長い文字起こしから決定事項だけを取り出すAIへの指示文と見直し方
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結論から言うと、「決定事項を抜いて」と頼むだけでは足りません。案を出した発言と、全員が合意した発言が、同じ重さで拾われやすいからです。指示文で次の3点を固定し、出力は人が原文と照合します。 1. 「決定」とは何かを定義し、提案・保留・雑談と区別させる 2. 決定ごとに、根拠となる発言を原文のまま引用させる 3. 判断に迷ったものは決定にせず、別枠に出させる この記事では、コピーして使える指示文、説明用の入力例、照合チェック表の順に示します。
決定事項の抽出で間違いが起きやすい場所
文字起こしの中で、決定事項に紛れ込みやすいのは次のようなものです。
- 誰かが出した案に、返事がないまま話題が変わったもの
- 一度決まりかけたが、後半で覆ったもの
- 「確認してから決めましょう」と先送りされたもの
- 担当者や期限が発言に出ていないのに、AIが補ってしまったもの
指示文には、これらを防ぐルールをあらかじめ書いておきます。OpenAIのヘルプセンターにあるAPI向けの指針(Best practices for prompt engineering with the OpenAI API)には、指示を冒頭に置く、### や """ で指示と材料を区切る、望む出力形式を例で示す、といった内容があります。次の指示文はこの方向を参考に、会議の議事録向けに編集部で組み立てたテンプレートです。特定のAIで動作を検証した結果ではありません。
コピーして使える指示文
「会議日」と「文字起こし」の部分だけ差し替えて使ってください。
あなたは会議の記録係です。下の「文字起こし」から決定事項だけを抽出してください。
# 分類の定義
- 決定: 参加者の合意、または決定権を持つ人の明確な承認が文字起こしの中で確認でき、その後に反対や留保が残っていないもの。
- 提案: 案として出されたが、合意や承認が確認できないもの。
- 保留: 「持ち帰る」「次回決める」「確認してから」など、結論を先送りしたもの。
- 雑談・意見: 感想、背景説明、一般論。
# ルール
1. 迷ったら「決定」にせず、「提案」か「保留」に分類する。
2. 決定ごとに、根拠となる発言を文字起こしから原文のまま40字以内で引用する。時刻や行番号があれば添える。
3. 同じ議題で後から結論が変わった場合は、最終的な結論だけを決定とし、変更の経緯を一行で書く。
4. 担当者・期限が発言にない場合は「記載なし」と書く。推測で補わない。
5. 「来週」「今日中」などの相対表現は原文のまま書き、会議日をもとにした換算案を括弧内に添える。
6. 文字起こしにない情報を足さない。話者が不明確なら「発言者不明」とする。
# 出力形式
## 決定事項
表の列: No / 決定内容 / 担当 / 期限 / 根拠の引用
## 判断に迷った項目
表の列: 内容 / 分類(提案・保留) / 決定にしなかった理由
# 会議日
2026年11月2日
# 文字起こし
"""
ここに貼り付ける
"""「判断に迷った項目」を別枠にしておくと、人が重点的に見る場所が決まります。決定事項だけを出させる形だと、AIが黙って落とした項目に気づけません。
入力例と、期待する抽出結果
以下は説明用の架空の例です。実際にAIへ入力して得た出力ではありません。
入力(説明用の例)
A: 次回のキックオフの日程、どうしましょう。
B: 11月12日の午後はどうですか。
C: その日は私が出られないので、13日がいいです。
A: では13日の午後にしましょう。Bさん、会場の予約をお願いします。
B: わかりました、今日中に押さえます。
D: 資料の英語版も作ったらいいかもしれませんね。
A: それは確認してから次回決めましょう。
C: 予算の追加申請は、部長に聞いてみないと分かりません。人が考えた期待する分類(説明用の例)
- キックオフは13日午後、期待する分類:決定、理由:Aが明確に決め、Cの要望とも矛盾しない
- 会場予約はB、今日中、期待する分類:決定、理由:依頼に対しBが引き受けた
- 12日午後案、期待する分類:決定にしない、理由:Cが出席できないと述べ、合意に至らなかった
- 資料の英語版、期待する分類:保留、理由:「次回決める」と先送り
- 予算の追加申請、期待する分類:保留、理由:部長への確認待ちで、結論が出ていない
実際に使うときは、AIの出力がこの表と同じ分け方になっているかを見ます。12日午後案や英語版が決定事項に入っていたら、ルール1・3が効いていません。
抽出結果の照合チェック項目
照合は「抽出結果から原文へ」と「原文から抽出結果へ」の両方向で行います。前者は誤って拾ったもの、後者は拾い漏れを見つけます。
- 1、確認項目:引用が原文に実在するか、確認の仕方:引用文を文字起こしで検索する、見つかりやすい問題:言い回しが作り変えられている
- 2、確認項目:引用の直後に反対や留保がないか、確認の仕方:引用箇所の前後10行ほどを読む、見つかりやすい問題:提案が決定扱いになっている
- 3、確認項目:後で覆っていないか、確認の仕方:同じ議題の語を後半で検索する、見つかりやすい問題:古い結論が残っている
- 4、確認項目:担当者が正しいか、確認の仕方:依頼と引き受けの発言をたどる、見つかりやすい問題:依頼した人が担当者になっている
- 5、確認項目:期限の換算が合っているか、確認の仕方:会議日と相対表現を見比べる、見つかりやすい問題:「来週」の起点がずれている
- 6、確認項目:拾い漏れがないか、確認の仕方:「お願いします」「で行きましょう」「決まり」「持ち帰り」などで原文を検索する、見つかりやすい問題:短い決定が落ちている
- 7、確認項目:数字・固有名詞が合っているか、確認の仕方:金額、日付、製品名を原文と見比べる、見つかりやすい問題:音声認識の誤変換をそのまま採用している
- 8、確認項目:「記載なし」が埋められていないか、確認の仕方:担当・期限の列を見る、見つかりやすい問題:推測で補われている
数字、日付、担当者など、間違えると実害が出る項目は、必要なら録音の該当箇所も聞き直してください。文字起こし自体の誤変換や話者ラベルのずれは、AIの抽出より前の段階で起こります。
長い文字起こしで使うときの運用
- 会議日と議題リストを一緒に渡す。 相対日付の換算と、議題ごとの結論の追跡がしやすくなります。
- 長すぎる場合は議題ごとに分けて同じ指示文で実行する。 分けた場合は、議題をまたいで結論が変わっていないかを、人が最後に確認します。
- 出力を貼り戻して二次チェックをさせる。 「次の決定事項の各引用が、文字起こしに存在するか一つずつ確認し、存在しないものを挙げて」と頼むと、チェック1の補助になります。ただしこれもAIの作業なので、人の照合の代わりにはなりません。
- 会議ツールの標準要約を使う場合も同じ見方をする。 Teamsでは、会議後にCopilotへ質問するには文字起こしが必要で、要約やアクション項目の提案が得られます。利用にはTeams PremiumまたはMicrosoft Copilotライセンスが必要と案内されています(Microsoft サポート)。ZoomのAI Companionの会議サマリーは、音声のテキスト化データから会議の要点をまとめる機能で、編集と削除はホストが行います。対象プランや地域、組織の設定によって使えるかどうかが変わるため、自分の環境で確認してください。「決定」と「提案」の線引きをどこまで利用者が指定できるかも、ツールごとに異なる可能性があります。標準要約は下書きとして使い、決定事項は上の表で照合するのが安全です。
入力する前に確認すること
文字起こしには、参加者の氏名や社外の情報が含まれがちです。個人情報保護委員会は2023年6月2日に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を公表しています。貼り付ける前に、最新の内容と、社内規程、利用するサービスの規約を確認してください。迷う場合は、氏名を「Aさん」などに置き換え、金額や取引先名を伏せてから渡す方法があります。照合のために、置き換えの対応表は手元に残しておきます。この方法で情報漏えいを防げると保証するものではありません。
結果がずれたときの直し方
- 提案が決定に入る、指示文の直し方:ルール1を強め、「承認や合意の発言がない限り決定にしない」と足す
- 決定が少なすぎる、指示文の直し方:「判断に迷った項目」の中身を見て、決定の定義が厳しすぎないか確認する
- 担当者や期限が勝手に埋まる、指示文の直し方:「記載なしの場合は空欄ではなく『記載なし』と書く。推測は禁止」と明記する
- 引用が実在しない、指示文の直し方:「引用は文字起こしからコピーした文字列だけにする」と足し、チェック1を必ず行う
- 表の形式が崩れる、指示文の直し方:出力例を1行だけ書いて渡す
直すときは、一度に全部変えずに一つずつ変えて、同じ文字起こしで再実行します。OpenAIのChatGPT向けのプロンプトの指針も、最初のプロンプトの回答を確認し、その出力に基づいて調整していく進め方を示しています。

