グラフの説明原稿をAIで作る:見方・注目点・言える範囲の三段階
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

グラフの説明原稿は、グラフの条件(題材・軸・単位・期間・数値)をAIに渡し、「見方→注目点→言える範囲」の順で、事実と解釈を別の欄に書き分けさせると作りやすくなります。AIに任せるのは文章の下書きです。数値の確認と「どこまで言うか」の判断は、発表する人が行います。 聞き手を置き去りにする説明の多くは、いきなり結論から話すか、グラフから読み取れることと推測が混ざっているかのどちらかです。この記事では、そのまま使える依頼文、入力例、出力の型、確認表を順に示します。
三段階の役割を決める
- 1. 見方、話す内容:何のグラフか、縦軸・横軸・単位・期間、線や色の意味、聞き手に渡すもの:読み方の地図
- 2. 注目点、話す内容:数値で言える事実(最大・最小・差・変化)、聞き手に渡すもの:見てほしい場所
- 3. 言える範囲、話す内容:解釈、原因の仮説、このグラフだけでは言えないこと、聞き手に渡すもの:結論の強さの目安
この順にすると、聞き手はグラフの読み方を理解した状態で数字を受け取れます。解釈は最後に置き、事実とは別のものとして扱います。
AIに渡す情報と、人が持つ判断
渡すのは、グラフの題名、軸と単位、期間、数値そのもの、聞き手、持ち時間です。画像だけを渡すと、AIが数値を読み違える余地が残ります。元の表がある場合は、数値を文字で貼るほうが確認しやすくなります。
次の情報は、説明用の数値に置き換えてから渡してください。
- 顧客名や個人が特定できる情報
- 未公表の売上や社内の機密数値
使うAIサービスの「学習に使われない設定」があっても、情報の持ち出しを許すかどうかは別の問題です。所属先の規則を確認し、置き換えられるものは置き換えるのが無難です。
人が持つ判断は二つあります。一つは、数値がグラフと一致しているか。もう一つは、解釈の欄に書かれた内容を、その場で言ってよいかどうかです。
依頼文テンプレート
次の文面の【 】を埋めて使います。
あなたは発表資料の説明原稿を書く補助役です。
以下のグラフについて、口頭で説明する原稿を作ってください。
【グラフの条件】
- 題名:【 】
- グラフの種類:【折れ線/棒/円など】
- 横軸:【 】 縦軸:【 】(単位:【 】)
- 期間・対象:【 】
- 数値:【系列ごとに貼り付け】
- 背景として分かっていること:【出来事、施策など。なければ「なし」】
【聞き手】【役職や前提知識】
【持ち時間】【例:60秒】
【書き方のルール】
1. 「見方」「注目点」「言える範囲」の3見出しで書く。
2. 「注目点」には、渡した数値から計算できる事実だけを書く。
計算した値は式も添える。
3. 「言える範囲」は、(a)このグラフから言えること、
(b)仮説としては言えるが確認が必要なこと、
(c)このグラフだけでは言えないこと、の3つに分ける。
4. 渡していない数値や原因は追加しない。足りない情報は
最後に「確認したい点」として質問にする。
5. 話し言葉で、1文を短くする。ルール4が重要です。これがないと、AIがもっともらしい原因や数字を補ってしまうことがあります。
入力例と原稿例(説明用の例)
以下は仕組みを示すために作った架空の例です。実在の組織の数値ではなく、AIで実際に生成した出力でもありません。
入力(説明用の例)
- 題名:社内ヘルプデスクの月別問い合わせ件数
- 種類:折れ線グラフ、横軸は月(4〜9月)、縦軸は件数
- 数値:4月120、5月135、6月128、7月170、8月182、9月176
- 背景:7月に新しい申請システムへ切り替えた
- 聞き手:他部署の課長、持ち時間60秒
原稿例(説明用の例)
見方このグラフは、社内ヘルプデスクへの問い合わせが、月ごとに何件あったかを示しています。横軸が4月から9月、縦軸が件数です。注目点4〜6月の平均は約128件でした(383件÷3か月)。7〜9月の平均は176件です(528件÷3か月)。差は約48件で、率にすると約38%の増加です。最も多いのは8月の182件で、9月は176件と6件減っています。言える範囲- このグラフから言えること:7月以降、問い合わせ件数は4〜6月より高い水準にあります。- 仮説として言えること:7月の新システム切り替えが関係している可能性があります。ただし、確認はできていません。- このグラフだけでは言えないこと:切り替えが原因かどうか、9月の減少が今後も続くかどうか。判断には、問い合わせの内容別の件数が必要です。
「可能性があります」と書いた部分は、背景として渡した出来事と件数の増加が同じ時期だと言っているだけです。原因を示したことにはなりません。聞き手に伝えるときも、この強さのまま話してください。
下書きを確認する手順と判断表
手順
- 条件をそろえる。 テンプレートの【 】を埋め、数値は元データからコピーします。
- AIに下書きを作らせる。 続けて「確認したい点」も出させ、質疑応答用にメモします。
- 注目点の数字を電卓か表計算で検算する。 平均、差、増減率を自分で出し直し、元データとも照らし合わせます。
- 「言える範囲」を3区分で見直す。 (b)や(c)にあたる内容が(a)に紛れていないか確認します。聞き手が知らない略語や社内用語も直します。
- 声に出して時間を測る。 長ければ「注目点」を2点に絞らせます。見方の説明が長くなりすぎると本題に入れません。グラフが複雑なら、説明を削るより、グラフを2枚に分ける手もあります。
この一文、言ってよいか
- 「8月が最大の182件でした」、判定:事実。数値で確認できる、直し方の例:そのまま使う
- 「7〜9月の平均は、4〜6月の平均より約38%多いです」、判定:比べる期間を明示すれば事実、直し方の例:「7月から」と言うと比較の基準が曖昧になるので、期間を明示する
- 「新システムのせいで増えました」、判定:原因の断定。根拠なし、直し方の例:「関係している可能性があります」に弱める
- 「今後も減っていくでしょう」、判定:予測。1か月分の変化からは言えない、直し方の例:削る。または「推移を見守ります」とする
- 「利用者が不満を持っています」、判定:グラフにない情報、直し方の例:削る。または内容別のデータを別に用意する
AIの下書きに下3行のような文が出てきたら、削るか弱めます。
表計算ソフトのAI機能を使う場合も同じ姿勢です。MicrosoftのCopilot in Excelの案内ページ(2026年10月28日閲覧)には、AIが作ったものは確認・編集・検証するよう書かれています。分析してほしい列名を指定して具体的に依頼するよう勧める記述もあります。利用できるExcelの版や契約、組織の設定は環境で異なるため、自分の環境で使えるか確認してください。
代替テキストにも転用する
説明原稿の内容は、スライドを見られない人向けの代替テキストにも役立ちます。Microsoftの代替テキストの書き方のページ(同日閲覧)では、「売上の推移を示す棒グラフ」のような種類の説明だけでは役に立たないとし、読み取れる要点まで書く例を挙げています。先ほどの「注目点」の最初の一文は、代替テキストの下書きに転用できます。
AIには、次のように追加で頼めます。
上の「注目点」から、グラフを見られない人向けの
代替テキストを2文で作ってください。
原因の推測は入れないでください。ここでも、原因の推測を入れず、数値は検算してから使います。

