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敬語の間違いをAIに直させる前に知る、文化庁「敬語の指針」の5分類

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

手紙の赤い印と五色の付箋を照合する鉛筆と水彩の挿絵
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

敬語の間違いをAIに直させるときは、先に「尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語」の5分類を知っておくと、直った箇所が正しいかを自分で確認できます。AIは自然な文章を返してくれますが、誰を立てる文なのかという前提を取り違えると、読みやすいのに失礼な文が出てくることがあります。 この記事でやることは3つです。 • 5分類を、3つの問いで見分ける • 誤用例と直し方の早見表を手元に置く • AIに「どの分類で直したか」を答えさせ、その答えを人が点検する 5分類は、文化審議会の答申「敬語の指針」(平成19年2月)の考え方です。文化庁の敬語おもしろ相談室は、この指針の内容の一部を短編映画にしたコンテンツで、全7話あります。第二話が、敬語を働きに基づいて5種類に分けて紹介する回です。

この記事の目次
  1. まず3つの問いで分類する
  2. 5分類ごとの誤用例と直し方の早見表
  3. AIに渡す依頼文: 直しと分類をセットで出させる
  4. 返ってきた答えを人が点検する手順
  5. 直した理由を聞き返す質問文
  6. 「させていただく」や社内ルールは別に判断する

まず3つの問いで分類する

5分類は暗記しなくても、次の3つを順に考えれば絞れます。この3つの問いは、文化庁の定義を読みやすく言い換えた、この記事の整理です。

  1. その動作やものごとの主は誰か。 相手側や第三者なら尊敬語の出番です。
  2. その動作は誰に向かっているか。 自分側から、立てるべき人に向かう動作なら謙譲語Ⅰです。
  3. 誰かを立てるのではなく、言い方を整えたいだけか。 聞き手・読み手への丁重さなら謙譲語Ⅱと丁寧語、ものごとの言い方を美しくしたいなら美化語です。

文化庁の第二話の解答ページにある定義と語例を、短くまとめると次のとおりです。

  • 尊敬語、働き:相手側・第三者の行為やものごとについて、その人物を立てる、語の例:いらっしゃる、おっしゃる、召し上がる、お名前
  • 謙譲語Ⅰ、働き:自分側から向かう先の人物を立てる、語の例:伺う、申し上げる、差し上げる
  • 謙譲語Ⅱ(丁重語)、働き:自分側のことを、話や文章の相手に丁重に述べる、語の例:参る、申す、いたす
  • 丁寧語、働き:話や文章の相手に丁寧に述べる、語の例:です、ます
  • 美化語、働き:ものごとを美化して述べる、語の例:お酒、お料理

最も混同されやすいのは謙譲語ⅠとⅡです。第六話の解答ページでは、「伺う」は向かう先の人を立てる謙譲語Ⅰ、「参る」は聞き手に丁重に述べるだけで第三者を立てない謙譲語Ⅱとされています。加藤先生に向かって「田中先生のところに参ります」と言うのは不適切で、「伺います」にする例が挙げられています。

5分類ごとの誤用例と直し方の早見表

以下の文は、この記事のために作った説明用の例です。AIに実際に入力して得た結果ではありません。「直した理由」の列は、上の3つの問いを当てはめた編集上の説明です。

  • 尊敬語、誤用の例:部長は資料を拝見されましたか、直し例:部長は資料をご覧になりましたか、直した理由:「拝見」は自分側の謙譲語です。相手の動作には尊敬語を使います
  • 謙譲語Ⅰ、誤用の例:私が明日、御社にいらっしゃいます、直し例:私が明日、御社に伺います、直した理由:自分の動作に尊敬語を使っています。向かう先の御社を立てる謙譲語Ⅰにします
  • 謙譲語Ⅱ、誤用の例:(別の人に向かって)田中先生のところに参ります、直し例:田中先生のところに伺います、直した理由:「参る」は行き先の人を立てません。先生を立てたいなら謙譲語Ⅰです
  • 丁寧語、誤用の例:資料は明日送る。よろしくお願いします、直し例:資料は明日送ります。よろしくお願いします、直した理由:「です・ます」調と常体が混ざっています。文末を揃えます
  • 美化語(尊敬語との境目)、誤用の例:私のお名前は山田です、直し例:私の名前は山田です、直した理由:文化庁は「お名前」を尊敬語の語例に挙げています。相手を立てる形を自分側に付けないようにします

最後の行は、「お」の付く語が美化語か尊敬語かで迷いやすいことを示す例です。迷ったら、その「お」が誰かを立てているかどうかを見ます。

補足が2点あります。

  • 二重敬語は、第四話の解答ページで「一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったもの」と説明されています。「お読みになられる」は「お読みになる」に尊敬語の「れる」を加えた形で、一般には適切でないとされます。ただし「お召し上がりになる」のように習慣として定着した例外もあります。AIが丁寧にしようとして敬語を足していないかを見てください。
  • 第二話の解答では、「御利用される」は謙譲語Ⅰ(御〜する)に尊敬語(れる)を組み合わせた形で適切ではなく、「利用される」「御利用になる」などの尊敬語だけの形にするとされています。

AIに渡す依頼文: 直しと分類をセットで出させる

「敬語を直して」とだけ頼むと、結果だけが返ってきます。直した箇所ごとに分類と理由を表で出させると、人が点検できます。

次の文章の敬語を点検してください。

【前提】
- 書き手: 当社の営業担当(自分側)
- 読み手: 取引先の部長(相手側)
- 話題に出る人: 当社の課長(書き手側の人。読み手から見ると社外の人)、取引先の担当者(読み手側の人)

【お願い】
1. 敬語の誤りがある箇所だけを直してください。意味や内容は変えないでください。
2. 直した箇所は、次の表で示してください。
   元の表現 / 直した表現 / 文化庁「敬語の指針」の5分類のどれの問題か / 誰の動作か / 直した理由
3. 5分類は、尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語です。
4. 判断に迷う箇所は直さず、「要確認」として理由を書いてください。
5. 最後に、全文を直した形で出してください。

【文章】
(ここに説明用に置き換えた文章を貼る)

ポイントは【前提】です。敬語は「誰が誰に」で決まるので、書き手、読み手、話題の人物の立場を渡さなければ、AIは推測で直します。

文章を貼る前に、取引先名、個人名、金額、案件名は架空のものに置き換えてください。利用するサービスの設定で学習への利用を止められる場合でも、それは秘密保持の保証とは別の話です。置き換えられない情報は貼らないのが安全です。

返ってきた答えを人が点検する手順

次の入力例(説明用)で、返ってきた表をどう見るかを考えます。AIの実際の出力を再現したものではなく、見るべき観点の例です。

山田部長が先日おっしゃっていた件ですが、資料は明日お送りになります。課長にも拝見されましたので、ご確認ください。

  1. 「誰の動作か」の列を確認する。 「お送りになります」は書き手(自分側)の動作です。ここを「相手の動作」と書いていたら、前提の取り違えです。自分が送るなら「お送りします」が自然です。
  2. 分類名と直し方が合っているか確認する。 「拝見されました」は自分側の謙譲語を相手の動作に使っています。分類に「尊敬語」と書いてあっても、直した形が「拝見なさいました」のようになっていたら、謙譲語を使い続けています。「ご覧になりました」の形かを見ます。
  3. 敬語が増えすぎていないか確認する。 「お読みになられる」のように、同じ種類の敬語を重ねる方向の修正は、二重敬語になります。
  4. 自社の人の扱いを確認する。 取引先に宛てた文で自社の課長を話題にする場合、立てるかどうかは相手との関係で変わります。文化庁の第七話は、このウチ・ソトの扱いによる使い分けを取り上げています。AIの出力に任せず、前提に書いたうえで自分の立場で決めます。
  5. 直っていない箇所を探す。 AIは「直した箇所」しか説明しません。直さなかった箇所に誤りが残っていないか、元の文を3つの問いで読み直します。

直した理由を聞き返す質問文

AIの表に納得できない箇所があれば、次の質問文をそのまま使えます。

「(直した表現)」について確認させてください。
1. この文の動作の主は誰で、誰に向かう動作だと考えましたか。
2. 使われている敬語は、尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語のどれですか。
3. 同じ種類の敬語を重ねていませんか。
4. 自分の判断が分かれる点があれば、別の直し方を2案、違いとともに示してください。
この文の「書き手」と「読み手」を入れ替えたら、敬語はどう変わりますか。変わる箇所だけ示してください。

2つ目の質問は、AIが立場を理解して直したのかを調べるのに向いています。立場を入れ替えても表現が変わらなければ、文脈より言い回しの型で直していた可能性があります。これは見分けるための目安で、断定はできません。

「させていただく」や社内ルールは別に判断する

5分類で機械的に決まらない領域があります。第三話の解答ページでは、「(お・ご)〜(さ)せていただく」が適切になる条件として、相手側または第三者の許可を受けて行うこと、そのことで恩恵を受ける事実や気持ちがあることの2つが挙げられています。たとえば相手の本をコピーする許可を求める場面が基本の用法です。条件に当てはまらない場面で使っていないかを、AIの直しと照らして見てください。

社内や業界に独自の言い回しの決まりがある場合も、AIには分かりません。決まりがあるなら、依頼文の【前提】に1〜2行で書き足してください。

AIの直しを使うかどうかの最終判断は、書き手が行います。3つの問いに照らして説明できる直しだけを採用すれば、AIに任せつつ、自分の名前で出す文章の責任を持てます。

出典・参考資料