長い社内文書の数字・用語・日付の矛盾をAIに探させる点検手順
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

AIに任せられるのは「矛盾していそうな箇所の候補出し」までです。本当に矛盾か、どちらが正しいかは、人が原文と元データで確かめます。AIは長い文書で見落としもしますし、ないものを指摘することもあるためです。そこで次の二段構えにします。 1. 第1段(AI):数字・用語・日付を種類別に点検させ、候補を「原文の引用+場所」付きで出させる 2. 第2段(人):候補を1件ずつ原文で開き、記録表に「確定/表記違いのみ/誤検出/保留」を書く この記事の依頼文と表は、編集部で組み立てた説明用の例です。実際の文書で試した結果ではありません。表中の数字や名前も架空です。
先に決める:渡す形式と機密情報の扱い
文書はできるだけ本文テキストで渡します。重要な数字が表や図にあるなら、表をテキストに貼り直しておくと読み落としを減らせる可能性があります。
ファイルをアップロードする場合は、サービスごとの上限を確認してください。Claudeのヘルプ(Claude ヘルプ:ファイルのアップロード)には、チャットへのアップロードは1ファイル500MB・1チャット20ファイルまでとあります。PDFは100ページまでは文字と図などの視覚要素を、101〜1000ページは文字のみを解析し、1000ページを超えると上げられない、という説明もあります。これは2026年10月28日時点で開けたページの記載です。他のサービスやプランでは異なる場合があるので、お使いのものの最新の案内を見てください。
上限に収まっても、一度に正確に点検できるとは限りません。長い文書は章ごとに分けるほうが安全です(後述)。101ページ以上のPDFは図が解析されないため、図中の数字は人が見ます。
社外秘の数字や取引先名は、社内ルールで許可された環境でだけ渡します。許可が不明なら、会社名を「A社」、金額を近い桁の仮の数字に置き換えます。目的は文書内の食い違い探しなので、置き換えても成り立ちます。なお「学習に使われない設定」と「秘密が守られること」は別の話です。持ち出してよい情報かどうかは社内規程で判断してください。
種類別の依頼文
最初に共通の前置きを貼り、続けて種類別の依頼を貼ります。
共通の前置き
あなたは社内文書の校正担当です。以下の文書から、指定した種類の「矛盾の候補」だけを探してください。
ルール:
- 本文にない情報を補わない。外部の知識で正誤を断定しない。
- 指摘ごとに、(a)該当する2か所以上の原文を30字以内で引用、(b)見出し名やページなどの場所、(c)なぜ食い違うと考えたか、を書く。
- 「矛盾の可能性が高い」と「表記違いかもしれない」を分けて出す。
- 見つからない場合は「見つかりませんでした」と書く。無理に作らない。
- 最後に、読み取れなかった表や図があれば挙げる。数字
【点検:数字】
食い違い候補を表形式(番号/箇所A/箇所B/内容)で出してください。
1. 同じ指標(売上、人数、件数など)が複数箇所で違う値になっていないか
2. 内訳の合計が、本文中の合計値と合わないところはないか(計算過程も示す)
3. 単位(千円/百万円、%/ポイント)や桁の混在がないか
4. 「約3割」と「34%」のように、言い換えで印象が変わるところ合計の検算はAIの計算に頼り切らず、指摘された内訳を表計算ソフトで自分でも再計算します。
用語
【点検:用語】
候補を出してください。
1. 同じものを指していそうな語の表記ゆれ(例:「顧客」「お客様」「ユーザー」)
2. 初出で定義した略語や製品名が、後半で別の意味・別表記になっていないか
3. 部署名・役職名・プロジェクト名が箇所によって違わないか
各候補に「どの語が多数派か」も添えてください。統一先の決定は私が行います。日付
【点検:日付】
候補を出してください。
1. 同じ出来事の日付や期間が箇所ごとに違っていないか
2. 開始日・終了日・期間の長さ(「3か月間」など)が整合しているか
3. 年度と暦年、「上期」「下期」の定義が混在していないか
4. 時系列が逆転していないか(承認日より前に実施済み、など)
曜日が書かれている日付は、書かれている曜日だけ列挙してください。曜日の正誤はAIに断定させず、人がカレンダーで確かめます。日付計算を伴う点検は、人が確かめたほうが確実だという編集方針です。
指摘を原文で確かめる記録表と判断表
AIの回答を読んで「なるほど」で終えると、誤検出を直してしまったり、確認漏れが残ったりします。次の表をスプレッドシートなどに作り、1件ずつ記入します(例は架空です)。
- 1、種類:数字、AIの指摘(要約):要旨は「1,200人」、3章は「1,020人」、箇所A:要旨2段落、箇所B:3章表2、原文で確認した結果:確定(桁違い)、正しい値と根拠:集計表の1,020人、修正担当:山田、修正済:□
- 2、種類:用語、AIの指摘(要約):「顧客」と「お客様」が混在、箇所A:2章、箇所B:5章、原文で確認した結果:表記違いのみ、正しい値と根拠:「顧客」に統一、修正担当:佐藤、修正済:□
- 3、種類:日付、AIの指摘(要約):開始日が4/1と4/8、箇所A:概要、箇所B:日程表、原文で確認した結果:保留(担当に確認)、正しい値と根拠:未確定、修正担当:鈴木、修正済:□
- 4、種類:数字、AIの指摘(要約):内訳合計が合わない、箇所A:4章表、箇所B:4章本文、原文で確認した結果:誤検出(単位が千円)、正しい値と根拠:変更なし、修正担当:–、修正済:■
記入のルールは3つです。
- 「箇所A・B」は、AIの引用に頼らず自分で原文を開いて探し、見つかった場所を書く。引用が原文にない指摘は、まず誤検出を疑う
- 「正しい値と根拠」には、集計表・契約書・議事録など元データの名前を書く。AIの回答は根拠にしない
- 「保留」は放置せず、確認する人と期限を決める
確認結果ごとの扱いは次のとおりです。
- 引用が原文に見つからない、扱い:誤検出の可能性が高い。AIに場所を聞き直さず、手で検索して確かめる
- 2か所とも原文にあり、値が違う、扱い:元データで正しい値を決め、両方を直す
- 値は同じで表記だけ違う、扱い:社内の表記ルールで統一するか、許容するかを決める
- 時点や対象が違う(実績と計画など)、扱い:矛盾ではない。ただし読者が混同しない書き方か確認する
- AIが読み取れなかった表・図がある、扱い:その部分は人が目で点検する
長い文書で漏れを減らす
章ごとに点検すると1回の範囲は絞れますが、章をまたぐ矛盾(要旨と本文、本文と付録)は見つかりません。そこで先に、主要な事実の一覧を作らせます。
この文書で、数字・日付・固有名詞が出てくる主要な事実を、「項目/値/場所(見出し)」の表にしてください。同じ項目が複数箇所に出る場合は同じ行にまとめ、値が違えば別列に並べてください。重複箇所の食い違いが一目で分かり、そのまま第2段の確認リストにも使えます。
AIが「見つかりませんでした」と答えても、矛盾がないとは限りません。最低限、次の3点は自分で拾い読みします。
- 要旨・結論の数字が、本文の根拠表と一致しているか
- 日付が入った表(日程、実績)と本文の記述が一致しているか
- 予算額や期限など承認・決裁に関わる数字が、全ページで同じか
「前の版から何が変わったか」を知りたいなら、AIよりWordの比較機能が向いています。Microsoftのサポートページ(Microsoft サポート:文書の2つの版を比較して結合する)によると、「レビュー」タブの「比較」から「文書の比較」を選び、元の版と修正版を指定します。差分は変更履歴の形で示され、元の文書は変更されません。なお、このページはWord 2019 for Macの手順として書かれているため、お使いの版では表示が異なる場合があります。また、これは版どうしの差分を見る機能で、1つの文書内の矛盾を探すものではありません。
最初の一回の進め方
- 機密情報を仮の値に置き換える(許可された環境ならそのまま)
- 共通の前置きと数字の依頼で、まず1章分だけ試す
- 出た候補を記録表に入れ、原文で確認する。誤検出が多ければ、依頼文に「引用は原文と一字一句同じにする」と足す
- 用語・日付の依頼も同じ手順で行う
- 全章が終わったら、主要な事実の一覧で章をまたぐ食い違いを確認し、最後に上の3点を人が拾い読みする

