「次に置ける場所の数」だけで手を選ぶと、どこまで勝てるか
遊びを見つける執筆にClaudeを使用しています。

オセロには「相手に置ける場所を与えない」という考え方があります。置ける場所の数を着手可能数といい、これが少ない側は選べる手が減って苦しくなる、という見方です。では、ほかの判断をいっさい捨ててこの数だけで指したら、どこまで通用するでしょうか。角も、石の数も、定石も見ず、毎手「着手後に相手が置ける場所が最も少なくなる手」を選び続けます。 この記事は、その結果を報告するものではありません。10局で確かめるための設計書です。対局相手は「潮目のオセロ」のひとり対局(3段階の相手)を想定しています。基準の決め方、数え方の練習問題、10局の配分、記録表、結果の読み方、起こりやすい誤りの順に進みます。読み終えたら、そのまま1局目を始められます。
基準を一文で決める
「次に置ける場所の数」には読み方が2通りあります。自分が次に置ける数と、自分が置いた直後に相手が置ける数です。混ぜると実験になりません。この記事では次の一文に固定します。
自分の合法手のうち、着手後に相手の合法手の数が最も少なくなる手を選ぶ。
合法手とは、ルール上置ける場所のことです。相手の石を挟んで1枚以上返せる空きマスだけが該当します。
同点の手が複数出たときの規則も、対局を始める前に決めます。後から決めると、都合のよい手を選べてしまうからです。たとえば次のように固定します。
- 同点なら、上の行にある手を選ぶ。
- 同じ行なら、左の列にある手を選ぶ。
座標は、この記事の中だけの約束として「列は左からa〜h、行は上から1〜8」とします。実際の作品の盤面表示は、開いて確かめてください。
対局中は、ヒントと「一手戻す」を使いません。ヒントは理由付きで手を教えてくれる機能ですが、基準以外の判断が入り込みます。「一手戻す」は、試し打ちで数えられてしまうと基準の手順が崩れます。どちらもひとり対局だけの機能なので、この実験では使わない、と決めておきます。
練習問題1:初手で相手の手数を数える
標準の開始局面を確認します。d4とe5が白、d5とe4が黒です。黒が先手で、黒の合法手は次の4つです。
- d3(d4の白を挟み、d5の黒につながる)
- c4(d4の白を挟み、e4の黒につながる)
- f5(e5の白を挟み、d5の黒につながる)
- e6(e5の白を挟み、e4の黒につながる)
問い: 黒がd3に置いた直後、白が置ける場所は何か所でしょうか。
考え方: d3に置くと、d4の白が黒に返ります。盤の上は、黒がd3・d4・d5・e4、白がe5だけです。白は黒を挟んで返せる場所に置けます。
- c3:南東へ進むとd4が黒、その先のe5が白なので返せます。
- e3:南へ進むとe4が黒、その先のe5が白なので返せます。
- c5:東へ進むとd5が黒、その先のe5が白なので返せます。
答え:3か所(c3、e3、c5)です。
c4、f5、e6に置いた場合も、白の合法手はどれも3か所です。開始局面は盤を回転・反転しても重なるので、4つの初手は形として同等です。試すなら、c4を打った場合の白の合法手を自分で数えてみてください。
つまり初手では、基準だけでは手が決まりません。ここで先に決めた同点規則の出番になり、黒番ならd3になります。基準の弱さというより、「基準が何も言わない局面がある」ことを最初に体験する問題です。
練習問題2:数え方を手順にする
初手以降は、局面を毎回頭の中で作るのは重いので、数え方を手順にします。
- 置く候補の手を1つ選ぶ。
- 8方向(縦・横・斜め)で返る石を確認し、頭の中で盤を更新する。
- 更新後の盤で、空きマスのうち「隣に自分の石があるマス」だけを候補にする。相手が置けるのは、相手の石を挟める位置に限られるためです。
- 候補マスごとに8方向を見て、自分の石を1枚以上挟んで相手の石に届くなら1と数える。
- 自分の全候補手について2〜4を繰り返し、最小のものを選ぶ。
問い: 自分の合法手が6つあるとき、相手の手数を数える作業は最大何回の盤面更新になるでしょうか。
答え: 6回です。候補手1つにつき1回、仮の盤を作ります。中盤は候補が多く、数えるだけで時間がかかります。紙とペンを使う、あるいは盤面を見ながら声に出して数えると、数え間違いを減らせます。
ここで大事なのは、数える対象を「相手の手数」に固定することです。自分の次の手数を数え始めると、基準が変わります。
練習問題3:手数がゼロになる手
問い: ある局面で、置くと相手の合法手がゼロになる手があったとします。基準に従うと、その手は最良でしょうか。
答え: 基準の文面どおりなら、ゼロは最小なので最良です。相手がパス(置ける場所がないとき手番を飛ばすこと)になり、自分が続けて打てます。
ただし、ゼロの手が実戦で本当に良いかは別の話です。この実験の目的は基準の限界を探ることなので、勝敗を見て手を変えず、機械的に選びます。局面ごとに「ここは基準が怪しい」と感じた場面を記録に残しておくと、後で読み返す材料になります。
「潮目のオセロ」は置けない手番を自動でパスにする仕様です。自分がパスになる局面でも、実験は止まりません。
10局の設計
相手の強さは3段階あります。1段階だけだと、基準そのものの強さと相手の弱さが区別できません。10局を次のように配ります。段階の名前は作品を開いて確かめ、弱い順に「下」「中」「上」と読み替えてください。
- 下、局数:3、自分が黒(先手):2、自分が白(後手):1
- 中、局数:4、自分が黒(先手):2、自分が白(後手):2
- 上、局数:3、自分が黒(先手):1、自分が白(後手):2
- 合計、局数:10、自分が黒(先手):5、自分が白(後手):5
黒と白をちょうど5局ずつにしているのは、先手と後手の差を実験に混ぜないためです。
記録は、1局につき1行で、次の項目を残します。
局 / 相手の段階 / 自分の色 / 最終石数(自分−相手) / 勝敗 / 同点で規則を使った手数 / 規則から外れた手数
「規則から外れた手数」は、できれば0にします。外れたら、その局は参考扱いにして、別の局を追加してください。
もう一つ、勝敗とは別に、局の途中で書き留めておく項目があります。
- 石数が初めて相手に逆転された手番。
- 四隅のどれかを相手が取った手番。
- 自分の合法手が2つ以下になった手番。
これらは1行のメモで十分です。後で原因を探すときの目印になります。
結果の読み方
10局の結果は、次のような形で読めます。あくまで判断のための目安で、数値の線引きは筆者が決めたものではなく、読者が自分で決める前提の例です。
- 下の相手に連勝して、中・上で負けが並ぶ場合。 基準は弱い相手には通用しても、相手が角などを使い始める段階で崩れる、と読めます。負けた局の「角を取られた手番」のメモを見て、基準が角を見落とした局面を探します。
- 全段階でおおむね勝ち負けが半々の場合。 基準が相手の強さに左右されにくい、と読めます。ただ、10局では偶然の幅が大きいので、断定せず、局数を増やして続けます。
- 段階が上がるほど負けが増える場合。 相手の強さに応じて弱点を突かれている、と読めます。負けの局で、自分の合法手が2つ以下になった手番が早いかを確認します。基準は相手の手数だけを見ているので、自分の手数が尽きる局面を見ない可能性があります。
もう一つ見てほしいのは、勝敗が分かれた局の「序盤・中盤・終盤」のどこで差がついたかです。序盤は石の数が少なく、基準が働きやすいかもしれません。一方、終盤は空きマスが減り、手数の数え方そのものが勝敗に直結する場面が増えます。この予想が当たるかどうかは、記録で確かめてください。
起こりやすい誤り
実験が崩れやすいところを挙げます。
- 数え間違い。 8方向のうち斜めを見落とすのが典型です。数えた結果が怪しいときは、同じ手を2回数えて一致を確かめます。
- 自分の手数と混ぜる。 練習問題2のとおり、数える対象は相手です。
- 同点規則の途中変更。 負けが続くと「この局だけ別の手を」と変えたくなります。変えた局は参考扱いにします。
- ヒントや一手戻すの使用。 前に述べたとおり、基準が崩れます。
- 10局で結論を出す。 偶然を完全には排除できません。結果は「今回の10局ではこう見えた」という範囲で扱います。
- 石数だけで負けを判断する。 終盤に大きく逆転する局もあります。途中で石数が少なくても、それ自体が悪いとは限りません。
次の行動
まず練習問題1の答えをもとに、同点規則と10局の配分を紙に書き出します。その上で「潮目のオセロ」のひとり対局を開き、下の相手と黒番で1局目を始めてください。10局終えたら、記録表と途中のメモを並べて、最初に負けた局の「手数が最小なのに悪かった手」を1つだけ探します。余力があれば、基準を「自分の石の数が最小になる手」などに変えて、同じ10局をもう一度試すと違いが見えます。


