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観察した人の年齢・端末・経験を記録する意味

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

少しずつ変化するゲーム模型を並べた棚から、以前の状態の箱を取り出す手。
記事のテーマをもとに制作したAI生成の写真風イメージ。

自作のゲームを3人に初めて遊んでもらい、最初の30秒だけを横で見る場面を考えてみます。1人目は最初の操作まで迷わず進みました。2人目は画面を見たまま10秒近く動きません。3人目は何度か画面の端を触り、やがて「どこを押すのですか」と尋ねます。この3人の差を、ゲームの問題として直すべきか、たまたまそういう人だったと流してよいのか。観察の価値は、その判断で決まります。 判断の材料になるのが、観察した人の背景です。年齢、使っていた端末、似たゲームの経験などです。ただし背景を何でも集めれば役に立つわけではありません。名前や細かい属性まで書き留めると、読み返すときに邪魔になるうえ、観察に協力してくれた人への配慮としても過剰です。 この記事では「どの背景情報なら結果の読み方が変わるのか」を基準に、記録する項目と記録しなくてよい項目を分けます。そのうえで、5〜8人程度の短い観察を自分で行える設計書の形にまとめます。結果は書きません。観察して答えを出すのは読者自身です。

この記事の目次
  1. 背景情報は「結果を割る」ために取る
  2. 記録する情報と、記録しなくてよい情報
  3. 準備と手順
  4. 結果の読み方
  5. 誤りやすい点
  6. 次の行動

背景情報は「結果を割る」ために取る

背景情報の役割は、観察結果を分けて読むことです。たとえば「3人中2人が最初の10秒で止まった」という事実だけでは、直し方が決まりません。止まった2人がどちらもスマートフォンだったのか、どちらも似たゲームを遊んだことがなかったのか、あるいは端末も経験もばらばらだったのか。これで次の一手がまったく変わります。

考え方を整理すると、背景情報は次の3つの切り分けに使えます。

  • 端末・入力方法の切り分け:操作の伝え方や、画面の大きさに由来する問題かどうかを確かめます。
  • 経験の切り分け:ジャンルの約束事を知っている前提で作っていないかを確かめます。
  • 偶然の切り分け:特定の背景に偏らない現象なら、ゲーム自体の分かりにくさを疑います。

公式作品の設計を例にします。「紙ひこうき郵便」は、左右キー、ドラッグ、矢印ボタンの3通りで操縦できると確認されています。このような作品では、観察した人がどの入力手段を使ったかによって、最初の30秒の様子が変わる可能性があります。どの手段を使ったかを残していなければ、「操縦で戸惑った」という記録は原因を絞れません。実際にどの端末でどの手段が使われやすいかは、作品を開いて自分の目で確かめる部分です。

「潮目のオセロ」は矢印キーとEnterで操作できます。キーボード操作を想定した作品を、タッチ画面の人が見た場合の動きは、キーボードの人とは別に読むべきです。「WAVE / WAVE」は、狭い画面でステップが横スクロールになります。画面の広さを記録しておくと、「ステップの全体が見えなかった」という観察が端末側の事情か、配置の問題かを区別できます。

記録する情報と、記録しなくてよい情報

基準はひとつです。その情報によって結果の読み方が変わると、観察の前に説明できるかを問います。説明できない項目は取りません。

  • 端末の種類、記録の形:スマートフォン/タブレット/パソコンの3択、記録する理由:画面の大きさと入力方法の違いを切り分けるため
  • 入力方法、記録の形:タッチ/マウス/キーボード/ゲームパッドなど、実際に使ったもの、記録する理由:操作説明が伝わったかを読むため
  • 画面の向き、記録の形:縦/横(スマートフォン、タブレットのみ)、記録する理由:表示の収まり方に影響するため
  • 音の状態、記録の形:出ていた/消していた/聞こえない環境、記録する理由:音が前提の演出を見落としていないか確かめるため
  • 類似ジャンルの経験、記録の形:「ほぼない/ときどき/よく遊ぶ」の3段階、記録する理由:約束事を知っている前提の設計かを確かめるため
  • そのゲームを以前見たか、記録の形:はい/いいえ、記録する理由:初見の観察として扱えるかを確認するため
  • 年齢、記録の形:「10代/20代/30代…」の幅、または「答えない」、記録する理由:文字の大きさや用語の通じ方を読む補助として。任意

一方、次の情報は記録しなくてよい、あるいは記録すべきでないものです。

  • 名前、メールアドレス、SNSのアカウント。観察結果を読むうえで必要になりません。
  • 正確な生年月日や住所、職業、収入。年齢の幅で足りる場面がほとんどです。
  • 端末の細かい機種名やOSの版数。不具合が疑われるときだけ、その場で追記します。
  • 性別など、ゲームの分かりやすさと結びつけて読む根拠が事前に説明できない属性。

最後の項目は特に注意が必要です。「この属性の人はこうだろう」という先入観を、記録が後押ししてしまうことがあります。記録項目が増えるほど、後から都合のよい理由を探しやすくなります。項目は少なく保つほうが、読み間違いを防げます。

年齢は幅で、しかも任意にします。経験は「何年遊んだか」のような細かい質問を避け、3段階の自己申告で止めます。細かく聞いても、本人も正確には答えられず、数字だけが一人歩きするためです。

準備と手順

準備するもの

  • 記録シート。表計算ソフトでも紙でも構いません。列は人ごとに「背景(上の表の項目)」「最初の操作までの秒数」「手が止まった回数」「触れた場所」「口にした言葉」を用意します。
  • 時計またはストップウォッチ。
  • 観察の目的の一文。たとえば「最初の30秒で、操作の仕方が伝わるかを見る」と書いておきます。
  • 観察する人に伝える短い説明。「ゲームではなく画面の分かりやすさを見ています」「途中でやめても構いません」「記録するのは操作の様子と、端末・経験の大まかな区分だけです」と伝えます。

手順

  1. 観察の前に、背景ごとの予想を書きます。 たとえば「タッチで遊ぶ人は、操作ボタンの位置で止まるのではないか」のように、「この背景が効くなら、こう見える」の形で2〜3行です。後から結果に合わせて予想を直せないよう、先に書いて日付を残します。
  2. 観察する人を選びます。 目安は5〜8人で、端末の種類や経験の段階がなるべく異なる組み合わせにします。同じ背景の人を最低2人含めると、後で「偶然か、背景に由来するか」を読みやすくなります。あくまで設計上の目安で、人数に統計的な意味はありません。
  3. 開始前に、背景の質問を選択式で聞きます。 所要は30秒以内にします。「答えたくない」を必ず選べるようにします。
  4. ゲームを開いたところから30秒を計ります。 観察者は黙って見ます。質問されても、その場では答えず「そのまま続けてください」と返し、答えたくなった内容は「迷った場所」として記録します。
  5. 30秒の間に次の単位で記録します。 最初の操作までの秒数は1回。手が止まった回数は、3秒以上動かなかった回を1回と数えます。触れた場所は画面の位置で書きます。口にした言葉は、聞こえたとおりに書きます。
  6. 終了後の聞き取りは、1〜2問に絞ります。 「何をするゲームだと思いましたか」と「いちばん分からなかった場所はどこですか」です。ここで解説を始めると、次の人の観察に影響します。
  7. 同じ人には2回目をしてもらいません。 目的は初見の30秒なので、初回だけを記録します。

結果の読み方

記録がそろったら、まず背景の列で並べ替えます。次に、止まった場面や迷った場所を横に並べて、同じ現象が何人に出たかを見ます。パーセントは出しません。5〜8人では、割合は印象を強く見せるだけになるためです。

判断の基準は次の3つに整理できます。

  • 背景が違っても同じ場所で止まる場合。 ゲームそのものの分かりにくさを疑います。説明文、ボタンの見た目、最初の画面の情報量が候補です。
  • 特定の背景の人にだけ起きる場合。 その背景に向けた伝え方が足りない可能性があります。端末が偏っているなら、操作説明や画面の収まりを、経験が偏っているなら、用語や約束事の説明を見直します。
  • 1人だけに起きた場合。 保留にします。ほかの人にも出るかを、次の観察で確かめます。

例として、手が止まった人の多くが「入力方法:タッチ」だったと記録されたとします。このとき、操作を示す表示がタッチでは目立たないのかもしれません。一方、止まった人の経験が「ほぼない」に偏っていたなら、ゲームの約束事を前提にした導入が原因かもしれません。結果の解釈は、記録した背景と見比べて初めて成り立ちます。

予想と違う結果が出たら、予想のほうを直します。最初に書いた予想と実際の差を一行で残しておくと、次の観察に役立ちます。

誤りやすい点

属性で人を決めつけること。 年齢が高いからできない、若いからできるといった読み方は、記録の目的に反します。年齢は、文字の大きさや言葉の通じ方を考える補助にとどめます。同じ年代でも端末や経験は人ごとに違います。

観察の後から項目を足すこと。 結果を見てから「この背景が効いたのでは」と項目を足すと、都合のよい説明を探す作業になります。気づいたことは、次回の観察項目の候補として別に書き留めます。

経験を細かく聞きすぎること。 「週に何時間遊ぶか」などは、答える側も曖昧です。3段階で十分です。

身近な人だけで観察すること。 制作の経緯を知っている人は、初見の観察にはなりません。「そのゲームを以前見たか」の項目で見分けます。

公開後の数字と混同すること。 アソバースで作品を公開して得られるプレイ回数は、作品を起動した実測回数であり、人数ではありません。同じ端末・作品の30分以内の再起動は重複として除かれます。また、ゲストとして遊んだ人の履歴は端末内に保存されるため、作者側から年齢や端末を知ることはできません。公開後のプレイ回数やレビューは、この観察の代わりにはなりません。背景付きの30秒の観察は、画面を見ながら人に頼んで行うものとして別に考えます。

観察した人の情報を持ち続けること。 記録は、結果を読み終えたら不要な項目から整理します。個人が特定できる記録は、そもそも作らないのが最も安全です。

次の行動

次の観察で使う記録シートを、上の表の7項目から始めて作ってみてください。書き込む前に「この項目で結果の読み方がどう変わるか」を一行ずつ添え、説明できない項目は削ります。そのうえで、観察する5〜8人の端末と経験が偏りすぎていないかを確かめてから、最初の30秒を計り始めます。