観察の記録用紙は5項目で足りるか:30秒プレイテストで確かめる設計書
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

自作のブラウザゲームを友人に遊んでもらう場面を考えてみます。後ろから画面を眺めているうちに、「ここで迷っている」「今、笑った」と気づくことが次々に出てきます。しかし終わったあとにメモを見返すと、「タイトル画面で少し迷った?」「操作が分かりにくそう」のような曖昧な一行しか残っていません。次の修正が決まらないまま、記録そのものをつけなくなります。 プレイテストの記録が続かない原因は、観察力よりも用紙の側にあることが多いです。項目が多いと、観察中に書く手が画面を追い越せなくなります。逆に自由記述だけだと、あとで読み返しても比較できません。そこでこの記事は、最初の30秒だけに絞った記録用紙を5項目で作り、それで足りるかを自分で確かめる実験の設計書です。5項目で十分だという結論はあらかじめ置きません。結論は、読者が数人に遊んでもらった記録から出します。
問いを一文にする
実験は、問いを一文で書くところから始めます。この記事では次の形にします。
「最初の30秒の観察について、5項目の用紙で、次に直す一か所を言葉にできるか」
「足りる」の基準は、観察が網羅できたことではありません。記録を読んで、直す候補を一つ言えることです。観察は、ゲームの全体評価ではなく修正の入口を見つけるために行うので、この基準にします。
30秒に絞る理由も、判断の道具として使えます。最初の30秒は、プレイヤーがルールも目的も知らないまま、画面の情報だけで動く時間です。説明文を読まない人、まず触ってみる人、周りを見回す人の違いがそのまま出ます。操作の長さや難易度の話は、その後の時間帯に分けて考えられます。
アソバースの「プレイ回数」は作品の起動を実測した回数で、人数ではありません。同じ端末と作品の30分以内の再起動は重複を除いて数えます。つまり、数字だけでは「最初の30秒で何が起きたか」は分かりません。その部分は、人の目で見る記録でしか補えません。
5項目の中身
用紙に置く5項目は次のとおりです。それぞれ、観察者が目で見て客観的に書けるものだけを選びます。
- 1、項目:最初の操作までの秒数、記入するもの:ゲーム画面が表示されてから、最初に何か入力するまでの秒数
- 2、項目:最初の操作の中身、記入するもの:最初に押した、触った、クリックした場所やキー
- 3、項目:手が止まった箇所、記入するもの:3秒以上入力が途絶えた回数と、そのとき画面に出ていたもの
- 4、項目:声と表情の原文、記入するもの:独り言、つぶやき、笑い、ため息を聞こえたまま書く
- 5、項目:30秒時点の状態、記入するもの:30秒の瞬間に何をしていたか、続けようとしているか
5項目に絞った考え方を、一つずつ説明します。
項目1と2は、始め方の記録です。画面を出してから最初の入力までの時間と、その中身を見ると、最初の画面が「何をすればよいか」を伝えているかが分かります。3秒の基準は、記録を揃えるための目安です。ゲームによって適切な長さは変わるので、必要なら調整してください。
項目3は、迷いの記録です。迷いを「迷っているように見えた」と解釈で書くと、観察者ごとにぶれます。「3秒以上入力がなかった回数」と「画面に何が出ていたか」なら、事実として揃います。
項目4は、観察者の目では見えないものを拾う項目です。ここで大事なのは、解釈ではなく原文を書くことです。「どうすればいいの?」という声と「あ、動いた」という声では、直す箇所が違います。
項目5は、30秒で終わりにしたときの状態です。続けたいのか、やめたいのか、まだ分かっていないのか。ここは本人に聞かず、見えた様子を書きます。
この5つの共通点は、数える、時間を測る、聞こえたまま書く、のどれかで済むことです。評価や感想を求める欄は入れていません。評価は、記録を読み返す段階で行えば足ります。
準備と手順、記録の取り方
準備するもの
- 同じ版のゲーム。公開URLでもローカルのHTMLでも構いませんが、観察する全員に同じ版を渡します。アソバースの作品は、ログイン不要で遊べます。観察する人にアカウントを用意してもらう必要はありません。
- 観察者の画面。プレイヤーの画面とは別に用意します。プレイヤーの後ろから見る場合は、観察者のノートPCかスマホを手元に置きます。
- 用紙。この記事の5項目を印刷するか、手書きで線を引いたものです。人数分を用意します。
- 時計。次に紹介する簡単なタイマーでも、スマホのストップウォッチでも構いません。
観察用の簡易タイマー
自分でストップウォッチを押す余裕がない場合は、次のHTMLをファイルに保存して、観察者の画面で開きます。スペースキーで計測を始め、1キーで「最初の操作」、2キーで「手が止まった」を、経過時間つきで記録します。30秒に達すると自動で「30秒経過」と記録します。外部の通信は使いません。
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<title>30秒ログ</title>
<p id="t">0.0</p>
<p>Space:開始 / 1:最初の操作 / 2:手が止まった</p>
<ol id="log"></ol>
<script>
let start = null, timer = null;
const t = document.getElementById('t');
const log = document.getElementById('log');
function now() { return ((performance.now() - start) / 1000).toFixed(1); }
function add(label) {
if (start === null) return;
const li = document.createElement('li');
li.textContent = now() + '秒 ' + label;
log.appendChild(li);
}
addEventListener('keydown', e => {
if (e.code === 'Space') {
e.preventDefault();
if (start !== null) return;
start = performance.now();
timer = setInterval(() => {
t.textContent = now();
if (now() >= 30) { clearInterval(timer); add('30秒経過'); }
}, 100);
} else if (e.key === '1') add('最初の操作');
else if (e.key === '2') add('手が止まった');
});
</script>声や表情は、キー入力では追いつかないので用紙に手書きで書きます。画面を見ながら書く練習をしておくと、慣れてきます。
手順
- 観察する人数を決めます。まずは3〜5人を目安にします。この人数は、記録が続けられるかを確かめるための目安であり、統計的な根拠のある数字ではありません。
- 観察する人には「何も説明しません。自由に遊んでください」とだけ伝えます。ゲームの目的や操作方法は話しません。
- ゲームを開いた瞬間にタイマーを始めます。画面が出るまでの読み込み時間は含めず、表示された瞬間から数えます。
- 30秒の間は声をかけません。質問されても「そのまま遊んでみてください」と返します。
- 30秒が経ったら記録を止め、すぐに用紙の5項目を埋めます。タイマーのログがあれば、項目1〜3の数字は転記するだけです。
- 記録を終えたら、続きを遊んでもらうかどうかを決めます。ここから先は別の観察になるので、用紙は新しく用意します。
記録の単位
- 秒数は、小数点以下1桁までにします。
- 手が止まった箇所は、「何秒の時点で、画面に何が出ていたか」を一行で書きます。
- 声は、観察者が聞き取れた言葉を、そのまま書きます。聞き取れなかったときは「聞き取れず」と書きます。
- 1人につき1枚、1回です。同じ人に何度も遊んでもらうと、慣れの影響が入って比較できなくなります。
結果の読み方
用紙が3〜5枚たまったら、次の順で読みます。
まず、空欄を数えます。ある項目がほぼ毎回空欄なら、その項目が不要か、観察の仕方が合っていないかのどちらかです。たとえば項目4が毎回空なら、無言で遊ぶ人が多いだけかもしれません。その場合は項目4を削るのではなく、表情の欄に変える手もあります。
次に、記録を読んで「直す候補」を一つ書き出せるかを確認します。ここが、問いに対する答えです。
- 直す候補が言葉にできた場合は、この5項目で足りています。次のテストも同じ用紙で続けます。
- 直す候補が言葉にならなかった場合は、項目が足りない可能性があります。ただし、足す前に、記録の書き方が曖昧でなかったかを先に見直します。
- 書き足したくなった事柄が、3人以上で同じだった場合は、6項目目の候補です。この3人という基準も目安であり、数が少ないときの参考程度にとどめてください。
用紙を増やす前に、書き方を整える順番が大切です。項目を足すと、観察中の負担が増えて、記録が続かなくなります。
もう一つ見るのは、人によって項目1の秒数が大きく違うかどうかです。違いが大きいなら、最初の画面から何をすればよいかが読み取れていない人がいる可能性があります。ただし、3〜5人の記録では全体の傾向までは言い切れません。「この版では、こういう動きをした人がいた」と、見えた範囲にとどめて読んでください。
起こりやすい誤り
実験の結果をゆがめやすい点を挙げます。
- 声をかけてしまう。「そこ押せるよ」の一言で、項目1〜3の記録がすべて意味をなくします。話しかけたくなったら、その箇所を用紙に書いておくと、直す候補になります。
- 解釈を書いてしまう。「分かりにくそうだった」は観察者の感想です。「4.2秒、メニュー画面で入力が止まった」と事実で書けば、あとで読んでも同じ意味に読めます。
- 版が混ざる。途中で修正を入れると、前の人と比べられなくなります。まとめて観察する間は、版を固定します。
- 自分でプレイして確かめたつもりになる。作者は操作を知っているので、最初の30秒を体験できません。必ず、ゲームを初めて見る人に遊んでもらいます。
- 読み込み時間を含めてしまう。ブラウザの読み込みが長いと、項目1の数字が大きく見えます。ゲーム画面が表示された瞬間から数えます。
- 人数が少ないのに結論を出す。5人の記録で「ほとんどの人が迷う」とは言えません。「5人のうち何人が、どこで止まったか」と、人数のまま書きます。
次の行動
自作ゲームを1本選び、この5項目の用紙を3枚分だけ印刷するか、手書きで作ってください。ゲームを初めて見る人に1人ずつ遊んでもらい、30秒だけを記録します。3枚たまったら、直す候補を一つ書き出せたかどうかを確かめ、足りなかったときだけ項目を見直してください。

