「次に何をすればいいか」を聞かれた回数を数える
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

友達にゲームを渡し、横で黙って見ている場面を考えてみます。タイトル画面を開いた相手が、数秒ほど画面を眺めてからこちらを向き、「これ、次は何をすればいいですか」と聞きます。作者はつい「ここを押すんです」と答えたくなりますが、その一言で、画面が案内として足りているかどうかを確かめる機会が消えてしまいます。 この記事で確かめるのは、プレイヤーが口にした「次に何をすれば」の回数と、それが出た画面です。質問は、案内が足りない場所を知らせるサインです。誰がどの画面で何回聞いたかを数えれば、「なんとなく分かりにくい」という感想が、「画面3で、参加者の半数が操作対象を聞いた」という直せる形の情報に変わります。 以下は、そのための実験の設計書です。結果は書きません。準備、手順、記録の取り方、結果の読み方、間違えやすい点を順に示すので、自分の作品で実施して答えを出してください。
何を「質問」として数えるか
最初に決めるのは、数える対象です。「次に何をすればいいですか」という文言だけに絞ると、取りこぼしが出ます。プレイヤーは別の言い方で、同じ迷いを口にするからです。
次の4種類にそろえて記録します。
- 目的の質問:「何をすればいいの」「ゴールはどこ」など、やることそのものが見えていない発言です。
- 場所の質問:「どこを押すの」「これ、触れるの」など、操作する対象が見つかっていない発言です。
- 可否の質問:「押していいですか」「まだ待つんですか」など、操作してよいか確信が持てない発言です。
- 終了の質問:「終わりですか」「これで合ってますか」など、結果が伝わっていない発言です。
数え方の単位も先に決めます。1回の発言を1件とし、同じ画面で間をおいて繰り返された質問は別件として数えます。独り言のように漏れた疑問も、相手に向けた質問と同じ扱いで記録します。
もう一つ、「質問が出なかった停止」も記録の対象にします。無言のまま10秒ほど手が止まったときは、「停止」として1件入れます。黙って考え込む人は、口に出す人より多いからです。基準にする秒数は自分で決め、全員に同じ値を使ってください。
準備するもの
必要なのは、次のものです。
- 試作した作品を、ブラウザでそのまま開ける状態にしたもの。アソバースに投稿する場合は、公開前の「表示の確認」の段階でも使えます。
- ゲームを初めて見る人を3〜5人。作者の家族や制作仲間は、ルールを知っている可能性が高いので避けます。
- 観察者が1人。作者本人が務める場合は、プレイヤーの操作に触れない位置に座ります。
- 記録用の端末。プレイヤーの画面とは別のものを使います。
- 画面の名前の一覧。タイトル、説明、1面の最初、1面の途中、結果画面のように、遷移ごとに番号を振ります。
画面の番号は、実施前に決めて固定します。実施中に「この辺り」と曖昧に記録すると、後で集計できません。
プレイ画面を録画する場合は、必ず相手の同意を得てください。録画がなくても実験は成り立ちます。観察者の記録と、プレイ後に見返すためのメモがあれば足ります。
観察者には守るルールがあります。
- 質問には答えず、「どうなると思いますか」と聞き返します。
- 「思ったことを声に出してください」と最初に一度だけ頼みます。
- ヒントや説明を、途中で足しません。
- 時間がかかっても、最後まで操作を続けてもらいます。
手順と記録のつけ方
手書きの記録シートでも構いませんが、画面の切り替えと発言のタイミングを同時に追うのは大変です。次の小さなHTMLを、観察者側の端末で別タブに開くと、キーを押すだけで記録できます。外部通信はなく、このファイル単体で動きます。
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<title>質問ログ</title>
<p>1〜9=画面切替 / Q=何を W=どこ E=できる T=終わり / S=停止 / D=出力 / R=最初から</p>
<pre id="o"></pre>
<script>
let screen = "1", t0 = performance.now();
const log = [];
const kinds = { q: "何を", w: "どこ", e: "できる", t: "終わり", s: "停止" };
const o = document.getElementById("o");
function sec() { return Math.round((performance.now() - t0) / 100) / 10; }
function show() {
o.textContent = "画面 " + screen + " / " + sec() + "秒 / " + log.length + "件";
}
addEventListener("keydown", e => {
const k = e.key.toLowerCase();
if (k >= "1" && k <= "9") screen = k;
else if (kinds[k]) log.push([sec(), screen, kinds[k]]);
else if (k === "r") { t0 = performance.now(); log.length = 0; }
else if (k === "d") {
o.textContent = "秒,画面,種類\n" + log.map(r => r.join(",")).join("\n");
return;
}
show();
});
show();
</script>実施の流れは次のとおりです。
- プレイヤー1人につき1回、Rキーで記録を初期化します。
- プレイヤーが作品を開いた瞬間に、観察者は画面「1」から記録を始めます。
- 画面が変わるたびに、対応する数字キーを押します。
- 発言があったら、その種類のキーを押します。判断に迷ったときは、聞いた言葉をメモ用紙に書き留め、後で分類します。
- 無言で10秒止まったら、Sキーを押します。
- プレイが終わったらDキーで出力し、内容をそのまま保存します。プレイヤー名ではなく、「P1」「P2」のような番号で管理します。
このツールは経過秒も保存します。最初の30秒に集中したい場合は、秒の列で絞り込んでください。作品の最初の30秒と、画面が変わった直後の30秒を分けて見ると、「入口の案内」と「途中の案内」の差が出やすくなります。
なお、プレイヤーが同じキーボードを使う作品では、観察者のキー入力が干渉します。観察者は必ず別の端末を使ってください。
結果の読み方
プレイヤー全員分のログが集まったら、画面ごと、種類ごとに件数を数えます。まず、次の形の表を作ります。
- 1、何を:、どこ:、できる:、終わり:、停止:、発生した人数:
- 2、何を:、どこ:、できる:、終わり:、停止:、発生した人数:
- 3、何を:、どこ:、できる:、終わり:、停止:、発生した人数:
表の右端は、件数の合計ではなく、その画面でひとつでも質問や停止があった「人数」にします。同じ人が5回聞いた画面より、5人が1回ずつ聞いた画面のほうが、案内の問題である可能性が高いからです。
判断の目安は、実施前に自分で決めておきます。たとえば「参加者の半数以上に出た画面は修正対象にする」「1人だけなら個人差として保留する」といった基準です。実験の後で基準を動かすと、見たい結果に合わせてしまう危険があります。
種類によって、直す方向が異なります。
- 「何を」が多い画面は、目的が見えていません。目標を示す一文や、ゴールの見える配置を検討します。
- 「どこ」が多い画面は、操作対象が見つかっていません。大きさ、位置、色、動きなどの手がかりを見直します。
- 「できる」が多い画面は、操作してよいかが読み取れていません。押せる見た目、反応の有無、待ち状態の表示を確認します。
- 「終わり」が多い画面は、結果の知らせが不足しています。音、表示、画面変化など、成否を示す手がかりを増やします。
- 「停止」が多い画面は、質問になる前に止まっています。聞き返しや、プレイ後の振り返りでつまずいた理由を確認します。
直したら、同じ人数、同じ手順、同じ画面番号でもう一度測り、表を並べます。ただし、前回と同じ人には頼めません。初見であることが条件だからです。新しい人を同じ人数集めてください。
起こりやすい誤り
この実験で多い失敗は、次の6つです。
- 観察者が答えてしまう:ひとつ答えると、以降のプレイヤーの行動が変わります。聞き返すだけにとどめてください。
- 質問が出ない人を「問題なし」と数える:黙って止まる人は多くいます。停止の記録を忘れないようにします。
- 少ない人数で断定する:3人の記録は、傾向を示す手がかりにすぎません。少ない人数で出た差は、確定ではなく仮説として扱います。
- 説明文を足して終わりにする:質問が多い画面に文章を追加しても、読まれなければ件数は減りません。まず見た目、配置、反応の手がかりを検討します。
- 複数の箇所を同時に直す:どの修正が効いたのか分からなくなります。画面ごとに1つずつ直して測ります。
- 画面番号が途中で変わる:実施中に画面を増やしたり番号を振り直したりすると、集計が崩れます。事前に固定してください。
比較の練習をしたい場合は、公式作品を開き、最初の画面だけを友人に見せる方法もあります。「どこを触ればいいか」を尋ねられるか、無言で止まるかを観察できます。ただし、作品の仕様は作品を開いて確かめるようにし、他人の作品への質問を設計の結論にしないでください。
次の行動
自分の作品の画面に、1から順に番号を振ってください。そのうえで、初見の人を3人探し、上のHTMLを別の端末で開いて実施します。表の中で人数が多かった画面を1つだけ選んで直し、新しい3人で同じ手順をもう一度行って、件数と人数の変化を比べてみてください。

