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AIを相手にプレゼンを練習する:時間超過と説明不足を別々に直す方法

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

紙の発表原稿とストップウォッチの横で、手が付箋を『削る』と『足す』の2つのトレーに仕分けている机上の場面
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

時間超過と説明不足は、同じ練習で一度に直そうとしないほうがうまくいきます。時間超過は「どこを削るか」、説明不足は「どこに何を足すか」という逆向きの問題だからです。「100点満点で採点して」と頼んで総合点を出させても、どちらを先に直すべきかは分かりません。 この記事では練習を3回に分け、回ごとにAIへ見てもらう観点を1つに絞ります。用意するのは観点表、原稿や録音の渡し方、修正を頼む依頼文です。1回目で時間、2回目で説明不足を見て、3回目で削る箇所と足す箇所を1本の原稿にまとめます。文中の数字や原稿はすべて説明用の例で、実際に試した結果ではありません。

この記事の目次
  1. 先に決める:持ち時間と、聞き手に持ち帰ってほしいこと
  2. 1回目:時間だけを測る
  3. 2回目:聞き手役のAIに質問してもらう
  4. 3回目:削る箇所と足す箇所を1本にまとめる
  5. 録音・原稿の渡し方と、練習用ツール
  6. 仕上げ:もう一度ラップを取る

先に決める:持ち時間と、聞き手に持ち帰ってほしいこと

AIに渡す前に、人が2つ決めます。

  • 持ち時間(質疑を除く)
  • 発表後に聞き手にできてほしいこと(1文)

これがないと、AIは「全体的に長い」「もっと詳しく」のような、どちらにも読める指摘しか返せません。持ち時間はスライドごとに割り振っておくと、超過の原因を探しやすくなります。

説明用の例:10分枠、スライド8枚

  • 1、内容:表紙・自己紹介、目安:0:30
  • 2、内容:課題、目安:1:30
  • 3、内容:現状データ、目安:1:30
  • 4〜6、内容:提案(3点)、目安:各1:15
  • 7、内容:進め方、目安:1:30
  • 8、内容:依頼事項、目安:1:15

合計は10:00です。配分は重要なスライドを厚くするなど、自由に変えて構いません。

1回目:時間だけを測る

通して話し、スライドを切り替えるたびにストップウォッチのラップを押します。録音は文字起こし用に残しておきます。AIが音声から正確に時間を測れるとは限らないので、秒数は人が記録して文字で渡します。

説明用の例:実測ログ

スライド1: 0:50(目安0:30)
スライド2: 2:10(目安1:30)
スライド3: 2:20(目安1:30)
スライド4: 1:30(目安1:15)
...
合計: 13:40(枠10:00)

依頼文(1回目)

10分の発表の練習です。今回は「時間超過」だけを見てください。
分かりやすさや話し方の評価は不要です。

【持ち時間表】(貼る)
【実測ログ】(貼る)
【文字起こし】(貼る。個人名・社名・数値は置き換え済み)

次の順で答えてください。
1. 超過が大きいスライドを、超過秒数の多い順に3つ
2. 各スライドの超過原因を、文字起こしから特定
   (前置き/言い直し/脱線/情報量の多さ のどれか)
3. 削る候補を、削る文を引用して示す。結論と根拠の文は削らない
4. 削った後の文字数と推定所要時間
   (話す速さは私の実測ログから逆算して)

4番目は、自分の速さで机上の見積もりをさせる指示です。たとえばスライド2の文字起こしが600字で2分10秒(130秒)なら、1分あたり約277字です。話す速さは人によって違うので、一般的な数字ではなく自分のログから出します。

  • 超過の位置、AIに聞くこと:どのスライドで何秒超えたか、人が確認すること:ラップの記録が正しいか
  • 超過の原因、AIに聞くこと:前置き・言い直し・脱線のどれか、人が確認すること:脱線に見える部分が必要な補足でないか
  • 削る候補、AIに聞くこと:削る文の引用と削減秒数、人が確認すること:結論・根拠・聞き手への依頼が残るか

2回目:聞き手役のAIに質問してもらう

「分かりにくいところを教えて」では、抽象的な返事になりがちです。聞き手の立場を指定し、分からなかった箇所を質問として出させると、足りない説明が見つかりやすくなります。聞き手については、次の3点を書きます。

  • 立場(例:他部署の管理職)
  • 既に知っていること(例:業務の概要は知っているが、専門用語は知らない)
  • 判断してほしいこと(例:来月の試行の可否)

依頼文(2回目)

あなたは次の聞き手です。
立場:他部署の管理職。業務の概要は知っているが、
「(専門用語A)」「(専門用語B)」は知らない。
発表後に「来月の試行をやるか」を判断します。

下の原稿をスライド順に読み、「説明不足」だけを見てください。
時間の長さは気にしないでください。

出力は表にしてください。
| スライド | 聞き手として分からない点(質問の形で) | 種類 | 判断に必要か |
種類:用語が未説明/根拠がない/前提が飛んでいる/
前後のつながりが不明/結論が見えない

最後に、判断に必要な不足トップ3を選んでください。
  • 用語が未説明、典型的な質問:「〇〇とは何か」、直し方の方向:1文の定義か言い換えにする
  • 根拠がない、典型的な質問:「なぜそう言えるのか」、直し方の方向:数字や事例を1つ足す
  • 前提が飛んでいる、典型的な質問:「いつの、誰の話か」、直し方の方向:冒頭に前提を1文足す
  • つながりが不明、典型的な質問:「なぜここで話が変わるのか」、直し方の方向:前のスライドとの接続の1文を足す
  • 結論が見えない、典型的な質問:「で、何をしてほしいのか」、直し方の方向:スライドの最初に要点を置く

AIの質問がすべて妥当とは限りません。実際の聞き手が知っていることをAIは知らないので、「この質問は出ないだろう」と思うものは人が重要度を下げます。

3回目:削る箇所と足す箇所を1本にまとめる

別々に直すと、足した分でまた時間を超えます。そこで、1回目の削る候補と2回目の不足トップ3を、ここで初めて合わせます。

  • 判断に必要な不足があり、削る候補は前置き・言い直し、判断:削って足す。差し引きゼロを目指す
  • 判断に必要な不足があり、削る候補がない、判断:不要なスライドを削るか、補足資料に回す
  • 不足が「あれば親切」程度、判断:足さず、質疑応答で答える
  • 削ると結論や根拠が消える、判断:削らない。話す速さではなく情報量を見直す

依頼文(3回目)

1回目の「削る候補」と2回目の「不足トップ3」を統合した修正案を作ってください。
- 全体を10分以内に(私の速さは1分あたり約270字)
- 足す説明は、削った文字数の範囲内で
- スライドごとに文字数つきで示し、変えた箇所に【変更】と付ける
- 数字は私が渡したものだけを使う。新しい数字や事例は作らず、
  必要な場合は「ここに事例が必要」と書く

最後の条件は大切です。AIは足りない根拠を、もっともらしい数字で埋めてしまうことがあります。足された数字や事例は、人が一次情報で確かめてください。

録音・原稿の渡し方と、練習用ツール

渡す形式ごとの向き不向きは次のとおりです。

  • 原稿:説明不足や論理のつながりを見るのに向きます。実際に話した内容とはずれます。
  • 文字起こし:脱線、言い直し、前置きを見つけるのに向きます。誤変換が混ざるので、固有名詞は人が直します。
  • 録音ファイル:受け付けるか、音声から時間を読めるかはサービス次第なので、使う前に確認が必要です。

迷ったら、文字起こしとラップ記録を文字で渡す形にすると、どのAIでも使えます。

発表資料には社名、顧客名、未公開の数字が入りがちです。貼る前に説明用の名前と数字へ置き換えてください。学習に使われない設定があっても、それだけで情報の扱いが安全になるとは限りません。サービスの規約と社内ルールを確認し、置き換えを基本にします。

話し方を自動で見てほしい場合は、PowerPointのスピーカーコーチという選択肢もあります。Microsoftのサポートページでは、ペースやフィラー、スライドの読み上げなどを検出し、リハーサル後にレポートを出すと説明されています(スピーカー コーチを使用してスライド ショーをリハーサルする)。ただし同ページには、英語のみを理解し、Microsoft 365の表示言語が英語のときに使えるとあり、日本語などへの拡張に取り組んでいる段階だと書かれています。音声はサービス提供のためにMicrosoftへ送信されるとも記載されているので、機密を含む内容は避けてください。

英語のペースについては、別のページ(Suggestions from Speaker Coach)に1分あたり100〜165語という推奨が載っています。これは英語の単語数の基準で、日本語の文字数にはそのまま当てはめられません。同ページは、文字起こしの誤りが起こり得ることや、通信状況によってはペースの測定に影響が出ることも述べています。日本語の発表では、ラップ記録から自分の速さを出す方法が実用的です。

仕上げ:もう一度ラップを取る

統合した原稿で、もう一度ラップを取って通し練習をします。実測が枠に収まれば完了です。収まらなければ、1回目の依頼文に戻り、新しいログで超過を確認します。

出典・参考資料