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比較検討表は評価軸を先に決める:AIで選択肢への偏りを減らす

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

重みを書いた付箋と日付スタンプが先に置かれ、候補を示す3枚のカードがまだ伏せられたままの机の上の様子
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

比較検討表の偏りを減らすいちばん確実な方法は、候補を見る前に「何を」「どれだけ重視して」比べるかを決め、記録しておくことです。AIは、この順序を守らせる補助役として使えます。候補名を伏せたまま評価軸と重みの案を出させ、人が確定し、その後で採点する、という流れです。 候補の資料を読んでから軸を考えると、気に入った候補が強い項目が「重要な軸」に昇格しやすくなります。AIに「A案とB案を比較して」とだけ頼んだ場合も、AIが比較しやすい軸を選ぶため、同じ問題が起きることがあります。 この記事では、そのまま使える依頼文、重み付きの雛形、Excelの計算式、重みを動かして順位が変わるかを見る方法を紹介します。表の数値や候補は、すべて説明用の例です。実在の製品を評価したものではなく、実測や調査の結果でもありません。

この記事の目次
  1. 手順1:候補を伏せて、評価軸と重みの案を出させる
  2. 手順2:人が軸と重みを確定し、日付つきで固定する
  3. 手順3:重み付き比較検討表の雛形
  4. 手順4:採点をAIに手伝わせる
  5. 手順5:重みを動かして順位を確かめ、報告書に書く

手順1:候補を伏せて、評価軸と重みの案を出させる

最初の依頼では、候補名も候補の資料も渡しません。渡すのは目的、制約、判断する人の3つです。

社内で導入するツールを1つ選ぶため、比較検討表を作ります。
候補はまだ見せません。評価軸と重みの案だけを作ってください。

【目的】問い合わせ対応の一次回答にかかる時間を減らしたい
【制約】予算は年額の上限あり/導入は3か月以内/情報システム部門の承認が必要
【判断する人】部門長と情報システム担当
【条件】
- 必須条件(満たさなければ除外)と、点数で比べる評価軸を分けてください
- 評価軸は5〜7個、重みの合計は100にしてください
- 各軸に「何を見れば採点できるか」を1行で添えてください
- 特定の製品やサービスに有利になりやすい軸があれば、その理由も指摘してください

ポイントは「必須条件」と「評価軸」を分けることです。社内規程に合わない候補は、点数が高くても選べません。足切りを点数に混ぜると、重みの調整で不適合な候補が上位に残ってしまいます。最後の一文は、軸そのものに偏りがないかをAIに点検させるためのものです。指摘が正しいかどうかは人が判断します。

手順2:人が軸と重みを確定し、日付つきで固定する

AIの案をそのまま採用せず、判断する人と合意して確定します。決めるのは次の3点です。

  • 必須条件を満たさない候補は除外する
  • 重みの合計は100にする
  • 採点の前に、確定した版を保存する(日付と確定した人を記録)

重みには「なぜその数字か」を一言添えます。たとえば「業務適合30:削減したい時間に直結するため」です。この記録が、最終的な選定理由の土台になります。

手順3:重み付き比較検討表の雛形

5つの評価軸と3つの候補(A・B・C)を想定した雛形です。スコアは1〜5点、重みは合計100です。

  • 業務適合、重み:30、採点の根拠として見るもの:現行業務の流れにそのまま使えるか、A:4、B:5、C:3
  • 総コスト、重み:20、採点の根拠として見るもの:初期費用+年額+運用の手間、A:3、B:2、C:5
  • 導入の手間、重み:15、採点の根拠として見るもの:設定・教育にかかる期間、A:5、B:3、C:4
  • セキュリティ・規程適合、重み:20、採点の根拠として見るもの:社内規程への適合、管理機能、A:3、B:4、C:2
  • サポート・将来性、重み:15、採点の根拠として見るもの:窓口、更新の継続性、A:3、B:4、C:2
  • **加重スコア(100点満点)、重み:100、採点の根拠として見るもの:重み×スコアの合計を5で割る、A:72、B:75、C:64**

Aなら 30×4+20×3+15×5+20×3+15×3=360、これを5で割って72です。B(375→75)とC(320→64)も同じ方法で検算できます。

必須条件は別の欄にします。「社内規程に違反しない」「予算上限内」などを○×で並べ、×があれば採点の対象外とします。

Excelで計算する場合

表をA列〜F列に置き、見出しを1行目、評価軸を2〜6行目、重みをB列、候補A〜CのスコアをD〜F列に入れたとします。候補Aの加重スコアは次の式で出せます。

=SUMPRODUCT($B$2:$B$6, D2:D6) / 5

Microsoftのサポートページによると、SUMPRODUCTの引数の配列は行数と列数が等しい必要があり、等しくないと#VALUE!が返ります。また、数値以外の配列エントリは0として扱われます。後者は表づくりの落とし穴で、採点漏れの空欄が0点になり、その候補が静かに不利になります。集計前に、重みの合計(=SUM(B2:B6)が100か)とスコアの空欄の有無を目で確認してください。

この式は、本稿の作成時にExcelで実行して確かめたものではありません。手計算の結果と一致するかを、ご自身のファイルで確認してから使ってください。

手順4:採点をAIに手伝わせる

軸と重みが確定してから、初めて候補の情報を渡します。採点を任せる場合は、根拠の提示を必須にします。

確定済みの評価軸と重みは変更しないでください。
以下の候補資料だけを根拠に、各軸を1〜5点で採点してください。

【評価軸と重み】(手順2で確定した表を貼る)
【候補資料】(説明用に置き換えた情報、または公開資料の抜粋を貼る)

出力は表形式で、次の列を含めてください。
軸/候補/点数/根拠(資料のどの記述か)/資料に書かれていないため判断できない点

資料に根拠がない軸は、推測で埋めず「不明」としてください。

「不明」を許すことが重要です。許さないと、AIが空欄を埋めるためにもっともらしい点数を付けることがあります。出てきた根拠は、人が元の資料と照合してください。価格や機能、規約は変わるため、採点した日付も表に残します。

入力する情報にも注意が要ります。顧客名、個人情報、未公開の社内数字は、そのまま貼らず、記号や概数に置き換えます。個人情報保護委員会は、2023年6月2日付で生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています(詳細は添付PDFにあります)。何を入力してよいかは、自社の規程と利用するサービスの規約で確認してください。

手順5:重みを動かして順位を確かめ、報告書に書く

重みを少し動かしても結論が保たれるかを確かめます。例で「総コスト」を20→30、「業務適合」を30→20に動かすと、加重スコアは次のとおりです(同じく説明用の例)。

  • 元の重み、A:72、B:75、C:64
  • コスト重視に変更、A:70、B:69、C:68

首位がBからAに入れ替わり、3案の差も1〜2点に縮みました。「Bが最良」とは言い切れない結果です。このときは、次のどちらかを選びます。

  • 重みを確定したときの理由を再確認し、その重みが妥当なら元の結論を採る
  • 差が小さいなら、点数では決まらないと明記し、移行リスクなど点数以外の論点を議論に回す

AIには次のように頼めます。

この表の重みを、合計100を保ったまま、どの軸も±10の範囲で動かしたとき、首位が入れ替わる組み合わせを挙げてください。
計算過程も表で示してください。

AIの算術は誤ることがあるため、出てきた数字は必ず自分で再計算します。

報告書の選定理由には、結果だけでなく順序も書きます。

評価軸と重みは、候補の比較前に〇月〇日、部門長と情報システム担当で確定した。その後、公開資料と社内確認に基づいて採点した。重みを±10動かした場合の結果も併記する。

「先に決めた」という事実は、後から結論ありきを疑われたときの、いちばんの根拠になります。

出典・参考資料