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もし画面が見えないままゲームを作るとしたら

遊びを見つける

執筆にClaudeを使用しています。

定番の盤面に一つだけ赤い通り道を加え、選択が変わる様子を描いた版画風イラスト。
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

画面を見ないでゲームを遊ぶ場面を考えてみます。目を閉じて音だけを頼りにする人がいます。画面が見えにくい人がいます。画面を伏せたまま、手元の振動と音で遊ぶ場面も考えられます。そのとき作る側は、ゲームに何が残るのかを決めなければなりません。 この記事の問いは、見た目を足す方向ではなく、見た目を引いたときに遊びの何が残るかです。引き算をすると、画面が黙ってこなしていた仕事が見えてきます。その仕事を音と振動にどう引き継ぐかを、設計の言葉で整理します。最後には、作った試作を自分で確かめるための手順も示します。結果そのものは書きません。確かめるのは読者です。

この記事の目次
  1. 画面が担っていた仕事を棚卸しする
  2. 音と振動に役割を分ける
  3. 向く題材と向かない題材
  4. 仮の設計案「暗闇のこだま」
  5. 自分で確かめる手順
  6. 次の行動
  7. 参考資料

画面が担っていた仕事を棚卸しする

最初にやるのは、画面が何をしていたかの一覧づくりです。ふだんのゲームでは、画面が次の五つを同時にこなしています。

  • 状態を見せる、例:残り回数、得点、今のラウンド、画面なしで問われること:いつ、どの程度の頻度で知らせるか
  • 選択肢を見せる、例:ボタン、盤面の合法手、画面なしで問われること:選べるものをどう並べて聞かせるか
  • 操作を受け止めたと伝える、例:ボタンが沈む、色が変わる、画面なしで問われること:押した瞬間に何が返るか
  • 結果を伝える、例:成功、失敗、クリア、画面なしで問われること:成功と失敗をどう聞き分けさせるか
  • 位置関係を伝える、例:自分と目標の距離、画面なしで問われること:空間をどの音の変化で表すか

画面は、これらを一目で並べて見せられます。目は複数の情報を同時に拾えるからです。音は時間の中を流れていきます。聞き逃した情報は、聞き返さない限り戻ってきません。ここが、画面なしの設計でもっとも大きな違いです。

この違いから、設計の原則がひとつ出てきます。情報を減らし、順番に出し、聞き返せるようにすることです。同時に鳴らす情報が増えるほど、聞き分けは難しくなります。一度に伝える情報は一つか二つに絞るのが無難です。

音と振動に役割を分ける

音と振動は、同じ「画面の代わり」でも得意なことが違います。

音で伝えやすいのは、次のようなものです。

  • 高さ:高い・低いで、大小や段階を表せます。
  • 音色:楽器や質感の違いで、種類を区別できます。
  • 左右の位置:ステレオの定位で、方向を表せます。ブラウザでは Web Audio API のパン機能が使えます。
  • リズムと間:テンポや間隔で、緊張感や残り時間を表せます。

振動で伝えやすいのは、短い確認です。「押した」「失敗した」といった一瞬の合図には向いています。一方で、振動は区別できる種類が少なく、細かな情報は載せにくい手段です。

もう一つ、実装上の注意があります。ブラウザの振動機能(Vibration API)は、端末やブラウザによって使えないことがあります。アソバースの作品はsandbox付きのiframeで動くため、その中で振動が働くかどうかも、実機で確かめる必要があります。この記事では働くかどうかを断定しません。

この前提から、役割分担の方針が決まります。音だけで遊びが完結するようにして、振動は「あれば分かりやすくなる補助」に置きます。振動を必須にすると、使えない端末で遊べなくなってしまいます。

音には、ブラウザ側の制約もあります。一般に、ブラウザはページを開いただけでは音を出させず、タップやキー入力などの操作の後に出すことを求めます。画面が見えない人にとっては、「何を押せば始まるのか」がわかりにくい場面です。開始の操作は、画面全体のタップかEnterキーなど、探さずに押せるものにするのが安全です。

向く題材と向かない題材

画面を引いても成立しやすいのは、情報が時間の流れに沿っている遊びです。

  • お手本を聞いて返す記憶遊び:音の列を聞き、同じ列を返します。もともと音が主役です。
  • リズムに合わせるタイミング遊び:拍を聞き、合わせて押します。
  • 音源に近づく探索:音が大きくなる、高くなる、左右に寄るといった変化を手がかりに、見えない目標へ近づきます。

反対に向きにくいのは、全体を一度に見渡す必要がある遊びです。オセロやチェスのような盤面ゲームでは、64マスの配置を頭に持ち続ける必要があります。音で毎手読み上げると、情報量が重くなりすぎます。盤面を音で伝えようとするなら、「いまの手」「取られた駒」「合法手の数」など、聞きたい部分だけを呼び出せる設計が要るでしょう。

公式作品から読み取れる範囲では、「こだまの森」が参考になります。光る葉の順番を覚え、4つの音色で返す記憶ゲームです。聴き直し(15点減)、間違い(30点減、3回で終了)、一時停止があり、音なしでも遊べます。ここから読み取れるのは、聞き返しを無料にせずコストをつけて、記憶のゲーム性を保つ設計です。ただし、画面を見ずに遊べるかどうかは、確認済みの情報にはありません。この点は、作品を開いて自分で確かめてください。「音なしでも遊べる」は、今回の問いとは逆の方向の配慮です。画面を引く設計では、同じように音を引いたときの話ではなく、音を主役にしたときの話になります。

仮の設計案「暗闇のこだま」

ここまでの考えを、小さな設計案にまとめます。これは説明用の架空の案で、実在する作品ではありません。

遊びの骨格

  • 音の高さは低・中・高の3種類。それぞれ画面の左・中央・右に対応させます。
  • 最初にお手本として、音を2つ鳴らします。
  • プレイヤーは、同じ順番で左・中央・右の領域をタップするか、キーで返します。
  • 正解するたびに、お手本が1音ずつ長くなります。

音と振動の割り当て

  • 入力の確認:押した瞬間に、その位置の音を短く返します。画面の見た目には頼りません。
  • 成功:ラウンド終わりに、上がっていく短い音。
  • 失敗:低く短い音に、あれば短い振動を添えます。振動がなくても失敗は伝わります。
  • 聞き返し:専用の操作で、お手本をもう一度鳴らします。回数に上限か点数上の代償をつけます。
  • 一時停止:音が止まり、再開時に「再開します」と音で知らせます。

やってはいけないこと

  • 入力したのに、何も返ってこない無音の時間を作る。
  • 成功と失敗を、似た音色で鳴らす。
  • 説明を長い音声やテキストにだけ頼る。

この案で大事なのは、入力確認音です。画面なしでは、押せたのか押せていないのかがわかりません。押した瞬間に必ず音が返ることが、遊びの信頼の土台になります。

自分で確かめる手順

設計案ができたら、確かめる段階です。作者本人は仕組みを知っているため、本人の感想では判断できません。次の形で確かめます。

準備するもの

  • 試作品(画面を隠せるもの)
  • 試遊に協力してくれる人(2〜3人。無理のない範囲で、同意を得てください)
  • 記録用の紙

手順

  1. 試遊者に、画面を伏せるか目を閉じてもらいます。説明は「音が鳴ったら返してください」程度にとどめます。
  2. 最初の1分は、助言をせずに見守ります。
  3. 1人あたり3回遊んでもらいます。
  4. 各回で、次を記録します。
  • 始め方を迷った時間(何秒か)
  • 聞き返しの回数
  • ミスの回数
  • 「押したつもりなのに反応がなかった」と言った回数
  1. 遊び終えたあと、成功音と失敗音を聞き分けられたかを尋ねます。

結果の読み方

  • 始め方で迷う人が多ければ、開始の合図の設計を見直します。
  • 聞き返しが毎回多ければ、お手本が長すぎるか、音の差が小さすぎます。
  • ミスの原因が「左右を取り違えた」に偏れば、定位の差を大きくするか、高さの差も併用します。
  • 1回目より3回目でミスが減るなら、学習の余地があります。ずっと同じなら、聞き分けそのものが難しい可能性があります。

起こりやすい誤り

  • 作者自身を試遊者にして、「簡単だった」と結論づけること。
  • 人数が少ないのに、数字の平均で語ること。傾向を見る程度にとどめます。
  • 画面を伏せた試遊を、画面が見えない人の体験と同一視すること。目を閉じて遊ぶことと、日常的に画面なしで暮らしていることは同じではありません。

最後の点は特に重要です。画面を隠した試遊は、設計の粗を見つける入口にはなります。しかし、当事者の使い方や困りごとの代わりにはなりません。

次の行動

まず、手元の小さな遊びを一つ選び、「画面が果たしている五つの仕事」のうち、どれが音だけで置き換えられるかを書き出してみてください。そのうえで、試遊の手順を一回分だけ実行します。当事者の意見を聞ける機会があれば、それが最も確かな手がかりになります。

参考資料

  • W3C「Web Content Accessibility Guidelines (WCAG)」
  • MDN Web Docs「Vibration API」
  • MDN Web Docs「Web Audio API」