友達に遊ばせたのに感想が出てこない:聞き方を3通りに分けて比べる実験設計
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

作ったゲームを友達に遊んでもらい、終わったところで「どうだった?」と聞く場面を考えてみます。返ってきたのは「面白かったよ」「いい感じだと思う」の一言で、そこで会話が止まります。続けて「どのへんが?」と聞いても「うーん、全体的に?」となり、次に直すべき場所が分からないまま終わります。 この状況の原因は、友達の側にあるとは限りません。「どうだった?」は、遊んだ数分間の記憶を一つの評価語にまとめることを求める質問です。答える側にとっては、まとめる作業そのものが重く、相手は作者本人です。角が立たない一言を選ぶのは自然なことです。 そこでこの記事では、聞き方を変えれば出てくる情報が変わるのかを、自分で確かめる実験として設計します。結果はここには書きません。準備するもの、当日の手順、記録の取り方、結果の読み方、そして起こりやすい誤りを順に示します。
「面白かった」で終わる会話の中身を分解する
実験の前に、感想が出てこない会話で何が欠けているのかを整理します。欠けているものは、次の三つに分けられます。
- 場所:ゲームのどの時点、どの画面での話なのかが分かりません。
- 行動:プレイヤーが何をしようとして、何が起きたのかが分かりません。
- 理由:なぜそう感じたのかが分かりません。
「面白かった」には三つとも含まれていません。作者が次の修正に使えるのは、「最初の画面で何を押せばいいか迷って、10秒ほど止まった」のような、場所と行動を含む発言です。
つまり、聞き方に求められるのは、相手に評価をさせることではなく、場所と行動を思い出してもらうことです。この仮説を、次の節で実験の形にします。
問いと条件:聞き方を3通りに分ける
実験の問い
「どうだった?」と聞く場合に比べて、場面を思い出させる聞き方や、プレイ中の様子を見たうえで聞く方法は、場所・行動・理由を含む発言を増やすのでしょうか。
比べる3条件
- A:総合質問、聞き方の内容:遊び終わりに「どうだった?」「感想を教えて」とだけ聞きます。、狙い:基準になる聞き方です。
- B:場面質問、聞き方の内容:あらかじめ決めた具体的な質問を、決めた順に聞きます。、狙い:場所と行動を思い出してもらいます。
- C:観察+事実質問、聞き方の内容:遊んでいる間は黙って見て、手が止まった箇所や表情が動いた箇所をメモします。終わってから、そこを指して事実として聞きます。、狙い:本人が覚えていない瞬間も拾います。
条件Bの質問は、次の5問に固定します。順番も変えません。
- 遊び始めて最初に何をしましたか。
- 手が止まったり迷ったりしたのは、どのあたりでしたか。
- 途中でやめたくなった瞬間はありましたか。あったなら、その直前に何が起きていましたか。
- 思った通りに動かなかったことはありましたか。
- このゲームを誰かに説明するとしたら、どんなゲームだと言いますか。
条件Cの質問は、観察メモの内容によって変わります。型は「さっき、◯◯のところで少し止まっていましたが、そのとき何を考えていましたか」のように、見えた事実に対して「何を考えていたか」だけを聞く形にします。「分かりにくくなかった?」のように答えを方向づける言い方は使いません。
一人に一条件だけを割り当てる
同じ友達に条件AのあとでBを聞くと、Aで話した内容が記憶に残り、Bの答えに影響します。逆の順番でも同じです。そのため、一人につき一条件だけを割り当てます。
人数が少なければ、条件ごとに最低3人を目安にします。9人を集められない場合は、条件AとBの2条件に絞って各3人で行うほうが、比較の意味が保てます。
準備と当日の手順
準備するもの
- 遊んでもらうゲームを一つに固定します。条件ごとに別のゲームや別の版を使うと、聞き方以外の要素が混ざります。
- 遊ぶ環境を揃えます。端末の種類、画面の大きさ、音の有無をなるべく同じにします。
- 時間を測るもの。スマートフォンのタイマーで足ります。
- 記録用のメモ。紙でもテキストファイルでも構いません。
- 録音する場合は、相手の同意を事前に得ます。録音がだめでも、メモだけで実験は成り立ちます。
当日の流れ(1人あたり10〜15分)
- 友達に、目的を短く伝えます。「ゲームを良くするために、遊んでいる様子と話を記録させてください」と、記録の範囲を含めて説明します。「感想をください」と頼むだけでは、結果としてAの聞き方に近づいてしまうため、避けます。
- 遊び方の説明は最小限にします。ゲーム内で伝わるかどうかも見たい点なので、操作の説明を足しすぎないようにします。
- 友達が遊んでいる間は、助言も補足もしません。止まっても、聞かれない限りは黙って見ます。ここで口を挟むと、観察の価値がなくなります。
- 区切りのいいところ、または決めた時間(たとえば5分)で終了します。
- 割り当てた条件の聞き方で質問します。条件Aは、聞く内容を一問だけにして、返事のあとに「他には?」を最大1回だけ足します。深掘りの質問は足さないことが、比較の条件を保つコツです。
- 質問が終わったら、タイマーを止めます。
記録の取り方
結果の読み方は、記録の粒度で決まります。「いい感想が出たか」という感触で判断すると、あとから都合よく解釈してしまいます。そこで、発言を次の単位に分けて数えます。
- 評価語だけの発言、数え方:「面白い」「良かった」「微妙」など、場所や理由を伴わない発言を1つずつ数えます。
- 場所を含む発言、数え方:ゲームのどの画面・どの場面かが特定できる発言を1つずつ数えます。
- 行動を含む発言、数え方:「何をしようとして、何が起きたか」が分かる発言を1つずつ数えます。
- 理由を含む発言、数え方:「なぜそう感じたか」の説明がある発言を1つずつ数えます。
- 所要時間、数え方:質問を始めてから終えるまでの時間を、秒単位で記録します。
一つの発言が複数の項目に当てはまる場合は、それぞれに数えます。たとえば「二面の最初で、どこを押せばいいか分からなくて止まった」は、場所・行動・理由のすべてに当たります。
数える作業は、録音や記録を見返しながら、すべての友達について後でまとめて行います。話を聞いている最中に数えると、聞くことに集中できなくなります。さらに、自分の期待に合う発言を多く数えてしまう偏りも出やすくなります。可能であれば、第三者に分類の一部を確認してもらうと、数え方のぶれが分かります。
条件Cでは、観察メモも別に残します。「止まった箇所」と「止まった秒数」を書き、友達の発言と突き合わせます。観察では止まっていたのに本人が言及しなかった箇所は、聞き方では拾えなかった情報として特に重要です。
結果の読み方と、起こりやすい誤り
結果の読み方
数字が揃ったら、条件ごとに平均や合計を並べます。人数が少ないため、統計的な有意差を言う段階ではなく、傾向を見る段階です。次のように判断します。
- BやCの「場所」「行動」の数がAより明らかに多い場合:次の試遊から、その聞き方を標準にします。
- AとBでほとんど差がない場合:質問の文面、あるいは友達との関係性が原因かもしれません。質問を言い換えて再度試すか、友達の人選を変えます。
- Cだけ「場所」の数が多い場合:本人が覚えていない瞬間を、観察で補う価値があります。ゲーム内に記録の仕組みを入れる案も考えられます。
- 評価語が増えて他が増えない場合:質問が評価を求める形に寄っている可能性があります。質問文を見直します。
- 所要時間だけが長い場合:情報量が増えたのか、答えに詰まっているだけなのかを区別するため、発言数と合わせて判断します。
起こりやすい誤り
誘導質問になる:「ここ分かりにくくなかった?」と聞くと、肯定が返りやすくなります。事実を聞く形(「ここで何を考えていましたか」)に直します。
作者が弁明する:友達が止まった箇所を話した途端に、「それは本当は◯◯だったんだけど」と説明を始めると、それ以降の発言が減ります。聞いている間は、理由づけも訂正もしません。
改善案を求める:「どう直したらいい?」は、遊んだ人が答えにくい質問です。改善案を考えるのは作者の仕事なので、友達には起きたことだけを話してもらいます。
条件ごとに友達の傾向が違う:話し好きの友達がたまたまBに集まると、聞き方の効果と区別がつきません。割り当ては、くじなどで偶然に決めます。
一人の発言に引っ張られる:少人数なので、一人が多弁だと合計が大きくずれます。合計だけでなく、一人ごとの値も並べて確認します。
作品を変えてしまう:実験の途中で不具合を直したくなっても、期間中は修正を止めます。修正すると、前の人と後の人で条件が変わります。
次の行動
まず、今のゲームを遊んでもらう予定のある友達を3人以上思い浮かべて、条件AとBに振り分けます。条件Bの5問を紙に書き、当日はそれを見ながら聞いてください。
アソバースで公開した作品の場合、レビューは1〜5点と1〜2,000文字で書けますが、メール確認が必要で、自作の評価はできません。友達にレビューを頼むときは、書き方の条件を先に伝えておくと戸惑われません。細かな仕様は、実施前に現在の案内で確認してください。
実験の記録は、次の試遊で同じ表に追記していけば、聞き方を磨く材料になります。

