マガジン

読めない言語の問い合わせに返信する:AIで意味を取り、誤解を避ける手順

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

問い合わせの原文と返信下書きの対応箇所を照合するイメージ
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

読めない言語の問い合わせには、翻訳結果をそのまま信じず、次の順で進めると誤解を減らせます。 1. 受信文を訳すだけでなく、AIに「何を求められているか」「どこが不確かか」も答えさせる。 2. 返信は1通1目的の短い文にし、訳しにくい表現を避ける。 3. 送信前に、日付・金額・固有名詞を原文と照合し、逆翻訳で意味のずれを探す。 この記事は、3段階の依頼文とチェック項目をコピーして使える形で示します。文中の外国語文や入力例は、説明のために本記事で作った「説明用の例」です。実際にAIへ入力した結果ではなく、出力の質を保証するものでもありません。

この記事の目次
  1. 先に決める:何をAIに渡してよいか
  2. 手順1:受信文の意味を確認する
  3. 手順2:返信を短く保つルール
  4. 手順3:送信前にチェックする
  5. 判断表:そのまま送るか、人に見せるか

先に決める:何をAIに渡してよいか

問い合わせには氏名、住所、注文番号などが含まれやすいため、受信文を貼る前に、どのサービスに貼るかを決めます。

DeepLの無料版の利用規約(確認できた表示は2024年11月更新)には、アップロードした内容を限られた期間、ニューラルネットワークやアルゴリズムの学習・改善のために処理する場合があると書かれています。同じ規約は、機密情報や個人データを含む内容に無料版を使うことを認めず、そうした処理は有料のDeepL Pro契約で行うよう求めています。出典:DeepL Translator(無料)の利用規約

つまり、規約はサービスごと・プランごとに違います。他のAIや翻訳ツールを使うときも、貼る前に規約を確認してください。日本の個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用について2023年6月2日付で注意喚起等を公表しています(個人情報保護委員会の該当ページ)。本記事では公表の事実だけを紹介します。詳しい内容は同ページの添付資料で確認し、業務で個人データを扱う場合は社内ルールに従ってください。

実務上の対策は、貼る前に次のように置き換えることです。

  • 氏名 → 「顧客A」
  • 住所・電話・メール → 削除、または「[住所]」
  • 注文番号 → 「[注文番号]」(返信の最終版で人が戻す)

手順1:受信文の意味を確認する

翻訳だけを頼むと、AIは不明瞭な箇所も自然な日本語に整えてしまい、曖昧さが見えなくなります。そこで「訳」と「確認」を分けて依頼します。

コピーして使える依頼文

以下は外国語の問い合わせ文です(言語は[言語名]。分からなければ推定して、その根拠も書く)。
次の順で答えてください。
1. 日本語訳(直訳寄りで。意訳しすぎない)
2. 相手が求めていること(1〜3点)
3. 原文であいまい・多義的で、訳が割れうる箇所(原文の語句を引用して)
4. 日付・金額・数量・固有名詞の一覧(原文どおり)
5. 皮肉・怒り・急ぎの度合いなど、語調について読み取れること。根拠も添える
6. 私が相手に聞き返すべき点
分からない箇所は推測で埋めず、「不明」と書いてください。

--- 原文 ---
[ここに受信文]

入力例(説明用の例)

Hola, compré su producto hace dos semanas pero la caja llegó dañada.
¿Pueden enviarme uno nuevo o devolver el dinero? Mi pedido es [注文番号].

この例で見たいのは次の点です。

  • 相手が「新品への交換」か「返金」のどちらかを求めていること
  • 「caja(箱)」が壊れたと書かれているだけで、中身の状態は書かれていないこと
  • 希望がどちらなのかは相手が決めておらず、こちらに選ばせていること

AIの答えがこうした観点を挙げているかを、人が見て判断します。中身の状態のように、原文にない情報は「不明」と書かれているのが望ましい形です。不明な点は、返信で短く聞き返します(例:「壊れていたのは箱だけですか。中身も壊れていますか」)。

手順2:返信を短く保つルール

次の6つは、機械翻訳で意味が崩れにくくするための編集上の方針です。公式の仕様ではありません。

  1. 1通1目的。 質問と案内を詰め込まない。目的が複数なら番号を振る。
  2. 1文1内容。 主語を省かず、30字程度までを目安にする。
  3. 慣用句・婉曲表現を避ける。 「ご期待に沿えず」「善処します」は、「できません」「確認して○日までに連絡します」に直す。
  4. 約束は具体的に。 「近日中」ではなく「3営業日以内」のように、期限と数字を書く。
  5. 相手に求める行動は1つ。 「写真を1枚送ってください」のように言い切る。
  6. 日付は年・月・日をすべて書く。 「11/5」のような数字だけの表記は、国によって月と日の順が違うため避ける。返信案の段階で「5 November 2026」のように月名の綴りで書くよう指定する。

返信案を作る依頼文

次の日本語の要点を、[相手の言語]の返信メールにしてください。
条件:短い文、丁寧だが簡潔、慣用句なし、箇条書き可。日付は月名を綴りで書く。
事実は私が書いたものだけを使い、補足や約束を勝手に加えないこと。
要点:
- お詫び(箱の破損)
- 破損箇所の写真を1枚送ってほしい
- 写真を受け取った後、3営業日以内に交換か返金かを連絡する

「勝手に加えない」と指定するのは、AIが親切心から「すぐ対応します」などの約束を足すことがあるためです。出てきた文は、必ず次の手順で確かめます。

手順3:送信前にチェックする

返信案を、日本語に逆翻訳します。返信案を作ったチャットとは別のチャット、または別の翻訳ツールで行うと、同じ誤解を引き継ぎにくくなります。

以下の[言語]の文を、直訳寄りで日本語にしてください。
文脈は与えません。曖昧な箇所は指摘してください。

逆翻訳した日本語を元の要点と見比べ、次を確認します。

  • [ ] 日付・金額・数量・注文番号が、こちらの意図と一致している
  • [ ] 宛名や固有名詞の綴りが、相手の文面と同じ
  • [ ] 返信が求める行動は1つで、期限が書かれている
  • [ ] こちらが約束していない内容(返金、無償対応、責任の承認)が入っていない
  • [ ] 「できる」「できない」が逆になっていない
  • [ ] 手順1で出た「不明」「割れうる箇所」に、返信が答えている、または聞き返している
  • [ ] 最初に置き換えた個人情報を、必要な範囲だけ戻した

逆翻訳で一致しても、安心しすぎないでください。同じ種類のAIは、同じ方向に誤訳することがあります。金額や期限など重要な箇所ほど、人の目で原文と照らします。

判断表:そのまま送るか、人に見せるか

  • 日常的な確認や案内で、逆翻訳も要点と一致、対応:上のチェックを済ませて送る
  • 原文の意味が「割れうる」と指摘された、対応:推測で返さず、短い質問を返して確認する
  • 返金、契約、苦情、期限や金額の約束を含む、対応:その言語を読める人に確認してもらう
  • 相手が怒っている、または脅す内容に見える、対応:即答せず、上長や担当部署と方針を決める
  • 法的な請求や権利関係に関わる、対応:弁護士など専門家に相談してから返す

AIは意味を取る手助けになりますが、訳の正しさを保証するものではありません。確認の手間を減らす道具として使い、約束や責任に関わる部分は、人が決めてください。

出典・参考資料