勝った対局より負けた対局の方が学べるのは本当か:10局の振り返りで確かめる手順
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負けた対局は悔しくて、寝る前に何度も盤面を思い返してしまいます。勝った対局は「うまくいった」で済ませて、すぐ次の対局へ進みたくなります。この差が「負けから学ぶ」という通説を支えているのかもしれません。ただ、思い返した時間が長いことと、次の対局で打ち方が変わることは別の話です。 この記事では、題名の問いを「勝敗のどちらから出た気づきの方が、次の対局で実行されやすいか」に置き換え、10局分の記録で確かめる手順を示します。結果は書きません。読者が自分の対局で記録を取り、数えて、自分で判断するための設計書です。 使うのは「潮目のオセロ」のひとり対局です。相手は3段階から選べます。返る石のプレビューや理由付きヒントがあり、一手戻すこともできます。対局の記録は画面を開いている間しか残らないため、振り返りのメモは画面の外(紙やメモアプリ)に書きます。
「学べる」を数えられる形にする
「学べた」は感覚の言葉です。そのままでは勝ち局と負け局を比べられません。そこで「学び」を、振り返りで書いた気づきが、次の対局で行動として現れたかどうかと定義します。
数える単位は「気づき1件」です。対局ごとの勝敗ではなく、気づきを単位にします。1局の振り返りから3件まで書いてよいことにすると、10局で最大30件になります。
各気づきは、数えられる行動の形に書き換えます。次のような違いがあります。
- 数えにくい書き方:「角を意識する」
- 数えやすい書き方:「自分の最初の6手のうち、角の斜め隣のマスに置く手を0回にする」
角の斜め隣は、盤の四隅それぞれに1マスずつあるので計4マスです。一般にX打ちと呼ばれ、角を相手に渡しやすい位置として知られています。角の辺で隣り合うマス(C打ち)を対象にしてもかまいません。
行動の形にしておくと、次の対局の棋譜を見返して「できた」「できなかった」を後から判定できます。判定は記憶ではなく、盤面と自分の手の記録で行います。
10局の記録書式を決める
対局前に、記録の書式を決めます。途中で変えると、前半と後半が比べられなくなります。
対局ごとに書く項目
- 局番号、書き方:1〜10
- 自分の色、書き方:黒(先手)か白
- 相手の段階、書き方:3段階のうちどれか。10局を通して固定
- 結果、書き方:勝・負・引き分け
- 一手戻すの使用回数、書き方:0回が理想。使ったら回数を書く
- ヒントの使用回数、書き方:使ったら回数を書く
気づきごとに書く項目
- 気づきの文、書き方:数えられる行動の形で1文
- 由来、書き方:勝ち局か負け局か(引き分けは別枠)
- 局面の特定、書き方:「◯手目の局面で」と特定できているか(はい/いいえ)
- 次の2局での判定、書き方:実行できた/できなかった/機会がなかった
相手の段階を固定するのは、段階が変わると同じ行動でも難しさが変わるためです。まず3段階のうち、勝ったり負けたりが混ざりそうな段階を選びます。最初の2〜3局で全勝か全敗になるなら、段階を一つ動かして最初からやり直します。勝敗のどちらかがゼロ件だと、比べる相手がいなくなるからです。
一手戻すは、使うと局面が変わって記録と実際の手順がずれます。使うなら必ず回数を書きます。理由付きヒントも、使った局は「助けありの局」として区別します。ヒントも一手戻すも、ひとり対局でだけ使える機能です。
勝ち局と負け局を同じ条件で振り返る
勝敗は対局が終わるまで決まらないので、「この局は勝つ前提で」とは割り振れません。比べるために揃えられるのは、振り返りの条件です。
- 時間を揃えます。 勝ち局も負け局も、振り返りは1局あたり同じ時間(たとえば10分)で打ち切ります。負けた局だけ長く考えると、気づきの質ではなく量の差を測ることになります。
- 件数の上限を揃えます。 1局につき気づきは最大3件までにします。
- 手順を揃えます。 対局後すぐに、同じ順序で振り返ります。順序は次の3つです。
- 結果を左右したと思う局面を、手数で2か所まで挙げる。
- そのとき自分が打った手と、ほかに打てた手を書く。
- 次の対局で数えられる行動に書き換える。
「局面を2か所挙げる」とき、盤面の細部を思い出せなければ、無理に書きません。「局面の特定:いいえ」として残します。あとで、具体度の違いが次局での実行率に効いているかを見られます。
勝ち局でも、同じ手順で気づきを必ず探します。たとえば、勝った局で相手に角を取られたのに勝てたとします。その角は勝敗に響かなかったのか、たまたま響かなかっただけなのか。こうした問いは勝ち局にも残ります。それでも見つからなければ「0件」と記録します。0件も立派なデータです。
集計と読み方
10局が終わったら、各気づきの判定を見直します。判定は、気づきを書いた局の次の2局の棋譜で行います。10局目で書いた気づきは次の2局がないので、集計から外します。9局目も、次の2局のうち1局しかないので、同じく外すか、1局だけで判定すると決めて、先に書いておきます。
実行率の出し方
勝ち局由来と負け局由来を別々に、次の式で計算します。
実行率 = 実行できた件数 ÷(実行できた件数 + できなかった件数)
「機会がなかった」は分母に入れません。たとえば「角を取られたあとの対応」に関する気づきは、次の2局で角を取られなければ試せません。試せなかったものを失敗に数えると、実行率が不当に下がります。
あわせて、次の3つも出します。
- 気づきの件数(勝ち局由来・負け局由来)
- 「機会がなかった」の割合
- 次の2局の勝敗が、直前の局と変わったかどうか
結果の読み方
結果は次の順で読みます。
- どちらかの群が5件未満なら、比較は参考程度にとどめます。 小さな標本では、1件の違いで実行率が大きく動きます。
- 実行率の差が気づき1〜2件分に収まるなら、差があるとは言えません。 たとえば一方が4件中3件、他方が4件中2件なら、1件の違いです。この程度は運や相手の癖の範囲で起こります。
- 差が大きければ、局面の特定の有無で分けて読み直します。 負け局由来の方が実行率が高くても、負け局の気づきの方が具体的だっただけかもしれません。「局面の特定:はい」だけで勝ち局と負け局を比べてみます。
- 差が残るなら、さらに色(黒/白)で分けます。 先手と後手では、同じ行動の機会が変わります。
読み取れる結論は三つに分かれます。
- 負け局由来の方が高く、局面を揃えても残る:負けの方が学びを行動に移しやすい可能性があります。
- 差が具体度で説明できる:勝敗ではなく、書き方の問題かもしれません。
- 差がほとんどない:勝敗に関係なく、行動に書き換えられた気づきが実行されている可能性があります。
どの場合も10局という少なさでは断定できません。次の10局でも同じ傾向が出るかを、続けて確かめるのが誠実です。
起こりやすい誤り
この分析はずれやすいので、次の落とし穴を先に確認しておきます。
- 勝った局の振り返りを省いてしまう。 負けた局に偏ると、勝ち局由来が0件になり、そもそも比べられません。時間と件数の上限を最初に決めておく理由はここにあります。
- 結果論で気づきを書く。 「あの手が悪かった」だけでは、次に何を変えるのかが決まりません。別の手を書いて、行動に落とします。
- 気づきを同時に直そうとする。 同じ対局で3つ以上を意識すると、どれが効いたか分かりません。次の2局で試す行動は、最大3件までにします。
- 後から判定の基準を動かす。 「だいたいできた」を実行に入れ始めると、数が合わなくなります。判定は「棋譜で確認できたか」だけで決めます。
- 記録を画面に頼る。 「潮目のオセロ」の記録は、画面を開いている間しか残りません。振り返りのメモは対局のたびに外へ書き写します。
オンライン対局を素材にする場合は、対戦履歴が残ることが案内されています。ただし、部屋や履歴は作成から一定期間で削除対象になります。棋譜を後から見返したいなら、早めに自分で手順を書き留めてください。履歴にどこまで残るかは、現在の案内で確認してください。オンラインでは、ヒントと一手戻すが使えません。ひとり対局とは条件が違うので、この分析ではどちらかに固定すると読みやすくなります。
次の行動
まず相手の段階を一つ決め、記録用の表を紙かメモアプリに作ります。1局目が終わったら、10分で時間を切って気づきを最大3件、数えられる行動の形に書いてください。10局分がそろったら、実行率を勝ち局由来と負け局由来に分けて出します。差が気づき1〜2件分に収まっているか、局面の特定を揃えても差が残るか。自分の記録で確認してみてください。


