社内規程の改定案を新旧対照表にして、変更理由を整理する
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

新旧対照表は、「差分の抽出」「表への転記」「理由と影響の記入」「照合」の4段階に分けると、漏れが出にくくなります。差分の抽出はWordの比較機能のような機械的な手段に任せます。AIには、表の整形、理由・影響の下書き、抜け漏れの照合を任せます。変更理由の中身と最終的な正誤は、担当者が決めて確認します。 この記事では、新旧対照表の雛形、AIに照合させる確認依頼文、人が見る点を示します。例に出す規程や条文は、すべて説明用に作った架空のものです。実際の作業結果ではありません。
この記事の目次
先に決めておく3つのこと
AIに文書を渡す前に、次の3点を決めます。
- 比較の単位:条・項・号のどこで行を分けるか。迷ったら「項」まで分けると、変更箇所を指しやすくなります。
- 基準にする版:現行規程の最新の確定版と、改定案の版を1つずつ決めます。改定案が複数混在すると、照合結果の意味があいまいになります。
- 渡してよい情報の範囲:実際の社内規程を外部のAIサービスに貼ってよいかは、自社の情報取扱ルールに従います。判断がつかない場合は、社名・部署名・金額などを置き換えた版で作業します。AIサービス側の学習利用の設定と、社外サービスへの入力が許されるかどうかは別の問題です。
手順1:差分はWordの比較機能で先に出す
AIに「違いを探して」と頼むだけだと、細かい語句の差を拾い切れない可能性があります。先に機械的な差分を取っておくと、後でAIの照合結果と突き合わせる基準になります。
Microsoftのサポートページでは、「校閲」タブの「比較」から「Compare Documents」を選び、「元のドキュメント」に元の版、「変更されたドキュメント」に変更後の版を指定する手順が案内されています。ここでは現行版を元、改定案を変更後にします。違いは変更履歴のマークで示され、元の文書は変更されません。比較オプションの変更方法も同ページにあります。
ただし、このページはWord 2019 for Macを対象にしています。Windows版や他のバージョンでは、メニュー名や画面が異なる場合があります。お使いの版のヘルプで確認してください。規程がPDFしかない場合は、先にWord形式を用意する必要があります。
比較結果は、手順2で表へ転記するときの原本にします。条番号が繰り下がっただけの箇所は、内容の変更とは分けて「番号のみ」と記録します。
手順2:新旧対照表の雛形
次の列構成をおすすめします。「変更区分」「影響」「要確認」の列を置くと、理由の書き漏れに気づきやすくなります。
- 1、現行(条・項):、現行の文言:、改定案(条・項):、改定案の文言:、変更区分:修正/新設/削除/番号のみ/表記整理、変更理由:、影響(対象者・業務・他規程):、要確認:
変更区分ごとの、理由と影響の見方は次のとおりです。
- 修正、理由の書き方:何が問題で、なぜこの文言にするのか、影響欄で見ること:対象者、手続き、金額や期限の変化
- 新設、理由の書き方:どんな不足や課題を埋めるのか、影響欄で見ること:新しく発生する作業と担当
- 削除、理由の書き方:なぜ不要になったのか、影響欄で見ること:削除で空白になる運用、他条からの参照
- 番号のみ、理由の書き方:「条の新設に伴う繰り下げ」など簡潔に、影響欄で見ること:他規程や様式からの条番号の引用
- 表記整理、理由の書き方:用語統一など、影響欄で見ること:意味が変わっていないことの確認
説明用の記入例
次は説明用の架空の例です。実在の規程ではありません。
- 3、現行:第8条第1項、現行の文言:出張の申請は、出発の3日前までに行う。、改定案:第8条第1項、改定案の文言:出張の申請は、出発の5営業日前までに行う。、変更区分:修正、変更理由:(仮)手配や承認に時間がかかる事例への対応。実際の理由は担当者が確定する、影響:全従業員の申請期限が変わる。急な出張の例外扱いが必要になる、要確認:例外規定の有無、申請システムの設定
この例では、数字の変更(3→5)に加えて、「日」から「営業日」への変更も起きています。1行に複数の変更が含まれるときは、行を分けるか、変更理由の欄で両方に触れます。
手順3:AIに照合させる確認依頼文
表ができたら、現行版と改定案の本文、作成した表を渡して照合を依頼します。ファイルを渡す場合、Claudeのヘルプには、DOCXやPDFなどが対応形式で、チャットでは1ファイル500MBまで、1回のチャットで20ファイルまでと記載されています(2026年10月28日に確認。プランや設定で異なる場合があります)。規程程度の分量なら、上限よりも、どれが現行でどれが改定案かを取り違えないことのほうが重要です。ファイル名に「現行」「改定案」を入れておきます。
次の依頼文を、そのまま使えます。
あなたは社内規程の改定案をレビューする補助者です。
添付は次の3点です。
(A) 現行規程の本文
(B) 改定案の本文
(C) 私が作成した新旧対照表
次の順で確認し、結果を表で返してください。
1. (A)と(B)を条・項・号の単位で比べ、(C)に載っていない変更を列挙する。
2. (C)の「現行の文言」「改定案の文言」が、(A)(B)の原文と一字一句違っていないか確認し、違う行をNo.で示す。
3. 数字、期限、金額、「及び/又は」「できる/しなければならない」など、意味が変わる語句の変更を別に抜き出す。
4. 条番号の繰り下げ・繰り上げによって、規程内の「第○条」の参照が合わなくなる箇所を探す。
5. 「変更理由」欄が空白、または理由になっていない行を示す。
守ってほしいこと:
- 原文にない内容を推測で補わない。確認できない点は「不明」と書く。
- 変更理由は、私が書いた内容を評価するだけにして、新しい理由を作らない。
- 指摘ごとに、該当する条番号と原文の該当部分を添える。3番の項目は、義務と任意の違いを拾わせるためのものです。社内規程では、一語の変更で運用の重さが変わります。
変更理由の下書きを頼む場合
理由欄そのものをAIに頼むなら、事実を渡したうえで、下書きに限定します。
次の行について、変更理由欄の下書きを2案作ってください。
- 変更の背景(私が把握している事実):〔ここに事実を書く〕
- 渡した事実以外の背景や数字は書かないでください。
- 不足している情報があれば、質問として最後に列挙してください。事実を渡さずに「理由を書いて」と頼むと、もっともらしくても根拠のない理由が出る恐れがあります。理由欄は決裁者が読む部分なので、事実の入力元は人が用意してください。
手順4:人が確認すること
AIの返答を受けたら、次の点を人が確認します。
- 原文との一致:対照表の文言が、確定版の原文と一致しているか。Wordの比較結果と見比べます。
- 指摘の真偽:AIが挙げた不一致や参照ずれは、原文を開いて確かめます。誤指摘も見落としもあり得ます。
- 理由の根拠:理由欄の内容が、会議録、事故事例、法令改正、組織変更などの実際の資料に裏付けられているか。
- 影響の範囲:関連する他の規程、様式、システム設定、運用マニュアルに影響がないか。
- 手続き上の要件:規程の種類によっては、決裁のほかに、届出や従業員への周知が必要な場合があります。就業規則などは、人事・総務や専門家に確認してください。
運用のコツ:修正のたびに差分だけ更新する
改定案は、レビューのたびに文言が変わります。修正のたびに手順1の比較からやり直し、表の差分行だけを更新してください。AIに表全体を再生成させると、確認済みの行の文言が変わる恐れがあります。依頼文には「No.5、7、12のみ修正し、他の行は変更しない」と書いておきます。
表の上部には、改定案の日付や版番号を書いておきます。後から見返したときに、どの版との対照かがわかります。

