説明文は長くすると、遊び始めるまでの時間と離脱はどう変わるか:3段階の長さで比べる実験設計
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

ゲームの冒頭に、操作方法、目的、得点の仕組み、例外ルールまで書いた説明文を置く場面を考えてみます。親切に書いたつもりでも、プレイヤーは「はじめる」ボタンを探して素通りするかもしれません。逆に、短くしすぎて最初の数十秒で迷う可能性もあります。説明文の分量は、遊び始めるまでの時間をどう動かすのでしょうか。 「長いほど読まれなくなる」は直感的にはもっともらしい説ですが、この記事は結果を断定しません。説明が長いと始まりが遅れるのか、離脱が増えるのか、あるいは始まりは変わらず始めてからの迷いだけが減るのか。そこは自分のゲームと自分の観てもらう相手で変わりうるため、自分で測って判断できる形にします。 扱うのは、同じゲームに短・中・長の3種類の説明文を付け、「説明が見えてから最初の操作までの時間」と「始める前に閉じた人の割合」を比べる小さな実験です。必要なのは、手元で開けるHTMLと、数人の協力者と、ストップウォッチ代わりの数行のコードだけです。
問いを「分量」と「開始までの時間」に絞る
最初に、比べるものを決めます。この実験の独立変数(こちらが変えるもの)は説明文の分量だけです。従属変数(結果として測るもの)は次の3つに絞ります。
- 説明が表示されてから「はじめる」を押すまでの時間
- 「はじめる」を押してから最初のゲーム操作までの時間
- 「はじめる」を押さずに閉じた、または離れた人の有無
ここで大事なのは、1と2を分けることです。1は主に説明を読む時間を、2は読んだ内容で迷っていないかを反映しやすい値です。合計だけを見ると、「長い説明を読んで時間がかかった」のか「短い説明で何をしたらよいか分からず固まった」のかが区別できません。
もう一つ、遊んだ後の理解度も補助の指標として取ります。始まりが早くても、ルールを誤解したまま進んでいるなら、短さは良い結果とは言えません。そのため、プレイ後に3問程度の確認質問を用意します。
準備するもの:3種類の説明文と計測の骨組み
説明文は「分量」だけが違うように作る
説明文の長さの目安は、短が約40字、中が約150字、長が約400字です。厳密な数字にこだわる必要はなく、各段階の差が一目で分かれば十分です。
ここで最も崩れやすいのが、長さと内容が同時に変わってしまうことです。長い版にだけ重要なルールが入っていると、差の原因が「分量」なのか「情報の有無」なのか分からなくなります。次のように役割を分けて作ります。
- 全段階に共通で入れるもの:操作方法と目的。これがないと、そもそも遊び始められません。
- 中と長に足すもの:得点の仕組み、失敗の条件など、知っていると便利な情報。
- 長にだけ足すもの:例外ルール、小さなコツ、世界観の補足など、読まなくても進められる情報。
短い版でも遊べること、長い版は「あとから分かること」を先に書いているだけ、という構造にしておくと、結果の読み方が単純になります。
計測用のHTML
自作ゲームの冒頭に差し込める最小の計測コードです。外部ライブラリは使わず、記録は画面に出します。説明文はそれぞれ自分のものに差し替え、条件ごとに VARIANT を書き換えたファイルを3つ用意してください。
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<title>説明文の長さ計測</title>
<div id="intro"></div>
<button id="start">はじめる</button>
<div id="play" hidden>
<p>ゲーム本体に置き換えてください。</p>
<button id="act">最初の操作</button>
</div>
<pre id="log"></pre>
<script>
// short / mid / long のどれかに書き換える
const VARIANT = "short";
const TEXTS = {
short: "ここに約40字の説明文を入れます。",
mid: "ここに約150字の説明文を入れます。",
long: "ここに約400字の説明文を入れます。"
};
const t0 = performance.now();
const rec = {};
const show = () => {
document.getElementById("log").textContent =
JSON.stringify({ variant: VARIANT, ...rec }, null, 1);
};
document.getElementById("intro").textContent = TEXTS[VARIANT];
document.getElementById("start").onclick = () => {
rec.startMs = Math.round(performance.now() - t0);
document.getElementById("play").hidden = false;
show();
};
document.getElementById("act").onclick = () => {
if (rec.firstActMs) return;
rec.firstActMs = Math.round(performance.now() - t0);
show();
};
</script>startMs が「説明が見えてから『はじめる』まで」、firstActMs - startMs が「始めてから最初の操作まで」です。
この記録は保存しません。ブラウザを閉じると消えるため、各人が終わった時点で画面の数値を紙か表計算に書き写してください。計測のためだけに作品を公開する必要はなく、手元のファイルを開いてもらう形で足ります。アソバースのプレイ回数は作品を起動した実測回数で、同じ端末・作品の30分以内の再起動は重複が除かれ、人数でもありません。説明文の比較の代わりには使えない点に注意してください。
手順と記録の取り方
割り当て:一人に見せる条件は一つだけ
同じ人に短・中・長を続けて見せると、2回目以降はゲームの中身を知っているため、説明を読む必要がなくなります。一人につき1条件にします。
各条件につき最低5人、できれば8人前後を目安に集めます。人数が少ないと一人の癖で平均が動くため、後述のとおり中央値を見ます。協力者を3グループに分けるときは、順番に1・2・3・1・2・3と割り振るか、くじで決めます。ゲームに慣れている友人を自分で選んで長い版に回すような分け方は避けます。
当日の流れ
- 協力者にはゲームの内容を事前に話さず、「画面を自由に遊んでみてください」とだけ伝えます。
- 画面を渡す直前にページを開く(または再読み込みする)と、t0 が渡す時刻と近くなります。
- 観察者は声をかけず、後ろから見えない位置で待ちます。手元には、次の項目を書くメモを用意します。
- 協力者が止まったり、ゲームを離れたりしても、助言はしません。
- 遊び終わったら、確認質問に答えてもらいます。
記録票の項目
一人につき一行、次の列を書く表を用意します。
- 条件、内容:短・中・長
- startMs、内容:説明表示から「はじめる」まで(ミリ秒)
- firstActMs − startMs、内容:開始から最初の操作まで
- 離脱、内容:「はじめる」を押さずに終えたかどうか
- 迷いの様子、内容:「画面を見回した」「同じ操作を繰り返した」など観察メモ
- 確認質問の正答数、内容:3問中いくつ合っていたか
確認質問は、全条件に共通で、短い版でも答えられる内容(操作方法・目的)に絞ります。例外ルールのような長い版にしか書いていない内容は質問に含めません。含めると、長い版が有利になる比較になってしまいます。
結果の読み方:どうなればどう判断するか
数値が集まったら、条件ごとに startMs を小さい順に並べ、中央値(真ん中の値)を出します。平均は、一人だけ極端に長く読んだ場合に大きく動くため、補助に回します。ここでは統計的に有意かどうかを決めるのではなく、自分のゲームの冒頭を直すかどうかの判断材料として使います。
目安として、次のような組み合わせで読めます。
- 短→長で startMs が大きく伸び、離脱も増える:長い説明は読まれにくい可能性が高く、情報を絞る方向が有力です。ただし、確認質問の正答数を必ず見ます。
- startMs は伸びるが離脱は増えず、正答数が上がる:読む時間は増えても、読んだ分が理解に変わっている可能性があります。長さ自体より、中身の置き場所を検討します。
- startMs は大差なく、開始から最初の操作までが短い版で長い:短くしたことで、始めてから迷っている可能性があります。必要な操作説明が足りていないか、画面側で補えるかを考えます。
- 3条件とも大差が見えない:その規模の分量差では、あなたのゲームでは行動が変わらないということです。差を出したい場合は、長い版をさらに長くするか、協力者を増やします。
- 離脱が長い版にだけ出る:人数が少ないうちは一人の事情で起きることもあるため、観察メモで理由を確認します。
もう一つ、数値の外側で確認したいのが、説明を読まずに進めた人の様子です。読まずに押した場合でも、操作が迷わず始められているなら、説明が不要な設計になっているということです。逆に、読まずに押して失敗した人が多いなら、説明を増やす前に、画面の側でヒントを出せないかを考えます。
起こりやすい誤り
この種の比較は簡単に見えて、結果を歪める原因がいくつかあります。
- 内容と分量の混同:先に述べたように、長い版にだけ必須情報を入れると、分量の効果が測れません。共通部分を先に固定してから作ります。
- 協力者の偏り:同じ友人グループだけ、またはゲームに慣れた人だけだと、実際の初見プレイヤーとずれます。想定読者に近い人を選びます。
- スキップできる状態の差:条件によって「はじめる」ボタンがスクロールしないと見えない、といった画面上の差が出ると、分量ではなく配置の影響を測ってしまいます。文字サイズと余白を揃え、ボタンの位置が全条件で同じように見えるか確認します。
- 観察者の影響:近くで見られていると、普段は読まない人でも読むふりをします。距離を取り、声をかけないことが必要です。
- 時計の起点のずれ:ページを先に開いておいて、しばらくしてから協力者に渡すと、startMs が実際より大きくなります。渡す直前に再読み込みします。
- 一回で結論を出す:数人の差は、その日の気分や端末の違いでも出ます。違いが小さいときは、結論にせず、同じ手順をもう一度回します。
- ゲーム内容の記憶:同じ協力者に別の日に別条件を見せると、ゲームの内容を覚えています。再利用するなら、ゲーム側を変えるか、別の人を探します。
次の行動
まず、今作っているゲームの冒頭説明を、操作と目的だけの「短い版」に削ってみてください。そこから足す順番を決め、中と長を作ると、3段階の準備はすぐに終わります。協力者を各条件5人集め、上のコードを自作ゲームに差し込めば、「分量と開始までの時間」の関係は自分の画面で確かめられます。記録票をつけるところまで済んだら、結果の読み方の項目と照らして、どの方向に説明を直すかを決めてください。

