音色を切り替えて同じ曲を弾く:弾き方はどう変わるか
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同じメロディーなのに、音色を変えただけで「急いで弾きたくなる」「一音ずつ置くように弾きたくなる」と感じることがあります。もしそうなら、それは耳が音の響きに合わせて、指の速さや間の取り方を自動的に調整しているということです。ただ、この感覚は思い込みの可能性もあります。感覚だけで終わらせず、録音の長さで確かめるのがこの記事の目的です。 使うのは「雨音のピアノ」です。フェルトとガラスの2つの音色があり、30秒・128音まで録音してその場で再生できます。この2つの音色で同じ短い曲を弾き、弾き方が変わるかを自分の手で確かめます。結果は人によって違うはずなので、この記事に答えは載せていません。載せているのは、答えを出すための手順と読み方です。
先に決める:何を比べるのか
比べるのは「音色だけ」です。それ以外の条件を動かすと、差が出ても何のせいかわからなくなります。
今回の問いは次のとおりです。
- 同じ14音のフレーズを、フェルトとガラスで弾いたとき、所要時間は変わるか
- 音を押さえている長さや、音と音の間の感じ方は変わったと感じるか
この2つを分けて扱います。1つ目は秒数という数字で、2つ目は自分の感覚のメモです。数字だけだと「なぜ」がわからず、感覚だけだと偏りが入ります。両方を並べると、読み取りやすくなります。
固定する条件は3つです。
- タッチ(3段階のどれか)
- 余韻の切り替え
- 音域(Z/Xで切り替えます)
どれも最初に決めたら、実験が終わるまで触りません。
準備するもの
- 「雨音のピアノ」を開いたパソコン(キーボードで弾くため)
- イヤホンかヘッドホン。部屋の雑音や反響を減らせます。
- ストップウォッチ(スマホで構いません)と、紙かメモアプリ
- 比べる曲。ここでは、パブリックドメインの童謡「きらきら星」の前半を使います。「きらきら光る おそらの星よ」の14音です。
キーボードで弾けるのは、A W S E D F T G Y H U J の12個のキーです。ピアノの白鍵にあたる7音だけで弾けるので、下の対応で進めます。最初のAがドにあたるかどうかは、作品を開いて実際に鳴らして確かめてください。もし違っても、並びが同じなら同じ指使いで弾けます。高さが違うだけで、曲の形は変わりません。
- キー、ド:A、レ:S、ミ:D、ファ:F、ソ:G、ラ:H、シ:J
14音をキーで書くと、次のとおりです。
- 「きらきら光る」:A A G G H H G
- 「おそらの星よ」:F F D D S S A
手順:6つのステップ
1. 条件を決めて書き留める
作品を開き、自由演奏の状態にします。タッチは中間にし、余韻の設定と音域を確認します。紙に「タッチ:○、余韻:○、音域:○」と書いておきます。録音は画面を開いている間だけ残るので、画面を閉じる前に必ず手元へ記録します。
2. 14音を指に覚えさせる
まずフェルトの音色で、A A G G H H G / F F D D S S A を何度か弾きます。楽譜を見なくても指が迷わなくなるまで続けます。次にガラスでも同じ回数弾きます。ここでは録音しません。練習量を2つの音色で同じにしておくのが目的です。
3. 録音の順番を決める
後に弾くほど慣れて上手くなるので、順番に偏りが出ます。これを減らすため、6回の録音は次の順で行います。
- 1回目:フェルト
- 2回目:ガラス
- 3回目:ガラス
- 4回目:フェルト
- 5回目:フェルト
- 6回目:ガラス
これでどちらの音色も3回ずつになり、順番の偏りも小さくなります。
4. 1テイクずつ録音する
音色を選び、録音を始め、14音を自分の自然な速さで弾き、録音を止めます。録音時間は30秒、128音までなので、14音なら余裕で収まります。途中で押し間違えたテイクは数えずに、同じ音色でやり直します。メトロノームは使いません。速さの変化を見たいからです。
録音中に音色を切り替えられるかは、確認済みの情報にありません。音色は録音の前に選び、1テイクにつき1つの音色で録るのが安全です。
5. 再生して、所要時間を測る
録音を再生し、最初の音が鳴った瞬間にストップウォッチを押し、14音目が鳴った瞬間に止めます。小数点以下は無理に追わず、0.1秒単位で十分です。再生で現在選んでいる音色で鳴るのか、録音したときの音色で鳴るのかは、作品を開いて確かめてください。どちらでも測れますが、聴き比べるときの注意点が変わります。
6. 感覚をメモする
各テイクの直後に、次の3つを書きます。
- 速さ:「いつもより速い/同じ/遅い」のどれに感じたか
- 音の長さ:キーを押さえている時間が長くなった/短くなった/変わらない
- 間:音と音の間が気になったか
「なんとなく」でも構いません。ただし、各テイクの直後に書きます。後でまとめて思い出そうとすると、記憶が先入観に引きずられます。
記録の取り方:表にまとめる
数字は表にします。1行が1テイクで、次のようにします。
- 1、音色:フェルト、所要秒:、速さの感覚:、音の長さ:、間:
- 2、音色:ガラス、所要秒:、速さの感覚:、音の長さ:、間:
- 3、音色:ガラス、所要秒:、速さの感覚:、音の長さ:、間:
- 4、音色:フェルト、所要秒:、速さの感覚:、音の長さ:、間:
- 5、音色:フェルト、所要秒:、速さの感覚:、音の長さ:、間:
- 6、音色:ガラス、所要秒:、速さの感覚:、音の長さ:、間:
終わったら、各音色の3つの所要秒を並べて、平均と最小・最大を出します。さらに14音の間隔は13か所なので、平均の所要秒を13で割ると、音と音の平均間隔がわかります。
結果の読み方
秒数は、同じ音色の3テイクの中でも、ぶれるはずです。大事なのは、音色の違いによる差が、そのぶれより大きいかどうかです。
- 差がぶれより大きく、3テイクとも同じ方向にずれた場合:音色によって弾き方が変わっている可能性が高いです。順番を入れ替えた録音でも同じ方向なら、練習の慣れではなく音色の影響だと考えやすくなります。
- 差がぶれの範囲に収まる場合:音色では弾き方が変わらなかった、という結果です。変わらないことも立派な答えで、感覚のメモと突き合わせると意外な発見があることもあります。
- 秒数は同じなのに、感覚メモは違う場合:指の速さは同じでも、聞こえ方で「速く感じる」「間が空く」と感じているのかもしれません。弾き方そのものというより、聴き方の違いです。
- 秒数は違うのに、感覚メモに違いがない場合:無意識に速さを変えているのかもしれません。録音を聴き直すと、気づくことがあります。
注意したいのは、この実験では「音色そのもの」と「その音色の響きの長さの聞こえ方」を切り分けられないことです。どちらが原因かまでは決められません。切り分けたいときは、余韻の切り替えを変えて、同じ手順をもう一度行います。
起こりやすい誤り
- 条件を途中で動かす:タッチや余韻、音域を途中で触ると、音色の差が見えなくなります。変えたくなったら、最初からやり直します。
- 録音を後で聴けると思い込む:録音は画面を開いている間だけ残ります。秒数と感覚メモは、その場で書きます。
- 後半のテイクほど上手くなる:慣れの影響は避けられません。順番を入れ替えるのはそのためです。
- ストップウォッチの押し遅れ:測る人が自分だと、毎回少しずつずれます。ずれの大きさは同じ音色の3テイクのぶれに含まれると考え、小さな差は追いかけすぎないことです。
- イヤホンとスピーカーの切り替え:途中で変えると聞こえ方が変わります。最初から最後まで同じ出力にします。
- 1回の録音で結論を出す:1回では、その日の調子とも区別がつきません。各音色3回は最低限です。
次の行動
まず条件を紙に書いて、フェルトとガラスで6テイクを録ってみてください。終わったら、秒数の表と感覚のメモを並べて、差がぶれより大きいかを見ます。差が出たら余韻の設定を変えて、もう一度同じ手順で確かめると、原因の見当がつきます。



