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教科書の「なぜそうなる?」をAIに聞く前に:疑問を分解して質問する方法

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

教科書の疑問を、絡まった糸から三色のカードへ分けて考える机上の場面
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

結論から言うと、AIに聞く前にやることは「分からない」を3つに仕分けるだけです。用語(意味があいまいな言葉)、前提(説明が成り立つために必要な知識)、具体例(自分で試した数値や身近な場面)の3つです。この3点を質問文に入れると、AIは「どこでつまずいているか」を推測せずに答えられます。 逆に「なぜそうなるのか教えて」だけだと、AIは学習者がどこまで分かっているかを知らないまま、一般的な解説を返すしかありません。すでに知っている内容の説明や、難しすぎる回答になりがちです。 この記事では、そのまま使える疑問分解シート、同じ疑問を悪い質問と良い質問に書き分けた対比、AIの返答を受け取ったあとの確認方法を示します。学習者本人にも、生徒に質問のコツを教える人にも使えます。

この記事の目次
  1. 漠然とした質問が失敗しやすい理由
  2. 疑問分解シート(コピーして使う)
  3. 悪い例と良い例の対比
  4. 分解の仕方:3つの問いに答える
  5. AIの返答を受け取ったあとの確認
  6. 教える人が使うときの工夫

漠然とした質問が失敗しやすい理由

AI各社の公式ヘルプも、質問の具体性を重視しています。OpenAIのヘルプ記事は、望む文脈・結果・長さ・形式などを具体的に書くこと、指示を先頭に置いて「###」や「"""」で指示と材料を分けること、望む形式を例で示すことを勧めています(Best practices for prompt engineering with the OpenAI API)。Claudeのサポート記事も、背景知識のない相手に頼むつもりで文脈を添えること、複雑な依頼は小さな手順に分けること、返答を見て追加の指示で改善することを挙げています(My prompt isn't giving me a helpful answer.)。

教科書の疑問に当てはめると、この「文脈」にあたるのが先ほどの3点です。AIは、目の前の学習者が何を知っていて何を知らないかを見られません。だから学習者の側で、つまずきの位置を言葉にして渡します。なお、この3分類は公式ヘルプの内容を学習場面に応用した編集上の整理で、各社が推奨している型ではありません。

疑問分解シート(コピーして使う)

ノートやメモアプリに貼って、上から順に埋めてください。全部埋まらなくても構いません。空欄が「自分がどこまで分かっていないか」の目印になります。

【疑問分解シート】
0. 教科書の該当箇所:(1〜2文を書き写す/ページ番号)
   自分の「なぜ」を一文で:

1. 用語(意味があいまいな言葉を最大3つ)
   ・言葉:        自分の言葉での意味:        自信 ○△×
   ・言葉:        自分の言葉での意味:        自信 ○△×

2. 前提(この説明を理解するのに必要そうな知識)
   ・ここまでは分かる:
   ・ここから分からない:
   ・以前習ったはずだが思い出せないこと:

3. 具体例
   ・教科書の例のうち、納得できたもの/できないもの:
   ・自分で作った例(数字、身近な場面):
   ・その例で「予想と違った」「どうなるか分からない」点:

4. AIへの頼み方(1つ選ぶ)
   □ 用語の意味を確かめたい  □ 前提の穴を探してほしい
   □ 自分の例を検証してほしい □ 自分の説明を採点してほしい

ポイントは「自信 ○△×」の欄です。×の用語から順に聞けば、質問が散らばりません。0番で教科書の文を1〜2文に絞るのは、質問の焦点を保つためです。ページ全体を貼る必要はありません。

悪い例と良い例の対比

以下は説明用の例です。実際にAIへ入力して得た回答ではありません。題材は中学数学の「マイナス×マイナスがなぜプラスになるのか」とします。

悪い例

負の数×負の数がなぜプラスになるのか教えてください。

教科書のどの説明で詰まったのか、掛け算をどう理解しているのかが一切ありません。AIは、公式の暗記向け、数直線、規則性のどの説明を選ぶべきか分からず、学習者に合うかどうかは運任せになります。

良い例

中学1年の数学の質問です。教科書の次の文で詰まりました。
「(-3)×(-2)=+6 となる」

【用語】「掛ける」を、これまで「同じ数を何回も足すこと」と理解してきました。この理解で合っていますか。
【前提】(-3)×2=-6 は「-3を2回足す」ので分かります。分からないのは、「-2回足す」の意味です。
【具体例】(-3)×2=-6、(-3)×1=-3、(-3)×0=0 と並べてみました。この先 (-3)×(-1) を自分で予想すると +3 になりそうですが、理由を言えません。

お願い:
1. いきなり答えを全部書かず、まず私の理解で正しい点と足りない点を分けてください。
2. 「繰り返し足す」以外の掛け算の見方が必要なら、その理由を短く説明してください。
3. 最後に、私が自分の言葉で説明を書くので、その採点役になってください。

良い例には3つの工夫があります。第一に、3分類が見出しで区切られ、質問の材料と頼みごとが分かれています。第二に、自分で並べた式が入っているので、AIは「この並びの続きから何が言えるか」を軸に答えられます。第三に、「答えを全部書かない」「採点役になって」と頼んでいるので、読んで終わりにならず、自分で説明する段階まで進めます。

分解の仕方:3つの問いに答える

用語:「自分の言葉で言えるか」

教科書の文から名詞や動詞を拾い、「友達に説明できるか」で判定します。言えない言葉は、質問文に「私はこう理解している」と書いて渡してください。「〇〇とは何ですか」とだけ聞くより、自分の理解を添えたほうが、ずれた部分をAIが指摘しやすくなります。

前提:「どこまで戻れば分かるか」

「ここから分からない」の一歩手前を書き出します。見つからないときは、AIに前提の穴を探してもらう方法もあります。

次の説明を理解するために必要な前提知識を、学習順に5つ以内で挙げてください。
そのうえで、私がその前提を持っているか確かめる質問を1つずつ出してください。私が答えてから次に進みます。
(説明文:ここに教科書の1〜2文)

具体例:「小さい数字で試したか」

抽象的な説明で詰まったら、数字を小さくして手で計算します。うまくいかない例も大事な材料です。「予想と違った」と書けば、AIは誤解の原因を探しやすくなります。

AIの返答を受け取ったあとの確認

返答はそのまま信じず、次の順で確認してください。

  • 用語の定義が教科書と合っているか、方法:教科書の定義文と見比べる
  • 説明に飛躍がないか、方法:各段落について「なぜ?」を1回ずつ言ってみる
  • 自分の例で当てはまるか、方法:別の数字で自分で計算し直す
  • 自分の言葉で言い直せるか、方法:教科書を閉じて書く。つまずいたらそこを再質問する
  • まだ納得できないとき、方法:先生・教科書・参考書など別の情報源に当たる

文部科学省の初等中等教育向け「生成AIの利活用に関するガイドライン」(2024年12月26日改訂のVer.2.0)の関連ページは、人間中心の利活用を基本に置いています。校務で教職員が使う場合は、生成された内容の適切性を判断できる範囲で使うこと、児童生徒の学習活動では発達の段階を踏まえてリスク対策を講じたうえで検討することが示されています(文部科学省「生成AIの利用にあたって」)。主に日本の学校現場向けの資料です。上の確認表は、最終的な判断を人が持つというこの考え方を、学習場面に当てはめたものです。

教える人が使うときの工夫

生徒にシートを配るなら、AIに質問する前に書かせる運用が考えられます。シートを見れば、誤解が用語・前提・具体例のどこにありそうかが分かりやすくなり、AIを使わずに先生が答えられる場合もあります。AIを使う場面では、教科書の長い範囲を貼らせず、該当する1〜2文と生徒自身の言葉にとどめるよう伝えると、質問が絞れます。氏名や学校名など個人が特定できる情報は入力しないよう、あわせて指導してください。学校や自治体、使うサービスごとに利用ルールが異なる場合は、そちらを優先します。

シートの効果は本記事では検証していません。まず1つの単元で試し、生徒の質問がどう変わるかを観察して、項目を調整してください。

出典・参考資料