生成した絵と自分の絵を並べると、初見の人は何を手がかりに見分けるのか
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

ゲームの背景を数枚、自分で描き、残りは画像生成で作って混ぜて使おうとする場面を考えてみます。並べてみると、なんとなく雰囲気は揃っているように見えます。ただ、描いた本人はどれがどちらか知っているので、その「揃って見える」という感覚をそのまま信用できません。初めて見る人にとっても同じように揃って見えるのか、それとも一目で違いが分かるのかは、本人の目からは確かめられません。 そこでこの記事では、初見の人に絵を見てもらう小さな実験を設計します。目的は、当てさせて点数をつけることではありません。「どこが手がかりになって区別できたか」と「どこは区別できなかったか」を記録に残すことです。区別できた点は、直せば揃えられる箇所になります。区別できなかった点は、混ぜて使っても違和感が出にくい箇所です。この記録がそのままゲームの素材づくりの方針になります。 なお、ここで書くのは設計書です。結果は書きません。手順どおりに行うと、自分の絵とツールの組み合わせに固有の答えが出ます。他人の結果は、自分のツールや画風には当てはまらないことが多いからです。
先に決める問い:当てる実験ではなく、手がかりを集める実験
最初に、実験で答えたい問いを三つに分けておきます。分けておかないと、集計の段階で何を見ているのか分からなくなります。
- 初見の人は、手描きと生成を正しく分けられるか(正答の傾向)
- 分けられたとき、どこを根拠にしたか(手がかりの種類)
- 間違えたとき、どこを根拠にしたか(誤認の手がかり)
核になるのは2と3です。正答率は1つの数字にまとまりますが、そこから次の行動は決まりません。「指の形が不自然だったから生成だと思った」「線が揃いすぎているから生成だと思った」という根拠のほうが、直す箇所を直接教えてくれます。誤認の記録も同じくらい大切です。手描きなのに生成と判断された絵があれば、その絵のどこが「生成らしく」見えたのかが分かります。
回答の選択肢は「手描き」「生成」「分からない」の3つにします。二択にすると、分からない人も当てずっぽうで答えるため、正答率が見かけ上50%付近に寄ってしまいます。「分からない」を選べるようにすると、区別できなかったこと自体が記録に残ります。
準備:条件をそろえる
この実験で一番大切なのは、絵の中身以外の違いを消すことです。解像度や背景、ファイル形式に差があると、見分けているのは絵ではなく差のほうになってしまいます。
素材を用意する
- お題を6つ決めます。ゲームで実際に使う題材(背景、キャラクター、アイコンなど)から、種類を絞って選ぶと比べやすくなります。
- お題ごとに、自分の手描きを1枚、生成を1枚用意します。合計12枚です。
- 手描きには、生成を下敷きにしていない絵だけを使います。デジタルの手描きでも構いませんが、生成による補正を使った絵は入れません。
- 生成は、お題ごとに同じ回数だけ作り(たとえば4回)、事前に決めたルールで1枚を選びます。「最初に出た1枚」か「乱数で選んだ1枚」が公平です。見栄えで選ぶと、生成側だけ選抜されて有利になります。選ぶ前に、生成した回数と選んだルールをメモしておきます。
発展として、生成を使う側を2種類に分ける方法があります。「生成そのまま」と「生成を自分で手直ししたもの」の2群にすると、手直しでどの手がかりが消えるのかが分かります。ただし素材が18枚に増えるので、最初は手描きと生成そのままの2群で十分です。
見た目をそろえる
- 縦横比と画素数を同じにします。
- 背景の有無、余白、切り抜きの方法を同じにします。
- ファイル形式を同じにし、ファイル名は「A01」のような無意味な記号に変えます。生成ツールが付ける名前や、画像に埋め込まれる情報から正体が分かってしまうことがあります。書き出し直すか、情報を消せる方法で保存し直します。
- 署名やサインは両方とも消すか、両方とも入れます。
見てもらう人を選ぶ
- 初見の人を集めます。あなたの絵の癖を知っている友人は、画風から手描きを見抜いてしまうため、適していません。
- 人数は5人以上を目安にします。この数字は統計的な保証ではなく、手がかりの記述をある程度集めるための現実的な下限です。
- 回答者には「絵を描く人/あまり描かない人」を一言だけ記録します。描く人は線や塗りを、描かない人は雰囲気や全体の整い方を根拠にしやすいかもしれず、そこが分かれるかどうかも記録の対象です。名前などの個人情報は取りません。
- 「ゲームの素材を比べる調査です」と伝えます。「AIを見破るテストです」と伝えると、粗探しの気構えが入ります。
素材の権利にも触れておきます。生成画像の商用利用やゲームへの組み込みの可否は、使うツールの利用規約で条件が異なります。実験のあとで実際に素材として使う予定があるなら、ツールの公式の案内で確認してください。著作権の扱いも状況によるため、断定せず、必要なら専門家に相談します。
手順と記録:出題、回答、集計
出題の順序
ペアで並べると違いが見えやすくなりますが、実際のゲームでは絵は1枚ずつ表示されます。並べる形式は、普段は起きない比較を生んでいます。そこで順番を固定します。
- 単独の出題(12枚):1枚ずつ、順番をランダムにして見せます。
- ペアの出題(6組):同じお題の手描きと生成を並べて見せます。左右の位置もランダムにします。
単独を先に行うのは、ペアで違いを見てしまうと、その後の単独で見方が変わってしまうからです。同じ絵を両方に使うと、記憶の影響が入ります。気になる場合は、人を2グループに分け、片方だけに単独、もう片方だけにペアを割り当てます。人数が確保できるなら、この形が最も素直です。
1枚あたりの表示時間は決めません。ただし全員に同じ条件で見せ、スマートフォンかパソコンかなど画面の違いは記録しておきます。
回答用紙の項目
回答者ごとに、1枚につき次の4項目を書いてもらいます。
- 判断:手描き/生成/分からない
- 確信度:1(まったく自信がない)〜5(強く確信している)
- 根拠の一言:「なぜそう思ったか」を自由に書く。選択式にはしない
- 気になった場所:あれば、絵のどのあたりか
根拠を選択式にしない理由は、選択肢が回答者の目線を誘導するからです。自由記述を集めてから、あとで自分で分類します。
手がかりの分類
回答が集まったら、根拠の一言を次のようなカテゴリに振り分けます。カテゴリは目安なので、集まった記述に合わせて足したり削ったりしてください。
- 線・筆致:線の太さの揃い方、かすれ、ゆらぎ
- 破綻:指、文字、左右対称であるべき部分、物の接続の不自然さ
- 質感:表面のなめらかさ、塗りのムラの有無
- 構図:整いすぎている、中心に寄りすぎている
- 描き込み:細部の密度が全体で均一、または偏りがある
- 雰囲気:「なんとなく」「機械っぽい」のような言語化できない印象
「雰囲気」に分類される記述が多い場合は、区別がつきにくい状態だと考えられます。逆に特定のカテゴリ(たとえば「破綻」)に集中するなら、そこを直せば区別されにくくなる、という見立てが成り立ちます。
簡単な集計
回答を行にして、ブラウザのコンソールで集計できます。次のコードのサンプルデータは、書式を示すための仮の値です。実験の結果ではありません。自分の回答に置き換えて使います。
const rows = [
{ id: "A01", truth: "gen", answer: "gen", conf: 4 },
{ id: "A01", truth: "gen", answer: "hand", conf: 2 },
{ id: "B02", truth: "hand", answer: "?", conf: 1 },
];
const rate = (xs) =>
xs.length ? xs.filter((r) => r.answer === r.truth).length / xs.length : null;
const answered = rows.filter((r) => r.answer !== "?");
console.log("全体の正答率", rate(answered));
console.log("分からない", rows.length - answered.length, "件");
for (const c of [1, 2, 3, 4, 5]) {
console.log("確信度", c, rate(answered.filter((r) => r.conf === c)));
}
for (const id of new Set(rows.map((r) => r.id))) {
console.log("絵", id, rate(answered.filter((r) => r.id === id)));
}出力から読み取るのは、全体、確信度別、絵ごとの3つの正答率です。「分からない」は不正解にせず、別に数えます。
結果の読み方:数字を手がかりの話に変える
正答率の数字だけで結論を出さず、確信度と根拠の記述を組み合わせて読みます。
- 全体の正答率が偶然と同程度、「分からない」が多い、読み方の例:その条件では区別されにくい。ただし人数と問数が少ないと偶然で大きく振れるため、断定せず再実施を考える
- 正答率は高いが、根拠が人によってばらばら、読み方の例:当たっていても決め手が定まらない。偶然に当たった回答が混じっている可能性がある
- 正答率が高く、根拠が特定のカテゴリに集中する、読み方の例:そのカテゴリが主な手がかり。直す優先順位の候補になる
- 確信度が高いのに誤答が多い、読み方の例:誤認を生む手がかりがある。誤答の根拠の記述をたどる
- 特定の絵だけ全員が間違える、読み方の例:その絵に共通する特徴を探す。手描きなら「生成らしく見える描き方」、生成なら「手描きらしく見える要素」が分かる
- 描く人と描かない人で根拠のカテゴリが分かれる、読み方の例:見る人によって気づく点が違う。ゲームの遊び手に近いほうを重視する
少ない問数では、偶然だけで正答率が大きく振れます。たとえば12問に一人が答えるとき、完全に当てずっぽうでも、6問前後を中心に、それより多くも少なくも当たることがあります。1人の成績で判断せず、全員の回答を合算して見てください。同じ人の回答は互いに独立ではないので、合算した数字にも限界があることを心にとめておきます。
もう一つ注意したいのは、正答率が下がったからといって「生成が上手」とは言えない点です。区別がつかなかった理由が、素材の選び方や、画像を縮小して細部が見えなくなったことにある可能性もあります。素材の条件を記録しておくと、あとで原因を切り分けられます。
起こりやすい誤り
- 条件の差を残す:解像度、背景、余白、色調の処理が片方だけ違うと、それが決め手になります。出題前に自分で12枚を並べ、どの画像か分かる箇所を探して消します。
- 生成だけを厳選する:良いものだけを選ぶと、生成側が有利な実験になります。生成した回数と選択ルールは事前に決めてください。
- 正体を知る人が出題する:出題者が表情や間で答えを示してしまうことがあります。画面の切り替えは機械的に行い、回答者の判断に口を出しません。
- 左右や順序の偏り:ペアで「左が手描き」が多いと、位置が手がかりになります。位置と順番をランダムにし、配置表を記録しておきます。
- 「AIっぽさ」を探す態度を作る:回答者に疑う構えを与えすぎると、手描きまで生成と判断されます。説明は中立にします。
- 根拠の聞き取りを誘導する:「指は不自然でしたか」のような質問は避けます。自由記述の一言を、そのまま記録します。
- 一度の結果で決める:ツールのバージョンや設定が変われば、結果も変わる可能性があります。結果には、使ったツール、設定、日付をメモしておきます。
次の行動
まず、お題を6つ決めて手描きの絵を用意し、生成の回数と選択ルールをメモしてから素材をそろえてください。出題の前に、画像の並びを自分の目で見て、条件の差が残っていないか点検します。回答が5人分集まったら、根拠の記述をカテゴリに分け、直せる手がかりと、そのままでも気にされなかった点を一覧にします。
その一覧は、ゲームでどの素材をどの範囲まで混ぜるかを決める材料になります。生成を使う場合は、ゲームの紹介文などで由来を書いておくかどうかも、あわせて考えてみてください。アソバースの公式作品のカバー画像も、生成したアートワークであり、ゲーム画面のスクリーンショットではないと案内されています。何を使い、どこを描いたのかを示すことは、遊ぶ人への説明の一つになります。
