難易度を「自分で決めて」と委ねると、プレイヤーは選べなくなるのか:選択肢の数を変えて確かめる実験設計
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

ゲームを起動すると、最初の画面に難易度が6段階並んでいる場面を考えてみます。「とてもやさしい」から「とてもむずかしい」まであり、どれも説明文は短く、違いは言葉の程度だけです。プレイヤーは遊ぶ前に、まだ知らないゲームに対して自分の腕前を予想して決めなければなりません。ここで手が止まる人がいるなら、難易度選択は親切のつもりで、実際には最初の関門になっています。 この記事が確かめるのは、難易度の選択肢を増やすと「選ぶまでの時間」「迷いの量」「選んだ後の納得」「途中でやめる割合」がどう動くか、という問いです。結果は書きません。同じゲームで選択画面だけを差し替え、読者が自分で数字を取れる実験の設計書として手順を示します。 一般に、選択肢が多いと選びにくくなる現象は「選択過多」などの名前で語られます。ただし、状況によって出方が違うとも言われており、ゲームの難易度選択でも同じとは限りません。選択肢が増えて選びやすくなる人もいるはずです。だからこそ、自分のゲームで測る価値があります。
何を比べるか:条件は「数」だけを変える
最初に決めるのは比較する条件です。ここで多くの人が混ぜてしまうのが、選択肢の数と選択肢の中身です。2択を6択にするとき、「超難関」を足して範囲まで広げると、数の影響なのか範囲の影響なのか分からなくなります。
数だけを変えるには、最も易しい端と最も難しい端を固定し、その間を細かく割ります。
- A:2択、選択肢:やさしい/むずかしい、狙い:判断が最も軽い基準
- B:3択、選択肢:やさしい/ふつう/むずかしい、狙い:多くの作品で見かける形
- C:6択、選択肢:両端は同じで間を細分化、狙い:数が増えた影響を見る
- D:選ばせない、選択肢:選択画面なしで始め、あとから変更可、狙い:「委ねない」場合の基準
条件Dは見落とされがちですが、重要な比較対象です。「選ばせること自体が負担か」は、選ばせない版がないと判断できません。Dでは、ゲーム中か終了後に「難しさを変えますか」と一度だけ尋ねる形にすると、選ぶ場面を後ろへ移して比べられます。
アソバースの公式作品を見ると、選択肢の形はそれぞれ違います。潮目のオセロや灯りのチェスは相手が3段階、かたちのあいだは3×3の入門と4×4の2段階、時計じかけの台所は時間制限なしの見習いと制限ありの本番という2つの構成です。こうした数と構成の違いが各作品のどんな遊びに合っているのかは、設計から読み取れる範囲にとどまります。実際の選ばれ方は、作品を開いて自分で確かめてください。
準備するもの:同じゲームと、選択画面だけ違う版
必要なのは次の3つです。
- 1回が1〜2分で終わる短いゲーム。長いと、離脱の理由が難易度なのか長さなのか分からなくなります。
- 難易度ごとの違いが、遊べばはっきり分かる設計。違いが小さいと、どれを選んでも同じになり、迷う意味がなくなります。
- 選択画面の計測コード。下に最小構成を示します。
次のコードは、起動時に2択・3択・6択のどれかをランダムに割り当て、選択画面の行動を画面に表示します。サーバーも外部ライブラリも使いません。
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<title>難易度選択の記録</title>
<h1>難易度を選んでください</h1>
<div id="opts"></div>
<button id="go" disabled>これで始める</button>
<pre id="log"></pre>
<script>
const SETS = {
2: ["やさしい", "むずかしい"],
3: ["やさしい", "ふつう", "むずかしい"],
6: ["とてもやさしい", "やさしい", "やややさしい",
"ややむずかしい", "むずかしい", "とてもむずかしい"]
};
const FORCE = null; // 2, 3, 6 を入れると条件を固定
const keys = Object.keys(SETS);
const cond = FORCE || keys[Math.floor(Math.random() * keys.length)];
const t0 = performance.now();
let hover = 0, changes = 0, chosen = null;
const opts = document.getElementById("opts");
const go = document.getElementById("go");
SETS[cond].forEach((label) => {
const b = document.createElement("button");
b.textContent = label;
b.onmouseenter = b.onfocus = () => hover++;
b.onclick = () => {
if (chosen !== null && chosen !== label) changes++;
chosen = label;
go.disabled = false;
};
opts.append(b);
});
go.onclick = () => {
const ms = Math.round(performance.now() - t0);
document.getElementById("log").textContent = [
"条件(選択肢数)=" + cond, "選択=" + chosen,
"決定までms=" + ms, "ホバー/フォーカス回数=" + hover,
"選び直し回数=" + changes
].join("\n");
};
</script>最初から選ばれている項目(デフォルト)を置かないのは意図的です。あらかじめ「ふつう」が選ばれていると、そのまま進む人が増え、迷いが見えなくなります。デフォルトの効果自体を調べたい場合は、別の実験として切り分けてください。
このコードは選択画面までを計測します。実際のゲーム本体に組み込むときは、「これで始める」のあとにゲームを開始する処理を足します。表示された5行は、テスターに画面ごと写してもらうか、文字をコピーして送ってもらいます。アソバースにHTMLとして投稿した作品では、localStorageは一時メモリー向けの互換処理にとどまるため、記録の保管を頼るのは避けたほうが安全です。画面に出して、人の手で持ち帰る運用が確実です。
手順と記録の取り方
進め方は次のとおりです。
- 条件を割り当てます。同じ人に複数の条件をやらせると、2回目以降は「前回の選択画面」を知っているため、迷いが変わります。基本は1人1条件にします。
- テスターには「難易度はご自身で選んでください」とだけ伝えます。「迷ったら教えてください」のような誘導は入れません。
- 選択画面の記録を取ります(上のコードの5行です)。
- プレイ後に、短い質問を2つ尋ねます。「選んだ難易度は合っていましたか(1〜5)」「もう一度遊びたいですか(はい/いいえ)」。
- 途中でやめた場合は、やめた時点を記録します。選択画面で離れたのか、ゲーム中に離れたのかを分けて書きます。
記録する項目は次の表にまとめます。
- 条件、単位:2/3/6/選ばせない、取り方:コードの出力
- 決定までの時間、単位:ミリ秒、取り方:コードの出力
- 項目間の視線移動の代わり、単位:ホバー/フォーカス回数、取り方:コードの出力
- 選び直し、単位:回数、取り方:コードの出力
- 納得度、単位:1〜5、取り方:プレイ後に質問
- 再挑戦の意向、単位:はい/いいえ、取り方:プレイ後に質問
- 離脱位置、単位:選択画面/ゲーム中/最後まで、取り方:観察または申告
人数は多いほど安心ですが、個人で集められる数には限りがあります。各条件で10人前後から始めるくらいが現実的な出発点です。ただし、その人数では偶然のばらつきが大きく、数字の差は「傾向の手がかり」にとどまります。確定的な結論ではなく、次に直す場所を決める材料として扱ってください。
テスターへの依頼にURLの共有が使えます。アソバースの投稿では、下書き保存や公開内容の更新、非公開化ができるので、条件を変えた版を更新しながら確かめる流れが取れます。公開にはメールアドレスの確認が必要です。
結果の読み方:数字の組み合わせで判断する
1つの指標だけで結論を出さないことが肝心です。選ぶ時間が長いこと自体は、慎重に比べている証拠かもしれず、悪いとは限りません。
- 条件が増えると時間が伸びるが、納得度は同じ、読み方:選ぶ手間は増えたが、結果には響いていない、次の一手:そのまま残してよい
- 時間も選び直しも増え、納得度が下がる、読み方:細かい違いが判断材料にならず、迷いが負担に、次の一手:選択肢を減らす、または説明を足す
- 6択で離脱が選択画面に集中する、読み方:選択画面が関門になっている、次の一手:3択以下に絞るか、後から変更可能にする
- 選ばせない版(D)で納得度や再挑戦が同程度かそれ以上、読み方:事前に選ばせる価値が薄い可能性、次の一手:自動調整や途中変更に寄せる
- 2択では「ふつう」を求める声が出る、読み方:中間の選択肢が必要な設計、次の一手:3択を検討
- 全条件で差が見えない、読み方:選択肢の数より他の要素が効いている、次の一手:ラベルや難易度の中身を見直す
特に注目したいのは、時間が伸びたかではなく、迷いが納得度に結びついたかです。時間と選び直しが増えても、プレイ後の納得度が下がらないなら、少なくとも「選べなくなった」とは言いにくいでしょう。逆に、時間はほとんど変わらないのに、納得度が下がる場合は別の原因を疑ってください。例えば、ラベルの言葉と実際の難しさがずれていることが考えられます。
起こりやすい誤り
- ラベルと実際の難しさのずれ。 「ふつう」が実際には難しいと、選択画面の迷いよりも、選んだ後の不満が大きくなります。選択画面の問題と、難易度の作り込みの問題は分けて読んでください。
- 身内だけで試す。 ゲームを知っている人は、迷わず選べてしまいます。初見の人を中心に集めてください。
- 同じ人に何度も試させる。 2回目は選択画面を覚えているため、時間が短くなります。比較には1人1条件が基本です。
- ボタンの位置や色の影響。 6択で端の項目が目立つ色だと、数の影響と区別がつかなくなります。見た目は揃えてください。
- プレイ回数を人数と読む。 アソバースのプレイ回数は作品を起動した実測回数で、人数ではありません。同じ端末と作品の30分以内の再起動は重複として除かれますが、1人の再挑戦や自分の動作確認も数えられます。テスター数は、自分で数えた人数で管理してください。
- 条件の偏り。 コードのランダム割り当てでは、条件ごとの人数が偏ることがあります。偏りが大きければ、FORCE に数値を入れて条件別のURLを用意する方法に切り替えてください。
- 結果を一度で確定させる。 数字が出ても、1回の小さな実験です。選択肢を変えた版をもう一度配って、同じ傾向が出るか確かめると安心です。
次の行動
まず、いま作っているゲームの難易度が何択かを数え、2択・3択・6択の3種類を、中身の範囲を揃えて書き出してください。上のコードを自分のゲームの冒頭に差し込み、各条件で初見の人に遊んでもらいます。記録を表にして、迷いと納得度が連動しているかを確かめてください。

