「かわいい」を使わずにかわいい絵を頼む
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

ゲームの案内役になる小さな生きものの絵を、画像生成AIに頼む場面を考えてみます。「かわいい生きものを描いて」と入力すると、絵は返ってきます。ただ、それがゲームの雰囲気に合うかと問われると、答えに詰まります。次のキャラクターを同じ調子で描けるかと問われれば、さらに難しくなります。 原因は、「かわいい」が見た目の条件をほとんど何も決めていない言葉だからかもしれません。頭の大きさ、輪郭、目の位置、色数、線の太さなどは、指示を受けた側が補います。補われた結果は、頼むたびに変わりえます。 この記事は、その仮説を自分の手で確かめる実験の設計書です。「かわいい」と書いた指示と、見た目の条件だけで書いた指示を同じ題材で比べ、どの条件が効いているかを調べます。結果はここには書いていません。使うツールや題材によって答えが変わるため、読者の手元で出す前提です。
「かわいい」は何を省略した言葉か
「かわいい」は、結論だけを伝えて、そこに至る見た目の理由を省いた言葉です。人間同士なら、相手が文脈から補ってくれます。画像生成では、補う役を引き受けるのはモデルで、補い方は毎回同じとは限りません。
頭が大きい、目が顔の低い位置にある、輪郭が丸いといった特徴は、幼い生きものに見られる特徴と関連づけて語られることがあります。「幼児図式」と呼ばれる考え方です。ただ、何をかわいいと感じるかは、文化や個人、作品の文脈で変わります。この記事の実験は、特定の特徴が正解だと決めるものではありません。自分の狙いを言葉にして、指示に落とせるかを確かめます。
この実験で答えを出す問いは二つです。
- 「かわいい」だけの指示と、見た目の条件だけの指示とで、狙いに合う絵の枚数は変わるか。
- 条件のうち、どの軸を抜くと狙いから外れやすくなるか。
仮説は「条件に分解したほうが狙いに近づき、ばらつきも小さくなる」です。ただし、条件を並べすぎて絵が窮屈になる可能性も同じくらいあります。どちらになるかは確かめないとわかりません。
準備するもの
- 画像生成ツールを1つ。実験の間は同じツール、同じモデル、同じ設定で通します。途中で切り替えると、指示の違いなのかツールの違いなのか区別できなくなります。
- 題材を1つ。ここでは「ゲームの案内役の小さな生きもの」を例にします。実在のキャラクターや作品名は入れません。
- 記録シート。表計算でも紙でも構いません。
- 評価者を自分のほかに1人。難しければ自分だけでもできますが、後述の「見る順番を隠す」工夫が必要です。
- 保存用のフォルダ。ファイル名は「A-1」「B-3」のように、条件と通し番号で付けます。
アソバースの「自分だけのアバターを作る」は、説明と絵柄(切り絵・手描き・粘土)を選んで画像を生成する機能です。説明文の書き方を試す補助にはなります。ただし生成は1人1時間1回で、メール確認済みのアカウントに限られ、全体にもUTC1日10回の上限があります。条件ごとに5回ずつ作る本実験には向きません。使うなら「同じ説明を絵柄だけ変える」といった軽い確認にとどめ、本実験は別のツールで行います。
抽象語を「見た目の条件」に分解する
生成する前に、まず「狙い」を決めます。ここを曖昧にしたまま進めると、後から「これもかわいいかも」と基準が動いてしまいます。
狙いシートを書く
見た目だけで○×がつく文を、3〜5項目で書きます。例を挙げます。
- 頭が全身のおよそ半分の大きさに見える
- 輪郭に角がなく、丸い
- 体の色が3色以内で、やわらかい色合いである
- 目が顔の低めの位置にある
- 背景が白一色である
「やさしい雰囲気」「癒される」のような項目は、人によって○×が割れるので入れません。入れたくなったら、見た目の言葉に言い換えます。
軸ごとに言い換える
次の表は、抽象的な言い方を見た目の言い方に置き換える例です。例なので、自分の狙いに合わせて書き換えてください。
- 比率、抽象的な言い方:ちっちゃくて丸っこい、見た目の言い方の例:頭が全身の半分ほどの大きさ。手足は短い
- 輪郭、抽象的な言い方:ふわっとした、見た目の言い方の例:輪郭は丸く、角がない
- 目、抽象的な言い方:くりっとした、見た目の言い方の例:小さな黒い点の目。顔の低い位置で、間隔は広め
- 色、抽象的な言い方:やさしい色、見た目の言い方の例:体はクリーム色。頬と耳の内側だけ薄い桃色
- 線、抽象的な言い方:あたたかい線、見た目の言い方の例:濃い茶色の線。太さは均一
- 背景、抽象的な言い方:すっきり、見た目の言い方の例:白一色。影は付けない
「ふわふわ」「ちっちゃい」「愛らしい」「キュート」などの印象語も、条件の文には入れません。実験の目的は、印象語を使わずにどこまで伝わるかを見ることだからです。
指示文を三種類作る
- A:「ゲームの案内役の、かわいい小さな生きものを描いてください。」
- B:「ゲームの案内役の小さな生きものを描いてください。頭が全身の半分ほどの大きさ。輪郭は丸く、角がない。目は小さな黒い点で、顔の低い位置、間隔は広め。体はクリーム色で、頬と耳の内側だけ薄い桃色。線は濃い茶色で均一な太さ。背景は白一色。」
- C:Bから1軸だけ抜いたもの。たとえば比率の文だけ抜いたものをC1、目の文だけ抜いたものをC2とします。
Cは軸の数だけ増えます。最初は、効きそうだと思う軸と、効かなさそうだと思う軸を1つずつ選び、C1とC2の2種類にすると負担が軽くなります。
「〜しない」「〜は避ける」という否定の書き方は、ツールによっては意図と逆に作用することがあるとも言われます。Bでは、できるだけ「〜である」という肯定形で書いておくと、否定表現の影響を混ぜずに済みます。
手順と記録の取り方
手順
- 狙いシートを書き、保存します。生成を始めた後で書き換えません。
- A、B、Cの指示文を確定し、保存します。
- 各指示で5枚ずつ生成します。同じ指示を5回送り、1回ごとに1枚を保存します。5枚を比べるのは、同じ指示でも結果が毎回違いうるからです。
- 生成の順番はA、B、Cと固めず、混ぜます。ツールの調子が時間帯で変わる可能性を、条件の違いと分けるためです。
- 全部の画像をファイル名の条件を隠して並べ替え、狙いシートで1枚ずつ○×を付けます。
- 別の人(または時間を置いた自分)に、条件を隠した状態で、「いちばん狙いに近い順」に並べてもらいます。
記録シート
次のような表を1枚ずつ埋めます。
- 例、条件:A、項目1:○、項目2:×、項目3:○、項目4:×、項目5:○、一致数:3、気づき:背景に模様がある
集計は次の二つです。
- 条件ごとの「項目の一致数の合計」と「5枚の中での最大と最小の差」。合計は狙いへの近さ、差はばらつきの大きさを表します。
- 第三者の並べ替えで、各条件の画像が上位に入った枚数。
「気づき」の欄には、狙いシートにない違和感を書いておきます。たとえば「全部が同じ構図で単調」「目の位置は合っているが表情が暗い」といったものです。後で結果を読むときに、数字では見えないことを拾えます。
結果の読み方と誤りやすい点
こうなれば、こう判断する
結果の読み方は、次のように決めておくと迷いません。数字の線引きは目安であり、統計的な結論ではありません。
- BがAより一致数もまとまりも良い:条件に分解する価値があったと考えます。そのうえでCを見て、抜くと一致数が落ちた軸を「効く軸」として、次の指示の主役にします。
- BとAの差が小さい:各5枚では偶然と区別しにくいので、差が小さいときは結論にしません。もう5枚ずつ足して、同じ向きの差が出るかを見ます。
- Aのほうが第三者の評価で上位に来る:狙いシートの項目が、実は自分の好みの本体ではなかった可能性があります。「気づき」の欄を読み返し、狙いシートに足りない項目を探します。
- Bの絵が整っているのに、どれも同じに見える:条件が強すぎて、選択の幅が失われている状態かもしれません。効かない軸の文を1つ減らして、もう一度試します。
誤りやすい点
最も起こりやすい誤りは、答え合わせになってしまうことです。Bの文に「頭が半分ほど」と書き、狙いシートにも同じことを書くのですから、Bの一致数は高くなりやすいはずです。そこで、狙いシートの項目での判定(条件側)と、第三者の並べ替え(条件を知らない側)を分けて見ます。両方が同じ方向を向いたときだけ、手がかりとして扱います。
そのほかの注意点です。
- 5枚の中から良い1枚だけ選んで比べないでください。比べるのは全部の枚数です。
- 途中で指示文を直さないでください。直したら新しい条件として数え直します。
- 画像の細部に気を取られて、狙いシートにない項目で点を付けないでください。
- ツールの利用条件や、生成画像の権利の扱いはサービスごとに異なります。ゲームに使う前に、ツールの公式な案内で確認してください。著作権に関わる判断は断定せず、必要なら専門家に相談してください。
次の行動
効いた軸が見つかったら、その条件を「絵柄メモ」として1枚にまとめ、次のキャラクターの指示にも同じ文で使い回します。キャラクターが増えても調子をそろえやすくなります。アソバースに作品を投稿する場合は、カバー画像とゲーム内の絵を同じ絵柄メモで作ると、ずれを小さくできます。公式作品のカバー画像は生成したアートワークで、ゲーム画面のスクリーンショットではありません。投稿作品でも、カバーとゲーム画面の関係を決めておくと読み手に伝わりやすくなります。
まずは、狙いシートの項目を3つだけ書くところから始めてみてください。
