名前と見た目を人に決めてもらう:作者以外の視点
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

作品名は、作者にとって「中身を知ったうえで読む言葉」です。たとえば、重力で曲がる軌道を狙うゲームに「軌道」という言葉を入れたとします。作者には内容がそのまま伝わる名前に見えますが、初めて見る人にはロケットのゲームにも、電車の路線のゲームにも見えるかもしれません。こうしたずれは、作者の頭の中だけでは検出できません。 この記事の問いは、作者以外の人は名前から何を想像し、複数の見た目から何を選ぶのか、です。名前の候補を3〜4個、見た目の候補を3つほど用意し、5〜8人に見てもらうための設計書として、準備、手順、記録、結果の読み方、誤りやすい点を順に説明します。 結果はこの記事には書きません。あなたの作品と、あなたの周りの人から得られた答えだけが、判断の材料になります。
何を確かめる実験か
実験は2段階に分け、同じ人に順番に受けてもらいます。
- 第1段階(名前):名前だけを見せ、どんなゲームだと思うかを自由に答えてもらいます。確かめたいのは、名前が作者の狙いを伝えているか、別の誤解を生んでいないかです。
- 第2段階(見た目):名前を一つに固めた状態で、見た目の候補を並べて選んでもらいます。確かめたいのは、一覧に並んだときに目に留まり、内容も伝わる見た目はどれかです。
名前と見た目を同時に聞かないのは、片方の印象がもう片方に影響して、どちらが効いたのか分からなくなるためです。
ここでの「見た目」は、作品名の文字の組み方、色、タイトル画面や紹介に使う画像などを指します。アソバースの公式作品13本は、縦組みの明朝、手描き文字、郵便ラベル、夜の標識、光の幾何学、メニュー風と、作品ごとにタイトルの文字組みが異なります。実験の前に、こうした文字組みの違いを見比べておくと、自作で何を変えられるかを具体的に考えやすくなります。
準備するもの
参加者
作品を一度も見たことがない人を、5〜8人集めます。人数が少ないので、結果は統計ではなく傾向として扱います。ゲームをよく遊ぶ人と、あまり遊ばない人の両方を混ぜると、偏りを減らせます。開発に関わった人、制作の相談に乗った人は外します。
名前の候補
3〜4個用意します。次のように性格の違う候補を混ぜると、比較から学べることが増えます。
- 内容を直接説明する名前
- 雰囲気だけを伝える名前
- 今の仮の名前
実験前に、作者が「正解」として考えている内容を一文で書いておきます。たとえば「短い時間で遊ぶ記憶ゲーム」のような一文です。後で参加者の答えと照らし合わせる基準になります。
見た目の候補
3つ用意します。名前と内容は同じで、文字組みや色、画像だけを変えます。各候補は、実際に一覧に並ぶときのような小さな大きさに縮小した状態でも見せます。大きな画像では読める文字が、小さくすると潰れる場合があるためです。縮小後の大きさは、自分が公開予定の画面で見える程度に合わせて決めてください。
記録用の紙
参加者ごとに1枚用意します。記録の書式は、後の節で示します。
手順
第1段階:名前だけを見せる
- 名前を1つだけ見せます。説明、画像、ジャンルのヒントは見せません。
- 次の3つを順に尋ね、答えをそのまま書き取ります。
- 「どんなゲームだと思いますか」
- 「どのくらいの時間で遊べそうですか」
- 「ひとりで遊ぶ、誰かと遊ぶ、どちらに見えますか」
- 次の名前に進みます。これを全候補で繰り返します。
- 全部が終わるまで、本当の内容は教えません。
名前を見せる順番は、参加者ごとに入れ替えます。最初に見た名前は印象が強く残るので、全員が同じ順だと、その名前だけ有利または不利になります。
第2段階:見た目を選んでもらう
名前を一つに決めて、その名前で3種類の見た目を並べます。このとき初めて、ゲームの内容を一文で伝えます。
- 3つを縮小した状態で並べて見せます。並べる位置は参加者ごとに入れ替えます。
- 「一覧でこの3つが並んでいたら、どれを遊んでみたいですか」と尋ねます。
- 続けて「どれが、先ほどの説明のゲームに一番見えますか」と尋ねます。
- それぞれの理由を一言で聞きます。
- 最後に「読みにくい、または分かりにくいものはありますか」と尋ねます。
「どれが好きですか」とは聞きません。好みを聞くと「かわいい」「きれい」といった感想が返りがちで、遊んでみたいかどうかの判断につながりにくいためです。
記録の取り方と結果の読み方
記録の書式
1人1行になる表を、名前の候補ごとに作ります。
- A、名前候補:候補1、想像したジャンル:参加者の言葉のまま、想像した時間:短い・長いなど、狙いとの一致:○/△/×、一言メモ:迷った様子など
「狙いとの一致」は、準備で書いた一文と比べ、○(ほぼ同じ)、△(一部同じ)、×(別物)の3段階で付けます。あとから付け直さないよう、判定は記録の直後に行います。言葉はまとめ直さず、参加者が言ったままの形で残してください。
第2段階は別の表にします。参加者ごとに「遊んでみたい見た目」「内容に合って見える見た目」「読みにくい見た目」と、それぞれの理由を記録します。
第1段階の読み方
名前ごとに、○の数と、想像された内容がどれだけ揃ったかを見ます。目安として、全体の半数以上が○なら、その名前は狙いを伝えていると考えます。これは統計的な根拠のある数字ではなく、判断に迷わないために自分で決める線です。実験の前に、自分の基準を書いておくと、結果を見てからの後付けを防げます。
典型的なパターンは三つあります。
- 想像が揃い、狙いとも一致:名前は十分に伝わっています。
- 想像が揃うが、狙いとは違う:最も注意が必要です。参加者が同じ誤解をしているので、期待外れの原因になり得ます。名前を変えるか、紹介文で補うかを検討します。
- 想像が人によって割れる:名前が曖昧であることを示します。ただし、割れること自体は悪い結果ではありません。興味を引く名前の場合もあるので、「割れた答えのどれが作品に近いか」を見ます。近い答えが多いなら、紹介文で補えば足ります。
第2段階の読み方
選ばれた数よりも、理由の中身に注目します。
- 「読みにくい」「小さいと潰れる」という理由が出た見た目は、好みではなく可読性の問題なので、修正を優先します。
- 「遊んでみたい」と「内容に合って見える」で選ばれた見た目が違う場合は、目を引く見た目と中身を伝える見た目が分かれている状態です。どちらを優先するかは作者の判断になります。
- 全員がばらばらに選んだ場合は、見た目の差が選択に効いていない可能性があります。名前や紹介文のほうに時間を使うほうが実りがあります。
人数が少ないので、1人の強い意見に引きずられないよう注意してください。複数人が同じことを言ったかどうかを重視します。
起こりやすい誤り
- 作者が説明してしまう:第1段階で「実はこういうゲームで」と補足すると、名前だけで伝わるかを測れなくなります。質問以外は話さないでください。
- 誘導する質問:「冒険っぽいですか」のように答えを含んだ聞き方は避け、「どんなゲームだと思いますか」と開いた形で聞きます。
- 順番の効果:名前も見た目も、見せる順番を固定すると最初か最後のものが有利になります。必ず入れ替えてください。
- 候補の出来の差:1つだけ丁寧に作り込み、他は急ごしらえにすると、「丁寧さ」が選ばれただけになります。文字組みや色以外の要素は揃えます。
- 身近な人だけに聞く:友人は作者への気遣いで好意的に答えがちです。意見を言いにくい相手の本音は、「どれが一番分かりにくいですか」のように否定的な質問で引き出せます。
- 大きい画像だけで判断する:一覧では小さく表示されるので、必ず縮小した状態でも見せてください。
- 結果を数字だけで決める:5〜8人の傾向を多数決の結論と取り違えないようにしてください。
次の行動
まず今の作品名の候補を3〜4個書き出し、「この作品はこういうゲームです」という一文を決めてください。アソバースには、公開前に内容を確認できる下書き保存があるので、名前や紹介文は下書きの状態で整えられます。公開後も内容は更新できますが、作者が入力した作品名は日本語・英語の表示切り替えでは書き換わらないため、英語でも見せたい場合は作者自身で用意します。
公開後に名前を変えてプレイ回数の増減を見る方法もありますが、プレイ回数は作品の起動回数であって人数ではありません。公開時期や掲載の状況といった別の要因も混ざります。名前や見た目の評価には、変更前後の数字よりも、今回のような第三者の声のほうが向いています。
