離れて見たときに読めません。
- 大きめの紙(A3など)か、広い机。付箋を並べる土台です。
- マスキングテープ。矢印の代わりに、付箋どうしをつなぐ線として使います。貼り直せるので便利です。
- 実際に使うスマホ画面の縦横比を写し取った枠。厚紙を切って作れます。ボタンを置ける広さの感覚を保つために使います。
- タイマー(スマホで構いません)と記録用紙。
- 協力者が1人いれば理想的です。いなくても、後述のとおり役割を切り替えれば実施できます。
手順
1. 遊びの一周を1文で書く
最初に、1回の遊びを1文で書きます。たとえば「タイトルから難易度を選び、プレイして、結果を見て、もう一度か終了を選ぶ」といった文です。この文に出てくる動詞が、画面の候補になります。
2. 画面を洗い出して付箋に書く
付箋1枚を、画面の1つの状態として書きます。書式を固定しておくと、あとで見比べやすくなります。
- 上段にタイトルを書きます(例:「タイトル」「プレイ中」)。
- 中段に、画面に見えているものを文字で書きます。絵は描きません。
- 下段に、押せるものを書きます。ボタン、タップできる場所、キー操作などです。
状態ごとに付箋を分ける点が肝心です。同じ「プレイ中」でも、ヒントを表示している状態や一時停止の状態は、別の付箋にします。
3. 並べて、つなぐ
土台の紙に、遊びの順に左から右へ付箋を並べます。マスキングテープで、どのボタンからどの付箋へ移るのかをつなぎます。このとき、テープの手前に押すボタンの名前を書きます。ボタンの名前が書けない矢印は、まだ設計が決まっていない道です。
4. 例外の付箋を足す
次に、色を変えた付箋で、通常の流れから外れる状態を足します。思いつく例を挙げます。
- 一時停止と再開
- 一手(または一操作)戻す
- ゲームの途中でやめて、最初の画面に戻る
- ページを再読み込みしたとき
- 画面の拡大や言語の切り替えをしたとき
- 失敗が続いて終了する場合と、時間切れで終了する場合
すべてを網羅する必要はありません。ただし、正常系だけで終えないことが、この実験でいちばん効く点です。
5. 指でなぞる
ここからが実験の本番です。ゲームを知らない人(協力者)に、スマホ枠の位置へ立ってもらい、次の流れで進めます。
- 協力者に「ゲームを遊ぶつもりで、押したいものを指で指してください」と伝えます。
- 協力者が指したボタンに矢印がつながっていれば、そのつながった付箋を、枠の位置に置き換えます。この「付箋をめくる役」を担当するのが、画面を動かすコンピューターの役目です。
- つながっていなければ、「何も起きません」とだけ答えます。ここが抜けの候補です。
- 説明は一切しません。聞かれても「画面に書いてあることがすべてです」と返します。
協力者がいない場合は、日を置いて自分で行います。ボタンの名前だけを見て指し、頭の中の知識で補わないよう、付箋の中段を声に出して読んでから動く方法が有効です。ただし、自作の流れは自分が知りすぎているため、迷いが出にくい点は理解しておいてください。
公式作品で練習する
自作に入る前に、他人の作品の画面遷移を付箋に写す練習が役立ちます。アソバースの公式作品を例にします。
「かたちのあいだ」は、確認済みの範囲で、3×3の入門と4×4の2段階があり、次の一手のヒント、一手戻す、同じ配置の再挑戦、時計の一時停止があります。「時計じかけの台所」は6つのレシピがあり、時間制限なしの見習いと、ミス3回までの本番があります。
これらの機能から、「難易度やモードを選ぶ状態」「中断する状態」「やり直す状態」が存在しそうだと読み取れます。ただし、実際の画面の数や並び、ボタンの名前は、作品を開いて確かめてください。開いたら、気づいた状態を1枚ずつ付箋に写し、遊びの一周と例外が何枚ずつになるかを数えてみます。他人の作品を写してみると、自分の作品に何枚足りないかの目安が見えてきます。
記録の取り方
通しのなぞりを1回行うごとに、次の項目を記録します。1回の通しとは、タイトル相当の付箋から、結果相当の付箋、そして再挑戦または終了までを指します。役割(協力者役・めくる役)を入れ替えて、少なくとも3回行ってください。
- 迷った瞬間、単位:付箋ID・秒数、記録の仕方:指が3秒以上止まった付箋に印を付け、秒数を書く
- 「次はどこですか」と聞かれた回数、単位:回、記録の仕方:付箋ごとに正の字で数える
- 行き止まりの付箋、単位:枚、記録の仕方:何を押しても出られない付箋にID
- 何も起きなかったタップ、単位:回、記録の仕方:矢印のないボタンを指された回数とボタン名
- 開始までのタップ数、単位:回、記録の仕方:タイトルから最初の操作が可能になるまで
- 付箋の総枚数、単位:枚、記録の仕方:通常と例外を分けて数える
付箋には、あらかじめ通し番号(A1、A2……)を書いておくと、記録が楽になります。3秒という基準は目安です。ご自身の作品に合わせて変えて構いませんが、3回とも同じ基準で測ってください。
結果の読み方
数値の「正解」はありません。以下は、記録をどう判断につなげるかの基準の提案です。
- 何も起きなかったタップが出た:そのボタンに行き先がない、またはボタンが誤解を招いています。行き先の付箋を足すか、ボタンを消すか、名前を変えます。
- 行き止まりの付箋がある:出口が必要です。最低でも、戻る、やり直す、最初に戻るのどれかを下段に足します。
- 同じ付箋で迷いが2回以上、別の回にも出た:画面の問題である可能性が高いです。中段の情報が多すぎないか、押すべきボタンが目立つか、ボタンの名前が行動を表しているかを見直します。
- 迷いが1回だけで、人によって違う:個人の癖の可能性があります。すぐには直さず、次の回で再現するか見ます。
- 開始までのタップ数が多い:その途中の付箋のうち、省けるものがないか確認します。選択を後ろへ回す、既定値を置くといった工夫が考えられます。
- 例外の付箋が極端に少ない:通常の流れだけを設計した可能性があります。一時停止、中断、再読み込みの付箋を足してもう一度なぞります。
最初に書いた予想と、実際の記録を見比べます。予想が外れた箇所は、頭の中の地図が実際と違っていた場所です。そこが、いちばん価値のある発見になります。
起こりやすい誤り
- 絵を描き込みすぎる:色や飾りを描き始めると、話題が見た目へ流れます。この実験では文字だけで十分です。
- 作者が説明してしまう:迷っている協力者に思わず助言すると、迷いの記録が消えます。聞かれても答えず、「迷った」を記録に回してください。
- 正常系だけで終える:壊れるのは、たいてい例外のところです。
- ボタンを大きく書きすぎる:付箋の上では、小さなボタンも大きく書けてしまいます。実機の指のサイズを想定し、スマホ枠に収まるボタン数を超えないよう気をつけます。
- 1回で結論を出す:1人の動きは偶然を含みます。役割を替え、3回なぞってから判断してください。
- 直したあと、なぞり直さない:付箋を足したら、必ず最初から通し直します。直した箇所が別の行き止まりを作ることがあります。
次の行動
今日は、作品の遊びの一周を1文で書き、画面を付箋に洗い出してみてください。まず10枚で十分です。付箋を並べたら、家族や友人に1回だけ、説明なしでなぞってもらいます。直した版を実装に移したら、アソバースの投稿画面で下書き保存を使いながら、入力から公開までの3段階を進めてみるのもよい流れです。

