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専門分野の外国語資料を読む前に、AIで用語リストを作る手順

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

付箋だらけの外国語論文の印刷物の横で、表形式のノートに鉛筆で用語を書き込み、辞典を開いて確かめている手元の様子
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

手順は「①資料から専門語の候補を原文の用例つきで拾わせる → ②訳語候補と意味を表に埋めさせる → ③人が用例と照らして採用訳語を決める」の3段階です。AIには拾う作業と下書きを任せ、訳語を確定する判断は自分で行います。この分担にすると、読み始めてから同じ語で何度も止まる状況を減らしやすくなります。 この記事では、そのまま使える列設計、指示文、AIの訳語を疑う観点を順に示します。サンプルはすべて私が作った「説明用の例」で、実際にAIへ入力して得た出力ではありません。

この記事の目次
  1. 手順の全体像
  2. 用語リストの列設計
  3. 用語抽出の指示文
  4. AIの訳語を疑う観点
  5. 機密資料を扱うときの注意
  6. 読みながら育てて、翻訳ツールに移す

手順の全体像

  1. タイトル、要旨(abstract)、見出し、図表のキャプション、巻末の用語索引や略語表を先に集める
  2. AIに専門語の候補を拾わせる(章や節ごとに分ける)
  3. 候補を表に整理させ、訳語候補と意味を埋めさせる
  4. 人が用例と照らして確認し、採用訳語を決める
  5. 読みながら追記し、必要なら翻訳ツールの用語集に移す

全文を一度に渡すより、章ごとに分けるほうが扱いやすくなります。ChatGPTにはファイルをアップロードして質問できる機能があり、公式ヘルプには、テキストや文書ファイルは1ファイル200万トークンまで(表計算は対象外)、無料プランは1日あたりのアップロード数が少ないなど、プランごとの上限が示されています(2026年10月28日に確認。上限は変わる可能性があります)。詳細はOpenAIヘルプの「Uploading files and audio to ChatGPT」をご覧ください。ただし、上限に収まることと、長い文書から漏れなく拾えることは別の問題です。章単位で処理するのは、確認しやすくするためでもあります。

用語リストの列設計

最初に列を決めておくと、AIの出力が毎回そろい、後から並べ替えや検索もできます。表計算ソフトにそのまま貼れる形がお勧めです。

  • ID、入れる内容:通し番号、誰が埋めるか:AI
  • 原語(見出し形)、入れる内容:単数形・原形にそろえた語、誰が埋めるか:AI
  • 本文中の形、入れる内容:実際に出てきた形(複数形、活用形など)、誰が埋めるか:AI
  • 分類、入れる内容:専門語/略語/固有名詞/一般語の専門的用法、誰が埋めるか:AI
  • 出現箇所、入れる内容:章・節・ページなど、誰が埋めるか:AI(人が検算)
  • 原文の用例、入れる内容:該当文を原文のまま1文、誰が埋めるか:AI(人が原資料と照合)
  • 訳語候補、入れる内容:1〜3個、誰が埋めるか:AI
  • 意味の説明、入れる内容:日本語で1〜2文。この資料の文脈での意味、誰が埋めるか:AI
  • 注意点、入れる内容:多義、一般語との違い、略語の展開形、誰が埋めるか:AI
  • 確認状況、入れる内容:未確認/確認済/要調査、誰が埋めるか:人
  • 確認の根拠、入れる内容:辞書、規格、既訳、専門書など、誰が埋めるか:人
  • 採用訳語、入れる内容:最終的に使う訳語、誰が埋めるか:人

要点は「原文の用例」を必ず入れることです。用例があれば、AIが示した意味がその文脈に合うかを自分で検証できます。人が埋める列を最初から分けておけば、AIの下書きと確認済みの情報も混ざりません。

出現回数の列は入れていません。生成AIは長い文章の中の正確な出現数を数えるのが得意とは限らないためです。頻度が必要なら、PDFをテキスト化して検索機能で数えるほうが確実です。

用語抽出の指示文

次の文面をコピーし、【 】の部分を差し替えて使います。

あなたは【分野名】の外国語資料を読む学習者を手伝う用語整理の担当です。
下の【言語】の本文から、この分野を理解するために押さえるべき専門語の候補を最大30個拾ってください。

条件:
- 一般的な日常語は除く。ただし、この分野で特別な意味を持つ語は「一般語の専門的用法」として含める
- 略語は展開形も併記する。展開形が本文中に書かれていない場合は「本文に記載なし」と書く
- 「原文の用例」は、本文から1文をそのまま抜き出す。要約や言い換えをしない
- 本文に出てこない語は入れない
- 訳語候補は1〜3個。定訳があるか確信が持てない場合は「定訳は未確認」と書く
- 意味の説明は、この本文の文脈での意味を日本語1〜2文で書く
- 出力はタブ区切りの表。列は「ID / 原語(見出し形) / 本文中の形 / 分類 / 出現箇所 / 原文の用例 / 訳語候補 / 意味の説明 / 注意点」

【ここに本文または章を貼る。機密情報は含めない】

「本文に出てこない語は入れない」「用例はそのまま抜き出す」という条件は、AIが勝手に語を補う失敗を減らすためのものです。確実に防げるわけではないので、用例が本文にあるかは必ず照合してください。

説明用の例(未実行)

私が作った短い英文と、期待される出力のイメージです。AIの実際の出力ではありません。

入力の本文例:

Fouling reduces the heat transfer coefficient of the exchanger over time. Periodic cleaning restores performance.

出力のイメージ:

  • 1、原語:fouling、分類:専門語、原文の用例:Fouling reduces the heat transfer coefficient…、訳語候補:汚れ付着、ファウリング、注意点:一般語の「汚れ」と同じ訳でよいか要確認
  • 2、原語:heat transfer coefficient、分類:専門語、原文の用例:…the heat transfer coefficient of the exchanger…、訳語候補:熱伝達率、熱貫流率、注意点:似た概念が複数あり、どれが適切かは資料の定義による

「熱伝達率」と「熱貫流率」のように近い訳語が並ぶ場合は、AIの説明を鵜呑みにせず、資料の定義や分野の用語集で確かめます。

AIの訳語を疑う観点

AIの訳語は自然に見えても、その分野の定訳と違うことがあります。次の観点で、確認状況を「確認済」にしてよいかを判断してください。

  • 多義語ではないか、疑う理由:同じ語が分野ごとに別の意味を持つ、確認のしかた:原文の用例で、AIが示した意味が通るか読む
  • 一般語の訳になっていないか、疑う理由:専門的用法が日常語の訳に引きずられる、確認のしかた:分野の辞典や用語集で同じ語を引く
  • 略語が正しく展開されているか、疑う理由:同じ略語が別の語を指すことがある、確認のしかた:本文の初出箇所に展開形があるかを見る
  • 造語の直訳ではないか、疑う理由:定訳がないとき、直訳した造語が出ることがある、確認のしかた:日本語の資料で同じ語が使われているか検索する
  • 近い概念と混ざっていないか、疑う理由:似た語を同じ訳にそろえてしまう、確認のしかた:資料中の定義や数式、図と照らす
  • 訳語がぶれていないか、疑う理由:同じ原語に複数の訳語が付く、確認のしかた:表を原語で並べ替え、重複を確認する
  • 定訳が決まっている分野か、疑う理由:規格、法令、特許などは用語が決まっている場合がある、確認のしかた:公的機関や規格団体、学会などの用語集・既訳を確認する

確認の根拠は、第三者が見て確かめられるものにします。「AIがそう言った」は根拠欄に入れません。確認できなかった語は「要調査」のまま残し、読み進めながら補えば十分です。

機密資料を扱うときの注意

社内文書や未公開の資料を使うときは、サービスの学習利用の設定と、情報を外部へ送ってよいかどうかを分けて考えてください。学習に使われない設定でも、送信してよいかは勤務先の規程や契約で別に決まります。迷う場合は、固有名詞や数値を伏せた説明用のデータに置き換えるか、公開されている類似資料で表を作る練習をしてください。

読みながら育てて、翻訳ツールに移す

表ができたら、読書中に出会った新しい語を追記します。章ごとに同じ指示文を使い、既存の表を貼って「既出の語は除く」と加えると、重複を避けやすくなります。

確認済みの訳語は、翻訳ツールの用語集にも使えます。DeepLの用語集は、単語や短い句について原語と訳語の組を登録する機能で、複数形や活用は訳先の言語の文法に合わせて調整されると説明されています。保存先はプランで異なり、無料版ではブラウザ内に保存され、別のブラウザや端末では使えません(2026年10月28日に確認)。詳しくはDeepLヘルプの「About the glossary」にあります。用語集づくりでは、業界固有の語や訳さない語を中心に入れ、手動入力なら逆方向の語も同時に追加できます(用語集作成のベストプラクティス)。対応言語やプランは公式で確認してください。

登録するのは、採用訳語が「確認済」の行だけにします。未確認の訳語を登録すると、誤訳が複数の文書に広がるためです。

出典・参考資料