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英語から日本語に訳すときの文体を決める:です・ます調と口調の揺れを防ぐ

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

英文のプリントの横に、人物ごとに色分けした付箋を貼って口調を揃える手元の様子
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

英日翻訳の文体の揺れは、依頼文の冒頭に「読者」「地の文の文体」「人物ごとの口調」を書いておけば、かなり減らせます。「自然な日本語で」だけの指定では、AIは文ごとに無難な表現を選びやすくなります。その結果、途中で「です」と「だ」が混ざったり、同じ人物の一人称が変わったりします。 この記事では、読者別の文体指定欄、人物ごとの口調設定メモ、そのまま貼れる依頼文を用意しました。サンプルはすべて説明用の例で、実際にAIへ入力して得た結果ではありません。

この記事の目次
  1. 文体は「読者・地の文・人物」の3段で決める
  2. 人物ごとの口調を保つ設定メモ
  3. そのまま使える依頼文
  4. 進め方:試訳、確認、本訳の順に
  5. DeepLを使う場合:丁寧/常体の指定
  6. 提出前に人が見る点

文体は「読者・地の文・人物」の3段で決める

英語は、読者との距離が文面に出にくい言語です。"Could you take a look?" は、上司宛てにも同僚宛てにも使えます。日本語の丁寧さは原文から自動では決まらないので、次の3つをこちらで指定します。

  1. 読者と媒体:誰が、どこで読むか
  2. 地の文の文体:です・ます調(敬体)か、だ・である調(常体)か
  3. 人物の口調:台詞を話す人ごとの一人称、語尾、丁寧さ

近いものを選んで、依頼文の「文体」欄に写してください。以下は編集上の目安で、現場のルールがあればそちらが優先です。

  • 取引先へのメール、地の文:敬体、指定欄の書き方(例):丁寧な敬体。依頼は「〜いただけますでしょうか」。過度な敬語は避ける
  • 社内マニュアル、地の文:敬体、指定欄の書き方(例):短い文。手順は「〜してください」。一文一動作
  • 技術文書・論文、地の文:常体、指定欄の書き方(例):常体で統一。用語は用語集に従う
  • 一般向けの解説記事、地の文:敬体、指定欄の書き方(例):親しみやすい敬体。「〜ですよね」は使わない
  • 字幕・UI文言、地の文:媒体の規定に従う、指定欄の書き方(例):1文を短く。字数の上限があれば数字で指定する
  • 小説・脚本、地の文:常体が多い、指定欄の書き方(例):地の文は常体。台詞は人物メモに従う

「です・ます調」とだけ書かず、禁止事項を一つ添えるのがコツです。「〜になります」を連発しない、のような指定で、揺れやすい箇所を先にふさげます。

人物ごとの口調を保つ設定メモ

台詞が多い文章では、人物ごとにメモを作ります。次は説明用の例です。

【人物メモ(説明用の例)】
- Mia(20代・エンジニア)
  一人称:私/相手へは「Coleさん」
  口調:丁寧だが率直。語尾は「〜です」「〜ですね」。「〜っす」は使わない
  例:「その仕様だと、テストが通らないと思います」
- Mr. Cole(40代・マネージャー)
  一人称:私/部下には「Mia」と呼び捨て
  口調:部下には常体で短く指示する。社外の相手には敬体
  例:「確認しておいてほしい。急ぎではないが」
- 語り手(三人称)
  文体:だ・である調。過去形(〜た)で統一。現在形は回想のみ

メモには、一人称、相手の呼び方、語尾の癖、避ける表現、短い台詞見本を入れます。見本が1行あるだけで、口調の基準が具体的になります。

人物の関係が途中で変わるなら、場面を明記します。「第3章以降、MiaはColeに対して少しくだけた口調になる」のように書きます。書かないと、前半のままか、唐突な変化のどちらかになりがちです。

そのまま使える依頼文

{} を埋めて使います。

英文を日本語に翻訳してください。

# 読者・目的
{例:社内の新人向けマニュアル。初めて読む人が対象}

# 文体
- 地の文:{です・ます調/だ・である調}
- 禁止:{例:「〜ですよね」、「〜になります」の連発}
- 英語の "you" は、自然な場合は訳さない

# 人物メモ
{上の人物メモを貼る}

# 用語
{例:repository → リポジトリ(「保管庫」は使わない)}

# 出力
- 訳文のみ。解説は付けない
- 文体を判断しにくい箇所は、訳文の後に「確認事項」として最大3点まで挙げる

# 原文
{英文}

「確認事項」を出させるのは、AIに黙って判断させないためです。たとえば原文の Hey, Cole. を「Coleさん」と訳すか呼び捨てにするかで迷う場面を、知らせてもらえます。

進め方:試訳、確認、本訳の順に

  1. 短い範囲で試訳する:1〜2段落、または人物ごとに台詞を数行ずつ訳させます。
  2. 揺れを探す:下の表で確認し、直したい点を依頼文に追記します。
  3. 本訳に進む:長い文章は章や場面で分け、毎回同じ文体欄と人物メモを貼ります。長いやり取りでは冒頭の指定が反映されにくくなることがあるため、貼り直すのが無難です。
  4. 人が通読する:各人物の台詞だけを抜き出して読み比べると、揺れを見つけやすくなります。
  • 地の文に「です」と「だ」が混在、原因の目安:文体の指定が曖昧、直し方:「全文を常体で統一。例外なし」と明記
  • 同じ人物の一人称が変わる、原因の目安:人物メモに一人称がない、直し方:一人称と相手の呼び方を追加
  • 部下が上司にタメ口になる、原因の目安:関係が原文から読み取れない、直し方:「MiaはColeに敬体で話す」と関係を明記
  • 丁寧すぎて不自然、原因の目安:「丁寧に」だけを指定した、直し方:読者別の表の具体的な書き方に置き換える
  • 台詞だけ硬い、原因の目安:台詞の見本がない、直し方:人物ごとに短い見本を1行追加

DeepLを使う場合:丁寧/常体の指定

AIチャットではなくDeepLを使うなら、ツール側の設定も選べます。

DeepLのヘルプによると、フォーマリティ機能の対象言語に日本語が含まれます。日本語では「フォーマル/インフォーマル」ではなく、丁寧(敬体)と常体の切り替えとして提供されます。ヘルプは、常体にしても必ずしもくだけた文にはならないと説明しています(About the formality feature)。日本語向けのページでは、必要なプランはDeepL Proで、Web版、デスクトップアプリ、ブラウザ拡張、APIで使えるとされています。また、日本語への翻訳のみが対象で、韓国語から日本語への翻訳では現在使えないとあります(About formality: plain and polite tones in Japanese)。

APIでは formality パラメータで指定します。値は default、more、less、prefer_more、prefer_less です。ただし対象言語は一部に限られ、APIリファレンスには日本語の個別記載がありません。日本語で使えるかは言語一覧のエンドポイントで確認するよう案内されています(Translate text)。値と丁寧/常体の対応は、今回確認できていません。

APIには自然文で語調や用語を伝える「カスタム指示」もあり、1リクエストに最大10件、1件300文字までです。語調や用語、文単位の調整に向く一方、議論の並べ替えなど文書全体の再構成には向かないと説明されています。指示は一節ずつ適用されるため、長文全体の一貫性をこれだけで保証するものではありません(Custom instructions)。

300文字には人物メモ全体は入りません。口調が重要な小説などは、人物メモを丸ごと渡せるAIチャットのほうが扱いやすいと考えられます。DeepLで進めるなら、台詞を人物ごとに分けて訳し、指示を一人分に絞る方法もあります。いずれも編集上の提案で、実際に試した結果ではありません。仕様やプランは変わるため、この節は2026年10月28日に確認できた範囲です。

提出前に人が見る点

  • 敬語の関係:相手がその敬語で呼ぶ立場か(取引先、上司、社外の人)
  • 固有名詞と用語:用語集どおりか、人名の表記が揃っているか
  • 原文の意味:口調が整っていても意味が違うことがあります。数値や否定表現は原文と照合してください

機密性のある文書は、実名や社名を架空の名前に置き換えてから貼るのが安全です。学習に使わない設定があっても、秘密保持の保証とは別です。社内のルールに従ってください。

出典・参考資料