マガジン

手順メモを初めての人が迷わない業務マニュアルにするAI活用

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

業務の手順メモに確認用の付箋を追加する、新人向けマニュアルの点検場面
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

手順メモをマニュアルにするときは、AIに「きれいに書き直して」と頼むより、「初めてこの業務をする人として、迷う点を質問して」と頼むほうが向いています。手順メモに足りないのは、文章の整い具合よりも、書いた本人には当たり前すぎて省いた前提や判断基準であることが多いからです。それを知っているのは本人だけで、AIは知りません。 書き直しだけを任せると、抜けた部分をもっともらしい一般論で埋めてしまうことがあります。読みやすくても、自社のルールとは違うかもしれません。そこで役割を分けます。AIは質問役、あなたは回答役、最後に初めての人が試す確認役です。この記事では、そのまま使える依頼文、抜けを引き出す質問リスト、マニュアル1手順分の書式例を順に示します。

この記事の目次
  1. 手順メモで抜けやすいのは5種類
  2. AIに渡すもの、任せること、人が確認すること
  3. 手順1:抜けを質問させる依頼文
  4. 手順2:自分でも使える質問リスト
  5. 手順3:1手順分の書式にまとめる
  6. 最後に初めての人で試す

手順メモで抜けやすいのは5種類

編集部の整理として、自分用の手順メモでは次の5つが抜けやすいと考えます。まずこの観点で穴を探します。

  • 前提:作業の前に済んでいるべきこと(権限、ログイン済みの状態、前工程の完了など)
  • 判断基準:「問題なければ次へ」の「問題ない」とは何か
  • 例外:いつもと違うときにどうするか、誰に聞くか
  • 完了の目印:その手順が終わったと、画面や成果物でどう分かるか
  • 社内用語・略称:自分たちだけが使っている呼び方

AIに渡すもの、任せること、人が確認すること

  • 渡すもの、内容:手順メモ本文、読み手(例:入社1か月の人)、使うツール名、マニュアルの用途
  • AIに任せること、内容:抜けの指摘、質問の作成、回答を受けた後の書式への整形
  • 人が答えること、内容:前提、判断基準、例外、連絡先など、自社固有の事実すべて
  • 人が確認すること、内容:整形後の内容が実際の運用と合っているか、初めての人が最後まで進めるか

MicrosoftのCopilotのプロンプト解説(ページ表示の最終更新は2026年2月)は、良いプロンプトの要素としてGoal(目的)、Context(背景)、Source(参照情報)、Expectations(期待する出力)の4つを挙げ、フォローアップで改善していくことも勧めています。手順メモを渡す(参照情報)、読み手を伝える(背景)、質問してほしいと頼む(目的)、出力形式を指定する(期待)という使い方は、この考え方に沿っています。Claudeのヘルプも、依頼を明確に書くこと、背景知識のない人に説明するつもりで文脈を添えること、複雑な依頼を小さく分けること、フォローアップで改善することを挙げています(Claudeヘルプ)。

取引先名、顧客情報、社内の未公開数値などは、そのまま貼らず架空の値に置き換えてください。入力内容の扱いはサービスや契約、プランで異なるため、社内の情報管理ルールを先に確認します。

手順1:抜けを質問させる依頼文

次の依頼文は、手順メモを貼ってすぐ使える形にしたものです。質問を少数ずつ出させるのがポイントです。この聞き方は公式の機能説明ではなく、編集部の運用案です。

あなたは、この業務を初めて担当する新人の立場で読む査読者です。
以下の手順メモを読み、初めての人が迷う点を質問してください。

# 読み手
入社1か月の事務担当。ツールの基本操作はできるが、この業務は未経験。

# 質問の観点
前提 / 判断基準 / 例外 / 完了の目印 / 社内用語

# ルール
- 手順メモにない情報を推測で補わないこと。分からない点は質問にする。
- 質問は一度に5つまで。各質問に、どの手順のどの記述についてかを添える。
- 私が答えたら、続きの質問を出す。5つの観点で抜けがなくなったら「質問は以上」と書く。
- この段階では、マニュアルの清書はしない。

# 手順メモ
"""
(ここに手順メモを貼る)
"""

回答は、質問ごとに番号を付けて返します。「状況による」で終わらせず、「金額が10万円以上なら課長承認」のように条件と行動の組で書くと、後で表にしやすくなります。

手順2:自分でも使える質問リスト

AIの質問が浅いと感じたときは、次のリストを追加で渡すか、自分の見直しに使ってください。

前提

  1. この手順を始める前に、終わっているべき作業は何ですか。
  2. 必要な権限、アカウント、ファイルの置き場所はどこですか。
  3. 誰かの許可や、前工程からの連絡が必要ですか。

判断基準

  1. 「確認する」と書いた箇所で、何を見て、どうなっていれば合格ですか。
  2. 数値や日付の許容範囲はありますか。
  3. 迷ったとき、自分ならどちらを選び、その理由は何ですか。

例外

  1. 過去にやり直しになったのは、どんな場面ですか。
  2. 期限に間に合わない、データが足りない、相手が不在のとき、どうしますか。
  3. 自分で判断してよい範囲と、必ず相談する範囲の境目はどこですか。

完了の目印

  1. 手順が終わったと分かる画面表示、通知、成果物は何ですか。
  2. 次の手順の担当者に、何を渡しますか。

用語・見落とし

  1. 手順メモの中で、自分の部署以外の人に通じない言葉はどれですか。
  2. 慣れている人が無意識にやっている動作(ファイルを開き直す、別画面を見るなど)はありますか。

6、7、13はすぐには答えにくい質問です。そのときは、直近の実際の作業を思い出しながら声に出して手順を追い、その内容をAIに貼って「抜けを質問して」と続けると進めやすくなります。

手順3:1手順分の書式にまとめる

回答が揃ったら、整形を依頼します。書式を固定し、手順ごとに同じ項目で書かせます。

以下の手順メモと私の回答だけを使い、手順ごとに下記の書式で整形してください。
回答に書かれていない内容は追加せず、不明な項目は「【要確認】」と書いてください。

書式:手順名 / 目的 / 始める条件 / 操作 / 判断基準(表) / 完了の目印 / 例外・連絡先 / よくある間違い

「【要確認】」を残させるのは、AIが空欄を自分で埋めてしまうのを防ぐためです。

次が書式の完成イメージです。金額や承認者、ファイル名はすべて説明用の例であり、実在の業務ルールではありません。

手順3 見積書の金額を確認して承認を依頼する目的:誤った金額の見積書が取引先へ出るのを防ぎます。始める条件:手順2で見積書のPDFが共有フォルダ「見積_確認待ち」に保存されていること。操作1. 「見積_確認待ち」のPDFを開き、見積依頼書の金額と照らし合わせます。2. 合計金額と消費税の欄を確認します。3. 下の表で承認者を決め、承認依頼メールを送ります。判断基準| 条件 | 次の行動 ||---|---|| 依頼書と金額が一致し、合計が10万円未満 | 係長に承認を依頼する || 依頼書と金額が一致し、合計が10万円以上 | 課長に承認を依頼する || 金額が一致しない | 承認依頼を出さず、手順2の作成者に差し戻す |完了の目印:承認者から「承認」の返信が届き、PDFのファイル名の末尾が「_承認済」になっていること。例外・連絡先:承認者が不在の場合は代理の承認者に依頼します(連絡先:説明用の例として「営業事務の共有アドレス」)。よくある間違い:古い版のPDFを開いて照合してしまうこと。ファイル名の日付が最新か確認します。

元のメモが「金額を確認して承認をもらう」だけだったとします。この1行から、確認の対象、一致の基準、承認者の分岐、完了の目印が必要だと分かります。質問リストは、この差を埋めるためのものです。

最後に初めての人で試す

整形後の文章は読みやすいぶん、正しそうに見えます。そのため、確認は人が行います。

  1. 業務に慣れていない人に、あなたの説明なしでその手順を実際に進めてもらいます。
  2. 手が止まった箇所、質問された箇所をすべて記録します。
  3. 記録をAIに渡し、「この箇所で迷った。足りない情報は何か質問して」と再度依頼します。
  4. 回答を反映したら、別の人にもう一度試してもらいます。

実際に試せない場合は、AIに「新人として手順を頭から追い、操作が曖昧で実行できない箇所を挙げて」と頼むだけでも、見落としの発見に使えます。ただし、AIは自社の画面やルールを見ていないため、実際の運用との照合の代わりにはなりません。

最後に、マニュアルの末尾へ最終確認日と担当者名を入れておくと、運用が変わったときに見直す人が分かります。

出典・参考資料