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異動前の引き継ぎ資料づくり:何を渡すかの棚卸しをAIと進める

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

散らばった付箋を3色に分けて、3列の紙の表へ並べ替えている手元。引き継ぎ業務を定常・例外・進行中に仕分ける作業を表している。
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

引き継ぎ資料で一番困るのは、書き方よりも「何を渡すべきか自分でも把握しきれていない」ことです。毎月やる作業は覚えていても、年に一度の対応や、頼まれて引き受けたままの案件は、異動の直前になって思い出しがちです。 渡し漏れを減らすには、業務を定常(決まったタイミングで繰り返す)・例外(たまに起きる)・進行中(今まさに動いている)の3つに分けて一覧にし、それぞれに「手順の場所」「関係者」「次に判断が要る点」を1行ずつ書きます。AIは、散らかったメモを3区分に振り分け、抜けていそうな項目を問い返す役に向いています。何を渡し、何をやめるかを決めるのは、自分と上長です。 この記事では、棚卸し表の雛形、AIに渡す依頼文、引き継ぎ資料の目次案をそのまま使える形で示します。依頼文と表の中身は説明用の例で、実際に試した結果ではありません。

この記事の目次
  1. 3区分で考えると何が見えるか
  2. AIに渡す前に決めておくこと
  3. 手順1〜2:分類させて、棚卸し表に落とす
  4. 手順3:渡し漏れを問い返してもらう
  5. 引き継ぎ資料の目次案と読み合わせ

3区分で考えると何が見えるか

  • 定常、例(説明用):月次の売上報告、週次の定例資料、渡し漏れの典型:「いつもやっているので」手順が頭の中にしかない
  • 例外、例(説明用):年1回の監査対応、取引先からの急な問い合わせ、渡し漏れの典型:発生時の連絡先や判断基準が残っていない
  • 進行中、例(説明用):見積提出待ちの案件、調整中の社内ルール変更、渡し漏れの典型:約束済みの内容と次の期限が伝わらない

区分ごとに渡すものが違います。定常は「手順書」、例外は「判断基準と連絡先」、進行中は「経緯と次の一手」です。ひとまとめの「業務一覧」より、抜けが見つかりやすくなります。

AIに渡す前に決めておくこと

引き継ぎのメモには、取引先名、金額、個人名が混ざります。入力前に次のように分けます。

  • 業務名、頻度、手順の流れ、扱い:社内ルールで許されていれば、そのまま入力できることが多い
  • 取引先名、担当者名、扱い:「A社」「担当B」のように置き換える
  • 金額、契約条件、認証情報、扱い:入力しない。表には「別紙参照」とだけ書く

AIサービスのデータの扱いはプランや契約で異なります。2026年10月27日に確認した公式ページでは、次のとおりでした。

  • OpenAI: 個人向けのFree、Plus、Proでは、既定でコンテンツがモデルの学習に使われることがあり、設定でオフにできます。Business、Enterprise、Edu、APIでは既定で使われません。個人向けでオフにしていても、回答への高評価・低評価などのフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われることがあります(OpenAIヘルプ)。
  • Claude: モデル改善への利用は設定で管理でき、シークレットチャットは、設定を有効にしていても改善に使われません。同じページは、機密性の高い業務文書などの共有に注意するよう案内しています(Claudeヘルプ)。
  • Microsoft: 職場・学校アカウントのCopilot Chatでは、プロンプトと回答は基盤モデルの学習に使われないとされています。一方、プロンプトと回答は記録され、IT管理者は監査ツールで確認できます(Microsoftサポート)。

「学習に使われない」ことは、「他人に見えない」ことや「社外に出してよい」ことと同じではありません。社内のAI利用ルールに従い、迷う情報は置き換えるか入れないのが安全です。

手順1〜2:分類させて、棚卸し表に落とす

最初は整えずに、思いつく業務を箇条書きにします。カレンダーの過去1年分、送信済みメールの件名、共有フォルダの更新履歴を見ながら書くと思い出しやすくなります。これは自分で見る作業で、中身をAIに貼る必要はありません。

書き出しを、次の依頼文に貼ります。

あなたは引き継ぎ整理の補助役です。
以下は私が担当している業務の雑なメモです(固有名詞は置き換え済み)。
1. 各項目を「定常」「例外」「進行中」に分類してください。
2. 判断に迷う項目は、分類せず「要確認」にして理由を書いてください。
3. 頻度や期限が書かれていない項目は、私に質問する形で列挙してください。
推測で情報を補わないでください。

【メモ】
・月初にA部門へ実績集計を送る
・B社から年度末に契約更新の問い合わせが来る
・新しい経費精算ルールの案を総務と調整中
・共有フォルダの権限申請を頼まれたら対応している

価値の中心は、AIが返す質問リストです。自分で答えられない質問は、それ自体が引き継ぎで確認すべき点になります。

分類ができたら、次の表に整理します。表計算ソフトやドキュメントに貼って使えます。

  • 1、業務名:月次実績の集計送付(例)、区分:定常、頻度・期限:毎月第3営業日、手順書・保存場所:共有フォルダ「月次」内の手順メモ、関係者:A部門の担当、次に判断が要る点:集計項目の変更有無、扱い:引き継ぐ、確認:□
  • 2、業務名:契約更新の問い合わせ対応(例)、区分:例外、頻度・期限:年度末に発生、手順書・保存場所:過去の回答メール、関係者:B社担当、法務、次に判断が要る点:回答前に法務へ相談、扱い:引き継ぐ、確認:□
  • 3、業務名:経費精算ルール案の調整(例)、区分:進行中、頻度・期限:来月の会議で提案、手順書・保存場所:最新版の案、議事メモ、関係者:総務、上長、次に判断が要る点:総務の回答待ち、扱い:異動前に区切る、確認:□
  • 4、業務名:権限申請の代行(例)、区分:例外、頻度・期限:随時、手順書・保存場所:なし、関係者:情報システム部、次に判断が要る点:正式な担当を決める、扱い:要確認、確認:□

「扱い」の列は、引き継ぐ・異動前に終わらせる・やめる・要確認から選びます。引き継ぎの失敗は、書かれていないことよりも、誰も持ち主を決めていない業務で起きやすいため、この列が実質的な主役です。

AIに表を作らせるときは、次の依頼文を使います。

手順1の分類結果を、次の列の表にしてください。
列: No / 業務名 / 区分 / 頻度・期限 / 手順書・保存場所 / 関係者 / 次に判断が要る点 / 扱い / 確認
わからない欄は空欄ではなく「未確認」と書いてください。
「扱い」は私が決めるので、すべて「要確認」にしてください。

手順3:渡し漏れを問い返してもらう

表ができたら、抜けを探してもらいます。

この棚卸し表を見て、次の観点で渡し漏れの可能性を指摘してください。
- 手順書の場所が「未確認」または「なし」の定常業務
- 発生時の連絡先がない例外業務
- 次の期限や相手の返事待ちが書かれていない進行中業務
- 私しか持っていなさそうな権限・アカウント・定期的な約束
指摘は項目名と理由を書き、解決策は提案にとどめてください。

返ってきた内容は、そのまま信じずに人が確認します。

  • 分類、人が確認すること:実際の運用と合っているか。例外が実は毎月起きていないか
  • 質問リスト、人が確認すること:自分で答えられるか。答えられなければ上長や関係者に聞く
  • 渡し漏れの指摘、人が確認すること:実在する業務か。AIが一般論で付け足した項目は削る
  • 「扱い」の候補、人が確認すること:上長と後任の合意があるか

最後に、カレンダー、受信メールの定期案内、共有フォルダの更新履歴と表を見比べ、載っていない作業がないか確認します。

引き継ぎ資料の目次案と読み合わせ

棚卸し表が埋まれば、資料の本体はその拡張で作れます。次の目次を土台にしてください。

  1. 概要: 担当範囲、異動日、後任者、質問できる期間と連絡先
  2. 業務一覧(棚卸し表): 区分ごとに並べ、扱いを明記
  3. 定常業務: 業務ごとに、手順、使うシステム、締め切り、よくある失敗
  4. 例外業務: 発生条件、判断基準、連絡先、過去の対応例の場所
  5. 進行中案件: 経緯、現在の状態、約束済みの内容、次の期限、相手の窓口
  6. 関係者と権限: 主要な社内外の相手、アカウントや権限の移管状況(認証情報は書かず、管理場所だけ記載)
  7. 資料の置き場所: フォルダ構成、命名規則、最新版の見分け方
  8. 未解決事項: 判断保留、引き継ぎ後に確認が必要な点

3〜5章の下書きは、棚卸し表の1行ずつをAIに渡し、「この行を、手順・注意点・連絡先の見出しで下書きして。元の行にない内容は書かず、情報がない見出しは『未確認』にして」と頼むと形になります。AIに手順を補完させないことが要点です。

資料が完成したら、後任者に最初の1か月で起きる業務を一緒にたどってもらいます。「ここで何をすればいいか」と聞かれて答えに詰まる箇所が、まだ足りない情報です。表の「確認」欄にチェックを入れるのは、この読み合わせが終わってからにしてください。

出典・参考資料