作品の更新で遊び方が変わったとき、プレイヤーに何を伝えるか
遊びを見つける執筆にClaudeを使用しています。

架空の作品「橋渡しパズル」(この記事のために考えた架空の作品です)で、作者がジャンプの高さを少し低くする更新をした場面を考えてみます。作者としては、難しすぎる面を直したつもりです。ところが更新後に遊んだ人が「前より飛べなくなった」「前のクリア方法が使えない」と感じ、何が起きたのか分からないまま離れてしまうかもしれません。 プレイヤーが最初に知りたいのは、変更の理由よりも「自分の遊び方は通用するのか」「これまでの進行や記録はどうなるのか」です。更新の告知は、この二つに答えられて初めて役に立ちます。ところが作者の頭の中では「直した」という事実が先に立つので、数値の羅列や「バランス調整を行いました」の一行で済ませてしまいがちです。 この記事では、変更の中身の分け方、告知に入れる項目、あとから必ず困る「旧版の情報」の残し方、保存データの扱い、告知を自分で点検する手順を順に確かめます。旧版の情報は、更新した作者本人にも見えにくくなる部分です。
変更は「操作・数値・記録」の三つに分けて考える
更新内容を並べる前に、変更を次の三つに仕分けると、プレイヤーへの影響の大きさが見えてきます。
- 操作やルールの変更:ボタンの割り当て、できる動作が増える・減る、勝ち負けの条件が変わる。プレイヤーが体で覚えた遊び方そのものに影響します。
- 数値や難度の変更:ジャンプの高さ、制限時間、敵の速さ、ヒントの回数。遊び方の形は同じでも、同じ手順が通用するかどうかが変わります。
- 記録や保存の変更:スコアの計算式、ステージ数、保存データの形式。過去の成果の意味が変わるので、プレイヤーの「積み上げ」に影響します。
橋渡しパズルの例では、ジャンプ高さの変更は二番目の「数値」に見えます。しかし、旧版では届いた足場に届かなくなるなら、実質的には「これまでの解き方が使えない」という一番目の変更です。作者の分類とプレイヤーの体感がずれるのは、このようなときです。
仕分けのコツは、「更新前に覚えた操作や手順を、そのまま使うプレイヤーを想像する」ことです。その人が失敗する箇所があれば、その変更は小さな調整ではなく、告知の先頭に置くべき変更です。
告知に入れる五つの項目
告知文に必要な項目は、次の五つに絞れます。長い文章は要りません。五つがそろっているかが大切です。
- 何が変わったか:「ジャンプの高さが約2割低くなりました」のように、プレイヤーが体感できる言葉で書きます。内部の変数名は不要です。
- なぜ変えたか:一文で十分です。「最初の面で多くの人が止まっていたため」のように、理由があると納得されやすくなります。ただし、実際に計測していない「多くの人が」を事実のように書いてはいけません。根拠がない場合は「作者の判断で」と正直に書くほうが信頼されます。
- いつから変わったか:更新日を書きます。レビューや感想を読む人が、更新前の感想か後の感想かを見分けるためにも必要です。
- 自分の進行と記録はどうなるか:続きから遊べるのか、記録は残るのか、記録は新版と同じ条件で比べられるのか。ここが空欄の告知は、プレイヤーの一番の不安を放置しています。
- 旧版ではどうだったか:後述するとおり、旧版の挙動を一行でも残しておくと、更新前の攻略情報や感想を読み解けます。
文面の例を、架空の作品で示します。
【更新のお知らせ】橋渡しパズル(架空の作品です)日付:更新日を記載変更点:ジャンプの高さを低くしました。旧版では届いた3面の右端の足場には、ジャンプだけでは届かなくなりました。理由:作者の判断で、最初の数面の難しさをそろえるためです。進行:ステージの進行はそのまま続きから遊べます。記録:最短時間は旧版の記録と条件が違うため、新版の記録として別に扱います。
最後の一行のように、「記録の条件が違う」ことを明言するだけで、比較の混乱の大半は防げます。
残すべき旧版の情報
更新すると、旧版は画面から消えます。公開内容を更新できる仕組みの上では、更新前の姿は作者の手元にしか残りません。アソバースの案内で、旧版を並べて公開し続ける機能は確認されていないので、残すなら自分で残す必要があります。
残しておくと役に立つ情報は、次のとおりです。
- 旧版の遊び方、理由:更新前の攻略や感想を正しく読み取れる、残し方の例:告知文の「旧版では〜」の一行
- 旧版で出た記録の条件、理由:新旧の記録を同じ物差しで比べないため、残し方の例:記録に版の名前を付ける
- 保存データの版、理由:古い保存を壊さず新しい形式へ移すため、残し方の例:保存内容に version を持たせる
- 旧版一式のファイル、理由:不具合の切り分けや、元に戻す判断のため、残し方の例:作者の手元に日付付きで保管
旧版の情報が大切になる理由の一つは、評価や感想が時間をまたぐことです。たとえばレビューの平均は、更新前に書かれたレビューも含んで計算される可能性があります。「難しすぎる」という過去のレビューが、更新後の作品にそのまま残っているかもしれません。レビューは本人が編集・削除できるので、作者が書き換えを求めることはできませんが、更新日を告知に明記しておけば、読む人が自分で時期を判断できます。
もう一つは、記録の意味です。公式作品を見ると、「小さな軌道」の最速記録はプレイ中だけの記録で、「かたちのあいだ」は保存があります。記録が画面を開いている間だけなら、更新をまたいで古い記録が残ることはほぼなく、比較の問題は起きにくい設計です。一方、保存がある作品では、更新前の成果が新版にも持ち込まれます。保存がある作品ほど、旧版の記録の扱いを告知に書く責任が重くなります。
この違いは、作品の設計から読み取れることです。自分の作品が記録をどこに持つのかによって、告知の重点が変わります。
保存データと記録を壊さない
アソバースの公式作品13本では、古い保存(version1)を新しい形式(version2)へ移行すると案内されています。版を番号で持っておけば、更新のたびに「古い形式なら変換する」と判断できます。これは投稿する作品でも使える考え方です。
次は、保存内容の版を見て移行する最小のコードです。保存場所そのものには触れず、データを受け取って返すだけの関数にしてあります。
// 保存内容を新しい形式(version 2)へ移行する
function fresh() {
return { version: 2, stage: 1, best: { time: null, rules: "新版" }, notes: [] };
}
function migrate(data) {
if (!data || typeof data !== "object") return fresh();
if (data.version === 1) {
return {
version: 2,
stage: data.stage ?? 1,
// 旧版の記録は「旧版」と印を付けて残す
best: { time: data.bestTime ?? null, rules: "旧版" },
notes: ["version1から移行"]
};
}
if (data.version === 2) return data;
// 未知の版は変換せず、呼び出し側が上書きしないよう null を返す
return null;
}
console.log(migrate({ version: 1, stage: 4, bestTime: 52.3 }));
console.log(migrate({ version: 2, stage: 2, best: { time: 40, rules: "新版" }, notes: [] }));
console.log(migrate({ version: 9 }));
console.log(migrate(null));押さえたい点は三つあります。
- 旧版の記録に rules: "旧版" の印を付けています。新版の記録と並べて「自己ベスト更新」と表示してしまうと、条件が違うのにプレイヤーを誤解させます。印があれば、表示側で「旧版の記録」と分けて出せます。
- 未知の版は null を返し、勝手に初期化しません。初期化して上書き保存すると、プレイヤーの進行を消す事故になります。
- 保存内容は、プレイヤーの成果そのものです。移行処理を書いたら、古い形式のデータを手で作って通る確認をしてから公開すると安心です。
なお、アソバースにアップロードした作品内の localStorage や sessionStorage は、一時メモリーの互換処理だと案内されています。保存を永続させたい場合は、SDKを使ったクラウドセーブ(作品ごとにJSONで128KiBまで)が選択肢になります。具体的な使い方は、現在の案内で確認してください。
告知を自分で点検する手順
告知文は、書いた本人には必ず分かるように読めてしまいます。そこで、更新前の作品しか知らない人の立場で読み直す手順を試します。
準備するもの:更新前の遊び方を記した短いメモ(3行程度)、書き上げた告知文、紙とペン。
手順:
- 告知文だけを読み、次の五つの問いに、作品を開かずに答えを書き出します。
- 何が変わりましたか。
- 旧版で通用した操作や手順のうち、使えなくなったものはありますか。
- 自分の進行は続きから遊べますか。
- 自分の記録は、新版の記録と比べてよいですか。
- 更新前の感想は、いつの時点のものか分かりますか。
- 答えが出なかった問いに印を付けます。
- 印の付いた問いについて、告知に一文足します。
- 可能なら、作品を知らない家族や友人に告知文だけを読んでもらい、同じ五つの問いに答えてもらいます。
結果の読み方:五つとも迷わず答えられれば、告知は足りています。「進行」と「記録」の二つで迷いが出る場合が多いはずです。そこが、告知文に最も足りない部分です。答えが人によってばらつく問いは、文章が曖昧な箇所です。
起こりやすい誤り:
- 「バランス調整」「各種改善」のように、読んでも何も分からない言葉でまとめてしまう。
- 良い変更だけを書き、使えなくなった手順を書かない。
- 計測していない根拠(「多くの人が」「大幅に改善」)を事実のように書く。
- 記録の扱いを書かず、新旧の記録が混ざって見える状態にする。
アソバースの投稿画面にある「紹介文と遊び方を作成」は、公開済みURLや本人の検証済みアップロードを読み取って下書きを作ります。「この文章を使う」を押した場合だけ反映され、生成だけで公開されることはありません。更新後の遊び方の説明を作り直すときの出発点にはなりますが、「旧版との違い」や「記録の扱い」は読み取れません。この二つは作者が自分で書き足すものです。
次の行動
自分の作品、または公開を考えている作品で、更新を想定して五つの問いに答える練習をしてみてください。答えに詰まった問いが、いまの作品に足りない情報です。あわせて、保存を持つ作品なら、保存内容に版の番号を入れておくと、将来の更新がずっと楽になります。

