画面のゲームを紙に戻す:潮だまりをカードにする
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

「潮だまり」を開くと、引き潮の浅瀬に海藻を3つ、砂地に小石を2つ置けます。潮を切り替えて観察すると、上下左右の隣り合い方に応じて、イソギンチャクからタツノオトシゴまで8種の生きものが現れます。置く、切り替える、見る、図鑑とノートに残す。この流れを、紙とペンとカードだけで再現できるでしょうか。 この記事の問いは「できるか」ではなく「画面が黙ってやっていた仕事を、紙では誰が、どの道具で引き受けるか」です。デジタルの作品では、条件の判定も、潮の切り替えも、記録の整理も、プログラムが引き受けています。紙にした途端、その仕事は遊ぶ人の手に戻ってきます。何が重くなり、何が楽しくなり、何が成り立たなくなるかを見るのが、この実験の目的です。 ここに書くのは実験の設計書です。結果は書いていません。手順を踏んで、自分の紙とペンで確かめてください。作品を作る人にとっては、自作を「紙にできる形」まで分解する練習にもなります。
画面が引き受けている仕事を書き出す
紙に写す前に、作品の仕事を分けて書き出します。潮だまりの場合、少なくとも次の4つに分けられます。
- 配置:海藻を3つ、小石を2つ、決まった場所に置く。
- 判定:置いた結果、上下左右の隣接条件に合う生きものを探す。
- 状態の切り替え:潮を切り替えて、見える景色を変える。
- 記録:絵付きの図鑑と観察ノートに、見つけたものを残す。
紙にすると、配置は駒を置く動作に、記録はノートに書く動作に、そのまま置き換えられます。難しいのは判定と切り替えです。画面では置いた瞬間に結果が出ますが、紙では誰かが条件を読み、盤面と照らし合わせなければなりません。この「照らし合わせ」の設計が、紙版の面白さと面倒くささの大半を決めます。
作品を開いて確かめること
次の項目は、この記事では書けません。確認済みの範囲を超えるからです。作品を開いて、自分の目で数えて書き留めてください。
- 盤面は縦横何マスか。浅瀬と砂地はどう分かれているか。
- 8種の生きものの名前と、それぞれの出現条件。
- 潮を切り替えたとき、画面の何が変わるか。
- 図鑑は、見つけた生きものをどう見せているか。
特に2は、あとで8枚のカードの文面になるので、見落としのないように書き写します。なお、潮だまりの観察ノートや記録は、画面を開いている間だけ残る仕組みです。閉じると消えるので、書き留めるのは作品を開いている間に済ませてください。
準備するもの
高価なものは要りません。
- 方眼紙(またはマス目を手書きした紙)。盤面のマス数に合わせます。
- 名刺大のカード用紙(なければ紙を切ったもの)。生きものカード8枚と、潮の状態を示すカード1枚(表裏)の合計9枚が最小です。
- 駒。海藻用に3つ、小石用に2つ。色違いのコインやペンのキャップで代用できます。
- 記録用紙。配置の写し、所要時間、気づきの3項目を書く欄を作ります。
- タイマー。スマートフォンので足ります。
潮の状態を示すカードは、片面を引き潮、もう片面を切り替えた後の状態とします。作品で潮を切り替えたときに見えるものを、そのまま表裏に書き写します。切り替えで条件がどう変わるのかは、作品を開いて確認した内容に従ってください。
手順:盤面とカードを作る
盤面を写す
作品の盤面を、方眼紙に写します。マス数と、浅瀬・砂地の区域の分かれ方を一致させます。区域は色鉛筆で塗り分けると、あとの照合が楽になります。
条件をカードに写す
生きものカード1枚に、1種を書きます。書式は次の3行に統一すると、照合の間違いが減ります。
- 名前
- 自分がいる区域(浅瀬か砂地か。作品で確認した内容)
- 隣に必要なもの(上・下・左・右のそれぞれに何があるか)
隣接は上下左右です。斜めは含まれるのか、含まれないのかを、作品で確かめて一行書き添えます。カードに「斜めは数えません」と明記しておくと、遊びながら迷いません。
1ラウンドの流れ
- 引き潮の状態のカードを出します。
- 海藻を3つ、小石を2つ、盤に置きます。置ける区域は、作品で確認した内容に従います。
- 潮のカードを裏返します。
- 8枚の生きものカードを順に照らし、条件が合ったものを盤の横に並べます。
- 並んだ生きものを記録用紙に書き、配置を方眼の写しとして残します。
照合の役を3通りに分ける
この実験の中心は、手順4の「誰が、どう照合するか」です。次の3案を比べます。
- A:全部読む、照合のやり方:自分で8枚の条件を順に読み、盤面と照らす、想像される長所:準備が少ない、想像される短所:見落としが出やすく、作業になりやすい
- B:伏せて答え合わせ、照合のやり方:条件の面を伏せ、配置後に1枚ずつめくって確かめる、想像される長所:予想する楽しみが生まれる、想像される短所:めくる順番に迷い、間違いに気づきにくい
- C:ふたり役割分担、照合のやり方:ひとりが配置、もうひとりが判定係になる、想像される長所:判定が速く、会話が生まれる、想像される短所:判定係が飽きる可能性、ひとりでは試せない
長所と短所の欄は「そうなるかもしれない」という見立てであり、結果ではありません。自分で3案を試して、どこが本当に違うかを確かめてください。A・Bはひとりで、Cはふたり必要です。ひとりしかいない場合は、AとBの2案だけで実験しても構いません。
記録の取り方
記録は、1回の配置を1単位とします。各案で3回、配置を変えて試します。同じ配置を何度もやると慣れが混ざるので、配置は毎回変えます。
記録する項目
- 配置の写し:方眼に海藻を○、小石を△で書きます。
- 所要時間:駒を置き終えてから、現れる生きものを全部並べ終えるまで。
- 見落とし数:後述の画面版との照合で、紙で出なかった種類の数。
- 気づきのメモ:一言で構いません。「迷った」「あ、となった」などを、起きた順に書きます。
- やめたくなった時点:何ラウンド目で飽きたか、手が止まったか。
画面版との照合
紙の配置を、作品の画面で同じように再現します。画面に現れた生きものと、紙で並べたものを比べ、一致したか、ずれたかを記録します。ここで画面を正解として扱うのは、紙のカードが画面の写しだからです。
照合の途中で作品を閉じるとノートは消えます。画面側の結果は、見たその場で紙に書き留めてください。
結果の読み方
数字が出たら、次の観点で読みます。
紙と画面で現れる種類が違った
最初に疑うのはカードの転記ミスです。条件の一行を画面と見比べて、読み間違いや写し間違いを探します。それでも合わないときは、自分の理解が画面とずれている可能性があります。斜めを数えるかどうかなど、書き添えた一行が正しいか確認してください。どの場合でも、画面が正解です。
見落としが案によって偏った
案Aで見落としが多ければ、カードの書式に問題があるかもしれません。条件が長い文章になっていると、読み落としが増えます。「上:海藻」のような短い記号形式に書き直して、もう一度測ります。
所要時間と「やめたくなった時点」の関係
時間が長くても、最後まで手が止まらないなら、その手間は遊びの一部になっています。時間が短いのに早く飽きるなら、判定が機械的になりすぎている可能性があります。両者を並べて、「待たされている」のか「考えている」のかを分けて判断します。
紙で足したくなったもの
紙で遊んでいて「こうしたい」と思ったことは、貴重な材料です。たとえば、置いた駒を動かして試したい、残りの生きものを予想して置きたい、といった欲求が出るかもしれません。画面にはない遊びの芽として、メモに残してください。ただし、それは画面版に足すべきだという意味ではありません。
誤りやすい点
- 記憶で条件を写す:必ず作品を開いたまま、一枚ずつ書き写します。
- 置ける区域の制約を忘れる:作品では、海藻は浅瀬、小石は砂地に置きます。紙でも同じ制約を盤に書いておきます。
- 斜めの隣を混ぜる:確認済みなのは上下左右の隣接条件です。
- 一度に8種全部を出そうとする:1回の配置で全部は出ないかもしれません。ノートのように、複数回の配置を重ねて埋めると考えるほうが自然です。
- 記録を画面に残す:画面の観察ノートは、開いている間だけ残る仕組みです。
- 絵をそのまま写して配る:紙版を他人に配ったり公開したりする場合、作品の絵をそのまま使えるかは公式の案内で確認してください。迷うなら、カードの絵は自分で描くのが確実です。
次の行動
まず潮だまりを開き、盤面と8種の出現条件を方眼紙とカードに書き写してください。次に、照合の案を2つ選んで、3回ずつ配置を変えて試します。記録がそろったら、紙と画面のずれが生じた場所を探してください。自作ゲームを作っているなら、同じ分解を自作に当てはめます。紙にできなかった部分が、その作品が画面に頼っている部分です。

