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効果音を1オクターブ上げると、ゲームの印象はどう変わるか

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

成功、失敗、選択に応じた三種類の音を、異なる形の響きで表したイラスト。
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

コインを取ったときの「ピロン」という音を、そのまま1オクターブ高くする場面を考えてみます。軽快になって気持ちよさが増すのか、それとも安っぽくなって耳に刺さるのか。逆に、被弾音の高さを変えたら、痛みの重さは変わるのでしょうか。頭の中で想像した印象と、実際にゲームを遊びながら聞いた印象は、意外とずれるものです。 この記事は、その問いを自分のゲームで確かめるための実験の設計書です。結果は載せていません。載せるのは、変える条件を「音の高さ」だけに絞る方法、聞き手に評価してもらう手順、記録の取り方、そして結果から何をどう判断するかの基準です。 1オクターブ上は、周波数が2倍になる音です。たとえば330Hzの音は660Hzになります。同じ音名のまま高さだけが変わるため、「音程の種類」ではなく「高さそのもの」の影響を見る材料に向いています。

この記事の目次
  1. 問いを絞る:変えるのは高さだけ
  2. 準備するもの
  3. 手順
  4. 記録の取り方
  5. 結果の読み方
  6. 起こりやすい誤り
  7. 次の行動

問いを絞る:変えるのは高さだけ

「効果音の印象」を丸ごと調べようとすると、答えが出ません。そこで、確かめたいことを次の一文に絞ります。

同じ効果音を、同じ音量・同じ長さ・同じ音色のまま1オクターブ上げたとき、聞き手が感じる「軽さ・重さ」などの評価は変わるか。

一般に、高い音は軽く明るく、低い音は重く暗く感じられやすいと言われます。ただしこれは経験則であり、自分のゲームで同じことが起きるとは限りません。BGMの音域、画面の雰囲気、効果音の長さによって、結果が変わる可能性があります。この実験の目的は、一般論の確認ではなく、自作ゲームでの傾向をつかむことです。

条件は2つだけにします。

  • 条件A:現在の効果音(基準)
  • 条件B:Aと同じ音を1オクターブ上げたもの

比べる効果音は、ゲームの中で役割の違う4種類を選ぶと、傾向の違いが見えやすくなります。

  1. 決定・選択音(UIの反応)
  2. 取得音(コインやアイテム)
  3. ジャンプや攻撃などの行動音
  4. 被弾・失敗音

準備するもの

  • 自作ゲーム、または効果音を鳴らせる小さな試作
  • イヤホンかスピーカー。実験中は同じ機器を使い続けます
  • 聞き手を3人以上。できれば制作者以外の人にお願いします
  • 評価シート(後述)と、記録用の表計算ソフトなど

実際のゲームに入れる前に、まず音だけを聞き比べる小さなページを用意しておくと、準備の確認になります。次のコードは、単独で動くHTMLです。保存してブラウザで開き、ボタンを押すと、AとBが鳴ります。

html
<button id="a">A 基準</button>
<button id="b">B 1オクターブ上</button>
<script>
const ctx = new AudioContext();
const BASE = 330;   // 基準の周波数(Hz)
const GAIN_B = 0.8; // Bの音量係数。聞き比べて調整
function play(mult, vol) {
  const t = ctx.currentTime;
  const o = ctx.createOscillator();
  const g = ctx.createGain();
  o.type = "triangle";
  o.frequency.setValueAtTime(BASE * mult, t);
  o.frequency.exponentialRampToValueAtTime(BASE * mult * 1.6, t + 0.12);
  g.gain.setValueAtTime(0.0001, t);
  g.gain.exponentialRampToValueAtTime(0.2 * vol, t + 0.01);
  g.gain.exponentialRampToValueAtTime(0.0001, t + 0.25);
  o.connect(g).connect(ctx.destination);
  o.start(t); o.stop(t + 0.3);
}
document.getElementById("a").onclick = () => { ctx.resume(); play(1, 1); };
document.getElementById("b").onclick = () => { ctx.resume(); play(2, GAIN_B); };
</script>

このコードは、発音の長さを0.25秒前後に固定したまま、周波数だけを2倍にしています。音が上昇する動きも、Bでは同じ比率(1.6倍)で上がるようにしてあります。

ここで大切なのは、サンプル音源(録音済みのファイル)を使う場合です。再生速度を2倍にして高さを上げると、音の長さが半分になります。高さと長さが同時に変わってしまうため、「高さだけの影響」を見ることができません。長さを揃えるには、音声編集ソフトのピッチシフト機能で長さを保ったまま高さを変えるか、上のように波形から合成します。

手順

  1. 比べる効果音を選び、それぞれにAとBを用意します。AとBの長さが同じか、波形を見るか耳で確かめます。
  2. 音量を揃えます。同じ音量設定でも、高い音のほうが大きく聞こえやすいことが知られています。上のコードの GAIN_B のような係数で、AとBが同じくらいの大きさに聞こえるまで調整します。数名の耳で確認できると安心です。
  3. 聞き手に、ゲームを短く遊んでもらう場面を作ります。ゲームに組み込む場合は、URLの末尾などで条件を切り替えられるようにしておくと便利です。聞き手には、どちらがA・Bかを伝えません。画面上には「条件1」「条件2」のような中立的なラベルを使います。
  4. 聞き手ごとに、条件の順番を入れ替えます。1人目はA→B、2人目はB→A、というように交互にします。人数が少なくても、順番の偏りを減らせます。
  5. 各条件で、同じ操作を同じ回数だけ行ってもらいます。たとえば、各効果音を1条件につき2回以上鳴らします。1回だけだと、その場の気分に左右されやすくなります。
  6. 1条件が終わるたびに、評価シートに回答してもらいます。
  7. すべての効果音と条件が終わったら、最後に「どちらのほうがゲームに合っていたか」と、一言の自由記述を聞きます。

評価シートは、次のような対になった言葉を7段階で答えてもらう形が扱いやすいです。真ん中を0として、左端を-3、右端を+3と数えます。

  • 重さ、左端(-3):重い、右端(+3):軽い
  • 明るさ、左端(-3):暗い、右端(+3):明るい
  • 気持ちよさ、左端(-3):不快、右端(+3):爽快
  • 強さ、左端(-3):弱い、右端(+3):強い
  • 質感、左端(-3):安っぽい、右端(+3):上質
  • 音の存在感、左端(-3):うるさい、右端(+3):控えめ

尺度を増やしすぎると、聞き手が疲れて回答が雑になります。まずは「重さ」「気持ちよさ」「うるささ」の3つに絞っても構いません。

記録の取り方

記録は、「1人の聞き手が、1種類の効果音を、1つの条件で聞いたとき」を1行とします。

  • P1、順序:A→B、効果音:取得音、条件:A、重さ:、明るさ:、気持ちよさ:、一言:
  • P1、順序:A→B、効果音:取得音、条件:B、重さ:、明るさ:、気持ちよさ:、一言:

同じ聞き手・同じ効果音であれば、AとBの行を並べて記録します。2回以上聞いた場合は、回ごとの値ではなく、平均を1行に書く形で十分です。ただし、回答が大きくぶれたときは、元の値も残しておきます。

あわせて、条件も書き留めます。使った機器、音量の設定、部屋の静かさ、ゲームのBGMの有無です。後で結果がばらついたとき、原因を探す手がかりになります。

結果の読み方

集計では、聞き手ごとに「B − A」の差を出します。同じ人の中での比較にすると、人による回答の癖(全体に高めに答える人、低めに答える人)が打ち消されます。

読み方の判断基準は、次のようなものです。

  • 差が0〜1段階:誤差の範囲かもしれません。同じ聞き手に再度聞いてもらい、再現するかを見ます。
  • 差が2段階以上で、聞き手の過半数が同じ方向:その尺度では、高さの影響があった可能性があります。
  • 方向が人によってばらつく:個人差、または音色や文脈の影響が大きいと考えられます。自由記述に理由のヒントがないか読みます。
  • 効果音の種類によって傾向が違う:高さの影響が一様ではなく、役割(取得、被弾など)によって適した高さがあるのかもしれません。種類ごとに分けて判断します。
  • 「気持ちよさ」は変わらないのに「うるささ」だけ動く:音の好みではなく、聞き取りやすさや耳への負担に関わっている可能性があります。

人数が少ない実験では、平均値だけで結論を出さないことが大切です。3〜5人であれば、一人ひとりの変化の方向を見て、「全員が同じ向きに動いたか」を確認するほうが安全です。この実験で得られるのは、あくまで自分のゲームと、その聞き手についての手がかりです。

起こりやすい誤り

  • 音量のずれ:Bのほうが大きく聞こえると、「高いから爽快」ではなく「大きいから爽快」を測ってしまいます。手順2の調整を省かないでください。
  • 長さと音色の変化:サンプルの再生速度を変えると、長さも音色も変わります。高さだけを変えたつもりで、別の要素が混ざります。
  • 機器の特性:小さなスピーカーは低い音を出しにくく、元の音(A)が弱く聞こえることがあります。ヘッドホンでは差が出るのに、スマートフォンのスピーカーでは出ない、ということも起こりえます。実際の遊ばれ方に近い機器でも試します。
  • 倍音の多い音色:矩形波やノコギリ波のように高音成分の多い音は、1オクターブ上げると耳に痛く感じることがあります。波形の種類を変えて、同じ実験を繰り返してみる価値があります。
  • 順序の影響:最初に聞いた音が基準になり、2番目の評価が引っ張られることがあります。順番の入れ替えはそのためです。
  • 制作者自身の期待:作った本人は、「こう感じるはず」という思いが先に立ちます。条件を伏せて、第三者に評価してもらってください。
  • BGMとの重なり:BGMの主旋律と効果音の音域が重なると、高くしたことで聞こえ方が変わる場合があります。BGMありとなしの両方で試すと、原因を分けやすくなります。

次の行動

まず上のコードをブラウザで開き、AとBを何度か聞き比べて、音量の係数を調整してみてください。それから、自作ゲームの効果音を1つだけ選び、聞き手2〜3人に条件を伏せて評価してもらうところから始めると、手間をかけずに傾向がつかめます。

音の高さそのものを手で動かして確かめたい場合は、アソバースの「雨音のピアノ」で音域を切り替えながら聞き比べる方法もあります。具体的な操作は、作品を開いて確かめてください。