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30秒・128音の録音で何が弾けるか:制約の中の作曲

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

雨の窓辺にあるアップライトピアノと小さなリズムマシン。
記事のテーマをもとに制作したAI生成イメージ。実際のゲーム画面ではありません。

「雨音のピアノ」には、録音の上限として30秒と128音という二つの数字があります。どちらも小さく見えますが、本当に効くのはどちらでしょうか。頭に浮かんだ短い旋律を入れようとして、途中で録音が止まる場面を考えてみます。止まった原因が時間切れなのか、音数切れなのかによって、次に削るべき場所は変わります。 この記事は、その問いを自分の手で確かめる実験の設計書です。結果は書きません。上限の中で曲を作り、収まらなかった部分を「何を・なぜ削ったか」まで記録すれば、自分の作曲の癖と、小さな枠で曲を成立させる判断基準が残ります。ゲームの効果音やジングル(短い合図の曲)を設計するときにも、同じ考え方が使えます。

この記事の目次
  1. 二つの上限は、どちらが先に尽きるか
  2. 準備するもの
  3. 手順:理想版を書いてから三つのテイクを録る
  4. 記録の取り方
  5. 結果の読み方と誤りやすい点
  6. 次の行動

二つの上限は、どちらが先に尽きるか

まず算数で見通しを立てます。128音を30秒で割ると、1秒あたり約4.27音、1音あたり平均約0.23秒です。休みなく弾き続けたときの境目がこの速さです。

テンポに置き換えると、8分音符を隙間なく並べた場合、1秒あたりの音数は「テンポ ÷ 60 × 2」です。テンポ128のとき約4.27音になり、ちょうど境目に当たります。

  • 8分音符で埋めるなら、テンポ128より遅いと30秒が先に尽き、速いと128音が先に尽きます。
  • 16分音符で埋めるなら、境目はテンポ64です。一般的な速さでは128音が先に尽きます。
  • 4分音符が中心なら、ほとんどの場合、30秒が先に尽きます。

つまり、細かい動きの曲ほど音数が足りなくなり、ゆったりした曲ほど時間が足りなくなります。休符や長く伸ばす音が入れば、音数はさらに減ります。ここまでは机上の見積もりです。実際にどちらが先に来るかは、弾いて記録して初めて分かります。

次の小さなHTMLは、テンポと分割から音数の見積もりを出す計算機です。ファイルに貼ってブラウザで開けば単独で動きます。

html
<label>テンポ <input id="bpm" type="number" value="120" min="40" max="240"></label>
<label>1拍の分割
  <select id="div">
    <option value="1">4分音符</option>
    <option value="2" selected>8分音符</option>
    <option value="4">16分音符</option>
  </select>
</label>
<button id="go">計算</button>
<p id="out"></p>
<script>
document.getElementById("go").onclick = () => {
  const bpm = Number(document.getElementById("bpm").value);
  const div = Number(document.getElementById("div").value);
  const perSec = bpm / 60 * div;
  const total = Math.floor(perSec * 30);
  const bars = 30 / (240 / bpm);
  document.getElementById("out").textContent =
    `1秒あたり${perSec.toFixed(2)}音。全部埋めると30秒で${total}音。` +
    (total > 128 ? "128音が先に尽きます。" : "30秒が先に尽きます。") +
    `4/4拍子で約${bars.toFixed(1)}小節です。`;
};
</script>

たとえばテンポ120の8分音符なら、30秒で120音、約15小節です。128音には少し余ります。この余りを何に使うかが、作曲の腕の見せどころになります。

準備するもの

  • 「雨音のピアノ」を開いたブラウザ。キーボード演奏を使うので、PCで行うほうが記録しやすくなります。
  • 紙かテキストエディタ。録音は画面を開いている間だけ残るため、記録は必ず画面の外に残します。
  • 秒数を測るもの。画面に表示があればそれを使い、なければ手元のタイマーで構いません。
  • 演奏キーの確認。キーボードはA W S E D F T G Y H U J の12キーで、Z/Xで音域を動かせます。並びからは1オクターブ分の白鍵と黒鍵に見えますが、どの音に当たるかは作品を開いて確かめてください。

あわせて、次の三点も先に作品で確かめておきます。ここが曖昧だと、数え方がテイクごとにずれてしまいます。

  1. 録音の30秒は、録音を始めた瞬間から数えるのか、最初の音から数えるのか。
  2. 和音を同時に押したとき、128音の数え方がどうなるのか。
  3. 上限に達したとき、録音が自動で止まるのか、それ以外の挙動なのか。

三点とも、確認した結果をそのまま記録の冒頭に書いておきます。

手順:理想版を書いてから三つのテイクを録る

手順1:理想版を音名で書く

録音を始める前に、入れたい曲を紙に書きます。オリジナルの短い旋律でも、自分で編曲した既存曲でも構いません。既存曲を使う場合は、公開や配布の前に著作権の扱いを権利者の案内や専門家に確認してください。この実験は手元での練習が目的なので、録音は画面内にとどまります。

書き方は次のとおりです。

  • 音名の並びと、おおよその長さ(短い・普通・長い)を書きます。
  • 低音や和音があれば、旋律とは別の行に書きます。
  • 書き終えたら、音を数えます。これが「理想版の音数」です。
  • 弾いたときの所要秒数を、ざっくり見積もります。

理想版が128音を超えているか、30秒を超えそうなら、その時点で「どこかを削る」ことが確定します。

手順2:条件をそろえて三つのテイクを録る

比較が成り立つように、音色・タッチ・余韻・音域は、最初に一つに決めて三つのテイクで動かしません。たとえば、フェルト、中くらいのタッチ、余韻はそのまま、と決めておきます。

  • テイクA(理想版そのまま):理想版を最初から最後まで弾いてみます。途中で止まっても、そこまでの結果を記録します。
  • テイクB(削って収める):理想版から音を削り、30秒・128音の両方に収まる版を録ります。削った音は、すべて記録します。
  • テイクC(削りを別の手段で補う):Bと同じ音数以下で、余韻や間の取り方を変えて「削った感じ」を減らす版を録ります。余韻の切り替えが音数に数えられない手段であることは、作品で確認してください。

各テイクは、少なくとも2回ずつ録ります。同じ曲でも、1回目と2回目で弾く速さが変わるからです。結果は回ごとに分けて記録します。

記録の取り方

記録は、テイクの単位で1行ずつ取ります。次の表を、紙やエディタに写して使ってください。

  • A、回:1、使った秒数:、音数:、先に尽きたもの:、削った音(数・種類):、削った理由:
  • A、回:2、使った秒数:、音数:、先に尽きたもの:、削った音(数・種類):、削った理由:
  • B、回:1、使った秒数:、音数:、先に尽きたもの:、削った音(数・種類):、削った理由:
  • B、回:2、使った秒数:、音数:、先に尽きたもの:、削った音(数・種類):、削った理由:
  • C、回:1、使った秒数:、音数:、先に尽きたもの:、削った音(数・種類):、削った理由:
  • C、回:2、使った秒数:、音数:、先に尽きたもの:、削った音(数・種類):、削った理由:

「先に尽きたもの」の欄には、秒数・音数・両方・どちらも余った、のいずれかを書きます。

「削った音」は、数だけでなく種類で分けると後から読み返せます。おすすめの分類は次の六つです。

  • 装飾音(旋律の飾りや細かい経過音)
  • 和音の構成音
  • 低音・伴奏
  • 繰り返し(同じ形の2回目以降)
  • 休符・伸ばす長さ
  • 旋律そのもの

さらに、各テイクを弾き終えたら、再生して聴き、次の一文を書き足します。

  • 旋律の輪郭は残っているか。
  • 拍の位置(ノリ)は残っているか。
  • 削った部分の「空き」が気になるか。

数字だけでなく、聴いた印象も残すことで、数字と印象の関係が見えてきます。

結果の読み方と誤りやすい点

先に尽きたものから読む

「先に尽きたもの」の欄が、自分の曲の性格を表します。

  • 秒数が先に尽きる:音数に余裕があります。長さが足りないので、伸ばす音や休符を詰める、テンポを少し上げるなどが候補になります。
  • 音数が先に尽きる:密度が高い曲です。装飾音、和音の構成音、繰り返しの順に削れないか検討します。
  • ほぼ同時に尽きる:予算を使い切った設計です。ここから足す場合は、何かを引く交換になります。
  • どちらも余る:制約が効いていません。理想版が短すぎるか、足せる余地があります。

削りの種類から読む

「削った音」の分類を、テイクBで多かった順に並べます。最も多く削った種類が、自分が普段いちばん「盛る」場所です。装飾が多ければ旋律を飾りたがる癖、低音が多ければ伴奏で厚みを出したがる癖、と読めます。

テイクBとCを聴き比べて、Cのほうが「欠けた感じ」が少ないと感じたなら、音数ではなく余韻や間で補える部分があったということです。逆にCでも欠けて聞こえるなら、削ったのが曲の骨格だった可能性があります。この判断は自分の耳が頼りなので、聴いた印象の記録が根拠になります。

ほかの人にも聴いてもらえる場面を作れるなら、旋律の輪郭が伝わるかを聞くのも一つの方法です。人数や感想の集計は、実際に行った場合だけ記録してください。

誤りやすい点

  • 和音の数え方を確認しない:同時押しの扱いを知らないと、音数の見積もりが大きくずれます。必ず冒頭で確かめます。
  • 条件を途中で変える:テイクごとに音色やタッチを変えると、削りの影響と音色の影響が混ざります。
  • 記録を画面の中に任せる:録音は画面を開いている間だけ残ります。再読み込みや閉じる操作の前に、数値を外へ書き出します。
  • 一回で結論を出す:弾き間違いや速さの揺れで、1回の結果は動きます。各テイク2回以上を目安にします。
  • 音数の削減だけを目標にする:目的は収めることではなく、削ったうえで曲として成り立つ判断基準を持つことです。

次の行動

まず、理想版を8〜16音ほどの短いモチーフで書き、手順1の見積もりと上の計算機で、30秒と128音のどちらが先に効きそうか予想を紙に書いてください。次に、テイクAを1回録り、予想が当たったかを記録します。外れた場合は、その差から自分の弾き方の癖が読み取れます。

最後に、残した音名メモと削りの記録を見直し、「この曲で絶対に残す音」を三つ選んでみてください。ゲームのジングルや効果音を設計するときも、同じ三つの選び方が使えます。