もし画面が見えないままゲームを作るとしたら
遊びを見つける執筆にClaudeを使用しています。

画面を見ないでゲームを遊ぶ場面を考えてみます。目を閉じて音だけを頼りにする人がいます。画面が見えにくい人がいます。画面を伏せたまま、手元の振動と音で遊ぶ場面も考えられます。そのとき作る側は、ゲームに何が残るのかを決めなければなりません。 この記事の問いは、見た目を足す方向ではなく、見た目を引いたときに遊びの何が残るかです。引き算をすると、画面が黙ってこなしていた仕事が見えてきます。その仕事を音と振動にどう引き継ぐかを、設計の言葉で整理します。最後には、作った試作を自分で確かめるための手順も示します。結果そのものは書きません。確かめるのは読者です。
画面が担っていた仕事を棚卸しする
最初にやるのは、画面が何をしていたかの一覧づくりです。ふだんのゲームでは、画面が次の五つを同時にこなしています。
- 状態を見せる、例:残り回数、得点、今のラウンド、画面なしで問われること:いつ、どの程度の頻度で知らせるか
- 選択肢を見せる、例:ボタン、盤面の合法手、画面なしで問われること:選べるものをどう並べて聞かせるか
- 操作を受け止めたと伝える、例:ボタンが沈む、色が変わる、画面なしで問われること:押した瞬間に何が返るか
- 結果を伝える、例:成功、失敗、クリア、画面なしで問われること:成功と失敗をどう聞き分けさせるか
- 位置関係を伝える、例:自分と目標の距離、画面なしで問われること:空間をどの音の変化で表すか
画面は、これらを一目で並べて見せられます。目は複数の情報を同時に拾えるからです。音は時間の中を流れていきます。聞き逃した情報は、聞き返さない限り戻ってきません。ここが、画面なしの設計でもっとも大きな違いです。
この違いから、設計の原則がひとつ出てきます。情報を減らし、順番に出し、聞き返せるようにすることです。同時に鳴らす情報が増えるほど、聞き分けは難しくなります。一度に伝える情報は一つか二つに絞るのが無難です。
音と振動に役割を分ける
音と振動は、同じ「画面の代わり」でも得意なことが違います。
音で伝えやすいのは、次のようなものです。
- 高さ:高い・低いで、大小や段階を表せます。
- 音色:楽器や質感の違いで、種類を区別できます。
- 左右の位置:ステレオの定位で、方向を表せます。ブラウザでは Web Audio API のパン機能が使えます。
- リズムと間:テンポや間隔で、緊張感や残り時間を表せます。
振動で伝えやすいのは、短い確認です。「押した」「失敗した」といった一瞬の合図には向いています。一方で、振動は区別できる種類が少なく、細かな情報は載せにくい手段です。
もう一つ、実装上の注意があります。ブラウザの振動機能(Vibration API)は、端末やブラウザによって使えないことがあります。アソバースの作品はsandbox付きのiframeで動くため、その中で振動が働くかどうかも、実機で確かめる必要があります。この記事では働くかどうかを断定しません。
この前提から、役割分担の方針が決まります。音だけで遊びが完結するようにして、振動は「あれば分かりやすくなる補助」に置きます。振動を必須にすると、使えない端末で遊べなくなってしまいます。
音には、ブラウザ側の制約もあります。一般に、ブラウザはページを開いただけでは音を出させず、タップやキー入力などの操作の後に出すことを求めます。画面が見えない人にとっては、「何を押せば始まるのか」がわかりにくい場面です。開始の操作は、画面全体のタップかEnterキーなど、探さずに押せるものにするのが安全です。
向く題材と向かない題材
画面を引いても成立しやすいのは、情報が時間の流れに沿っている遊びです。
- お手本を聞いて返す記憶遊び:音の列を聞き、同じ列を返します。もともと音が主役です。
- リズムに合わせるタイミング遊び:拍を聞き、合わせて押します。
- 音源に近づく探索:音が大きくなる、高くなる、左右に寄るといった変化を手がかりに、見えない目標へ近づきます。
反対に向きにくいのは、全体を一度に見渡す必要がある遊びです。オセロやチェスのような盤面ゲームでは、64マスの配置を頭に持ち続ける必要があります。音で毎手読み上げると、情報量が重くなりすぎます。盤面を音で伝えようとするなら、「いまの手」「取られた駒」「合法手の数」など、聞きたい部分だけを呼び出せる設計が要るでしょう。
公式作品から読み取れる範囲では、「こだまの森」が参考になります。光る葉の順番を覚え、4つの音色で返す記憶ゲームです。聴き直し(15点減)、間違い(30点減、3回で終了)、一時停止があり、音なしでも遊べます。ここから読み取れるのは、聞き返しを無料にせずコストをつけて、記憶のゲーム性を保つ設計です。ただし、画面を見ずに遊べるかどうかは、確認済みの情報にはありません。この点は、作品を開いて自分で確かめてください。「音なしでも遊べる」は、今回の問いとは逆の方向の配慮です。画面を引く設計では、同じように音を引いたときの話ではなく、音を主役にしたときの話になります。
仮の設計案「暗闇のこだま」
ここまでの考えを、小さな設計案にまとめます。これは説明用の架空の案で、実在する作品ではありません。
遊びの骨格
- 音の高さは低・中・高の3種類。それぞれ画面の左・中央・右に対応させます。
- 最初にお手本として、音を2つ鳴らします。
- プレイヤーは、同じ順番で左・中央・右の領域をタップするか、キーで返します。
- 正解するたびに、お手本が1音ずつ長くなります。
音と振動の割り当て
- 入力の確認:押した瞬間に、その位置の音を短く返します。画面の見た目には頼りません。
- 成功:ラウンド終わりに、上がっていく短い音。
- 失敗:低く短い音に、あれば短い振動を添えます。振動がなくても失敗は伝わります。
- 聞き返し:専用の操作で、お手本をもう一度鳴らします。回数に上限か点数上の代償をつけます。
- 一時停止:音が止まり、再開時に「再開します」と音で知らせます。
やってはいけないこと
- 入力したのに、何も返ってこない無音の時間を作る。
- 成功と失敗を、似た音色で鳴らす。
- 説明を長い音声やテキストにだけ頼る。
この案で大事なのは、入力確認音です。画面なしでは、押せたのか押せていないのかがわかりません。押した瞬間に必ず音が返ることが、遊びの信頼の土台になります。
自分で確かめる手順
設計案ができたら、確かめる段階です。作者本人は仕組みを知っているため、本人の感想では判断できません。次の形で確かめます。
準備するもの
- 試作品(画面を隠せるもの)
- 試遊に協力してくれる人(2〜3人。無理のない範囲で、同意を得てください)
- 記録用の紙
手順
- 試遊者に、画面を伏せるか目を閉じてもらいます。説明は「音が鳴ったら返してください」程度にとどめます。
- 最初の1分は、助言をせずに見守ります。
- 1人あたり3回遊んでもらいます。
- 各回で、次を記録します。
- 始め方を迷った時間(何秒か)
- 聞き返しの回数
- ミスの回数
- 「押したつもりなのに反応がなかった」と言った回数
- 遊び終えたあと、成功音と失敗音を聞き分けられたかを尋ねます。
結果の読み方
- 始め方で迷う人が多ければ、開始の合図の設計を見直します。
- 聞き返しが毎回多ければ、お手本が長すぎるか、音の差が小さすぎます。
- ミスの原因が「左右を取り違えた」に偏れば、定位の差を大きくするか、高さの差も併用します。
- 1回目より3回目でミスが減るなら、学習の余地があります。ずっと同じなら、聞き分けそのものが難しい可能性があります。
起こりやすい誤り
- 作者自身を試遊者にして、「簡単だった」と結論づけること。
- 人数が少ないのに、数字の平均で語ること。傾向を見る程度にとどめます。
- 画面を伏せた試遊を、画面が見えない人の体験と同一視すること。目を閉じて遊ぶことと、日常的に画面なしで暮らしていることは同じではありません。
最後の点は特に重要です。画面を隠した試遊は、設計の粗を見つける入口にはなります。しかし、当事者の使い方や困りごとの代わりにはなりません。
次の行動
まず、手元の小さな遊びを一つ選び、「画面が果たしている五つの仕事」のうち、どれが音だけで置き換えられるかを書き出してみてください。そのうえで、試遊の手順を一回分だけ実行します。当事者の意見を聞ける機会があれば、それが最も確かな手がかりになります。
参考資料
- W3C「Web Content Accessibility Guidelines (WCAG)」
- MDN Web Docs「Vibration API」
- MDN Web Docs「Web Audio API」

