観察結果を作者以外に見せると、違う問題が見つかるのか:最初の30秒の記録で確かめる設計書
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

自作ゲームの最初の30秒を、誰かが遊ぶ様子から記録したとします。作者はその記録を読み、「タイトル画面のボタンが小さくて探された」「説明文が長い」と3件の問題を書き出しました。次にその記録を、ゲームを知らない別の人に渡します。同じ記録なのに、挙がってくる問題は同じでしょうか。 この記事が確かめるのは、その一点です。作者は自分のゲームの意図を知っているため、記録の空白を無意識に補って読んでしまうことがあります。第三者は補う材料を持たないので、記録に書かれた事実だけで読むことになります。そのとき作者の問題リストと第三者の問題リストにずれが出るのか、出るならどんな種類のずれなのかを、自分の手で測る実験を設計します。結果はこの記事には書きません。ゲームも読み手も人によって違うので、答えは実際に行った人のところで出ます。
問いと準備:何を比べるのか
比べる対象は「同じ観察記録から作られた問題リスト」です。観察そのものを人に任せるのではなく、記録を読む段階を人に任せます。ここを混ぜると、何の差を見ているのか分からなくなります。
実験には二つの層があります。
- 第1層(観察):プレイヤー役が、起動から30秒間遊ぶ様子を記録する。
- 第2層(読み):その記録を作者と第三者がそれぞれ読み、問題リストを作る。
比較するのは第2層だけです。第1層の記録は全員に共通の素材として固定します。
準備するものは次のとおりです。
- 試作中でも構いませんので、ブラウザで開ける自作ゲームを1本用意します。HTMLをそのまま開く方法でも、アソバースの投稿画面にある「表示の確認」で動作を見る方法でも使えます。
- プレイヤー役を2〜3人。作者以外で、そのゲームを一度も遊んだことがない人にします。
- 読み手役を2〜3人。作者以外で、できればプレイヤー役とは別の人にします。同じ人だと、見た光景の記憶が記録の読みに混ざります。
- 画面録画とタイマー。録画する場合は、画面に映る範囲と保存期間を事前に伝えて同意を得ます。個人情報が映らない状態で始めてください。
- 記録シートと問題リストの用紙(形式は後述)。
手順:予測、観察、読み、突き合わせ
1. 予測メモを先に書く
観察の前に、作者が次の3点を紙に書いて封じておきます。
- 最初の30秒でプレイヤーが最初に押す場所
- つまずくと思う箇所(最大3つ)
- 直したいと思っている点(最大3つ)
あとから「最初から分かっていた」と感じる後知恵を防ぐための記録です。省略すると、結果の読み方の段階で比較の基準が失われます。
2. 30秒を観察する
プレイヤー役にはゲームのURLまたはファイルだけを渡し、遊び方の説明はしません。「感じたことを声に出してもらって構いません」とだけ伝えます。開始の合図から30秒で打ち切ります。作者は横で黙って見ているか、録画を後で見返します。助けたくなっても口を出さないことが条件です。
プレイヤー役ごとに、毎回新しい状態(初回起動の状態)で始めます。ブラウザを開き直す、保存データのない状態にするなど、前の人の進行が残らないように気を付けます。
3. 作者が問題リストAを作る
記録を読み、問題を最大5件まで書き出します。1件ごとに次の列を埋めます。
- 該当する秒数
- 事実(記録に書かれていること、または画面に映っていること)
- 解釈(なぜそうなったと思うか)
- 提案は書かない(この段階では空欄にします)
提案を禁じるのは、解決策に飛ぶと「何が起きたか」の確認が薄くなるためです。
4. 第三者が問題リストBを作る
読み手役には、記録シート(または録画)だけを渡します。ゲームの意図、作者の予測メモ、作者のリストAは見せません。口頭の補足もしません。読む時間は10分を上限にし、各自が離れた場所で、独立してリストBを作ります。形式は作者と同じで、最大5件、事実と解釈を分けます。
5. 突き合わせる
全員のリストが出そろったら、初めて並べます。この作業は次の章の分類表に沿って行います。
記録の取り方:何を、どの単位で、何回
記録シートは1人のプレイヤーにつき1枚です。列は次の4つです。
- 0〜、プレイヤーの行動:画面を見ている、画面の状態:タイトル表示、発話(そのまま):「どこ押すの?」
記録の単位は「秒」です。5秒刻みの区切りに丸めず、行動が起きた時点を1行にします。止まっていた時間は、「3〜9秒:操作なし」のように範囲で書きます。発話は言い換えず、聞こえた言葉をそのまま書きます。「迷っていた」と書くと解釈が入るためです。
回数の目安は次のとおりです。
- プレイヤー役:2〜3人(1人1回、30秒)
- 読み手役:2〜3人(全員が同じ記録セットを読む)
- 問題リスト:読み手1人につき1枚、最大5件
人数が少ないと偏りが読み取れないので、プレイヤー役は最低2人にしてください。それでもこの人数は、統計的な結論を出すためのものではありません。ずれの種類を見つけるための小さな実験と考えてください。
結果の読み方:どのずれが何を示すか
リストAとリストBを並べ、問題を内容ごとにまとめます。表現が違っても、同じ秒数の同じ事実を指しているなら同じ問題として扱います。そのうえで、各問題を次の三つに分けます。
- 一致、状態:AにもBにもある、読み方:記録が事実を十分に語っており、作者の読みが第三者と近いと考えられます。優先的に直す候補です。
- Bだけ、状態:第三者だけが挙げた、読み方:作者の盲点の候補です。ただし読み手の好みの可能性もあるため、下の確認をします。
- Aだけ、状態:作者だけが挙げた、読み方:記録に根拠があるか確認します。根拠がない場合は、作者の頭の中にある文脈知識で補っている可能性があります。
Bだけの問題を確かめる
Bだけの問題が、本当に記録に基づくものか、読み手の好みかを分けます。見るべき条件は二つです。
- 「事実」の列に、記録の特定の行(秒数)を引用できているか。引用できず感想だけなら、好みの可能性が高くなります。
- 複数の読み手が独立に挙げているか。1人だけなら保留、2人以上なら有力な候補です。この「2人以上」は目安であり、確定の基準ではありません。
Aだけの問題を確かめる
作者だけが挙げた問題について、事実の列に根拠となる秒数があるかを見ます。ない場合は、「この矢印の意味は分かるはず」のように、作者の知識を前提にした記述になっていないかを確認します。根拠がない問題は、記録からは裏付けられないものとして別枠に置き、次の観察で確かめる項目にします。
予測メモとの照らし合わせ
最後に、封じておいた予測メモを開きます。見るのは「当たったか」より、リストBにあって予測メモにもAにもない問題があるかどうかです。それがあれば、作者の想定の外にあった問題です。なければ、今回の記録の範囲では、作者の想定と第三者の読みが近かったことになります。どちらの結果でも、次に何を観察するかの手がかりになります。
誤りやすい点
実験の信頼性を落としやすい点を挙げます。
- 読み手に口頭で補足してしまう。 「ここは本当は〜という意図で」と言った時点で、第三者の読みが作者の読みに近づきます。補足は突き合わせが終わるまで我慢します。
- プレイヤー役と読み手役が同じ人になる。 遊んだ記憶が記録の空白を埋めてしまいます。別の人にしてください。
- 観察が30秒を超える。 31秒目以降の行動が記録に混ざると、「最初の30秒」の問いから外れます。タイマーで打ち切ります。
- 事実と解釈が混ざる。 「説明が分かりにくかった」は解釈です。「説明文を表示後、8秒間操作がなかった」が事実です。混ざったリストは突き合わせられません。
- 粒度がそろわない。 1件に複数の問題を詰めるリストと、細かく分けるリストでは、一致の数え方が変わります。1件につき1つの事実という決まりを、全員に最初に伝えてください。
- Bを見て弁護を始める。 突き合わせの場は、作者が反論する場ではありません。まず分類だけを行い、直すかどうかの判断は別の時間にします。
- 少人数の結果を一般化する。 2〜3人の記録から「ほとんどのプレイヤーが」と言うことはできません。分かるのは、その記録の範囲で何が見えたかです。
次の行動
まず自作ゲームを1本選び、プレイヤー役を2人、読み手役を2人探してください。観察の前に予測メモを書いて封をし、記録シートを1枚印刷または作成するところから始められます。突き合わせが終わったら、一致した問題とBだけの問題から1件ずつ選んで直し、もう一度30秒を観察してください。

