終盤で時間をかけるべき手と、すぐ指してよい手の見分け方
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オセロの終盤で、盤を見つめて数十秒かけた末に、最初に浮かんだ手を指していた。そんな場面を考えてみます。熟考が無駄だったのか、その局面はたまたま考える必要がなかったのか、あとから振り返ってもわかりません。逆に、すぐ指した手が悪手だったときも、急ぎすぎたのか、どう考えても難しい局面だったのかは区別できません。 この記事が扱うのは「考えた時間」と「手が変わったかどうか」を残り手数ごとに並べて記録し、考えても結論が変わらない局面を自分のデータから見つける方法です。結果は書きません。記録シートの作り方、集計の単位、読み方の基準を示すので、読者が自分の対局で答えを出してください。 ブラウザで試すなら「潮目のオセロ」のひとり対局が向いています。相手は3段階から選べ、一手戻すとヒントも使えます。この2つは友達とのオンライン対局では使えません。記録は自分で紙や表計算に残します。作品側の記録は画面を開いている間しか残らないためです。
この記事の目次
準備するもの:記録シートと「残り手数」の数え方
用意するのはストップウォッチ(スマホで構いません)と、手番ごとに1行書ける記録シートです。列は次の8つにします。
- 局番号、内容:何局目か
- 空きマス数、内容:自分が指す直前の空きマスの数
- 合法手数、内容:その局面で置ける場所の数
- 直感手、内容:盤を見て最初に浮かんだ手
- 指した手、内容:考えたあとに実際に指した手
- 秒数、内容:直感手を書いてから指すまでの時間
- 隅の絡み、内容:隅を取れる、または隅を渡す手が候補にあるか(有/無)
- 変化、内容:直感手と指した手が違えば○、同じなら×
「残り手数」は、パスがあると手数と一致しなくなります。そこで空きマス数で数えます。盤は8×8の64マスなので、空きマス数は「64 − 盤上の石の数」です。パスは石を置かないので空きマスが減らず、手番の回数で数えるとずれます。毎回、盤上の石を数えて引き算してください。石数が画面に表示されるかどうかは、作品を開いて確かめてください。
座標は、横を左からa〜h、縦を上から1〜8とする自分用の決めごとで構いません。作品内の表記と合わせる必要はなく、同じ手を同じ書き方で残せれば十分です。
相手の強さは、3段階のうち一つに固定します。局ごとに相手を変えると、局面の難しさと自分の思考時間が混ざり、読み取れなくなります。
手順:直感手を先に書き、それから考える
1手ごとに、次の順で進めます。
- 自分の手番になったら、空きマス数を数えて記録します。終盤として記録を始める目安は空きマス16以下です。
- 盤を見て、最初に浮かんだ手を考え込まずに書きます。目安は数秒です。同時に合法手数と隅の絡みも書きます。
- ここでストップウォッチを始めます。納得するまで考えてください。返る石のプレビューは使って構いません。
- 手を決めて指した瞬間に止め、秒数と指した手を書きます。直感手と同じなら「変化」は×、違えば○です。
- 指す前の確認として、ヒントを見る任意の列を追加しても構いません。その場合は必ず、指す手を決めて記録したあとに開きます。ヒントを見たあとに手を変えると、自分の思考の記録ではなくなるからです。ヒントが示す手が常に最善かどうかは、作品の案内からは確かめられません。答えではなく、比較の材料として扱ってください。
2の「先に書く」が分析の核心です。書かずに考え始めると、あとから「最初からこの手を考えていた」と記憶が書き換わります。紙に書くのがおっくうなら、直感手だけ先にスマホのメモに打ち込む方法でも構いません。
一手戻すは、記録中は使わないことをおすすめします。使うと同じ局面を複数回見ることになり、秒数が下がって比較できなくなるためです。戻した場合は、その行に「戻し」と書いて集計から外してください。
回数の目安は10局です。空きマス16以下なら1局で12〜16行ほどの記録になると見込めるので、10局でおよそ120〜160行になります。数が少なすぎると偏りが読み取れません。まずここを目標にしてください。
集計:空きマス数の区分ごとに三つの数を出す
記録がたまったら、空きマス数を区分に分けます。目安は次の4区分です。
- 16〜13
- 12〜9
- 8〜5
- 4〜1
各区分で、次の三つを出します。
- 変化率:「変化」が○の行数 ÷ その区分の行数
- 平均秒数:秒数の合計 ÷ 行数。外れ値の影響が大きいときは中央値(並べたときの真ん中の値)も併記します。
- 合法手数の平均:候補がどれだけ広いかの目安
次に、同じ集計を「隅の絡み」の有無でも出します。区分と隅の絡みを掛け合わせると表が細かくなりすぎるので、行数が少ないうちは、区分別と隅の絡み別を別々に出す方が安全です。
行数が10に満たない区分は、割合を出しても1行の違いで大きく動きます。その区分は「判断保留」とし、局を増やして埋めてください。
合法手数が1つの局面は、あらかじめ除外して別に数えます。選択肢が一つなら、考えるかどうかを論じる意味がありません。ただし、この「強制手」の割合が終盤でどれくらいあるかは、それ自体が自分の対局の特徴として参考になります。
結果の読み方:時間と変化の組み合わせで判断する
区分ごとに、平均秒数が長いか短いかと、変化率が高いか低いかを組み合わせて読みます。長い短いの基準は、自分の全区分の平均を境にするのが簡単です。
- **秒数が長い**、変化率が高い:考える価値が出ている局面です。時間を使い続けてください。、変化率が低い:考えても結論が変わっていない局面です。時間を削る候補です。
- **秒数が短い**、変化率が高い:直感が外れやすいのに急いでいます。ここに時間を回します。、変化率が低い:直感で足りている局面です。すぐ指してよい領域です。
読み方の流れは次のとおりです。
- 右上の「秒数が長いのに変化率が低い」区分が見つかったら、そこが時間の無駄遣いの候補です。次の10局では、制限時間を決めて(たとえば区分の平均の半分)指す練習をします。
- 左下の「秒数が短いのに変化率が高い」区分は、直感手が頻繁に覆る局面です。そこでは、直感手を書いたあとに必ず一度、隅と相手の次の手を確認するといった、短い確認の型を作ります。
- 隅の絡みが「有」の行だけ変化率が高いなら、隅に関わる局面では考える価値があるという読みです。「無」で低いなら、そうした局面は速く指してよい可能性が高くなります。
- 合法手数が少ない行ほど変化率が低く、多い行ほど高いなら、候補の数が考える価値の目印になります。その場合、合法手が2〜3つしかない局面は短縮できます。
注意したいのは、変化は「良くなった」を意味しないことです。考えて手を変えた結果が悪かった可能性もあります。変化率が高いのに勝ち負けや石差が改善しないなら、考え方そのものに別の問題があるかもしれません。その場合は、変化した行だけを対局後に見直し、直感手と指した手のどちらが良かったかを自分で検討します。1局では石差が相手の応手に左右されるため、結論は10局単位で見てください。
起こりやすい誤り
直感手を後から書く。 一番多い誤りです。指したあとで「これが直感だった」と書くと、変化率が実際より低く出ます。必ず思考を始める前に書いてください。
局面が違うのに、数字を同じ箱に入れる。 序盤から終盤まで一つの平均にまとめると、終盤の特徴が埋もれます。空きマス数で区分を分けるのはそのためです。
パスを手数に数える。 空きマスは石を置いたときだけ減ります。必ず盤の石数から数え直してください。
記録に気を取られて対局の質が変わる。 記録をつけ始めた最初の数局は、普段の指し方と違うかもしれません。最初の2局は練習として集計から外す方法もあります。
相手の強さを変える。 段階を変えると局面の傾向も変わります。分析の期間中は固定してください。
ヒントや一手戻すで答え合わせをしすぎる。 便利ですが、使うほど自分の思考時間のデータがぶれます。使うときは「使った」と列に残し、集計の対象にするかどうかを決めておきます。
少ない行数で結論を出す。 10行未満の区分は判断保留にします。この基準は、後から都合よく動かさないでください。
次の行動
「潮目のオセロ」のひとり対局で相手の強さを一つ選び、まずは1局、空きマス16以下の手番だけ記録シートを埋めてみてください。直感手を先に書くことだけは、最初の1手から守ります。10局分たまったら、空きマス数の区分ごとに変化率と平均秒数を出して、表の4つの欄のどこに自分の終盤が多く入るかを見てください。


