作品の説明文を育てる:最初の文と今の文
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作品を公開した直後の紹介文は、作った本人の頭の中にある言葉で書かれがちです。「やさしい手触りの物理パズルです」と書いても、作者には完成した画面が浮かびますが、初めて一覧で見かけた人には何も浮かびません。最初の文は、作者にしか読めない文になりやすいのです。 そこで、紹介文を一度で完成させるものとは考えず、版を重ねて育てるものとして扱ってみます。アソバースでは公開した内容を後から更新できます。つまり、書き直しは公開後も続けられます。この記事では、最初の文と今の文のあいだに何が変わるべきかを、架空の作品を例に追います。そのうえで、何をきっかけに書き直すか、どう記録するかを、読者が自分の作品で行える手順としてまとめます。
紹介文の変遷を「版」として残す
書き直しの最初の準備は、文章を直すことではなく、直す前の文を残すことです。公開内容を更新すると、手元の記憶以外に前の文は残りません。「前の方がよかった」と思ったときに戻れるよう、メモ帳でもスプレッドシートでも構いませんので、版ごとに記録します。
記録する項目は次の五つで十分です。
- 版の番号、書くこと:版1、版2のように通し番号を付けます
- 更新した日、書くこと:日付だけで構いません
- 文面、書くこと:公開した紹介文を、そのまま貼ります
- 変えた理由、書くこと:何が分からなかったから変えたのかを一行で書きます
- 変えたきっかけ、書くこと:誰のどの反応を見て変えたのかを書きます
特に大切なのは「変えた理由」の欄です。「読みやすくした」では、次に読み返したときに何も分かりません。「何をするゲームなのかが書かれていなかった」のように、読み手が困った点として書いておくと、次の版でも同じ穴に落ちにくくなります。
仮定の作品で見る三つの版
ここからは、架空の作品「ゆれる橋」を例にします。板と縄を組んで谷に橋を架け、小さな荷車を向こう岸へ渡す物理パズルだと仮定します。実在の作品ではなく、版の変化を見るための例です。
版1:気持ちを書いた文
谷をこえる、ささやかな冒険です。やさしい気持ちで遊んでください。
作者にとっては、作品の空気をよく表した文です。ただ、読み手には「何をするのか」「どれくらい遊ぶのか」「自分に向いているのか」のどれも分かりません。この版1は、感想や気分で埋まっていて、行動が一つも書かれていません。
版2:何をするかを書いた文
板と縄をつないで谷に橋を架け、荷車を向こう岸へ渡すパズルです。橋を組んだら「出発」を押して、揺れる様子を見守ります。
動詞が入りました。何を置き、何を押し、何が起こるのかが分かります。書き直しの大半は、この段階で効果が出るはずです。ただし、まだ「遊んだあとにどうなるか」は伝わっていません。
版3:最初の10秒と、遊び終わりの感触を足した文
板と縄をつないで谷に橋を架け、荷車を向こう岸へ渡すパズルです。最初の谷は、板を3枚置くだけで渡れます。渡れなかったときは橋のどこが折れたかを見て、組み直します。ひとりで遊ぶ作品で、1回は短く終わります。
追加したのは二つです。一つは、最初に何をすればよいかが分かる具体的な入口です。もう一つは、失敗したときの流れと遊ぶ形(ひとり用、短時間)です。これは、遊ぼうか迷う人が最後に知りたい情報です。
なお、この例の「板を3枚」といった数は、架空の作品の中だけの設定です。自分の作品に書くときは、必ず実際に遊んで確かめた内容にします。
三つの版を並べると、変化の向きが見えます。気持ち、行動、入口と終わり方の順に、読み手の側へ寄っていきます。
何をきっかけに書き直すか
書き直しには、きっかけが要ります。きっかけがないまま直すと、版が増えるだけで文は良くなりません。使えるきっかけを三つ挙げます。
一言テストの結果がずれたとき
紹介文だけを読んでもらい、「どんなゲームだと思いますか」と一言で答えてもらう方法です。手順は次のとおりです。
- 作品を遊んだことのない人を選びます。1人でも構いませんが、複数人に聞けるなら、その分だけ傾向が見えます。
- 紹介文だけを見せます。画面や画像は見せません。
- 読み終えたら、ゲームの内容を一言で言ってもらい、その言葉をそのまま記録します。
- 作者が意図した内容と比べます。
結果の読み方は単純です。相手の一言が意図と重なっていれば、その文は役目を果たしています。ずれていた場合は、ずれた部分に対応する言葉が文に足りないか、別の意味に取れる言葉が入っています。たとえば「パズル」という語だけで「文字や数字を並べる作品」を想像されたなら、何を動かすのかを書き足す合図です。
起こりやすい誤りは、作品の説明を口頭で補ってしまうことです。補った時点で、紹介文だけで読んだ状態ではなくなります。相手が戸惑っても、その場では説明しないでください。
プレイ回数が思ったより動かないとき
アソバースのプレイ回数は、作品の起動を実測した回数です。同じ端末から同じ作品を30分以内に再び起動した分は重複として除かれます。人数ではありません。
この数字は、紹介文の良し悪しを直接示すものではありません。公開した時期、置かれた場所、作品の絵柄など、紹介文以外の要因が混ざるからです。使い方としては、版を更新する前後で変化を見るにとどめ、一つの数字だけで結論を出さないことをおすすめします。更新日を版ログに残しておくと、後から前後を見比べられます。
レビューの言葉に、紹介文と違う内容が出てきたとき
遊んだ人がレビューに書く言葉は、紹介文に足りなかった情報のヒントになります。「思ったより短く終わった」「最初の操作が分かりにくかった」といった感想があれば、短時間で遊べることや最初の操作を紹介文に書いておく価値があります。反対に、紹介文が約束していないことへの不満が出てきた場合は、紹介文が期待をふくらませすぎていないかを点検します。
ただし、レビューは1件ごとに事情が違います。1件の意見を全体の傾向のように扱わず、複数の言葉に共通する点を拾うようにします。
下書き機能を「比べる相手」として使う
投稿画面には「紹介文と遊び方を作成」という機能があります。公開済みのURL、または本人が検証済みのアップロードを読み取り、選択した言語で紹介文と遊び方の下書きを作ります。「この文章を使う」を押したときだけ内容が反映され、生成の操作だけで公開されることはありません。回数は利用者ごとに1時間3回までです。
この機能は、自分の文をそのまま置き換える道具としてより、比べる相手として使うと効果が出ます。
- 自分の版3と、生成された下書きを並べて読みます。
- 下書きにあって自分の文にない情報(操作の入口、遊び終わりの流れなど)があれば、足す候補になります。
- 逆に、自分の文にあって下書きにない情報は、作品の読み取りだけでは伝わりにくい内容です。その情報が本当に大事なら、自分の言葉で残します。
- 下書きに実際と違う記述があれば、その部分は採用しません。
回数に限りがあるので、一度に何度も作り直さず、1回ごとに「何を確かめたいか」を決めてから使います。「この文章を使う」を押す前に、必ず自分で作品を開き、書かれている内容が実際と合っているかを確認します。
書き直しで起こりやすい誤り
書き直しを重ねると、新しい種類の誤りが入り込みます。
盛りすぎる。 「誰も見たことのない体験」のような言葉は、読み手の期待だけを上げて、遊んだあとの落差を生みます。具体的な動作と手触りを書くほうが、期待は正確に伝わります。
終盤の仕掛けを書いてしまう。 作品の驚きにあたる部分は、紹介文では触れません。伝えるのは最初の10秒と、遊ぶ形までにとどめます。
更新したのに作品と食い違う。 作品を直したあと、紹介文が古いままになることがよくあります。作品を更新したら、版ログを開いて、書いてある内容が今も正しいかを読み直します。
遊び方・最大参加人数の申告と本文が食い違う。 投稿時の「遊び方・最大参加人数」は、作者が任意で申告する項目です。本文で「ひとりで遊びます」と書いて、申告の人数が違っていると、読み手が混乱します。
対戦できるかのように書く。 この申告は共通の対戦機能を有効にするものではありません。現在、オンライン対戦が用意されているのは公式の「潮目のオセロ」と「灯りのチェス」だけで、投稿作品向けの共通対戦APIは未提供です。投稿作品の紹介文に「友達と対戦できます」と書く場合は、その仕組みを作品自身が備えているときだけにします。
次の行動
自分の作品の今の紹介文を、版ログの「版1」としてそのまま書き写してみます。次に、作品を知らない人1人に紹介文だけを読んでもらい、返ってきた一言を記録します。意図とずれた箇所を一つだけ選んで直し、更新日と変えた理由を添えて「版2」にします。

