ランダムにすれば面白くなる?運とプレイヤーの選択を分けて考える
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

ゲームに乱数を加えると、プレイヤーから「運だけじゃないか」と言われた経験はないだろうか。制作者の意図は「毎回違う展開を楽しんでほしい」だったのに、遊んだ側の感想は「結果をコントロールできない」になる。このすれ違いは、乱数そのものの問題ではなく、抽選の前後にどれだけ判断の余地があるかという設計の問題であることが多い。この記事では、運と選択を切り分けて考えるための視点と、試作で確かめるための手順を整理する。
この記事の目次
「運任せ」に感じられる構造を分解する
プレイヤーが「運任せだ」と感じるとき、そこには大きく二つのパターンがある。一つ目は、乱数の結果が出た後にできることが何もない場合だ。サイコロを振って、出た目の数だけ進む。プレイヤーがそこで取れる行動はゼロで、結果だけが積み上がっていく。二つ目は、判断の余地はあるのに乱数の振れ幅が大きすぎて、選択の影響が見えにくい場合だ。こちらはより厄介で、制作者は「判断できるようにした」と思っていても、遊んだ人には「何をしても同じに感じる」と映る。
この二つを混同したまま「乱数を減らせば解決する」と考えると、今度はゲームの展開が単調になる。乱数は問題の原因ではなく、問題が現れる場所だ。本当に問いたいのは、「この乱数はプレイヤーが関与できるタイミングの前にあるか、後にあるか」という位置の話になる。
抽選の「前」と「後」に判断を置く
乱数の位置を整理するには、「抽選の前に判断できるか」と「抽選の後に判断できるか」を別々に確認するのが早い。両方あれば、プレイヤーは運の結果を受け取りながらも工夫の手ごたえを持てる。どちらか一方だけでも設計の方向性は作れる。どちらもなければ、その乱数はゲームプレイではなくアニメーション演出に近い。
抽選の前に判断を置く例
カードゲームで「山札からカードを引く前に、手持ちのリソースをどのカードに使っておくか」を決める場面がこれにあたる。何が出るかはわからないが、どの状態で引くかはコントロールできる。抽選前の判断があると、プレイヤーは「最悪の目が出ても対応できる準備」「有利な結果をさらに伸ばすための布石」という二層の思考を持てる。
アソバースの「月夜の配達」は小包の配達順と経路を選ぶ純粋な経路パズルで、乱数要素のない決定論的な設計になっている。このような「抽選なしで事前の順序判断だけが問われる構造」は、乱数ありの設計と比較する対照例として役立つ。乱数を加える場合は、こうした判断の骨格を先に作り、そこへ不確定要素をどの位置で挟むかを決める手順が整理しやすい。
抽選の後に判断を置く例
サイコロを振った後、出た目の使い方を複数の選択肢から選べる場合がこれにあたる。同じ「3」が出ても、「3マス進む」「3ポイント消費して別のアクション」「相手に3のダメージ」のどれを選ぶかをプレイヤーが決めるなら、運の結果を素材として扱える。抽選後の判断は、悪い目が出た状況でも「じゃあこの使い方をしよう」という思考を生む。
前後どちらの判断を置くかは、ゲームのテンポや情報量にも影響する。抽選前の判断が多いと戦略的になる一方、展開が遅くなりやすい。抽選後の判断が多いと即興的な楽しさが増す一方、計画の価値が薄れることがある。どちらかが正解ではなく、作りたい体験に合わせて選ぶ。
乱数の振れ幅と、結果のフィードバック設計
「判断の余地はある」のに「運任せに感じる」第二のパターンに戻ろう。この原因の一つは、乱数の振れ幅が選択の影響を飲み込んでしまっていることだ。たとえば、プレイヤーが上手くリソースを温存しても、乱数で最悪の結果が出れば逆転する、というゲームは「頑張っても意味がない」と感じさせやすい。
もう一つの原因は、選択の結果が見えにくいことだ。プレイヤーが良い判断をして結果が出ても、その因果がはっきりしないと「たまたま良かっただけ」に見える。乱数があるゲームで選択の価値を伝えるには、良い判断が良い結果につながりやすい確率的な傾きと、その傾きをプレイヤーが体感できるフィードバックが両方必要になる。
たとえば「敵に攻撃が当たる確率60%」という設計があったとして、外れが3回続くとプレイヤーは「操作が悪かったのか、運が悪かったのか」を判断できなくなる。確率の傾きをプレイヤーが認識できるよう、「前回外れたら次の命中率が上がる」「当てる前に弱体化できる手段がある」といった補正や準備のしくみを置くと、選択の効果が体感として届きやすくなる。
試作で確かめるための手順
乱数と選択の関係は、頭の中だけで整理しようとしても限界がある。紙やスプレッドシートで動く最小の試作を作り、条件を固定して繰り返すことで、設計の問題が見えてくる。以下は確認のための手順の一例だ。
- 乱数を一箇所だけに絞った最小構成を作る。複数の乱数が絡むと「どの要素が体験を決めているか」が見えにくくなる。まず一箇所に絞って、判断の前後関係を整理する。
- 最良ケースと最悪ケースを固定して比較する。乱数を「常に最良値」「常に最悪値」に固定し、同じ判断をしたときの結果の差を確認する。差が大きすぎると判断の効果が薄れ、差がなさすぎると乱数の意味が消える。
- 「判断しない」バージョンと比較する。選択肢をすべてランダムにした場合と、最善の判断をし続けた場合を並べて走らせる。長期的に差がつくなら選択に意味がある。短期では差がついても逆転が頻繁なら「運任せ」に感じやすい。
- 判断の理由を声に出してもらう。試作を別の人に遊んでもらい、どこで何を考えたかを話してもらう。「特に何も考えなかった」という場面が多いなら、そこに判断の余地が届いていない可能性がある。一人で作っている場合は、1日置いてから自分で遊び直すと気づきやすい。
コードを書く前にカードやトークンで試せる構成が望ましい。実装後に「乱数の振れ幅が大きすぎた」と気づくと、数値調整だけで済む場合と、構造から見直す必要がある場合とに分かれる。前者は早く解決するが、後者は時間がかかる。
判断の余地を作る設計パターン三つ
乱数と選択を共存させる方法には、いくつかの典型的なパターンがある。どれが正解かではなく、自分のゲームの体験に近いものを起点に考えるための参考として整理する。
パターン1:複数の結果から選ぶ
乱数で3〜5個の選択肢を生成し、その中からどれを取るかをプレイヤーが選ぶ。何が出るかは運だが、何を選ぶかは判断だ。ローグライク系のゲームで広く使われているパターンで、「いまの状況に何が合うか」を考える楽しさが生まれる。すべての選択肢が均等に良いと選ぶ動機が薄れるため、トレードオフが見える選択肢にすることが重要になる。
パターン2:確率を資源で動かす
リソースを消費することで、ある結果が出る確率を上げる。「絶対に成功する」ではなく「成功しやすくなる」にすることで、リソースをいくら使うかという判断が生まれる。使いすぎると後半に余裕がなくなり、温存しすぎると序盤を安定させられない。このトレードオフが選択を意味のあるものにする。
パターン3:乱数を情報として使う
乱数の結果を「次の判断のための情報」として扱う設計だ。たとえば、ランダムに決まった天候イベントや敵の配置が提示され、プレイヤーはその状況を読んで対応を選ぶ。乱数は勝敗を直接決めるのではなく、プレイヤーの判断を引き出すトリガーとして機能する。抽選後の判断に重きを置くパターンに近いが、こちらは乱数の結果がゲームの状況そのものを変え、そこへの対応がプレイヤーの裁量になる点が特徴だ。
乱数を削る判断と、残す理由
試作を繰り返した結果、「この乱数はなくていい」と気づく場合がある。それは失敗ではなく設計の精度が上がったサインだ。乱数を削るべき状況と残す理由を整理しておくと、判断がしやすくなる。
- 削ることを検討する:乱数の結果に対してプレイヤーが取れる行動がない。乱数の振れ幅が選択の影響を常に上回る。何度遊んでも乱数の存在に気づかれない(演出に埋もれている)。
- 残す理由になる:毎回同じ最適解になることを防ぎ、プレイヤーに状況への適応を促す。感情的な緊張感を生む(成功するかどうかのスリル)。ゲームの再プレイ価値を作る(毎回展開が変わる)。
乱数がゲームに何を与えているかを言葉にできるなら、残す根拠がある。「なんとなく面白くなりそうだから」という理由で入れた乱数は、「なんとなく運任せに感じる」という感想の原因になりやすい。
もう一点、「完全に運を排除すれば良いゲームになる」という考え方も一方的だ。運の要素はプレイヤー間のスキル差を緩和し、初心者と経験者が同じ場で遊べる余地を作る。対人ゲームや教育向けのゲームでは、この効果が重要な役割を果たすことがある。乱数をどう設計するかは、誰に・どんな体験を届けたいかという問いに戻ってくる。
設計の確認を終えたら、投稿へ
乱数と選択の関係は、一度の試作で完全に解けることは少ない。「抽選の前後に判断があるか」「乱数の振れ幅が選択を飲み込んでいないか」「プレイヤーが自分の判断の手ごたえを感じられるか」という三つの問いを繰り返しながら、試作を小さく回すことが精度を上げる近道だ。
設計の方針が固まったゲームは、HTMLファイルやZIPの形式でアソバースに投稿できる。公開後に他のプレイヤーがどこで止まるか、どの選択肢を選ぶかを観察することも、次の設計の材料になる。運と工夫のバランスを確認したゲームを、ぜひ公開してみてほしい。



