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初めての人がヒントを押すまでの時間を測る

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

定番の盤面に一つだけ赤い通り道を加え、選択が変わる様子を描いた版画風イラスト。
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

初めて遊ぶ人が、ゲームを開いてから最初にヒントを押すまでに何秒かかるのか。この数字だけでは、難しさについてほとんど何も分かりません。10秒で押した人は、最初から頼るつもりだったのかもしれませんし、入口の説明が足りず何をしてよいか分からなかったのかもしれません。反対に3分間押さなかった人は、楽しんで試行錯誤していたとも、ヒントボタンに気づいていなかったとも考えられます。 それでも、ヒントを押す瞬間には情報が詰まっています。押す直前に手が止まっていたのか、操作を重ねていたのか。何度か「戻す」を使ってから押したのか。押したあとにヒントに従ったのか、無視したのか。時間と前後の行動を一緒に記録すれば、プレイヤーが難しさをどう感じていたかを、作者が推し量る材料になります。 この記事は、その計測を自分で行うための設計書です。結果は書きません。準備、手順、記録の取り方、結果の読み方、誤りやすい点を順に説明します。自作のゲームがあれば、そのまま使えます。

この記事の目次
  1. 問いを一つに絞る
  2. 準備と手順
  3. 何をどの単位で記録するか
  4. 結果の読み方
  5. 起こりやすい誤り
  6. 次の行動

問いを一つに絞る

最初に決めるのは、次の問いです。

初めての人は、どんな状況になったときにヒントへ手を伸ばすのか。

「何秒で押すか」は答えの一部にすぎません。問いを分解すると、次の三つになります。

  1. 押すまでに何秒かかったか。
  2. 押す前の数十秒に、どんな操作をしていたか。
  3. 押したあと、ヒントは行動を変えたか。

反対に、この実験では測らないものがあります。クリア率、総プレイ時間、面白さの評価です。これらも大事ですが、混ぜると読み取りが難しくなります。ここで見るのは「困ったと感じた瞬間」の痕跡だけです。

ヒントの形がゲームごとに違う点にも注意が必要です。アソバースの公式作品で確認できる範囲では、次のような違いがあります。

  • 「潮目のオセロ」には、理由付きヒントがあります。
  • 「月夜の配達」には、次の一歩を照らすヒントがあります。
  • 「プリズムの道」には、一歩だけのヒントがあります。
  • 「かたちのあいだ」には、次の一手のヒントがあり、最短とは限らないと明示されています。

何を教えるヒントかによって、押したくなる状況も、押したあとの行動も変わるはずです。これは設計から読み取れることです。具体的な見え方は、各作品を開いて確かめてください。自作のゲームでも、ヒントが「答えそのもの」なのか「方向だけ」なのかを先に言葉にしておくと、後の解釈が楽になります。

準備と手順

準備するもの

  • ヒントボタンがあり、1回のプレイが数分で区切れるゲーム。自作でも、公式作品など他の作品でも構いません。
  • 初めて遊ぶ人を、できれば5人前後。作者の友人や家族ばかりに偏らないようにします。
  • ストップウォッチ、または後述のログ用コード。両方あれば照合できます。
  • 記録用紙。人ごとに1枚用意します。
  • 終了後に聞く質問を3つ。ヒントはいつ見つけたか、押したいと思った瞬間はあったか、押したくなかった理由はあるか、の3つです。

人数の5人は目安です。傾向の手がかりを得るための人数で、統計的な結論を出すための数ではありません。

手順

  1. 参加者には、ゲームの名前以外はほぼ伝えません。「自由に遊んでください。止めたくなったらいつでも止めて構いません」とだけ言います。
  2. ヒントの場所や使い方は説明しません。最初に説明すると、発見性そのものが測れなくなります。
  3. 観察者は画面の後ろか横に座り、話しかけません。質問されたら「思ったとおりに進めてください」と返します。
  4. 開始の合図と同時に、計測を始めます。タイトル画面やルール説明を読む時間は、別枠で記録します。
  5. 最初のヒント押下の時刻を記録します。押した場合は、その後30秒の行動も記録します。
  6. 区切りまで遊んだら、または参加者が止めたら終了します。そのあと、先の3つの質問をします。
  7. 全員が終わったら、数値を並べます。個人ごとの物語より先に、一覧の形にします。

制限時間は、先に決めておきます。たとえば1人あたり最大5分とします。ヒントを押さないまま終わる人も、結果として扱います。

何をどの単位で記録するか

記録は、人ごとに1行で残せる形にします。

  • 最初の操作までの時間、単位:秒、取り方:操作が可能になってから最初のクリックまで
  • 最初のヒントまでの時間、単位:秒、取り方:操作が可能になってから最初のヒント押下まで
  • ヒント前の操作回数、単位:回、取り方:ヒント以外のボタンや盤面への操作
  • ヒント前の「戻す」回数、単位:回、取り方:戻す機能がある場合のみ
  • ヒント直前の無操作時間、単位:秒、取り方:最後の操作からヒント押下まで
  • ヒント後30秒の行動、単位:分類、取り方:従った/別の操作/同じ操作の繰り返し/連続でヒント
  • 終了後の自己申告、単位:短い文、取り方:3つの質問への答え

「最初のヒントまでの時間」だけでなく、直前の無操作時間を取るのがこの実験の要点です。同じ60秒でも、操作を続けた末の60秒と、50秒間止まってからの60秒では、意味が違うからです。

ゲームが自作でコードを足せる場合は、クリックの時刻を残す最小のログが役に立ちます。次のコードは、単独で動く一つのHTMLです。ボタンを押した時刻を、読み込みからの秒数で記録します。

html
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<button id="a">操作A</button>
<button id="undo">戻す</button>
<button id="hint">ヒント</button>
<button id="dump">ログを出す</button>
<textarea id="out" rows="8" cols="40"></textarea>
<script>
const t0 = performance.now();
const log = [];
function rec(type) {
  const sec = (performance.now() - t0) / 1000;
  log.push({ type, sec: Math.round(sec * 10) / 10 });
}
for (const id of ["a", "undo", "hint"]) {
  document.getElementById(id).addEventListener("click", () => rec(id));
}
document.getElementById("dump").onclick = () => {
  out.value = JSON.stringify(log);
};
</script>

実際のゲームに入れるときは、t0 を「プレイヤーが操作できる状態になった時点」に置き換えてください。「ログを出す」ボタンは観察者用なので、参加者に見せない配置にします。ログは画面を開いている間だけメモリーに残る形にしてあります。終了後すぐにコピーして、記録用紙の数値と照らし合わせます。

結果の読み方

数値が揃ったら、「押すまでの時間」と「直前の様子」を組み合わせて読みます。次の表は、読み方の枠組みです。ここに書いた解釈は仮説であり、確定ではありません。必ず終了後の自己申告で確かめます。

  • 短い、直前の様子:操作が少ない、考えられること:入口で何をすればよいか分からない。または最初から頼るつもりだった、確かめる質問:最初の画面で何をする場面だと思いましたか
  • 長い、直前の様子:操作が多い、考えられること:試行錯誤を楽しんでいる。または疲れてきている、確かめる質問:押したいと思った瞬間はありましたか
  • 長い、直前の様子:途中で手が止まる、考えられること:迷いがあるが、押すのをためらっている、確かめる質問:押さなかった理由はありますか
  • 押さない、直前の様子:操作が少ないまま終了、考えられること:ヒントに気づいていない。または途中でやめた、確かめる質問:ヒントがあることに気づいていましたか
  • 押さない、直前の様子:操作が続き区切りまで進んだ、考えられること:ヒントが不要だった、確かめる質問:難しさはどう感じましたか

「短い」「長い」の境目は、記事では決めません。自分のゲームの1回のプレイ時間や、参加者全員の中央値を基準にします。5人分の中央値を出し、各人がそれより早いか遅いかで見るのが無難です。平均は、ヒントを押さなかった人の扱いで大きくぶれるので避けます。

ヒント後の行動は、ヒントの質を測る手がかりになります。

  • 従った場合:ヒントは役に立っています。ただし、従ったあとに別の場所で詰まっていないかも見ます。
  • 別の操作をした場合:ヒントの意味が伝わっていない可能性があります。表示の位置や言葉を見直す材料です。
  • 同じ操作を繰り返した場合:ヒントを読む前に手が動いている、または読んでも納得できていない可能性があります。
  • 連続でヒントを押した場合:1回の情報量が足りないか、押した結果が見えにくい可能性があります。

もう一つの使い方は、版を比べることです。たとえば、ヒントボタンの位置や文言を変えた版Bを用意し、別の5人で同じ手順を行います。中央値が動いたかどうかを見ます。同じ人に両方遊ばせると、二度目は慣れが入るので、人を分けるのが原則です。

起こりやすい誤り

  • 説明を読む時間が混ざる。 タイトル画面やルール文を読む時間が、最初のヒントまでの時間に入ると、数字が膨らみます。操作が可能になった時点から測ります。
  • 観察者の存在が行動を変える。 見られていると、押すのをためらう人もいれば、すぐ押す人もいます。距離を置き、反応を示さず、黙って記録します。
  • ヒントの場所が目立たない。 押さなかったのは、難しくなかったのか、見つけられなかったのかが区別できません。終了後に「気づいていましたか」と必ず聞きます。
  • ヒントの内容が悪い。 押しても役立たないと分かった人は、2回目以降を押さなくなります。「押さない」を「困らなかった」と読む前に、ヒント後の行動も見ます。
  • 一つの数字で判断する。 中央値だけで結論を出さず、時間・直前の様子・ヒント後の行動・自己申告の4点が同じ方向を指しているかを確認します。
  • 知人だけで集める。 作者の癖を知っている人は、ヒントが要らない場面で要らず、要る場面で早く押しがちです。可能な範囲で、ゲームを初めて見る人を混ぜます。
  • 人数が少ないことを忘れる。 5人の結果は、改善点を見つける材料です。「全体の傾向」と書くには足りません。

次の行動

まず自分のゲーム、または公式作品の一つを選び、ヒントの種類(答えか方向か)を一行で書き出してください。そのうえで、記録用紙を人数分作り、最初の1人に黙って遊んでもらいます。1人分の「押すまでの時間」と「直前の様子」を並べるだけでも、ヒントの置き方を見直す手がかりが見えてきます。