マガジン

発表後の質疑に備える:AIで想定質問を出し、回答メモを作るテンプレート

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

色違いの無地の名札が4枚並ぶ机で、発表者が付録スライドに付箋を貼り、4つの枠がある回答メモを横に置いている場面
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

想定質問をAIに出させるなら、「聞かれそうなことを教えて」と丸ごと頼むより、聞き手の立場を指定して役割ごとに出させるほうが使えます。予算を握る人、現場で運用する人、セキュリティを見る人では、同じスライドでも気にする点がまったく違うからです。出てきた質問には、「結論・根拠・付録ページ」だけを書いた短い回答メモを作ります。長い想定問答集は、本番では引けません。 この記事では、そのまま貼れる指示文、回答メモの様式、記入例、AIの出力を人が確認する基準を示します。

この記事の目次
  1. 1. AIに渡す情報と、渡さない情報
  2. 2. 聞き手役を指定する指示文
  3. 3. 回答メモの様式
  4. 4. AIの出力を人が確認する基準
  5. 5. 当日までの進め方

1. AIに渡す情報と、渡さない情報

質問の質は、渡す材料でほぼ決まります。次の4つを用意してください。

  • 発表の目的(聞き手に何を決めてほしいか)
  • スライドの要点(各ページの主張を1行ずつ)
  • 聞き手の構成(誰が来るか、それぞれの関心)
  • 持ち時間と、質疑に使える時間

渡さないものも先に決めます。顧客名、個人が特定できる情報、未公開の数値、取引先との契約内容は、「A社」「〇〇円」のような置き換えにしてから入力します。想定質問の生成に実名や実数は要りません。

個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用について、令和5年6月2日に注意喚起等を公表しています。詳しい内容は同ページの別添資料にあります。何を入力してよいかは、こうした公的な情報に加えて、自社の規程や利用するサービスの規約で確認してください。学習に使われない設定があるサービスでも、その情報を入力してよいかは別に判断が必要です。

2. 聞き手役を指定する指示文

角括弧の部分を自分の発表に置き換えて使います。これは説明用に組んだ文面で、特定のAIで動作を検証したものではありません。出力は毎回変わるので、気に入らなければ役割や条件を足して再生成してください。

あなたは発表の質疑応答を準備するコーチです。
以下の発表について、聞き手の立場ごとに想定質問を出してください。

【発表の目的】[例:社内問い合わせ窓口に生成AIを試験導入する承認を得る]
【持ち時間】発表[10]分、質疑[5]分
【スライド要点】
1. [課題:問い合わせ対応に時間がかかっている]
2. [提案:回答案の作成をAIに任せ、送信前に人が確認する]
3. [進め方:対象部署を限定し、[3]か月で試す]
(以下略)

【聞き手役】
A 決裁者(費用対効果と責任の所在を気にする)
B 現場担当(自分の仕事が増えないかを気にする)
C 情報システム・セキュリティ担当(情報の扱いを気にする)
D 懐疑的な同僚(前提や数字の根拠を疑う)

【出力条件】
- 役割ごとに3問、合計12問
- 各質問に「聞かれやすさ:高/中/低」を付ける
- 発表資料に答えの根拠がない質問には「資料に根拠なし」と明記する
- 回答案は書かない。質問だけを出す

ポイントは最後の2行です。「資料に根拠なし」と書かせると、スライドの穴がそのまま見えます。回答案を最初から書かせないのは、AIの答えをそのまま採用する癖を避けるためです。

PowerPointのCopilotチャットには、発表の弱点や聞き手の質問を洗い出す「Prepare for Questions」というスキルがあります。Copilotチャットを開いて「Skills」メニューから選ぶ、とMicrosoftのサポート情報に書かれています。ただし、使えるかどうかは契約するプランや組織の設定で変わります。日本語の画面では表示名が異なる可能性もあります。使えない環境でも、上の指示文で同じ目的は果たせます。

3. 回答メモの様式

質問のうち、聞かれやすさが「高」のものと「資料に根拠なし」のものを優先し、1問1メモで書きます。項目は4つだけです。

【質問】
【結論】(1〜2文。最初に言い切る一言)
【根拠】(最大3点。資料内の数字・事実・ページ番号)
【付録ページ】(補足スライドの番号。なければ「作成する」)

結論を1〜2文にするのは、口頭で答える長さに合わせるためです。根拠が3点を超えるなら、結論が大きすぎるか、論点が混ざっています。付録ページが「作成する」のままの質問は、発表前の宿題になります。

記入例(説明用の架空の例)

前節の架空の提案を想定した例です。実在の組織や結果とは関係なく、ページ番号も仮のものです。

【質問】(C 情報システム)顧客の個人情報がAIに入力されませんか
【結論】入力しない運用にします。氏名・連絡先は入力前に伏せ字へ置き換える手順を必須にします。
【根拠】①入力禁止項目の一覧を作成済み(スライド9)
        ②試験期間中は対象部署を限定する(スライド11)
        ③送信前に必ず担当者が確認する(スライド8)
【付録ページ】A-2「入力禁止項目と置き換えルール」
【質問】(D 懐疑的な同僚)削減できる時間は何を根拠にしていますか
【結論】現時点では見込みです。試験期間で計測し、結果を見て判断します。
【根拠】①計測する項目と方法を決めてある(スライド12)
        ②結果次第で中止できる条件を設定する
【付録ページ】作成する(計測計画)

2つ目のように、答えられないことは「見込みです」「試験で確かめます」と言える形にしておくと、その場で取り繕わずに済みます。

4. AIの出力を人が確認する基準

AIが出した質問や回答の下書きは、次の表で振り分けます。

  • 質問は妥当で、資料に根拠がある、扱い:回答メモにする
  • 質問は妥当だが「資料に根拠なし」、扱い:付録ページを作るか、本編に1文足す
  • 質問が実際の聞き手に関係ない、扱い:捨てる
  • 回答案に自分が確認していない数字・事実がある、扱い:出典を確認するまで使わない
  • 法務・契約・個人情報など専門判断が要る質問、扱い:担当部署に確認してから結論を書く
  • 答えが「わからない」になる、扱い:「確認して後日回答します」と決めておく

AIは、もっともらしい質問を出すのが得意です。一方で、その場の人間関係や過去の経緯は知りません。「前回この件で揉めた」「この部長は数字より事例を見る」といった情報は、人が役割の説明に足してください。MicrosoftもCopilot in PowerPointのFAQで、生成内容は不正確なことがあるため、読んで確認・編集・検証するよう案内しています。

5. 当日までの進め方

  1. 発表資料の要点を1行ずつに整理し、機密を置き換える
  2. 上の指示文で想定質問を出す
  3. 「高」と「資料に根拠なし」の質問を選び、回答メモを自分で書く。必要なら、AIに「この結論は短すぎるか、根拠が足りないか」を聞く
  4. 付録スライドを作る。本編に入れない補足は、質疑のための別ページに置く
  5. 声に出して答えてみる。1問30秒を超えるなら結論を削る

回答メモは、手元の1枚か、付録の最後の目次として置けば十分です。質疑中に見るのは、ほぼ「質問」と「付録ページ」の2項目です。結論と根拠は、準備の過程で頭に入っているほうが自然に話せます。

同じ質問を役割を変えて何度も出す必要はありません。1回目で穴が見つかったら資料を直し、必要な役割だけ出し直してください。

出典・参考資料