遊んだ作品を人に説明する:紹介文を自分で書いてみる
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気に入ったブラウザゲームを友達に勧めようとして、「雰囲気がよくて、なんとなく続けてしまう作品なんだよね」としか言えなかった。そんな場面を考えてみます。「どんなゲーム?」と聞き返されたとき、言葉が止まります。面白かったのは確かなのに、何をするゲームなのかを説明できないのです。 この詰まりには意味があります。紹介文を書こうとして出てくる「言えない箇所」は、多くの場合、自分がまだ作品の構造をつかめていない箇所です。遊んでいる間は手と感覚で進められるので、気づかないまま通り過ぎます。説明は、その通り過ぎた部分を見つけるための道具になります。 この記事では、遊んだ作品の紹介文を200字前後で書く手順を取り上げます。書いた文章の出来を競うことが目的ではありません。書けなかった箇所から、作品の骨組みを読み直します。公式作品の確認済みの情報を例に、その考え方を試せる形にしていきます。
一文で言えない作品は、どこが言えないのか
最初の課題は単純です。作品を閉じて、何も見ずに、次の形で一文を書いてみてください。
「この作品は、( )を使って( )をして、( )を目指すゲームです。」
三つの空欄はそれぞれ、遊び手が触れるもの、遊び手がする動作、遊びの行き先に当たります。ここで空欄が埋まらない場所によって、詰まりの種類が分かれます。
- 一つ目が埋まらない場合は、盤面や道具など、画面上で何を操作しているかを覚えていません。
- 二つ目が埋まらない場合は、毎回の操作が何のためなのかを分かっていません。
- 三つ目が埋まらない場合は、どうなったら成功か、あるいは終わりなのかを知らないまま遊んでいます。
三つ目は特に見落としやすい点です。ゴールが明示されない作品や、気づいたらやめていた作品では、遊び手が「終わり」を意識しないまま楽しんでいることがあります。その場合は「終わりがない作品」とそのまま書くのも、立派な構造の説明です。ただし、本当にないのか、自分が見つけていないだけなのかは、作品を開き直して確かめる必要があります。
三つの穴を埋める:動詞・制限・終わり
一文が書けたら、ひとつ手前の問いに戻ります。面白さは多くの場合、「制限」から生まれます。何をしてもよいゲームより、何かが足りないゲームのほうが、判断の余地が生まれます。そこで、先ほどの三つに次の問いを足してみます。
- 動詞は何か。 置く、運ぶ、止める、覚える、混ぜるなど、遊び手がいちばん多く繰り返す動作です。名詞ではなく動詞で書きます。
- 何が足りないか。 時間、回数、持てる数、燃料、ミスの許容など、数えられる制限です。
- どう終わるか。 成功、失敗、時間切れ、自分でやめるまで、のどれかです。
この三つが書けると、紹介文の骨ができます。雰囲気や見た目の話は、骨ができてから肉付けします。順番を逆にすると、「やさしい世界観で癒やされます」といった文になりがちです。印象は伝わっても、この文を読んだ人は何をするゲームなのかを想像できません。
公式作品で型を当てはめて考える
型の使い方を、アソバースの公式作品で確かめます。ここで使うのは、作品の確認済みの情報だけです。画面の細かい仕様は、実際に作品を開いて確かめてください。
月夜の配達の場合
確認済みの情報は、小包が3つ、バッグが2枠、燃料は有限で1区間につき燃料1、3つの夜の経路パズル、という内容です。また、残り最短距離の表示、次の一歩を照らすヒント、一歩戻る機能があり、各夜の最少区間数はプレイ中だけ記録されます。
三つの問いに当てはめると、次のようになります。
- 動詞:小包を運ぶ(拾う順、届ける順を決める)
- 制限:バッグは2枠なのに小包は3つあり、燃料も有限
- 終わり:3つの夜をそれぞれ解く。最少区間数が目安になる
ここから読み取れるのは、「小包3つにバッグ2枠」という数の組み合わせが、この作品の構造の中心にあるらしいということです。全部を一度には持てないので、運ぶ順番が問題になります。さらに燃料は1区間で1ずつ減るため、遠回りも自由にはできません。最少区間数が記録される設計からは、一度解いたあとに「もっと短い経路はないか」と考え直す遊び方も想定されていそうです。
これを紹介文にすると、次のようになります。
3つの小包を、2枠のバッグと限りある燃料で運ぶ経路パズルです。一度に全部は持てないので、どの順で拾い、どの順で届けるかを考えます。3つの夜それぞれで、より少ない区間数での解き方を探せます。
この文は、確認済みの情報の範囲で書いています。小包を拾う操作や届ける条件の細かい決まりは、確認済みの情報にないため文に入れていません。実際の紹介文では、そこを作品で確かめてから足します。
潮だまりの場合
確認済みの情報は、引き潮の浅瀬に海藻を3つ、砂地に小石を2つ置き、潮を切り替えて観察する、という内容です。上下左右の隣接条件で8種の生きものが現れ、絵付き図鑑と観察ノートがあります。
三つの問いに当てはめます。
- 動詞:置く、観察する
- 制限:海藻3つ、小石2つという置ける数
- 終わり:この問いは、確認済みの情報だけでは埋まりません
三つ目が埋まらないことには意味があります。この場合の正しい動きは、紹介文に「クリアすると〜」と書くことではありません。作品を開いて、終わりの有無を確かめます。図鑑が埋まることを目標にして遊ぶのか、置き方を試すこと自体を遊ぶのかによって、紹介文の方向が変わるからです。
分かる範囲で書くなら、次のような文になります。
海藻3つと小石2つを置いて、潮を切り替えながら浅瀬を観察する作品です。生きものは、上下左右にどの材料が隣り合うかで決まります。何が現れたかは、絵付きの図鑑と観察ノートで見返せます。
「隣り合う並びで決まる」という一点が、この作品の骨組みです。最初の印象だけで書くと「海辺の癒やし系」になり、骨組みが抜け落ちます。
詰まったときの確かめ方
書いている途中で手が止まったら、その場所ごとに確認の仕方が変わります。
- 動詞が思いつかない、起きていること:操作の目的を意識していない、確かめ方:もう一度開き、最初の1分間の操作を数えて、いちばん多い動作を探す
- 制限が数えられない、起きていること:無意識に制限の内側で遊んでいた、確かめ方:表示されている数字(残り回数、時間、個数)を書き出す
- 終わりが書けない、起きていること:ゴールや終了条件を見ていない、確かめ方:失敗や完了の表示が出るまで遊ぶか、出ない作品かを確かめる
- 他作品との違いが言えない、起きていること:構造が一般的なジャンル説明で止まっている、確かめ方:制限の数字を1つ変えると、遊びはどう変わるかを想像する
四つ目の「制限の数字を変える」は、構造を確かめる有効な思考実験です。たとえば月夜の配達で、バッグが3枠ならどうなるかを想像します。小包が3つなので、全部を一度に運べるはずです。すると順番の悩みの大半は消え、パズルとして成り立たなくなりそうです。数字を動かして成り立たなくなるなら、その数字は作品の構造そのものだと判断できます。
ここで気をつけたいのは、思考実験の結論を事実として書かないことです。「バッグが3枠なら簡単になる」は想像の話で、実際の作品がどう動くかとは別の話です。紹介文には、確かめた事実だけを入れます。
読む人に合わせて書き分ける
骨組みができたら、誰に向けて書くかで味付けを変えます。同じ作品でも、読み手が違えば最初に知りたいことが変わります。
- 普段あまりゲームをしない人には、所要時間の感覚と、失敗しても戻せるかどうかが気になる点です。月夜の配達なら、一歩戻る機能があることは安心材料になります。
- 似た作品を遊んだことがある人には、既存のものとの違いが決め手です。制限の数字や、独自のルールを前に出します。
- 自分で作品を作る人には、どこを調整すれば難しさが変わりそうか、という視点が役立ちます。
時計じかけの台所のように、遊び方が二つある作品も考えてみます。確認済みの情報では、時間制限なしの見習いと、1皿28秒・配膳6秒・ミス3回までの本番があります。初めての人には見習いから勧めるのが自然ですが、制限のある本番のほうが緊張感を楽しめる人もいるでしょう。紹介文では、二つのモードの違いを一文で書き分けると、読み手が自分に合う入口を選べます。
避けたい書き方も整理しておきます。
- 雰囲気だけの文。 「心地よい」「やさしい」は、骨組みの代わりにはなりません。
- 仕様の羅列。 数字を並べるだけでは、遊ぶ場面が浮かびません。数字は「だから何が悩ましいか」とセットで書きます。
- 確かめていない断定。 「簡単です」「何時間でも遊べます」のような評価は、遊んだ人や状況で変わります。
書いた文をどこで使うか
アソバースのレビューは、1〜5点と1〜2,000文字で書けます。1アカウントにつき1作品1件で、メールアドレスの確認が必要です。レビューは紹介文とは別物ですが、骨組みを一度書いてから感想を足すと、読む人にとって「何の作品か」と「どう感じたか」が両方伝わります。
作品を投稿する側の人は、投稿画面の「紹介文と遊び方を作成」が参考になります。この機能は、公開済みURLまたは本人の検証済みアップロードを読み取り、選択した言語で下書きを作ります。「この文章を使う」を押した場合だけ反映され、生成の操作だけで公開されることはありません。先に自分で三つの問いに答えた紹介文を書いておけば、下書きと見比べて、足りない制限や終わり方に気づけるはずです。
次の行動
最近遊んだ作品を1つ選び、閉じたまま「動詞・制限・終わり」の三つを書き出してください。埋まらなかった空欄が、作品を開き直して確かめる場所です。確かめたうえで200字前後の紹介文にまとめ、友達に見せて「何をするゲームか」が伝わるかを聞いてみましょう。

