期待効果を断定せず幅で書く:企画書の効果見込みの表現と根拠の示し方
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企画書の効果見込みは、「悲観・標準・楽観の3つの値」「各値が成り立つ前提条件」「根拠の強さ」をセットで書くのが安全です。単一の数字で言い切ると、外れたときに企画そのものの信用が下がります。幅で書けば、判断する側も「どの前提が崩れたら下振れするか」を議論できます。 この記事では、架空の数値を使った記述例、AIに下書きを手伝わせる依頼文、避けたい言い回しの一覧を順に示します。数値や業務はすべて説明用の例で、実測ではありません。
幅で書くときの3つの部品
- 幅:悲観・標準・楽観の3値。標準は「いちばんありそうな値」であって、平均や目標とは限りません。
- 前提条件:その値になるために必要な条件(対象件数、利用率、短縮率など)。
- 根拠の強さ:各前提が実測か、試行か、外部資料か、仮置きか。
幅は「気分で上下に広げた数字」ではなく、前提の値を変えた結果として作ります。効果 = 現状の量 × 対象になる割合 × 改善率 − 追加で発生する手間、のように式にしておくと、どの項目が幅を生んでいるか見えます。
説明用の例:請求書確認にAI補助を入れる企画
次の前提は、すべて説明用に作った仮の値です。
- 現状:月400件、1件あたり平均12分 → 月80時間
- 対象になる件数の割合、対象件数での短縮率、人が追加で確認する時間を、3つのシナリオで変える
- 対象になる割合、悲観:50%、標準:70%、楽観:85%
- 対象件数での短縮率、悲観:15%、標準:30%、楽観:45%
- 削減(総量)、悲観:6.0時間、標準:16.8時間、楽観:30.6時間
- AI出力の確認で増える時間、悲観:2.0時間、標準:1.5時間、楽観:1.0時間
- 正味の削減(月)、悲観:約4時間、標準:約15時間、楽観:約30時間
計算は「80時間 × 対象割合 × 短縮率 − 確認時間」です。標準なら 80×0.7×0.3=16.8、そこから1.5を引いて約15時間(現状の約19%)になります。
企画書への書き方(記述例)
月間の確認作業(現状約80時間)に対し、正味の削減は月約4〜30時間(標準は約15時間)と見込みます。悲観は「AI補助の対象が半数にとどまり、短縮率も15%程度」、楽観は「対象が85%に広がり、短縮率が45%に達する」場合です。現状の件数と所要時間は直近の社内計測、対象割合と短縮率は仮置きです。2週間の試行で短縮率を実測し、幅を見直します。
ポイントは、結論が「幅+標準値」で一文に収まっていること、そして何が仮置きかを自分から書いていることです。
根拠の示し方:強さを4段階でラベルにする
前提ごとに次のラベルを付けると、読む側が信頼度を判断できます。
- 実測、意味:自部署のデータ、例:直近3か月の件数と所要時間
- 試行、意味:小規模に試した結果、例:10件で試した短縮率
- 外部、意味:公開資料・ベンダー資料、例:出典と条件を明記して引用
- 仮置き、意味:根拠がまだない想定、例:対象になる割合
外部資料の数値は、業種・規模・測定方法が自社と違えば、そのまま使えません。引用するなら出典と条件を併記し、自社に当てはまらない可能性も書きます。仮置きが多いこと自体は問題ではなく、隠すことが問題です。試行で仮置きを実測に変える計画まで書けば、企画として前進します。
AIに下書きを手伝わせる依頼文
AIには前提の整理と文面案を任せ、数値の妥当性の判断は人が持ちます。「それらしい根拠」を作らせると架空の数字が混ざるため、依頼文で明示的に禁じます。以下は文面の一例で、特定のツールでの動作を確認したものではありません。
あなたは企画書のレビュー担当です。次の情報だけを使って、効果見込みの章の下書きを作ってください。
<rules>
- 入力にない数値や出典を作らない。足りない情報は「要確認」として質問に回す
- 悲観・標準・楽観の3シナリオで、計算式と各前提を表にする
- 各前提に「実測/試行/外部/仮置き」のラベルを付ける
- 断定表現(必ず、確実に、大幅に等)を使わない
</rules>
<background>
業務:請求書の確認(説明用の仮データ)
現状:月400件、1件12分
</background>
<assumptions>
対象割合:悲観50%、標準70%、楽観85%(仮置き)
短縮率:悲観15%、標準30%、楽観45%(仮置き)
確認時間:悲観2.0h、標準1.5h、楽観1.0h(仮置き)
</assumptions>
最後に、読み手が突っ込みそうな点を3つ挙げてください。実際の業務で使う場合は、社名・個人名・取引先などを仮の表現に置き換えてから入力します。
人が確認するのは次の4点です。計算が合っているか(自分で検算する)、ラベルが事実と合っているか、AIが数値や出典を追加していないか、標準値が「期待したい値」にすり替わっていないか。
避けたい言い回し集
- 工数を50%削減できます、問題点:条件なしの断定、言い換え例:前提Aの場合、月約15時間(約19%)の削減を見込みます
- 必ず効果が出ます、問題点:保証と受け取られる、言い換え例:悲観ケースでも約4時間の削減を見込みます
- 大幅なコスト削減が期待できる、問題点:「大幅」が不明、言い換え例:年間◯〜◯万円(前提は表のとおり)
- 他社では平均30%改善、問題点:出典・条件が不明、言い換え例:◯◯調査(年・対象)では◯%。自社の条件とは◯が異なります
- 業界最高水準の精度、問題点:比較の根拠がない、言い換え例:試行10件では◯件が正しく判定(今後件数を増やして確認)
- 誰でもすぐ使いこなせる、問題点:習熟期間を無視、言い換え例:導入後1か月は利用率が低い想定で、悲観に反映
- リスクはほぼありません、問題点:検討の放棄に見える、言い換え例:想定リスクは◯◯。発生時は◯◯で対応
- 効果が出なければ撤退します、問題点:判断基準がない、言い換え例:試行2週間で短縮率10%未満なら再検討
外向けの表示に転用するときは別です。 ここまでは社内の判断材料の話です。同じ数字を顧客向けの広告や商品説明に使う場合、日本では景品表示法の優良誤認表示が関わります。消費者庁は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を期間を定めて求めることがあり、期間内に提出されない場合は不当表示とみなされる(措置命令)、または推定される(課徴金納付命令)仕組み(不実証広告規制)を説明しています(消費者庁「優良誤認とは」)。企画書の標準値や楽観値を、そのまま対外的な「効果」として掲げないでください。対外表示に使う場合は、法務や担当部署に確認するのが確実です。
提出前のチェックリスト
- 効果は「幅+標準値」で一文にまとまっているか
- 悲観ケースでも企画を進める価値があるか(なければ、そう書く)
- 式の各項目に前提とラベルがあるか
- 追加で発生する手間(確認、教育、運用費)が引かれているか
- 仮置きを実測に変える試行計画と、判断基準があるか
- 「必ず」「大幅」「業界最高」などの断定語が残っていないか

