英語以外の言語をAIで練習するとき気をつける点:声調・敬語・文字の扱い
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

英語の練習と同じ感覚でAIに添削や会話相手を頼むと、見逃しやすい誤りが3つあります。声調(中国語など)、相手との関係で変わる言い方(韓国語の語尾、スペイン語のtú/usted など)、文字と記号の扱い(簡体字と繁体字、ハングルの綴り、¿やアクセント記号)です。 対策は、AIに任せる範囲と人が確かめる範囲を最初から分けることです。AIには「例文づくり」「間違い探し」「根拠つきの説明」を任せます。声調の正しさ、場面に合う丁寧さ、綴りの正否は、母語話者向けの辞書などで裏を取ります。この記事では、そのための依頼文、言語別の確認項目表、裏取りの手順を示します。 なお、AIの得意・不得意は言語によって差があります。Anthropicの多言語対応のページには、英語を100%とした言語別の相対スコアが載っていて、モデルや言語で値が違います。ただしこの数値は、英語の知識テスト(MMLU)を翻訳して解かせたものです。声調や敬語の自然さを測った指標ではないので、「スペイン語は高得点だから会話表現も安心」とは読めません。ページ自体も、使う言語で試すよう案内しています。
まず依頼文で条件をそろえる
先ほどのページでは、入力と出力の言語を明示すること、翻字ではなくその言語本来の文字で渡すこと、文化的・地域的な文脈を考えることが勧められています。練習用には、さらに「読み」と「要確認」を出させると、人が確かめる場所が絞れます。以下は説明用のひな形で、実際に試した結果ではありません。
あなたは中国語(簡体字・中国大陸の標準語)の学習相手です。
私は日本語話者の初級者です。以下の文を添削してください。
【私の文】我昨天去了商店买东西。
【場面】友人とのチャット(くだけた関係)
出力形式:
1. 修正文(簡体字)
2. ピンイン(声調記号つき)
3. 直した点と理由(文法/語彙/丁寧さ/文字に分類)
4. 自信が低い箇所に「要確認」と付け、何を調べればよいか書く
5. 台湾や他地域で言い方が違う可能性があれば注記ポイントは4つです。地域と文字体系を指定する、場面と相手との関係を書く、ピンインなどの読みを併記させる、分からない箇所を「要確認」と言わせる。機密を含む実際の仕事の文面を練習に使うときは、社名や人名を架空のものに置き換えてから入力してください。
言語の特性別・確認項目表
下の表は、各言語の文法や綴りの一般的な知識に基づく編集部の整理です。特定のAIの出力を検証した結果ではありません。
- 声調・音、中国語:4声と軽声(mā/má/mǎ/mà)。3声が続くと変化する(你好 nǐ hǎo は ní hǎo に近く読む)、「不」が変化する(不是 búshì)。これらがピンインに反映されているか、韓国語:声調はないが、濃音・激音・連音化で綴りと発音がずれる。読みの表記が必要なら出させる、スペイン語:アクセント記号が語義や品詞を分ける(sí/si、está/esta)
- 丁寧さ、中国語:你/您の使い分けに加え、メール文の硬さが場面に合うか、韓国語:해요体・합쇼体・반말など。高めて言う動詞(먹다→드시다など)もある。相手との関係を書かないと語尾が揺れやすい、スペイン語:tú/usted。スペインと中南米で ustedes/vosotros が異なり、地域によっては vos も使う
- 文字、中国語:簡体字か繁体字か。同じ意味でも地域で語が違う(ソフトウェア:软件/軟體)、韓国語:助詞の選択(은/는、이/가)、되/돼などの綴り、分かち書き、スペイン語:ñ、アクセント記号、¿ ¡ の対応、名詞の性・数の一致
- 地域差、中国語:大陸と台湾で語彙と字形が違う、韓国語:標準語が前提か、方言風の表現が混じっていないか、スペイン語:国によって語彙や、意味が変わる語がある
- AIの回答で疑う場所、中国語:声調記号の欠落、簡体・繁体の混在、韓国語:場面に合わない語尾、不自然な尊敬語の重ね方、スペイン語:地域が混ざった語彙、記号の脱落
使い方は単純です。AIの回答のうち「疑う場所」に当たる箇所だけ、次の章の方法で裏を取ります。全文を疑うより続けやすく、見落としも減ります。
母語話者向け資料で裏を取る手順
AIが「これが自然です」と言っても、それは確認の終点ではありません。OpenAIのヘルプ(Voice Mode FAQ)にも、ChatGPTは間違えることがあるので重要な情報は確認するよう書かれています。語学でも同じで、次の順に確かめます。
- 検証対象を3つまでに絞る。 「要確認」と付いた語、表の「疑う場所」に当たる箇所、自分が初めて見る表現を選びます。
- その言語の母語話者向けの辞書で引く。 例として、韓国語は国立国語院の標準国語大辞典、台湾の中国語は教育部の重編國語辭典修訂本があります。後者は語の使われ方の歴史を記録する研究者向けの辞典と説明されているため、学習用には同じサイトの簡易版の辞典のほうが合う場合があります。大陸の中国語やスペイン語も、その言語圏の公的機関や出版社が出す辞書を探してください。用例や使用域の記載の有無は辞書ごとに違い、利用条件も各サイトで異なります。
- 用例を2〜3件読み、場面が合うかを見る。 載っているかどうかだけでなく、書き言葉か話し言葉か、目上に使えるかを見ます。
- 確認できなければ、AIに別の聞き方をする。 「この表現を実際に使う場面を3つと、使えない場面を2つ挙げてください」と頼み、答えが辞書の用例とずれたら元の回答を疑います。
- 記録を残す。 次の形で控えると、同じ誤りを繰り返しにくくなります。
- (自分が確認した語を記入)、AIの説明:(AIの理由)、辞書で確認した結果:(辞書の用例や使用域)、判定:採用/保留/不採用
顧客への案内や契約まわりなど仕事の文書で使うなら、最後は母語話者か専門の翻訳者に確認を依頼します。AIの出力と辞書の確認は、その前段の作業です。
翻訳ツールの丁寧さ設定と音声機能の注意
翻訳ツールには、丁寧さを指定できるものがあります。ただし対応言語は限られます。DeepLのヘルプ(About the formality feature)は、フォーマリティ機能の対象としてオランダ語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、ベトナム語を挙げています(この記事の確認時点)。この一覧に中国語と韓国語はありません。日本語は、フォーマルとインフォーマルではなく丁寧体と普通体の切り替えと説明されています。テキスト翻訳での利用にはDeepL Proが必要です。
つまり、韓国語の語尾や中国語の硬さは、この機能に頼って調整できるとは限りません。対応言語は更新される可能性があるので、使う前に最新の案内を見てください。APIの翻訳リファレンスには、丁寧さの指定は一部の対象言語のみ有効で、非対応の言語に more や less を指定すると失敗し、prefer_more や prefer_less なら通常の丁寧さに戻って処理される、とあります。
音声での練習にも注意点があります。上記のOpenAIのヘルプによれば、音声会話のあとに付く文字起こしは、重なった発話、周囲の雑音、速い会話などのせいで、実際の発言と一致しないことがあります。聞き取りには、ネットワーク状況やマイク設定も影響します。ここからは編集上の推測ですが、画面に正しい文字が出ても、声調や母音の発音が合っていた証拠にはなりません。声調の練習では、録音した自分の声を、母語話者の音声つき辞書の発音と聞き比べる手順を足してください。なお、音声機能の提供範囲はプランや地域、アプリで異なる場合があります。
今日から使える最小の運用
- 依頼文に、地域、文字体系、場面、相手との関係を書く。
- 回答に、読みと「要確認」を出させる。
- 確認するのは3箇所までに絞り、母語話者向け辞書で用例を読む。
- 仕事で使う文書は、最後に母語話者か専門家へ渡す。
この4点を守れば、AIは「間違いを見つけて説明してくれる練習相手」として使えます。

