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AIに「もっと面白く」と頼んでも無駄な理由と代わりの言い方

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

同じ形の三つの迷路試作品を、砂時計とノートを添えて比較する卓上写真風イメージ
記事のテーマをもとに制作したAI生成の写真風イメージ。

「もっと面白くして」とAIに頼んだのに、返ってきたのはほぼ同じコードにエフェクトが少し増えただけ——そんな経験をしたことはないでしょうか。原因はAIの能力不足ではなく、「面白い」という言葉の構造にあります。AIはこの一言から行動できる情報をほとんど取り出せないのです。 「面白い」は感情の結果であって、設計の指示ではありません。何かが面白いと感じるとき、その裏には「次が読めない緊張」「達成の手ごたえ」「発見の驚き」など、複数の具体的な体験が積み重なっています。AIにはそのどれを強化すればいいかが分からないため、表層的な変化——演出を派手にする、テキストを増やすなど——で返してくることになります。 この記事では、「面白く」を機能する指示に変換するための考え方と、すぐ使える言い換えパターンを示します。ゲームのジャンルや規模を問わず使える内容です。

この記事の目次
  1. 「面白い」がAIに伝わらない理由
  2. 面白さを分解する三つの軸
  3. 機能する言い換えパターン
  4. 指示を出す前の一手間
  5. 失敗しやすい言い回しと置き換え例
  6. 次の行動

「面白い」がAIに伝わらない理由

AIへの指示は、出力の形と内容を絞り込む情報で成り立っています。たとえば「ボタンを押したら画面が揺れるようにして」という指示には、対象(ボタン)・タイミング(押したとき)・効果(画面揺れ)が含まれています。AIはこれを見てコードを書けます。

「面白く」にはこの三つのどれもありません。対象が何か、いつの体験を変えたいのか、どんな感覚を目指すのかがすべて抜けています。AIはその穴を自分で埋めるしかなく、無難な方向——視覚的な派手さを足す、テキストを追加する——を選びます。これは能力ではなく、情報量の問題です。

さらに問題なのは、「面白く」は検証できないことです。AIが変更を加えた後、それが正解かどうかを確かめる基準が指示の中にありません。指示に基準がないと、AIは「変えた」という事実で完了と判断します。遊んでいる人の体験は確認されません。

面白さを分解する三つの軸

指示を具体化するために、まずゲームの面白さを分解します。完全な理論は不要で、次の三つの軸を手がかりにするだけで十分です。

予測と裏切り:プレイヤーが「こうなるだろう」と読んで、その通りになるか、良い意味で外れるかです。単純すぎると飽き、複雑すぎると諦めます。

手ごたえと報酬:操作に反応があるか、努力が結果に結びつくかです。ジャンプが軽すぎる、スコアが変化しないなど、手ごたえが薄いとプレイヤーは動機を失います。

発見と広がり:新しい要素に気づく瞬間があるか、試行錯誤の余地があるかです。「こうすればもっと速くなる」という発見がゲームを続ける理由になります。

「もっと面白く」と頼む前に、自分のゲームでいま薄いのはどの軸かを一つ特定します。それだけで指示が半分完成します。

機能する言い換えパターン

軸を特定したら、次の形式で指示を組み立てます。

「〔場面〕で〔プレイヤーの状態〕が〔どうなっているか〕。〔何を変えれば〕それが改善されるか」

抽象的に見えますが、埋めると具体的な指示になります。

予測と裏切りを強化したい場合

「敵の動きが完全にランダムで、プレイヤーが戦略を立てられていない。敵がある程度のパターンを持ちつつ、2〜3回に1回だけ外れる動きをするようにしてほしい」

「ゲーム後半なのに前半と同じ難易度で、緊張感がない。ステージ5以降は障害物の速度を段階的に上げて、ミスが増えやすくなるよう調整してほしい」

手ごたえと報酬を強化したい場合

「アイテムを取っても画面の変化が少なく、取れた実感が薄い。取得時に短いフラッシュとスコア加算のアニメーションを加えてほしい」

「ボスを倒しても通常の敵を倒すときと演出が同じで達成感が出ない。ボス撃破時だけ0.5秒の停止と効果音の変化を入れてほしい」

発見と広がりを強化したい場合

「ひたすら同じ操作を繰り返すだけで、プレイヤーが試行錯誤する余地がない。二つの操作を組み合わせると速度が上がる隠し仕様を入れてほしい」

「全コースが最初から見えていて、探索する動機がない。一定スコアを超えたときだけ新しいステージが解放されるようにしてほしい」

指示を出す前の一手間

具体的な指示を作るには、「いまのゲームを30秒だけ遊んでみる」が最も手早い準備です。遊んだときに「ここで飽きた」「ここで急に難しくなった」と感じた瞬間があれば、そこが改善点です。感じた不満をそのまま言葉にして、それを先ほどの軸と形式に当てはめます。

AIが返してきた変更が意図と違った場合も、同じ手順で対処できます。「変更後に○○という問題が起きた。原因は△△だと思うので、□□の部分だけ戻して代わりに〜にしてほしい」と、症状・推定原因・希望を分けて伝えると、AIは修正の方向を絞れます。「やっぱりやり直して」という指示は、「面白く」と同じ理由で機能しません。

失敗しやすい言い回しと置き換え例

一覧で整理します。

  • もっと面白くして、問題:基準なし・対象なし、置き換えの方向:三つの軸のどれかを特定して指示する
  • ゲームバランスを直して、問題:何がどう崩れているか不明、置き換えの方向:「〇〇面で詰まる人が多い。難易度を下げるには〜」と具体化
  • プロっぽくして、問題:「プロらしさ」の定義が人による、置き換えの方向:「UIのフォントを統一して余白を増やしてほしい」など要素単位で
  • もっとわくわくさせて、問題:感情の結果を直接要求している、置き換えの方向:「カウントダウン演出を追加して緊張感を出してほしい」と変換
  • 全体的に改善して、問題:範囲が広すぎてAIが優先順位を決められない、置き換えの方向:一度に一つの箇所を対象にする

「全体的に改善して」はとくに失敗率が高い指示です。AIは変更範囲を自分で決めるため、触ってほしくない部分まで変えてしまうことがあります。一度に一つの問題を解くことが、結果的に速く改善できます。

次の行動

いま手元にあるゲームを30秒だけプレイして、「ここで飽きた・迷った・拍子抜けした」という瞬間を一つ書き出してください。それを三つの軸(予測・手ごたえ・発見)のどれかに当てはめ、この記事の形式で指示文を組み立ててAIに送ってみましょう。完成したゲームはアソバースに投稿して、実際のプレイヤーの反応で仮説を検証することができます。