社外会議で録音を断られたとき、AIで議事録を作る代わりの進め方
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

録音を断られた会議では、「会議中に記号付きでメモを取り、会議後10分以内に抜けを補い、そのメモをAIに整理させ、人が確認する」という流れが現実的です。録音や文字起こしがあれば、AIは会話全体から要約できます。録音がなければ、AIの材料はあなたのメモだけです。メモにないことをAIは知りませんし、もっともらしい文章で穴を埋めるおそれもあります。議事録の質は、メモの取り方とAIへの指示でほぼ決まります。この記事では、その二つを使える形で示します。
先に決める:AIと人の役割分担
- メモを「決定・宿題・論点」に並べ替える、担当:AI、理由:形式変換は任せやすく、時間も節約できます
- 文体をそろえ、読みやすくする、担当:AI、理由:内容を変えない範囲で任せられます
- メモにない情報の補完、担当:しない、理由:推測が混ざると誤記録になります
- 金額・日付・数量・固有名詞の確認、担当:人、理由:社外に出る文書で間違えると影響が大きいためです
- 担当者と期限の確定、担当:人(必要なら相手に確認)、理由:曖昧な表現を、AIは断定形にしてしまいがちです
- 社外への送付可否、担当:人、理由:相手との取り決めと社内規程に従います
録音を断られたら、相手の意向に従うのが基本です。相手に知らせず別の手段で録る方法は、この記事では扱いません。たとえばZoomでは、録音が始まると参加者に同意を求める表示が出て、同意しない場合は会議から退出する選択肢があります(Zoomサポート「Providing consent to be recorded」。確認したのは英語版ヘルプです)。
断られたら、会議の冒頭で「メモを取り、終了後に要点をメールで確認させてください」と一言添えておくと、後の確認がスムーズになります。
会議中:記号付きメモの型
文章で書こうとすると、書くことに追われて聞き逃します。行頭に一文字の記号を付け、あとで機械的に拾える形にします。
- 決、意味:決まったこと、書き方の例(説明用):決 見積は11/12までに再提出
- 宿、意味:宿題(誰が・何を・いつまで)、書き方の例(説明用):宿 先方→仕様書/来週水曜
- 数、意味:数字・日付・固有名詞、書き方の例(説明用):数 納期11/15 台数20
- ?、意味:聞き取れた自信がない、曖昧、書き方の例(説明用):? 「来週」は何日の週か
- 言、意味:一言一句残したい発言、書き方の例(説明用):言「追加費用は発生しない」
- 論、意味:結論が出ていない論点、書き方の例(説明用):論 保守の範囲
コツは三つです。
- 会議の前に枠を作ります。 日付、参加者、目的を冒頭に書き、議題ごとに余白を空けます。
- 相手の発言と自社の発言を分けます。 行頭に「先」「自」と添えるだけで十分です。
- 復唱で確認できた数字は丸で囲みます。 確認済みの数字と未確認の数字を、後で区別できます。
「言」は、記録に残したい発言や相手に確認が必要な発言だけに使います。
会議後10分で補い、AIに整理させる
まず人が補う
AIに渡す前に、次の作業をします。当日中、遅くとも翌営業日の朝までに済ませてください。時間が経つほど「?」が解消できなくなります。
- 「?」の行を見て、思い出せるものだけ直します。思い出せなければ「?」のまま残します。
- 「宿」の行に担当と期限が両方あるか確認します。欠けていれば空欄にします。
- 自分にしかわからない略語を、正式な表記にします。
- 案件名や資料名など、AIが推測しやすい固有名詞を確認します。
AIに渡す指示文
そのままコピーして、【】 や末尾のメモ部分を差し替えてください。この指示文と次の入力例は説明用に作ったもので、特定のAIサービスで動作を検証したものではありません。
あなたは議事録の整理担当です。以下のメモだけを材料に、議事録の下書きを作ってください。
【ルール】
- メモに書かれていない内容は追加しない。推測で補わない。
- 担当者・期限・金額・日付がメモにない場合は「未記載」と書く。
- 「?」が付いた行は、確定事項に入れず「要確認」の欄に移す。
- 「?」が関わる数字や日付は、一覧に載せる場合「要確認」と注記する。
- 「言」が付いた行は、引用符を付けて原文のまま残す。
- 「先」は相手側、「自」は自社側の発言として区別する。
- 文体は「です・ます」にそろえる。
【出力形式】
1. 会議の概要(日付・参加者・目的、1〜2行)
2. 決定事項(箇条書き)
3. 宿題(表:担当/内容/期限)
4. 数字・固有名詞の一覧
5. 未決の論点
6. 要確認(メモに「?」があった項目と、AIが曖昧と判断した箇所)
【メモ】
(ここにメモを貼る)入力例(説明用の架空の例)
日付 11/5 先:A社担当者 自:自社担当 目的:運用保守の見積確認
決 見積は11/12までに再提出
宿 先方→仕様書/来週水曜
数 納期11/15 台数20
? 台数20は追加の可能性あり
論 保守の範囲
言「追加費用は発生しない」
? 「来週」は何日の週かこの例なら、仕様書の期限は「来週水曜」が曖昧なため、日付を確定せず要確認に回る、という出力を期待できます。台数も、確定の数字としては出ないはずです。ただし実際にそうなるかはサービスやモデルによって違います。出力が指示に従っているか、必ず自分の目で見てください。
AIに貼る前に:置換とツール設定
社外会議のメモには、相手の氏名、取引条件、価格などが含まれがちです。貼る前に、次のように置き換えます。
- 個人名は「先方担当」「A社担当者」など役割名にします。
- 社名や案件名は「A社」「案件X」のような仮名にします。
- 金額や数量は、必要なければ省くか、出力を受け取った後に人が戻します。
利用するサービスの学習設定も確認します。OpenAIのヘルプによれば、ChatGPTのFree、Plus、Proでは、モデル改善のためのデータ共有が既定で有効です。「Settings > Data controls」の「Improve the model for everyone」をオフにすると、以降の新しい会話は学習に使われません。Business、Enterprise、Edu、APIは、既定で内容(APIは入出力)を学習に使わないと説明されています。ただし、評価ボタンなどでフィードバックを送ると、その会話が学習に使われうる点にも注意してください(OpenAIヘルプ「Data Controls FAQ」。英語版の記述です)。
学習に使われないことと、相手との秘密保持の義務を満たすことは別の問題です。社外会議の内容を外部のAIサービスに入力してよいかは、秘密保持契約と自社の規程で決まります。個人情報を含む場合については、個人情報保護委員会が2023年6月2日付で生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を発表しています(個人情報保護委員会の報道発表ページ)。本記事では添付PDFの中身には踏み込みません。個人情報を入力する可能性があるときは、原文を読み、社内の担当部署に確認してください。迷う場合は、仮名への置換を徹底するか、AIを使わず手作業でまとめるほうが安全です。
出力の確認と、相手への確認
人が確認する順番
- 「決定事項」の各行が、メモの「決」の行と一致しているか。メモにない決定は削除します。
- 「宿題」の担当と期限が、メモ通りか。AIが補っていれば「未記載」に戻します。
- 「数字・固有名詞」を、見積書や仕様書などの手元資料と照合します。
- 「要確認」の項目を、相手に聞くか、自分で調べるか、削除するか決めます。
- 「言」の引用が、メモと一字違わないか確認します。
相手に確認してもらう文面
録音がない以上、相手と記録が食い違う余地が残ります。議事録を確定版として送る前に、要点だけを送って確認を求めると、やり直しが減ります。文面の例です。
本日はありがとうございました。
記録に取り違えがないか、以下の点を確認させてください。
【決定事項】
・見積は11/12までに再提出(当方)
【確認したい点】
・仕様書のご共有期限は「来週水曜」と伺いました。具体的な日付は◯/◯でよろしいでしょうか。
・納期は11/15、台数は20台と理解しています。追加の可能性があるとのことでしたので、現時点の数字としてよろしいでしょうか。
・「追加費用は発生しない」との旨を伺いました。対象の範囲を改めて教えていただけますか。
相違があればご指摘ください。この文面は、AIが出した「決定事項」「宿題」「要確認」の欄から作れます。返信を受けて、議事録を確定させてください。
録音を断られる会議が続くなら、記号は固定して使い続けます。そうすれば、AIへの指示文を毎回直す必要がなくなります。最初は「決」「宿」「数」「?」の四つだけでも試すと、定着しやすくなります。

