ゲームの中で使わない言葉を決める:禁止語のリストの効果
遊びを見つける執筆にClaudeを使用しています。

海辺の郵便局を舞台にしたゲームを考えてみます。プレイヤーは紙ひこうきで手紙を集め、赤い郵便受けへ届けます。ところが失敗すると「GAME OVER」、終わると「SCORE」と「RETRY」が並び、次は「STAGE 2」へ進むとします。舞台は手紙の世界なのに、画面の言葉だけが別のゲームから借りてきたもののように見えます。 この記事の問いは、使わない言葉を先に決めておくと世界観は保たれるのか、です。結論から言えば、禁止語リストの役目は言葉を減らすことではありません。同じものをいつも同じ名前で呼ぶことです。リストがどれほど効くかは、作品や遊ぶ人によって変わります。この記事では数字を示さず、読者が自分の作品で確かめられる手順を用意しました。
禁止語が働くのは「仕組みの言葉」
世界観を支える言葉は二種類に分けられます。一つは世界の言葉で、手紙、小包、潮、庭、台所の火のように、舞台の中にあるものの名前です。もう一つは仕組みの言葉で、スコア、ライフ、ステージ、ミス、リトライ、ゲームオーバーなど、ゲームを進行させるために付ける名前です。
世界の言葉は、物語を作り始めた時点で自然に決まります。問題になるのは仕組みの言葉です。仕組みの言葉はほかのゲームから習慣で持ち込まれやすく、気づかないうちに画面のあちこちに紛れ込みます。禁止語リストが働くのはこの層です。
言葉を統一するときに押さえておきたい点が三つあります。
- 同じ出来事には同じ語を使います。「傷む」と「ダメージ」が混ざると、世界の中なのか外なのかが曖昧になります。
- 禁止するのは語そのものではなく、世界から外れた呼び方です。「点」が必要なら、世界の中で点が何に当たるのかを決めます。
- 操作に必要な語は、世界に寄せすぎないようにします。ボタンの意味が分からなければ、世界観以前に遊べなくなります。
公式作品の言葉から読み取れること
アソバースの公式作品の確認済みの説明から、言葉の選び方が読み取れる点をいくつか挙げます。ここで見るのは説明に出てくる語だけで、画面の実際の文言は作品を開いて確かめてください。
紙ひこうき郵便は、海辺・丘・山の3ルートで手紙を集め、最後に赤い郵便受けへ向かうゲームです。失敗の数え方は、風船にぶつかると紙が傷み、3回で終了、と説明されています。体力の減少ではなく、紙という舞台上の物の状態として数えている点が、設計から読み取れます。
月夜の配達では、小包、バッグ、燃料、区間という語が並びます。燃料は有限で、1区間で燃料1を使います。「残り行動数」ではなく燃料と区間という語で制約を語ることで、制約そのものが配達の世界の一部になっています。
時計じかけの台所には、材料、火、針、配膳、見習い、本番といった台所の語があります。一方で、料理ごとの100点評価やミス3回までといった数える側の語も説明に出てきます。世界の語と数える語が同じ場に並ぶときに、どこまで世界の語へ寄せるかは設計判断です。数える語が画面でどう書かれているかは、作品を開いて確かめるのがいちばん確実です。
こだまの森は、光る葉の順番を覚えて返すゲームです。聴き直しや間違いといった名前が付いた操作と、それに対応する点の増減があります。ここも、操作の名前を世界の言葉にしているのか、一般的なゲーム用語で呼んでいるのかを、作品を開いて確かめる価値があります。
潮だまりは、海藻や小石を置いて潮を切り替え、現れる生きものを観察する作品で、図鑑と観察ノートが用意されています。説明に出てくる語を見る限り、観察と記録の言葉でまとまっています。余白の庭も、置く、戻す、やり直す、といった庭づくりの手の動きに近い言葉で説明されています。
もう一つ、文字にも統一があります。13作品はタイトルの文字組みが作品ごとに違い、縦組みの明朝、手描き文字、郵便ラベル、夜の標識、光の幾何学、メニュー風などがあります。どの作品がどれに当たるかは、作品を開いて確かめてください。世界の言葉を揃えることと、文字の見た目を揃えることは、同じ方向の設計です。
また、13作品はサイトの日本語/英語設定に合わせて表示を切り替えます。作品内の言葉を二つの言語で用意する場合、禁止語リストも言語ごとに必要です。日本語で「ゲームオーバー」を避けても、英語側に「GAME OVER」が残れば、統一は崩れます。
禁止語リストの作り方
作業は次の順に進めます。
- 世界を一文で書きます。 「風の強い海辺の郵便局で、手紙を届ける」のように、舞台と行為を一文にします。
- 仕組みの語を洗い出します。 タイトル画面、ボタン、途中のメッセージ、失敗や終了の画面、説明文、ヘルプ、エラー文まで、画面に出る文字をすべて書き出します。
- 禁止語と置き換えを対にします。 禁止語だけを並べても迷うので、必ず置き換えの語を並べます。
- 例外を決めます。 操作に必要な語は、世界の語を先に書き、必要なら括弧で一般語を補います。
- 両方の言語で作ります。 英語表示を持つ作品は、英語側の表も用意します。
下の表は、郵便の世界を仮定した例です。公式作品の文言ではなく、考え方を示すためのものです。
- ゲームオーバー、置き換えの例:今日の配達はここまで、置き換えの狙い:失敗を仕事の区切りとして語る
- スコア、置き換えの例:届けた手紙の数、置き換えの狙い:点を舞台上の物に結び付ける
- ライフ、置き換えの例:紙の傷み、置き換えの狙い:数える対象を物の状態にする
- ステージ、置き換えの例:道(ルート)、置き換えの狙い:面を場所の名前にする
- リトライ、置き換えの例:もう一度飛ばす、置き換えの狙い:ボタンの動詞を世界の動作にする
注意が必要なのは、置き換えが長くなりすぎることです。ボタンに「今日の配達をもう一度最初から飛ばし直す」と書くと、読むのに時間がかかります。短く、動詞が分かる形に絞ります。
アソバースの投稿画面には、「紹介文と遊び方を作成」という機能があります。公開済みURLまたは本人の検証済みアップロードを読み取って、選択言語の下書きを作ります。この下書きは「この文章を使う」を押した場合だけ反映されます。下書きに一般的なゲーム用語が入っていないか、押す前に禁止語リストと照らして確認してください。作品内の言葉と紹介文の言葉が揃っていると、遊ぶ前の期待と遊んだ後の印象がつながります。なお、サイトの言語切り替えは作者が入力した作品名や紹介文を書き換えません。紹介文の語彙は作者自身が整えることになります。
最小の検査ツール
画面の文字を目で拾うだけでは、見落としが出ます。作品のテキストを貼り付けて禁止語を探す、ごく小さなチェッカーを用意しておくと便利です。次のHTMLは単独で動きます。外部ライブラリもサーバーも使いません。リストの中身は仮の例なので、自分の世界の語に書き換えてください。
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<textarea id="t" rows="8" cols="44">ゲームオーバー
スコアは100点です
リトライしますか?</textarea>
<br><button id="b">調べる</button>
<pre id="o"></pre>
<script>
// 禁止語 : 置き換えの案(自分の世界に合わせて書き換える)
const rules = {
"ゲームオーバー": "今日の配達はここまで",
"スコア": "届けた手紙の数",
"ライフ": "紙の傷み",
"ステージ": "道",
"リトライ": "もう一度飛ばす"
};
document.getElementById("b").onclick = () => {
const lines = document.getElementById("t").value.split("\n");
const out = [];
lines.forEach((line, i) => {
for (const [ng, ok] of Object.entries(rules)) {
if (line.includes(ng)) {
out.push((i + 1) + "行目: 「" + ng + "」→「" + ok + "」");
}
}
});
document.getElementById("o").textContent =
out.length ? out.join("\n") : "禁止語は見つかりませんでした。";
};
</script>使い方は、ゲーム内のすべての文言を一行ずつテキストに書き出して貼り、「調べる」を押すだけです。
このチェッカーには限界があります。短い語は別の語の一部に一致して、誤って検出されることがあります。たとえば「ミス」を禁止語に入れると、「ミステリー」にも反応します。検出された行は、必ず文脈を読んで判断してください。逆に、リストにない言い換え(「ダメージ」や「HP」など)は検出されないので、リストは作品を作りながら育ててください。
効果を自分で確かめる小さな比較
禁止語リストに効果があるかどうかは、作った本人の感覚だけでは判断できません。次の手順で比べてみてください。結果は、実施した人にしか分かりません。
問い:リストを適用した版は、遊んだ人が世界を世界の言葉で語るようになるか。
準備するもの:
- 文言だけが違う2つの版(A:現状、B:リスト適用)
- 遊んでもらう人(各版5人以上が目安です。同じ人に両方は遊んでもらいません)
- 紙と筆記具、または記録用の表
手順:
- 説明を足さずに、1回だけ遊んでもらいます。
- 遊んだ直後に、次の三つを自分の言葉で書いてもらいます。「この世界はどんな場所か」「失敗したとき、何が起きたと思ったか」「もう一度やるとき、何をしたか」。
- 書かれた語を、世界の語(手紙、紙、郵便受けなど)と、一般のゲーム用語(スコア、ライフなど)に分けます。
記録の取り方:人ごとに、使われた語の総数と世界の語の数を数えます。あわせて、操作で迷った箇所の有無を一言で書きます。A版とB版を並べた表にします。
結果の読み方:
- B版で世界の語の割合が高く、迷いの記録が増えていなければ、リストは働いていると読めます。
- 世界の語は増えたが、迷う人も増えたなら、置き換えの語が遠すぎる可能性があります。操作の語だけ元に戻すか、括弧で補います。
- 差がなければ、言葉よりも音や絵、文字の見た目が世界を決めている可能性があります。言葉の統一だけで世界観が決まるとは限らないということです。
人数が少ないので、出るのは傾向に過ぎません。断定はせず、次の修正の手がかりとして使います。
起こりやすい誤り:
- 質問が誘導になる。「世界観は伝わりましたか」と聞くと、肯定の答えが出やすくなります。
- 言葉を変えるのと同時に、絵や音も変えてしまう。何が効いたのか分からなくなります。
- 友人だけで試す。作者の意図を知っている人は、言葉が揃っていなくても補って読んでしまいます。
次の行動
まず、自分のゲームの画面にある文字をすべて書き出し、上のチェッカーで仕組みの語を探してください。見つかった語に置き換えを決め、操作に必要な語だけ例外として残します。余裕があれば、A版とB版の比較を3〜5人で行い、世界の語の割合を表にして見比べてみてください。公式作品を開き、失敗や終了の場面でどんな言葉が使われているかを見ておくと、置き換えの参考になります。

