「相手に角を取らせてから取り返す」は本当に成立するか
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盤の左上の角の隣、2番目のマスに自分の石を置く場面を考えてみます。相手はそれを挟んで角を取れる形です。「角を取らせても、あとで辺ごと取り返せるから大丈夫」という言い回しを信じてよいのか、というのがこの記事の問いです。 答えを先に分けておきます。角そのものは取り返せません。取り返せる可能性があるのは、相手が角を取ったあとに辺に残る別の白石です。それが実際に成立するかどうかは、辺の一列を数えれば判定できます。この記事では、成立する形を1つ、失敗する形を2つ、石を1個ずつ追って確かめます。
この記事の目次
角は取り返せない、では何を取り返すのか
オセロの石は、自分の石と相手の石のあいだに挟まれたときだけ返ります。盤の端にある石は、少なくとも片側が盤の外なので、その方向では挟めません。
辺にある石は、縦や斜めの線で見ると片側が盤の外です。つまり、辺の石が返るのは辺に沿った方向だけです。角の石は縦も横も斜めも片側が盤の外なので、一度置かれたら二度と返りません。
そこで、言い換えが必要です。辺の左端(角)から続けて並んだ同じ色の石は、辺方向でも挟めません。角を取った相手の石が角から連続しているかぎり、その部分は取り返せません。
取り返せるのは、角から連続していない白石だけです。さらに、その石を挟んで返した黒石が、あとで逆から挟み返されないことも必要です。この記事ではこの回収を「成立」と呼びます。
辺の一列を読むための約束
辺の一列だけを抜き出し、左端から順に1番、2番、…、8番と呼びます。1番と8番が角です。表記は次のとおりです。
- ○は黒(読者)、●は白(相手)、・は空きマスです。
- 黒の番から始めます。
- 辺の石は辺方向でしか返らないので、「返る」はこの一列の左右の挟みだけで判定します。
- 辺の外の方向で返る石は、ここでは数えません。2番などに置く手は、辺の外の方向で合法だったと仮定します。
この仮定が最後に重要になります。辺の一列だけで決まるのは、返る石の数までです。その手を指せるかどうかは、盤全体で確かめる必要があります。
問題1:成立する形を読む
最初の配置です。1番は空き、2番は空き、3番は白、4番は空き、5番は白、6番は黒、7番は黒、8番は黒です。表記すると ・・●・●○○○ です。黒の番で、2番に打てるものとします。
問いは次のとおりです。黒が2番に打ち、白が1番の角を取ったあと、黒は辺で何ができるでしょうか。一緒に追ってみます。
- 黒が2番に打ちます。右へ進むと3番は白、その先の4番は空きなので挟みは成立せず、辺では石は返りません。並びは ・○●・●○○○ です。
- 白が1番に打ちます。右へ進むと2番が黒で、その先の3番が白なので、2番が返ります。並びは ●●●・●○○○ です。
- 黒が4番に打ちます。左は3番、2番、1番と白が続き、その先は盤外なので返りません。右は5番が白で、その先の6番が黒なので、5番が返ります。並びは ●●●○○○○○ です。
結果は黒5、白3で、辺が埋まります。角から連続した白3つは返せませんが、離れていた5番の白は取り返せました。このとき4番に打てたことに加え、8番が黒の角であることが効いています。右端が黒で埋まっているので、黒の塊は右側から挟まれません。これが成立する形です。
次に、同じ配置で2番を打たずに最初から4番に打つとどうなるかを比べてみます。左は3番が白で、その先の2番が空きなので返りません。右は5番が白で、その先の6番が黒なので、5番が返ります。並びは ・・●○○○○○ で、黒5、白1です。
白は辺の方向では打てる手がありません。仮に白が2番に打つと、黒が1番に打てます。右へ進むと2番、3番が白で、その先の4番が黒なので、2番と3番が返ります。並びは全部黒になります。
同じ配置の辺だけを見れば、角を取らせない4番のほうが明らかに良い手です。つまり「成立する」ことと「その手が最善」であることは別の話です。2番に打つ手に意味が出るのは、辺の外の方向で2番に打つ価値が大きい場合などです。そこは盤全体で判断します。
問題2:角から連続した石は返らない
次の配置は、1番が空き、2番が空き、3番が白、4番が空き、5番が黒、6番から8番までが空きです。表記は ・・●・○・・・ です。黒の番です。
黒が2番に打ちます。右へ進むと3番は白、その先の4番は空きなので、辺では石は返りません。白が1番に打つと、2番が黒で3番が白なので、2番が返ります。並びは ●●●・○・・・ です。
ここで黒が辺で打てる手を探してみます。
- 4番に打つ場合、左は白が3つ続いてその先が盤外なので挟めません。右の5番は自分の石なので、これも返りません。
- 6番に打つ場合、左は5番が自分の石なので返りません。7番、8番に打つ場合も、左の並びに白がなく、挟みは成立しません。
辺で黒が返せる石はありません。取り返すべき白石が、角から連続した3つしかないからです。「挟める白石が辺に残っているか」が、成立の第一条件です。
問題3:挟んだ塊を逆から挟まれる
最後の配置は、1番が空き、2番が空き、3番が白、4番が空き、5番が白、6番が黒、7番が空き、8番が空きです。表記は ・・●・●○・・ です。問題1と違うのは、7番と8番が空きなことだけです。
問題1と同じ順で進めてみます。黒が2番に打ち、白が1番を取ると、並びは ●●●・●○・・ になります。黒が4番に打つと、右の5番が白で、その先の6番が黒なので、5番が返ります。並びは ●●●○○○・・ です。
ここで白が7番に打てるとします。左へ進むと6番、5番、4番が黒で、その先の3番が白なので、黒3つがまとめて返ります。並びは ●●●●●●●・ です。黒が8番に打っても、左は白が1番まで続いてその先が盤外なので、何も返りません。
取り返したつもりが、塊ごと奪い返される形です。失敗の原因は、角を捨てたこと自体ではありません。7番が空いていて白が打てたことです。2番を打たずに最初から4番に打っても、同じ形で7番を打たれます。
成立と失敗を分ける条件
3つの配置を並べると、分かれ目は次の表のようになります。
- 角の取得後、離れた白石は残るか、問題1(成立):5番に残る、問題2(失敗):残らない、問題3(失敗):5番に残る
- 挟んだ黒の塊の反対端は安定か、問題1(成立):8番が黒の角、問題2(失敗):挟む場面がない、問題3(失敗):7番、8番が空き
- 辺方向の結果、問題1(成立):黒5、白3、問題2(失敗):黒1、白3、問題3(失敗):黒0、白7
実戦で使える判断基準は、次の4つです。
- 相手が角を取ったあと、角から連続していない白石が辺に残っているかを確かめます。
- その白石を挟める空きマスに、自分が打てるかを確かめます。
- 挟んだあとの黒の塊の反対側が、黒の角か黒石で埋まっているかを確かめます。空きがあれば、そこに白が打てるかどうかを調べます。
- 相手が角を取らずに、4番などの空きに先に打つ手がないかを確かめます。
4つ目は、問題1の配置で白が先に4番に打てる場合を考えると分かります。白が4番に打つと、並びは ・○●●●○○○ です。このとき辺方向で、黒が1番に打つことはできません。白が1番に打つと、2番が返って ●●●●●○○○ になります。白5、黒3です。2番を捨てた黒が、かえって損をします。白が4番に打てるかどうかは、辺の外の条件で決まります。
実戦で確かめる手順
読者が自分で確かめる手順を示します。「潮目のオセロ」のひとり対局では、返る石のプレビュー、理由付きのヒント、一手戻すが使えます。ヒントと一手戻すは、ひとり対局のみの機能です。
- 辺の2番か7番に自分が打てる局面を探します。その辺の反対側の端や、辺の中ほどの白石の位置を確認します。
- 打つ前に、辺方向で返る石がないことを確認します。次に、相手が角を取った場合を頭の中で追い、問題1の手順で石を数えます。
- 実際に打ち、相手が角を取ったら、自分の辺方向の合法手のプレビューで、辺の白石が返るかを見ます。
- 一手戻すで打つ前に戻り、角の隣を打たずに別の手を打った分岐と比べます。
- 記録は、1局ごとに「辺の黒石数と白石数を、2番に打ってから3手後に数えたもの」を、取らせた分岐と取らせない分岐で並べて書きます。10局ほど集めてから読みます。
読み方は次のとおりです。取らせた分岐で石数が上回るのが、反対端が安定していた局面に偏っていれば、記事の判断基準と合います。逆に、反対端が空いていた局面でも上回るなら、辺の外の石の影響を疑います。
起こりやすい誤りは3つあります。
- プレビューで返る石の数だけを見て、そのあと相手に挟み返されることを見落とします。
- 辺の石数だけを数えて、盤全体の石数や手番の損得を忘れます。
- 相手のCPUが毎回角を取るとは限らないことを忘れ、相手が角を取らない分岐を調べずに終えます。
次の行動
次に角の隣を打ちたくなったら、その前に辺の一列を1番から8番まで言葉に直して書き出してみてください。成立の判断基準の4項目に答えが出せなければ、その手は打たないほうが安全です。「潮目のオセロ」のひとり対局で、一手戻すを使って同じ局面から2つの分岐を並べ、辺の石数を比べてみてください。


