音の順番を覚えられる限界は何個か:記憶の容量と記憶ゲーム
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「こだまの森」で、光る葉の順番を覚えて4つの音色で返す場面を考えてみます。序盤はすらすら進みます。ところがラウンドが進むと、頭の中で順番がほどけ、あと一枚が思い出せなくなります。この「ほどける地点」は人によって違うのか、同じ人でも日によって動くのか、というのがこの記事の問いです。 記憶の研究には、よく知られた数が二つあります。一つは「7±2」、もう一つは「4前後」です。こだまの森には6・8・10ラウンドの3コースがあります。この数字は、先の二つの数と並べて眺めてみたくなる位置にあります。ただし、ラウンド数と覚える個数がどう対応するかは、確認済みの情報にありません。そこで、作品を開いて確かめる手順も含めて整理します。 最後には、自分の限界を測るための記録シートと、結果の読み方を示します。結果そのものは書きません。数えるのは読者自身です。
研究で知られる二つの数
7±2という数
心理学者ジョージ・ミラーは1956年の論文で、人が一度に扱える項目の数は7前後(5〜9)に収まることが多いと述べました。数字を聞いて、そのままの順で言い返す課題(順唱)が代表的な例です。
この論文で大切なのは、数える単位が「文字」や「音」そのものではなく、まとまり(チャンク)だという点です。「1・9・4・5」をばらばらの4つではなく「1945」という一つの年として覚えられれば、使う枠は減ります。
4前後という数
その後、ネルソン・コーワンは2001年の論文で、まとめ直しや心の中での復唱を防いだ条件では、保てる数は4つ前後になるという見方を示しました。7±2は、まとめや復唱という「工夫込み」の数だと読むことができます。
二つの数は矛盾しているわけではありません。何も工夫しなければ4前後、リズムや語呂でまとめれば7前後まで伸びる、という整理です。数値は課題や個人、年齢、体調で動くため、「あなたの限界はこの数」と断定する材料にはなりません。
音の列は何が特別か
音の高さや音色の列は、頭の中で口ずさむように保つ人が多いと言われます。心理学ではこの働きを音韻ループと呼びます。ただし、光る葉の位置を空間として覚える人もいます。どちらの方法で覚えているかで、伸び方は変わるかもしれません。この点は、後の実験で切り分けられます。
こだまの森の設計から読み取れること
確認済みなのは、次の点です。
- 光る葉の順番を覚え、4つの音色で返すゲームです。
- 6・8・10ラウンドの3コースがあります。
- 聴き直しをすると15点減、間違いは30点減で、3回で終了します。
- 一時停止ができ、音なしでも遊べます。
- 最高記録は、ゲームを開いている間だけ残ります。
ここから、設計として読み取れることを順に書きます。
6・8・10という長さ
3コースの6・8・10は、もしラウンド数がそのまま覚える個数の上限に対応しているなら、7±2の範囲(5〜9)の内側から外側へ段階的に進む並びに見えます。ただし、ラウンドが進むごとに列が1つずつ伸びるのか、毎ラウンド新しい列が出るのかは、確認済みの情報にありません。この部分は、作品を開いて最初の数ラウンドを見て確かめます。
聴き直しと間違いの重さ
聴き直しは15点減、間違いは30点減で、間違いが3回で終了します。聴き直しを2回使うと、間違い1回と同じ点数の損です。記憶があやふやなときに、聴き直しで確かめるか、思い切って答えるかを選ばせる設計だと読めます。間違いは点数だけでなく、残り回数も削ります。「自分の記憶の確かさを見積もる力」も試される作りです。
聴き直しの回数に上限があるかどうかは、確認済みの情報にありません。作品で確かめます。
音なしでも遊べること
音なしでも遊べるので、光る葉の位置だけを手がかりにする遊び方もできます。音ありと音なしで到達点が変わるかを比べれば、自分がどちらの手がかりを頼りにしているかが見えてくるかもしれません。
記録が残らないこと
最高記録はゲームを開いている間だけです。日をまたいで比べたいなら、自分で書き留める必要があります。次の節は、この前提に合わせた設計です。
自分の限界を測る実験の設計書
問いの立て方
問いは「自分が間違えずに返せる最長の列は何個か」です。さらに、条件を一つだけ変えたときにそれがどう動くかを見ます。比べる条件は、一度に一つだけにします。
準備するもの
- こだまの森(最短のコースから)
- 紙かメモアプリ(記録シート用)
- 同じ時間帯に3回以上遊べる日(できれば別の日も)
手順
- 最初のコースを開き、最初の数ラウンドを遊んで「1ラウンドごとに覚える個数がどう変わるか」を確かめ、メモします。ここで分かった対応が、以降の記録の単位になります。
- 最初の条件(普段どおり、音あり)で3回遊びます。1回ごとに「最後に正解できた列の長さ」「聴き直しの回数」「間違いの回数」を記録します。
- 次の条件に変えて、また3回遊びます。
条件の候補は次のとおりです。
- 音なしで遊ぶ(視覚の手がかりだけ)
- 声に出さず、指も動かさずに遊ぶ
- 列を2〜3個ずつのまとまりに分けて覚える
- 一時停止を挟まず、一気に遊ぶ
一つの記録シートで変えるのは、一つの条件だけです。
記録の取り方
- 普段どおり、試行:1、最後に正解した列の長さ:、聴き直し:、間違い:、メモ:
- 普段どおり、試行:2、最後に正解した列の長さ:、聴き直し:、間違い:、メモ:
- 普段どおり、試行:3、最後に正解した列の長さ:、聴き直し:、間違い:、メモ:
- 音なし、試行:1、最後に正解した列の長さ:、聴き直し:、間違い:、メモ:
- 音なし、試行:2、最後に正解した列の長さ:、聴き直し:、間違い:、メモ:
- 音なし、試行:3、最後に正解した列の長さ:、聴き直し:、間違い:、メモ:
メモ欄には、覚え方を一言書きます。「口ずさんだ」「位置で覚えた」「リズムにした」といった内容です。
結果の読み方と起こりやすい誤り
結果の読み方
各条件の3回の値から、中央値(並べたときの真ん中の値)を出します。判断の目安は次のとおりです。
- 条件間の差が1以内で、3回のばらつきと同じくらいなら、条件の効果というより偶然の揺れの範囲と考えます。
- 差が2以上あり、3回すべてで同じ向きなら、その条件が効いている可能性があります。もう3回足して確かめます。
- 聴き直しを多く使った回は、その分長く進めた可能性があります。到達した長さと聴き直しの回数は、セットで読みます。
- まとまりに分ける条件で伸びた場合は、7±2の「工夫込みの数」に近い働きが出ていると読めます。伸びなければ、その覚え方が自分には合っていない可能性があります。
- 音なしで落ちるなら音への依存、変わらないなら位置への依存、と仮説を立てます。ただし、この対応は目安であり、断定はできません。
起こりやすい誤り
- 条件を二つ同時に変えてしまうこと。「音なしで、しかも疲れていた」では、どちらの影響か分かりません。
- 1回だけで結論を出すこと。記憶課題は、その日の体調や集中で大きく動きます。
- 疲れたまま続けること。連続で遊ぶと後半が落ちやすいので、間に休みを入れます。
- 最高記録を見て満足すること。1回の最高値は偶然の影響を最も受けます。見るのは中央値です。
- 研究の数字に自分を合わせようとすること。7±2も4前後も、平均的な傾向を指す数です。
雨音のピアノとの比較という手もある
「雨音のピアノ」には、3音から8音へ育つフレーズの記憶ゲームがあります。お手本の速さも選べます。こだまの森が光る葉と4つの音色を扱うのに対し、こちらは鍵盤の音の並びです。
同じ人が両方で測れば、「光る葉の位置で覚える課題」と「音の並びで覚える課題」で、限界が同じくらいかを比べられます。お手本の速さを変えれば、速いほどまとまりを作りにくいのか、それとも覚える時間が短いだけなのかを考える材料になります。比べるときの記録の取り方は、先の記録シートと同じです。ただし、この作品の記録も画面を開いている間だけなので、自分で書き留めます。
次の行動
まずこだまの森の最短コースを開き、最初の数ラウンドで覚える個数がどう増えるかを確かめてください。そのうえで、普段どおりの条件を3回遊んで記録シートを埋めます。余裕があれば、音なしやまとまり分けの条件を一つ足します。数日後に同じ条件でもう一度測ると、揺れの幅も分かります。
参考資料
- ジョージ・ミラー「The Magical Number Seven, Plus or Minus Two」(1956年)
- ネルソン・コーワン「The magical number 4 in short-term memory」(2001年)

