複数言語で社名・人名・製品名をどう書くか:表記ルール表の作り方
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固有名詞は「言語ごと」ではなく「種類ごと」に方針を決め、そのあと言語ごとの例外だけを足すと迷いません。社名・製品名は公式に使われている綴りを優先して原綴のまま、人名は本人が使っている表記を優先、役職や部署名のような説明語は訳します。これを表にし、姓名順とローマ字の決め欄を別に用意します。 この記事では、その表(コピーして使えます)、AIに下書きを作らせる依頼文、人が確認する点を紹介します。例の社名・人名はすべて説明用の架空のもので、実在の組織や人物ではありません。依頼文も実際には実行していないため、手元の資料で試してから使ってください。
固有名詞の四つの扱い方と優先順位
どの名前も、扱いは次の四つのどれかに収まります。
- 原綴のまま:Acme Cloud のように、どの言語でも同じ綴りで書く。
- 音写:読みを別の文字体系に写す。日本語の人名を英語文書でローマ字にする場合など。
- 訳す:意味を訳す。部署名、役職、一般名詞の部分など。
- 併記:初出だけ「原綴(訳または音写)」と並べる。
迷ったときの優先順位は、(1)名前の持ち主が公表している表記、(2)自社の過去の公式文書、(3)AIや辞書の提案、の順です。AIは3番目で、1と2を確認する人が最後に決めます。
固有名詞の種類別・方針表
自社の文書に合わせて書き換えてください。「既定」が基本方針、「迷ったとき」が例外の判断基準です。
- 自社の正式社名、既定:登録・公表している名称。公式の外国語名があればそれ、迷ったとき:無ければ音写+現地の法人格表記を暫定案にして承認を取る、確認する資料:登記事項、自社サイト、契約書
- 取引先の社名、既定:先方が公表している表記、迷ったとき:英語名が無ければ日本語名の音写を併記、確認する資料:先方サイト、名刺
- ブランド名・製品名、既定:原綴のまま、迷ったとき:その市場で別表記が定着している場合のみ併記、確認する資料:商標登録、パッケージ
- 製品の説明部分(例:「会議室予約」)、既定:訳す、迷ったとき:画面に機能名として出ているなら画面表記に合わせる、確認する資料:各言語のUI
- プラン名・機能名、既定:各言語のUI上の公式表記、迷ったとき:UIに無ければ原綴のまま、確認する資料:各言語の画面、ヘルプ
- 日本人の人名、既定:本人の指定を優先。無ければ次章の決め欄、迷ったとき:過去文書と食い違うなら本人に確認、確認する資料:名刺、本人申告
- 外国人の人名、既定:本人が使う綴りをそのまま、迷ったとき:表示できない文字の代替を別途決める、確認する資料:本人、署名、公式プロフィール
- 役職・部署名、既定:訳す(社内の公式対訳表があればそれ)、迷ったとき:対訳が無いときは職務内容を確認して決める、確認する資料:組織図、人事
- 地名・施設名、既定:その言語での慣用表記、迷ったとき:住所欄は郵便・配送で通じる形式を優先、確認する資料:地図、自治体・施設の公式表記
- 書名・作品名、既定:公式の翻訳題、迷ったとき:無ければ原題+括弧内に説明的な訳、確認する資料:出版社サイト、奥付
同じ「課長」でも会社ごとに職位の重さが違うので、役職はAIの訳をそのまま採らず、人事部門の対訳があればそれを正とします。
姓名順・ローマ字の決め欄
人名はルールを決めずに書くと、同じ人物が文書ごとに違う綴りになります。次の欄を埋めると揃います。選択肢は自社に合うものを一つ選びます。
■ 日本人の人名(ローマ字)
姓名順(日本語の文書) : 姓 名 / その他:____
姓名順(英語・その他の言語) : 姓 名 / 名 姓 / 文書の種類で分ける:____
姓の大文字表記 : する(例:YAMADA Hanako)/ しない
長音の書き方 : 省く(Ono)/ hを入れる(Ohno)/ 長音記号(Ōno)/ 本人指定
つづり方の方式 : ヘボン式/訓令式/本人指定を優先
本人指定の優先 : する(根拠:名刺・パスポート・本人申告)/ しない
ミドルネーム・旧姓の扱い : ____
敬称 : 付ける(Mr./Ms. など)/ 付けない
初出の併記 : する(例:山田 花子)/ しない
■ 外国人の人名
綴り : 本人の表記どおり
特殊文字(é, ñ, ü など) : そのまま/代替表記(____)
姓の複数要素(García López 等): 本人の表記どおり、分割しない
日本語文書でのカタカナ表記 : 本人の希望/既存の報道表記/決め欄に記録した表記
■ 共通
最終確認者 : ____
更新日 : ____官公庁や自治体への提出書類、公的な様式には、それぞれ独自の表記の取り決めがある場合があります。該当する提出先があれば、その時点の公式な案内を別に確認してください。この記事の決め欄は、自社の文書を揃えるための枠です。どれを選んでも、文書の種類ごとに一貫させることが重要です。
AIに下書きさせる依頼文と入力例
固有名詞の一覧を渡して、表の下書きを作らせます。渡すのは公開済みの名称だけにし、未公開の製品名や個人の連絡先は仮名に置き換えてください。
次の固有名詞について、多言語の表記ルール表の下書きを作ってください。
対象言語:日本語、英語、中国語(簡体字)
種類:社名/ブランド・製品名/製品の説明部分/人名/役職・部署名
【ルール】
- 種類ごとに「原綴のまま/音写/訳す/併記」のどれかを選び、理由を一文で書く
- 公式の表記を自分で確認できないものは、推測で作らず「要確認」と書く
- 実在するかわからない公式名称を、公式のように書かない
- 出力は表(種類|原文|日本語|英語|中国語|方針|要確認の点)
【入力】
(ここに一覧を貼る)入力例(説明用の架空の例)です。
株式会社あおぞら精機(社名)
あおぞらスキャン Pro(製品名)
会議室予約(製品の説明部分)
営業企画部 課長(役職・部署名)
山田 花子(日本人の人名)
Maria García López(外国人の人名)出力でまず見るのは「要確認」の行です。AIが公式名称らしきものを補っていたら、公式の資料と突き合わせ、確認できないものは削除します。そのうえで人が確認するのは次の四点です。
- 社名・製品名が、公表されている綴りと一致しているか。商標が関わる場合は登録表記も確認する。
- 人名が、本人の指定や名刺の表記と一致しているか。
- 役職・部署名が、自社の対訳表と矛盾しないか。
- 各言語の担当者が、その言語の読者に違和感がないと確認したか。
翻訳ツールの用語集に反映させる
表ができたら、DeepLなどの用語集に入れると運用が楽になります。DeepLの用語集の機能紹介は、技術用語、製品名、社内特有の言い回しを一貫させる機能として用語集を説明しています。
開発者向けドキュメントによれば、用語集は言語ペアと方向ごとの対訳で、原文側に同じ語を重複して登録できません。訳文側は、格・性・時制などの語形変化に合わせて調整されます。ヘルプの作成ページも、各エントリは一意で、同じ語に代替訳を登録しないよう案内しています。作成できる数などはプランで異なります。
これを踏まえた運用案です。
- 言語の組み合わせごとに分ける:日本語→英語、日本語→中国語は別の用語集にする。
- 一語一訳にする:「初出は併記、2回目以降は短縮」のような使い分けは用語集では表せないので、人が直す前提にする。
- 訳さない語の登録は小さく試す:原綴のまま残す語を同じ綴りで登録した場合の挙動は、この記事では確認していません。数語で試してから広げてください。
画面やプランによって操作は変わり得ます。使う前に、自分の環境の公式ヘルプを確認してください。
表を運用に載せる
- 最初は、実際の文書に出てくる固有名詞を10〜20語だけ拾う。全種類の網羅は目指さない。
- 方針表と決め欄を共有ドキュメントに置き、「最終確認者」と更新日を入れる。
- 新しい固有名詞が出たらAIに下書きさせ、確認者が承認してから表に追加する。
- 翻訳ツールの用語集には、承認済みの行だけを反映する。
こうしておけば、翻訳者やAIが入れ替わっても、同じ名前が文書ごとに違う綴りになる事態を防ぎやすくなります。

