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もし作者が遊び方を一切説明しなかったら

遊びを見つける

執筆にClaudeを使用しています。

四つの仕掛けを巡って元へ戻る、赤いビー玉の円形コース
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

ブラウザゲームを作って、投稿画面の「遊び方」欄を空のまま公開する場面を考えてみます。ゲームの中にも説明文はなく、開くと画面に何かが置かれているだけです。初めて開いた人は、最初の数秒で何をするでしょうか。クリックするのか、キーを押すのか、しばらく眺めて閉じてしまうのか。 この問いは「説明は必要か不要か」の二択では解けません。人は説明がなくても、画面の見た目、入力への反応、過去に遊んだ別のゲームの記憶を総動員して、遊び方を組み立てようとします。この記事では、その組み立てがどんな順序で進むのかを整理します。そのうえで、読者が自分の作品や公式作品を使って確かめられる観察の設計書までを示します。実際の観察結果は載せていません。答えは読者が人を観察して得る形にしています。

この記事の目次
  1. 説明ゼロでも、手がかりはゼロになりません
  2. 発見は「試す・見る・仮説・確かめる」で進みます
  3. 公式作品の設計から読み取れること
  4. 説明ゼロを自分で観察する設計書
  5. 説明を足すなら、どこにどれだけ
  6. 次の行動
  7. 参考資料

説明ゼロでも、手がかりはゼロになりません

作者が一言も説明していなくても、プレイヤーの手元には次のような手がかりが残っています。

  • 作品名と紹介の文脈:「潮だまり」という題名だけで、水辺の何かを観察するのだろうと予想が立ちます。
  • 画面上の見た目:ボタンらしい形、ドラッグできそうな物体、空いたマスなどが、操作の候補を示します。
  • 端末と入力装置:キーボードのある環境なら矢印キー、タッチ画面なら指でなぞる操作が、まず試されやすくなります。
  • 過去の経験:オセロ盤に似ていれば、盤の上をクリックするという記憶が働きます。
  • 最初の反応:何かを押したときに起きる変化が、最大の手がかりになります。

デザインの分野には、物が「どう使えるか」を見た目で示す考え方があります。ドナルド・ノーマンの著作で広まったアフォーダンスとシグニファイアという概念です。アフォーダンスは物が持つ操作の可能性、シグニファイアはそれを伝える合図を指します。この言葉を使うと、説明ゼロとは「合図を言葉ではなく、見た目と反応だけに任せる設計」だと言い換えられます。

ここで注意したいのは、アソバースの作品カバー画像です。公式作品のカバーは生成したアートワークで、ゲーム画面のスクリーンショットではありません。カバーから遊び方を読み取れるとは限らず、プレイヤーは作品を開いて初めて操作の候補に出会います。遊び方の発見は、作品が表示された瞬間から始まると考えるのが妥当です。

発見は「試す・見る・仮説・確かめる」で進みます

説明がない状況での学び方は、おおむね次の四つの段階に分けて考えられます。

  1. 試す:とりあえず何かを触ります。クリック、キー入力、ドラッグなどです。
  2. 反応を見る:画面に変化があったか、音が鳴ったか、何も起きなかったかを確認します。
  3. 仮説を立てる:「これを押すと光る」「ここに置くと何かが現れるかもしれない」と、頭の中で規則を作ります。
  4. 確かめる:同じ操作をもう一度やる、少し変えてやる、の二通りで仮説を検証します。

この循環が一周するのに必要なのは、反応が見えることと、同じ操作が同じ反応を返すことです。反応が大きすぎても小さすぎても、仮説は立ちにくくなります。何を押しても同じ変化が起きれば、操作と結果の対応が見えません。逆に、反応が数秒遅れると、どの操作の結果なのかがわからなくなります。

失敗の扱いも発見の速度を左右します。やり直しが重い作品では、プレイヤーは試すこと自体を避けます。取り消しがすぐできる作品では、「とりあえず触ってみる」ことが安全になります。説明を省く設計は、試行のコストを下げる仕掛けとセットで成り立つと考えられます。

もう一つ、説明がない作品でよく起きるのが、仮説の誤りの固定です。たとえば「この丸は押せない飾りだ」と一度判断すると、実際は押せるのに二度と触らなくなります。誤りが固定されるのは、最初の反応が小さかったときです。作者側から見ると、一番大事なのは最初の一回の反応だとわかります。

公式作品の設計から読み取れること

アソバースの公式作品の確認済みの仕様から、説明に頼りすぎない設計の例を三つ拾ってみます。ここで書くのは仕様から読み取れる範囲です。開発の経緯や意図は、ここでは扱いません。

潮だまり:置く、切り替える、現れるの因果

「潮だまり」では、引き潮の浅瀬に海藻を3つ、砂地に小石を2つ置き、潮を切り替えて観察します。上下左右の隣接条件によって、イソギンチャクからタツノオトシゴまで8種の生きものが現れる仕組みです。絵付きの図鑑と観察ノートもあります。

設計から読み取れるのは、「置く→切り替える→現れる」という因果が短い手数で一巡することです。手数が少ないほど、先ほどの四段階の循環は速く回ります。図鑑とノートは、現れたものを後から見返せる記録として働くと考えられます。最初の画面にどんな案内が出るか、どの操作から始めるのが自然かは、作品を開いて確かめてください。

紙ひこうき郵便:入口が複数ある操縦

「紙ひこうき郵便」の操縦は、左右キー、ドラッグ、矢印ボタンのいずれでも行えます。キーボードの人もタッチ画面の人も、手持ちの入力方法から入れる設計です。風船にぶつかると紙が傷み、3回で終了します。失敗が回数として区切られているので、何が起きれば危険なのかを、少しずつ学べる形です。

ここから言えるのは、入力方法を一つに絞らないことが、説明の代わりに働く場合があるということです。最初に「どの操作が正解か」を探す負担が減ります。なお、画面にどんな表示が出るかは確認済み事項にないので、実際に開いて確かめてください。

余白の庭:やり直しがきく試行

「余白の庭」には時間制限がなく、戻す/やり直す(Z/Y)があり、置けるのは最大80個です。木、石、草、花、池、灯りを置いて、移動や大きさの調整もできます。時間制限がなく、取り消しも用意されているため、試して失敗することの重さが小さい設計だと読めます。試行が軽ければ、プレイヤーは自分で操作を探せます。

三つに共通するのは、説明文を削ったのではなく、発見を支える別の仕組みを置いている点です。反応の速さ、入口の多さ、やり直しやすさといった仕組みです。

説明ゼロを自分で観察する設計書

では、自分の作品や気になる作品で、遊び方がどう発見されるかを確かめる手順を示します。人の行動を観察する方法には、操作しながら考えを声に出してもらう「発話思考法」という一般的な手法があります。ここではそれを小さく使います。

問いと準備

問いは「説明なしで、初めての人は何をきっかけに、どの順番で遊び方を見つけるか」です。準備するものは次のとおりです。

  • 観察する作品(自作でも公式作品でも構いません)
  • 作品をまだ遊んだことのない人を3〜5人
  • 画面を録画できる環境、または時計とメモ
  • 作品を開く以外の説明をしないという約束

観察は1人1回、10分程度を目安に区切ります。人数は少なくても傾向は見えますが、数が少ないので、割合を数字で語るのは避けてください。

手順と記録

  1. 作品を開いた状態で画面を渡し、「自由に遊んでください。わからなくても質問には答えません」と伝えます。
  2. 観察者は口を挟まず、見ているだけにします。
  3. 次の項目を、人ごとに記録します。
  • 作品が表示されてから、最初の操作までの秒数
  • 最初の操作の種類(クリック、キー、ドラッグ、何もしないなど)
  • 「あ、動いた」「これか」のように、本人が何かに気づいた発言とその時刻
  • 10秒以上操作が止まった場所
  • 途中で言葉にした予想(「これは○○だと思う」)と、後でそれが当たったかどうか
  • やめた時点と、そのときの本人の言葉
  1. 終わったら一つだけ質問します。「このゲームは何をするものだと思いましたか」。ここで「どこが分かりにくかったですか」と聞くと、答えを誘導してしまいます。

結果の読み方

  • 最初の操作が人によって違う場合は、手がかりが複数あるということです。どれが当たりでも反応が返るなら、入口は健全です。
  • 全員が同じ場所で止まる場合は、作品側の合図が足りません。個人差では説明がつきません。
  • 最初の操作の後、反応に気づくまで時間がかかる場合は、反応が小さい、または遅いと考えられます。
  • 予想が外れても続けた人が多い場合は、試行の失敗が重くない設計だと読めます。
  • 最後の質問の答えが作者の意図と大きく違う場合は、作品の主旨が伝わっていません。遊び方だけでなく、目的の見せ方の問題かもしれません。

起こりやすい誤り

  • つい口を出してしまうことです。ひと言のヒントで、観察全体が説明ありに変わります。
  • 作者本人が「簡単だった」と言う人を観察に選ぶことです。作者の知人は、作品の癖に先に慣れている可能性があります。
  • 一度の観察で結論を出すことです。気になる箇所を直したら、別の人でもう一度確かめます。
  • 離脱を失敗と決めつけることです。理由が「わからなかった」なのか「興味が湧かなかった」なのかは、最後の質問と発言の記録で分けて読みます。

説明を足すなら、どこにどれだけ

観察の結果、足りない合図が見つかったとき、全部を説明文に戻す必要はありません。軽い順に、次のような手段が考えられます。

  1. 反応を大きく、早くする(音、色の変化、動き)
  2. 操作できる物の見た目を整える
  3. 最初に一つだけ、動かせる物を目立たせる
  4. 短い一文を画面内に置く
  5. 遊び方を別画面に分ける

アソバースの投稿画面にある「遊び方・最大参加人数」は任意の作者申告で、共通対戦を有効にする機能ではありません。また「紹介文と遊び方を作成」は、公開済みURLまたは本人の検証済みアップロードを読み取って下書きを作る機能で、「この文章を使う」を押した場合だけ反映されます。説明を書く場所は用意されていますが、必須ではありません。観察の結果、どうしても伝わらない部分だけを短く書くという使い方もできます。

次の行動

自作でも公式作品でもよいので、1本を選び、まだ遊んだことのない人を3人見つけて、上の手順で最初の操作までの秒数と詰まった場所を記録してみてください。公式作品なら、「潮だまり」「紙ひこうき郵便」「余白の庭」のどれかを使えば、説明に頼らない設計の違いも見比べられます。

参考資料

  • ドナルド・A・ノーマン『誰のためのデザイン?』(アフォーダンス、シグニファイアの考え方)
  • 発話思考法(ユーザビリティ評価で一般に使われる観察手法)