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紙の試作で分かる「ルールの穴」:画面にする前に見つける

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

四つの仕掛けを巡って元へ戻る、赤いビー玉の円形コース
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

2人用の対戦ゲームを考えている場面を考えてみます。ルールの文は「歩数カードを同時に出し、駒を進める。先にゴールした方が勝ち」の一行です。頭の中では筋が通っていて、そのまま画面にしても問題なさそうに見えます。ところが紙とコインで一度動かすと、すぐに手が止まります。2人が同時にゴールしたら、どちらの勝ちでしょうか。2つの駒が同じマスに止まったら、どうなるのでしょうか。出せるカードがなくなったら、誰が何をするのでしょうか。 この3つはどれも、ルールを書いた本人が「決まっているつもり」だった箇所です。頭の中で遊ぶときは、無意識に都合のよい解釈で穴を埋めてしまいます。手を動かして遊ぶと、駒を置く場所や次に誰が動くかを実際に決めなければならず、矛盾や空白が表に出ます。 この記事は、題名の問いを実験として扱います。紙の試作を回せば、画面にする前にどんな種類の「ルールの穴」がどれだけ見つかるのか。自分で確かめるための設計書として、準備、手順、記録の取り方、結果の読み方、起こりやすい誤りを順に示します。結果そのものは書きません。実際に遊んだ人だけが手にできる情報だからです。

この記事の目次
  1. 問いを決める:この実験は何を確かめるのか
  2. 準備するもの
  3. 手順:ルール文だけを根拠に、3回遊ぶ
  4. 記録の取り方:1つの迷いにつき1枚
  5. 結果の読み方と、起こりやすい誤り
  6. 次の行動

問いを決める:この実験は何を確かめるのか

実験の前に、問いを一つに絞ります。「面白いかどうか」を確かめる実験ではありません。確かめるのは次の一点です。

ルールの文だけを根拠に、最後まで遊び切れるか。

面白さの検証は、穴が塞がってからで十分です。穴だらけのルールで遊ぶと、面白さと混乱が区別できません。

見つけたい穴は、次の5種類に分けておくと記録が楽になります。

  • 未定義、意味:ルールに書かれていない状況、典型的な場面:同時ゴール、同じマスへの停止
  • 矛盾、意味:2つの文が逆のことを言う、典型的な場面:「必ず進む」と「障害物には入れない」
  • 行き詰まり、意味:誰も合法な手を打てない、典型的な場面:カードが尽きた、駒が囲まれた
  • 終わらない、意味:終了条件に届かない、典型的な場面:互いに守り合って点が動かない
  • 一択、意味:毎回同じ手が最善になる、典型的な場面:最初のカードだけで勝負が決まる

最初の3つは「書き足せば直る」穴です。残る2つは、ルールの設計そのものを見直すきっかけになります。

準備するもの

道具はできるだけ簡素にします。作り込むほど、試作そのものが目的になってしまうためです。

  • 紙に書いたルール文(箇条書きで、一行に一つの決まり。行ごとに番号を振ります)
  • 盤の代わりになる紙、またはノートの方眼
  • 駒や点数の代わりになる硬貨、消しゴム、付箋
  • カードや札が必要なら、メモ用紙を切ったもの
  • 「穴カード」用の付箋または小さな紙(記録用。次の節で説明します)
  • 時計(ストップウォッチやスマートフォンのタイマー)

ルール文の書き方には条件があります。遊ぶ人が見るのは、この紙だけにします。口頭の補足は禁止です。作者がその場で「本当はこういう意味で」と説明した瞬間に、穴は塞がったように見えて、実際には紙の外に隠れてしまいます。

遊ぶ人は、できれば作者本人以外を最低1人用意します。1人で試す場合は、後述するように「審判の紙」を使って手順を分けます。

手順:ルール文だけを根拠に、3回遊ぶ

1回目:作者が遊ぶ

作者自身が両方の手番を持ち、ルール文を一行ずつ指でなぞりながら進めます。頭の中で判断せず、「今の状況でどの行が当てはまるか」を毎ターン指さすのがコツです。指さす行が見つからなければ、そこが穴の候補です。

2回目:別の人が遊ぶ

ルール文を渡し、作者は口を出さずに見守ります。質問されても答えません。その代わり「今の質問」を記録します。質問された時点で、その箇所は紙に書かれていなかったことになります。

3回目:わざと壊しにいく

ここまでの2回は、普通に遊ぶ試作です。3回目は、遊び方を変えます。

  • 一番有利そうな手を毎回繰り返す
  • 一番不利な手を選び続ける
  • 迷ったら、必ずルールの字面どおりに解釈する

字面どおりに解釈するとは、作者の意図ではなく、書かれた文だけを根拠にすることです。意図と字面がずれていれば、その箇所は穴です。

1人で行う場合

作者1人でも実験はできます。ルール文を書いたら一度紙を伏せ、時間をおいてから、紙だけを見ながら遊びます。「書いたときの自分」と「読むときの自分」を分けるための工夫です。それでも作者の記憶が邪魔をするので、可能なら別の人に1回だけでも遊んでもらうことを勧めます。

記録の取り方:1つの迷いにつき1枚

記録の単位は「1回の迷い」です。ターンごとでも1ゲームごとでもありません。迷うたびに手を止め、穴カードを1枚書きます。カードに書く項目は次のとおりです。

  1. 何回目の対局か、何ターン目か
  2. そのときの状況(駒の位置や手札を一文で)
  3. 当てはまりそうなルール文の行番号(なければ「なし」)
  4. 何に迷ったか
  5. その場で下した裁定(仮にどう決めたか)
  6. 種類(未定義・矛盾・行き詰まり・終わらない・一択)

裁定を書くのが大事です。裁定は、そのまま「ルール文に足す一文」の下書きになります。

終局まで遊んだら、次の2点も1回ごとに書き留めます。

  • 終了までにかかった時間とターン数
  • 終わらなかった場合、どの時点で打ち切ったか

打ち切る基準は、あらかじめ決めておきます。例えば「想定の2倍の時間が過ぎたら打ち切る」などです。基準は目安で構いませんが、実験の前に決めることが重要です。途中で決めると、都合のよい結論に引っ張られます。

結果の読み方と、起こりやすい誤り

遊び終えたら、穴カードを机に並べ、次の順に読みます。

読み方の手順

1. 種類ごとに枚数を数える。 未定義が多ければ、書き足しで直ります。矛盾が多ければ、ルールの構造に無理があるかもしれません。

2. 行番号ごとに束ねる。 同じ行に何枚も集まるなら、その行が弱点です。一行ずつ直すより、その行の考え方ごと書き直すほうが早い場合があります。

3. 裁定を比べる。 1回目と2回目で同じ状況に違う裁定が出ていたら、その箇所は人によって解釈が分かれる穴です。最優先で直します。毎回同じ裁定なら、その裁定をそのままルールに書き足せば済みます。

4. 終了までのターン数や時間を並べる。 回ごとの差が極端に大きいなら、終わり方が運や特定の手に偏っている可能性があります。終わらない回があれば、終了条件を見直す合図です。

5. 3回目の記録を読む。 毎回同じ手が有利になっていたなら「一択」の穴です。ルール文の追記では直らないことが多く、選択肢の価値の見直しが必要になります。

迷いがゼロだった場合

穴カードが1枚も出なかったときは、喜ぶ前に疑ってください。頭の中で補いながら遊んでいた可能性があります。確認の方法は二つあります。

  • 2回目の遊び手に、遊び終えてから「この状況ではどうなりますか」と、わざと意地悪な状況を口頭で出してもらう
  • ルール文の各行に「例外はないか」と書き添え、例外を一つずつ考える

どちらでも穴が出なければ、そのルールは次の段階に進める状態に近いといえます。ただし、これは少人数の紙の試作で確かめた範囲の話です。画面にしてから見つかる穴もあります。

起こりやすい誤り

  • 口頭で補う。 質問に答えた瞬間、穴は記録から消えます。答えずに、カードに書いてください。
  • 意図で解釈する。 「作者の意図ではこうだから」と裁定すると、遊び手には読み取れないルールが残ります。字面を優先してください。
  • 一度に直しすぎる。 穴をいくつも一気に直すと、どの修正が効いたのか分からなくなります。直す箇所は、1回の修正で1〜2行を目安にし、直したら再度遊んで確かめます。
  • 面白さの判断を混ぜる。 「つまらないから」と途中でやめると、終盤の穴が見えません。この実験では、最後まで遊び切ることを優先します。
  • 作者が遊び手を急かす。 迷っている時間こそが記録の対象です。待ってください。

次の行動

まず、いま考えているルールを一行一文で紙に書き出し、行番号を振ってください。そのうえで、その紙だけを根拠に、3回遊んでみてください。1回目は自分で、2回目は別の人と、3回目はわざと壊す遊び方です。穴カードが集まったら、行ごとに束ねて、最も枚数の多い行から直します。

直したルール文は、そのまま作品の遊び方の説明の土台になります。アソバースへの投稿画面では、遊び方の欄を任意の作者申告として書けるので、穴を塞いだルール文を整えておくと、画面にしてから説明を書き起こす手間が減ります。