AIの深掘り調査機能に任せる前に:調査の範囲と成果物を決める依頼文の書き方
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

結果がぶれにくい依頼文には、「何の判断に使うか」「どこまで調べるか」「何を調べないか」「どの情報源を認めるか」「どんな形で返すか」の5点が入っています。長い調査ほど、途中でAIが解釈を広げる余地が増えます。その余地を、依頼の段階で先に埋めておきます。 この記事では、そのまま貼って使える依頼文テンプレートと、説明用の記入例、送信前後の確認手順をまとめます。
この記事の目次
結果がぶれる原因は「問いの曖昧さ」
深掘り調査系の機能は、検索を重ねながら、次に調べる内容をAIが自分で決めていきます。Claudeのヘルプでも、リサーチ機能は互いに積み重なる複数の検索を実行し、見つかった内容に応じて次の調査先を決めると説明されています(Use research on Claude)。
つまり、依頼文に条件がなければ、期間も地域も情報源の種類もAIの判断で決まります。同じ依頼で結論が変わったときは、モデルの気まぐれを疑う前に、依頼文で決めていない項目がないかを見るほうが直しやすいです。
固定したい項目は次の6つです。
- 目的:その調査結果で何を決めるか
- 問い:一文で言い切れる調査課題
- 範囲:期間・地域・対象
- 除外条件:調べない領域、使わない情報
- 情報源の条件:優先する種類と、避ける種類
- 成果物:形式、分量、表の列、不確かな点の書き方
コピーして使える依頼文テンプレート
【 】 の中を埋めるだけで使えます。使わない項目は空欄にせず「指定なし」と書いてください。空欄だと、AIが自分で補う余地が残ります。
あなたは調査担当です。以下の条件で調べ、報告書を作成してください。
調査を始める前に、調査計画(調べる観点と手順)を先に見せてください。
■目的
この調査結果は【 何の判断・作業に使うか 】に使います。
■問い
【 調べたいことを一文で 】
■範囲
・期間:【 例:2023年1月〜現在 / 指定なし 】
・地域:【 例:日本国内 / 指定なし 】
・対象:【 例:自治体、中小企業、一般利用者など 】
■除外条件
・調べないこと:【 例:海外事例、個人ブログの体験談 】
・使わない情報:【 例:出典が確認できない数値、日付不明の記事 】
■情報源の条件
・優先する情報源:【 例:公的機関、提供元の公式ドキュメント、一次資料 】
・補助的に使ってよい情報源:【 例:報道機関の記事 】
・使わない情報源:【 例:まとめサイト、出典のない解説 】
■成果物
・形式:【 例:表+300字の要約 】
・表の列:【 項目 / 結論 / 根拠URL / 公開日・更新日 / 確度 】
・分量:【 例:全体で2,000字以内 】
■不確かな点の扱い
・根拠が見つからない項目は推測で埋めず「確認できず」と書く
・情報源どうしが食い違う場合は、両方を併記する
・事実と、あなたの推測・解釈を分けて書く
・書籍や論文を挙げる場合は、書名・著者・刊行年を書く。確認できないものは挙げない冒頭で計画を求めているのは、計画を確認できる機能があるためです。OpenAIのヘルプによると、ChatGPTのdeep researchは調査計画を提示し、開始前に確認・修正でき、実行中も割り込んで焦点を調整できます(Deep research in ChatGPT)。計画を出さない機能では、この一文を「最初に調べる観点だけ箇条書きで返して」と読み替え、一往復はさんでください。
入力例:自治体の生成AIガイドラインを調べる場合
次は記入の仕方を示す「説明用の例」です。実際に実行した結果ではありません。
あなたは調査担当です。以下の条件で調べ、報告書を作成してください。
調査を始める前に、調査計画を先に見せてください。
■目的
この調査結果は、自分の職場で生成AIの利用ルールを作る際の参考資料に使います。
■問い
日本の都道府県は、職員向けの生成AI利用ガイドラインをどのような項目構成で公開しているか。
■範囲
・期間:2023年1月〜現在
・地域:日本国内の都道府県
・対象:職員向けの利用指針・ガイドライン
■除外条件
・調べないこと:市区町村、民間企業、海外の事例
・使わない情報:公開日が確認できない資料
■情報源の条件
・優先する情報源:各都道府県の公式サイト
・補助的に使ってよい情報源:報道機関の記事(公式資料へのリンクがある場合のみ)
・使わない情報源:個人ブログ、まとめサイト
■成果物
・形式:表+300字の要約
・表の列:都道府県 / 資料名 / 主な項目 / 根拠URL / 公開日 / 確度
・分量:全体で2,000字以内
■不確かな点の扱い
・見つからない都道府県は「確認できず」と書く
・事実と推測を分けて書くこの例で効いているのは、問いが一文であること、範囲で市区町村を外していること、表の列に公開日と確度を入れていることです。日付の列があると、古い資料を後から見分けられます。
項目ごとの書き方と、情報源の絞り方
- 目的、書き方のコツ:使い道(比較、報告、ルール作りなど)を書く、失敗しやすい書き方:「詳しく知りたい」だけで終える
- 問い、書き方のコツ:一文にする。複数あるなら番号を振る、失敗しやすい書き方:「〜について色々」
- 期間、書き方のコツ:開始年月を書く、失敗しやすい書き方:「最近」「ここ数年」
- 地域、書き方のコツ:国・都道府県などの単位で書く、失敗しやすい書き方:地域を書かず海外事例が混ざる
- 除外条件、書き方のコツ:混ざりやすいものを具体的に挙げる、失敗しやすい書き方:何も書かない
- 情報源、書き方のコツ:種類で指定し、必要ならサイトも指定する、失敗しやすい書き方:「信頼できる情報で」だけ
- 成果物、書き方のコツ:列名や字数まで書く、失敗しやすい書き方:「まとめてください」
情報源は機能側の設定でも絞れる場合があります。OpenAIのヘルプには、調査を指定したサイトに限定する方法と、指定サイトを優先しつつウェブ全体の検索も許可する方法が載っています。ただし、利用できるかどうかはプラン、地域、ワークスペース設定などで変わると説明されています(Deep research in ChatGPT)。自分の画面に選択肢があるかを確認し、なければ依頼文の「情報源の条件」で指定してください。文章での指定は設定による限定と違って強制力がないため、出力された根拠URLで守られているかを確認することが前提です。
送信前と受け取り後に人が確認すること
AIに任せるのは、検索、読み込み、表への整理までです。結論を採用するかどうかは人が判断します。
送信前(2分)
- 「目的」を読み返し、この結果で何を決めるのかを言えるか確認する
- 「指定なし」と書いた項目が意図どおりか確認する
- 社内資料や個人情報は、説明用のデータに置き換える。学習への利用設定をオフにしても、機密を貼ってよいことにはなりません。勤務先の規程に従ってください
- 使う機能の条件を確認する。たとえばClaudeのリサーチは、Pro、Max、Team、Enterpriseの有料プランが対象で、ウェブ検索をオンにする必要があります。通常のチャットと同じ上限の対象で、複数の情報源を取得するぶん消費が速くなる場合があるとされています(Use research on Claude)
計画が出たとき
除外したはずの対象(市区町村、海外など)が計画に入っていないかを見ます。入っていれば、実行前に「計画から〇〇を外して」と返します。調査を走らせる前に直せるので、手戻りが小さくて済みます。
受け取り後
- 表の根拠URLを無作為に3〜5件開き、本文の記述と一致するか見る
- 公開日・更新日が指定期間に収まっているか見る
- 不可にした種類のサイトが混ざっていないか見る
- 「確認できず」の行は、自分で補うか、範囲を狭めて再調査するか決める
- 数値や固有名詞は一次資料まで遡る
OpenAIのヘルプでは、出力に引用や出典リンクが付くのは利用者が確認できるようにするためと説明されています。引用が付いていても内容が正しいとは限らないので、リンク先を読む工程は省けません。
書名や論文名を裏取りするなら、国立国会図書館のNDLサーチが使えます。国立国会図書館の所蔵資料のほか、全国の図書館のデータや、J-STAGE、IRDB、CiNii Researchといった学術系サービスをまとめて検索できます。報告書に出てきた資料が実在するか、刊行年が合っているかを照合できます。
結果が期待とずれたときの直し方
出力を見て、直す場所を決めます。
- 対象外の地域・主体が混ざる、直す場所:範囲・除外条件、追加する一文の例:「市区町村と海外は表に入れない」
- 古い資料が多い、直す場所:期間・表の列、追加する一文の例:「2023年1月より前の資料は使わない」
- 出典が二次情報ばかり、直す場所:情報源の条件、追加する一文の例:「公式サイトの資料を優先し、見つからなければ確認できずと書く」
- 長いだけで結論が不明、直す場所:成果物、追加する一文の例:「冒頭に結論を3行で書く」
- 根拠のない断定がある、直す場所:不確かな点の扱い、追加する一文の例:「根拠URLがない文は書かない」
全体を書き直すより、症状に対応する項目だけを足して再実行すると、何が効いたかが分かります。

